銀河団とは何か?
 宇宙には謎がいっぱいだ。調べても調べても新しい発見がある。興味が尽きない魅力がある。

 銀河団(Cluster of galaxies)は多数の銀河が互いの重力でまとまっている大規模な集団である。かみのけ座銀河団もその一つ。

 冷たい暗黒物質による階層的構造形成シナリオ(Λ-CDM)に基づくと、ビッグバンによって宇宙が誕生した直後、宇宙の物質密度に場所によってわずかな揺らぎがあったため、この密度揺らぎが次第に成長し、密度の高い部分が重力によって収縮して銀河が生まれたと考えられている。

 その後、この銀河同士が互いの重力によって集合したものが銀河団であるとされている。銀河団には数十個から数千個の銀河が含まれている。銀河団自身もまた、超銀河団というより大きなスケールの構造の一部となっている。

 今回、アメリカと欧州のX線天文衛星の観測から、3億光年かなたの「かみのけ座銀河団」に高温ガスの長い「腕」が多数発見された。銀河団同士の衝突を経てきた巨大天体の歴史を示すものだ。


 以下はJAXAプレスリリース「銀河団にのびる高温ガスの巨大な腕」から引用する。 


 「銀河団に伸びる高温ガスの巨大な腕の発見」
 マックス・プランク研究所のジェレミー・サンダース(Jeremy Sanders)博士やJAXAインターナショナルトップヤングフェローのオーロラ・シミオネスク(Aurora Simionescu)博士らの研究チームは、アメリカ航空宇宙局(NASA)のチャンドラX線観測衛星と欧州宇宙機関(ESA)のXMMニュートン衛星を用いて、かみのけ座銀河団の中に、高温ガスの巨大な「腕」を多数発見し、米国サイエンス誌に掲載されました。

 一つの銀河団の中に、このように長い高温ガスの腕が、しかも多数発見されたのは初めてのことです。少なくとも50万光年の長さを持つこれらの腕は、かみのけ座銀河団が、どのように小さな銀河群や銀河団との衝突を経て、宇宙で最も巨大な重力的に結びついた構造の一つになったのかを教えてくれます。

 チャンドラ衛星のデータを詳細に解析して得られたX線画像(赤)と、スローン・デジタル・スカイサーベイの可視光画像(白・青)を重ねることによって得られた新しい画像には、目を見張るような腕の特徴を見て取れます。

 X線は、数千万度の高温ガスから放射されます。可視光画像では、高温ガスのわずか1/6の質量しか持たない銀河だけしか分かりません。腕を強調するため、この図には最も明るいX線放射しか表示されていませんが、高温ガスは視野内にまんべんなく存在しているのです。

 これらの腕は、小さな銀河団がかみのけ座銀河団と衝突するときに、かみのけ座銀河団の高温ガスの向かい風によって、銀河からガスがはぎ取られてできたのであろうと、研究者たちは考えています。これはちょうど、ジェットコースターの乗客の帽子が向かい風で飛ばされてしまうのと同じです。


 中心に二つの巨大楕円銀河
 かみのけ座銀河団は、中心に一つではなく二つの巨大楕円銀河を持つという点で、珍しい銀河団です。これら二つの巨大楕円銀河は、おそらく過去にかみのけ座銀河団と衝突した二つの銀河団の、最も大きい銀河の名残であろうと考えられています。研究者たちはこのほかにも、かみのけ座銀河団の過去の衝突の痕跡を見つけ出しています。

 高温ガスの腕の広がりや、その中での音速(時速約400万キロメートル)から、この新発見された腕は、およそ3億年前にできたのであろうと推定されます。さらにこの腕は、いくぶん滑らかな形をしています。これらの事実は、かみのけ座銀河団内の高温ガスの状態を解き明かすヒントを与えてくれます。

 ほとんどの理論モデルでは、銀河団同士の衝突が起こると、高温ガスに強い乱流が引き起こされることが予想されます。しかし、今回発見された滑らかな形の長い腕は、かみのけ座銀河団が何度も衝突を起こしたにも関わらず、高温ガスが思いのほか穏やかな状態にあるという驚くべき事実を示しています。

 かみのけ座銀河団内で乱流が弱いのは、銀河団規模の磁場が原因となっていると考えられます。銀河団内の乱流の量を見積もることは宇宙物理学の大きな挑戦の一つです。これまでに様々な見積もりがなされてきましたが、結果に食い違いがみられるため、他の銀河団をさらに観測していく必要があります。

 二つの腕は、ニュートン衛星のデータから、少なくとも150万光年の長さを持つさらに大きな構造と繋がっており、かみのけ座銀河団中心部から200万光年先にある銀河群まで伸びているように見えます。また、ある銀河の後ろには、とても薄い「尾」が見られます。これはおそらく、銀河団や銀河群に加え、一つの銀河からも高温ガスがはぎ取られている証拠でしょう。


 かみのけ座銀河団とは?
 かみのけ座銀河団(Coma Cluster、別名:Abell 1656)は、確認されただけで1000個以上の銀河を含む大きな銀河団である。しし座銀河団(Abell 1367)と共に、かみのけ座超銀河団を構成する、2つの主要な銀河団の一方である。

 銀河団の地球からの平均距離は99Mパーセク(3.21億光年)である。中央の領域は、2つの巨大楕円銀河、NGC 4874とNGC 4889により支配されている。星野では銀河座標の北極付近の数度の範囲に見える。銀河団の中央部分に存在する銀河のほとんどは、楕円銀河である。矮小銀河も巨大楕円銀河と同様に、大量に銀河団の中で見出される。

 空間密度の高い銀河団の例にもれず、構成銀河は圧倒的に楕円銀河とレンズ状銀河(S0銀河)である。ごく少数の形成年代の若い渦巻銀河も存在するが、それらの大部分は銀河団の周辺近くにある。

 かみのけ座超銀河団は、1978年にスティーブ・グレゴリー (Stephen A. Gregory) とレアード・トンプソン (Laird A. Thompson) によって発見された超銀河団である。彼らは238個の銀河の赤方偏移の値を測定し、距離に基づいて銀河を分布したところ、銀河の配置から、かみのけ座銀河団としし座銀河団の間が別の銀河団や銀河群によってつながっている事を発見した。

 また、かみのけ座超銀河団の構造が判明したため、かみのけ座超銀河団によって形作られるかみのけ座ボイドが同時に発見されている。かみのけ座超銀河団とかみのけ座ボイドの発見は、その少し前に示唆されていた、宇宙の銀河の分布が、泡のように三次元的に広がった銀河が希薄な空間と、その泡の間となる壁に銀河が密集する構造を持つという宇宙の泡構造説を支持するものであった。

 この泡構造は当初支持されなかったが、1987年にペルセウス座・うお座超銀河団、1989年にCfA2グレートウォールが発見されるようになると、徐々に支持を得るようになった。また、かみのけ座超銀河団の発見によって、かみのけ座銀河団についての論文は1997年から2001年の間で125本も書かれた。

 これはおとめ座銀河団とほぼ同じ数である。なお、しし座銀河団についての論文は同じ期間で11本であるが、これはかみのけ座銀河団と比べ、しし座銀河団は銀河が少ないからである。

 地球近傍の宇宙の大規模構造の図。かみのけ座超銀河団はComa Wallと名づけられているCfA2グレートウォールの一部であることが分かる。


 かみのけ座超銀河団
 かみのけ座超銀河団は、主にかみのけ座銀河団としし座銀河団で構成されている。そしてその間を結ぶ、NGC 3937、NGC 4065、NGC 4169、NGC 4615などの銀河群や銀河クラウドを含む。確認されているだけでも3000個以上の銀河を保有している。かみのけ座超銀河団より近い位置にある超銀河団はあるが、最初にかみのけ座超銀河団が発見されたのは、銀河系の物質密度が薄いため、観測条件が良かったからである。

 かみのけ座超銀河団は、自身で形作られているかみのけ座ボイドを持っている。後に発見される多くの超空洞と比べるとかなり小さい大きさを持つ。

 現在ではかみのけ座超銀河団は、かみのけ座フィラメントという更に巨大な構造の一部である事が判明している。また、かみのけ座超銀河団はCfAホムンクルスの大部分を形成している。そして、かみのけ座フィラメントとCfAホムンクルスを含む更に巨大なCfA2グレートウォールの構造の一部である。

 なお、CfA2グレートウォールはかみのけ座ウォールとも呼ばれ、かみのけ座超銀河団はCfA2グレートウォールのちょうど中心部に存在する。また、かみのけ座超銀河団は、北ローカル・スーパーボイドと南ローカル・スーパーボイドの外側を構成している超銀河団の一部である。

 かみのけ座超銀河団は、CfA2グレートウォールを通じてヘルクレス座超銀河団と、CfAホムンクルスを通じておとめ座超銀河団とつながっている。


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