日本に飛来する水銀の原因は?
 水銀汚染というと、水俣病を思い出す。発生から50年以上過ぎても、被害者が裁判を続けている。

 この原因は、熊本県八代海や阿賀野川流域(新潟県)でおきた工場排水に起因する有機水銀中毒である。有機水銀は無機水銀に比べ毒性が非常に強い。特にメチル水銀の中枢神経系(脳)に対する毒性は強力だ。このような過ちは二度と起こしたくない。

 だが、地球上においては地殻などに水銀が比較的豊富に存在する。これら自然界に存在する水銀は水系環境において非酵素的反応や微生物の作用によって有機水銀に変化し、食物連鎖を通じて、大形魚類や、深海魚、海洋動物に蓄積される。一般日本人は、平均8.1μg/日の水銀を食品から摂っている。(内閣府:食品安全委員会)

 我が国の大気中にも水銀は存在し、その全平均値は、2.32 ng/m3(2005年)である。ところが、このところ大気中の水銀濃度が上昇している。



 まだ健康に害を及ぼすレベルではないが、工場などから排出される汚染物質の影響をほとんど受けない富士山頂付近で平均値を超えている。滋賀県立大の永淵教授は「気象条件も合わせて分析すると、中国から汚染された空気が流れてきたことが原因とみられる」と指摘する。

 PM2.5だけでなく、水銀までも中国からやってくるのか!…と驚かされる。もっと、日本人は中国に抗議した方がよい。日本のマスコミや一般人は、福島第一原発の汚染水の問題では、健康に害のない放射線漏れでも厳しく指摘するが、なぜ、中国からの環境汚染問題では抗議しないのだろう?

 まるで日本は中国の機嫌をとっているかのようだ。フェアではない。日本国憲法には、世界平和のため、国の発展のために日本人は努力すると書いてある。国内のことだけ文句を言って、世界が平和になるとでもいうのだろうか?やはり、自国と同様に、他国の不正についても堂々と言うべきだろう。

 日本と、世界では事情が違うというならば、そもそも日本国憲法が狂っているし、世界平和など絶対にできるわけがない。私は日本人が考えた、日本人なりの世界平和でよいから目指すべきだと思う。他国もそうあるべきだし、他国も世界平和を目指すというなら、そのときは意見を交換すればいい。

 asai.comの記事から引用する。


 富士山頂で高濃度水銀を検出 中国大陸から越境汚染か
 標高3776メートルの富士山頂の大気中から、最大で市街地の平均濃度の10倍を超える水銀が検出された。調査した滋賀県立大などの研究チームは、中国大陸から流れ込む大気に乗ってほかの汚染物質とともに運ばれてくるとみている。

 水銀は人体に有害で水俣病の原因物質としても知られる。滋賀県立大の永淵修教授らは環境省の助成を受け、2007年から毎年夏に専用装置を富士山頂に持ち込んで水銀濃度を測定。2007年8月下旬に1立方メートルあたり25.1ナノグラム(ナノは10億分の1)の最高値を記録した。

 仮に1年間、同じ濃度が続いても大気汚染防止法に基づく指針値(年平均40ナノグラム以下)は下回るが、2007年の市街地の全国平均(2.2ナノグラム)の11倍という数字だった。

 気象データを分析したところ、最高値を記録した時は中国東北地方や朝鮮半島を経由してきた大気が流れ込んでいたことが判明。一方、太平洋側からの大気が流れ込んでいた11、12年は2.0ナノグラム前後だった。

 ほかに、屋久島の黒味岳(1831メートル地点)、滋賀・岐阜県境の伊吹山(1348メートル地点)、北アルプス・乗鞍岳(2876メートル地点)でも、中国大陸から北西の風が入り込むと水銀濃度が高まることが確認された。昨年10月の乗鞍岳での観測では、大陸からの寒波で初雪が降った際に濃度が上がり、半日で0.5ナノグラムから2.5ナノグラムまで5倍に跳ね上がった。

 永淵教授は「大陸からの水銀の越境汚染が裏付けられた。観測態勢を強化して実態を解明することが必要だ」と話している。

 国連環境計画によると、世界で環境中に排出される水銀の4分の1は石炭などの化石燃料が原因。10年の排出量は推定1960トンで中国からが3割を占める。今年1月に開かれた水銀規制条約(水俣条約)の政府間交渉では国際的な大気汚染対策が議題になり、新設の石炭火力発電所などに最良の設備を義務づけることが条約に盛り込まれた。(asah.com 2013.4.16)


 水銀の大気汚染
 元素としての水銀は、環境中で自然に生じる。しかし、産業革命以来、人間の活動が世界の水銀汚染に著しく寄与している。大気に放出される水銀は、その放出源から遠く離れた場所に長距離移動することができる。一度環境中に出ると、水銀はメチル水銀に変換することができるが、それは食物連鎖中で生物濃縮される。

 その結果、直接的水銀汚染源ではない北極のような場所でも、水銀汚染は世界の食料供給の一部である海洋哺乳類や魚類の体内に危険なレベルにまで蓄積する。

 化石燃料の燃焼が、世界中の人間活動による水銀大気放出の主要な源である。石炭、天然ガス、その他の石油燃料は天然の不純物として水銀を含んでいる。大量の水銀が、石炭焚き火力発電所、産業用ボイラー、住宅暖房から大気と環境中に放出されている。

 金属鉱石及び石灰岩もまた、天然に生じた水銀を含んでおり、金属精錬・精製、及びセメント製造で放出される。水銀はまた、意図的にある種の製品に加えられ、それらが焼却されると大気中に放出される。(化学物質市民研究会)


 水銀汚染について
 古代においては、辰砂(主成分は硫化水銀:鮮血色をしている)などの水銀化合物は、その特性や外見から不死の薬として珍重されてきた。特に中国の皇帝に愛用されており、不老不死の薬、「仙丹」の原料と信じられていた(錬丹術)。それが日本に伝わり飛鳥時代の持統天皇も若さと美しさを保つために飲んでいたとされる。しかし現代から見ればまさに毒を飲んでいるに等しく、始皇帝を始め多くの権力者が命を落としたといわれている。中世以降、水銀は毒として認知されるようになった。

 世界中において有機水銀はかつて農薬として広く使われ、1970年代にイラクでは、メチル水銀で消毒した小麦の種を食用に流用したパンによって有機水銀中毒で400人以上が死亡する事件がおきた。そして、その毒性から現在は使用が禁止され、代わりに無機水銀などが使われるようになった。さらに、水銀化合物自体の使用が環境汚染につながるとして忌避されるようにもなった。

 2001年にアメリカ合衆国では「乳児の際に受けた予防接種中のチメロサール(エチル水銀チオサリチル酸ナトリウム・ワクチンの防腐剤として使用される)によって自閉症になった」として製薬会社に対する訴訟が発生した。三種混合ワクチン、日本脳炎ワクチン、インフルエンザワクチン、B型肝炎ワクチンなどの保存剤としてチメロサールが使われていたためである。そのためチメロサールを使わないか低濃度のものに替えるなど規制が強化されたが、その後の大規模調査で自閉症との関連は否定され、関連を示唆した発端の論文は科学的不正があったとして撤回されている。

有機水銀は無機水銀に比べ毒性が非常に強い。特にメチル水銀の中枢神経系(脳)に対する毒性は強力で、日本で起きた水俣病(熊本県八代海)や阿賀野川流域(新潟県)でおきた工場排水に起因する有機水銀中毒(第二水俣病)の原因物質である。

 地球上においては地殻などに水銀が比較的豊富に存在する。これら自然界に存在する水銀は水系環境において非酵素的反応や微生物の作用によって有機水銀に変化し、食物連鎖を通じて、大形魚類や、深海魚、海洋動物に蓄積される。日本の厚生労働省はキンメダイやカジキ、マグロなどの魚類、クジラ、イルカなどの海棲哺乳類に含まれる水銀が胎児の発育に影響を及ぼす恐れがあるとして、妊娠中かその可能性のある女性は、魚介類の摂取量や回数を制限するように注意を喚起している。(Wikipedia)


 魚介類に蓄積されるメチル水銀
 栄養摂取に占める魚介類の割合が多い日本では、メチル水銀の摂取量が他国と比較して高いことが知られている。メチル水銀の摂取量の地域的特徴は、マグロ類の消費傾向とよく一致し、関東地方などを中心とする東日本で高く、中国地方から九州北部にかけて比較的低くなっている。

 一方で、魚介類は栄養的にも優れた食品であり、バランスの取れた食生活をしている限りは、通常は微量の汚染物質による健康影響を心配する必要はあまりない。

 一方、発育途中にある胎児の神経系は、メチル水銀の影響を最も受けやすいと考えられる。魚介類にはある種の不飽和脂肪酸など、胎児の発育などにも有効な成分も多く含まれており、魚介類中に含まれる微量のメチル水銀が、胎児の発達にどれほどの影響を及ぼしているかは、研究者によっても見解が分かれるところである。

 欧米の政府機関は、基準を設けて、マグロやカジキなどの摂取制限を行っている。特に妊婦や妊娠する可能性のある女性は、メチル水銀を多く含む大形食魚やイルカ、キンメダイなどの魚介類などを、基準より食べ過ぎないよう注意するとよい。なお、マグロなどの魚介類はセレンを含んでおり、これがメチル水銀の毒性を軽減させているとの可能性も指摘されているが、詳細は不明である。

 自然界では無機水銀及び有機水銀を処理して、金属状態の水銀に変化させる菌が存在する。この菌は通称水銀耐性菌と呼ばれ、水俣病の発生した地域の土壌から単離された。水銀耐性菌において無機水銀及び有機水銀を金属水銀に代謝するのは、この菌の産生するタンパク質によるものであることが遺伝子工学的な解析により判明しており、その担当遺伝子の解析も行われている(メタロチオネインも参考のこと)。環境汚染の浄化技術として、いわゆるバイオレメディエーションへの応用も行われている。

 体温計に使われている水銀は金属水銀なので安全だと言われている。金属水銀は間違って飲み込んだとしても、消化管からはほとんど吸収されないので、急性中毒を起こすことはない(ただし、一部が腸内細菌叢により酸化されたり、有機水銀に転換されて吸収される余地が示唆されている)。しかし、気化した場合には肺から吸収されやすく、体内に吸収された場合にはヘモグロビンや血清アルブミンと結合し毒性を示す。このため水銀を含有する物(蛍光灯・体温計・血圧計、朱肉など)を焼却することは危険である。(Wikipedia)


メチル水銀を水俣湾に流す
クリエーター情報なし
日本評論社
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2013年 3/19号 [雑誌]
クリエーター情報なし
阪急コミュニケーションズ

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