糖尿病の原因は何か?
 糖尿病は血糖値(ブドウ糖量)が上がる病気である。血糖値の増加は血管を傷つけ動脈硬化が起こす。はじめに影響が出るのは毛細血管で、網膜、腎臓、手足の末端部に壊疽が起きる。

 糖尿病の原因は何だろう?血糖値は通常、すい臓のβ細胞でできる、インスリンなどのホルモンの働きによって一定範囲内に調節されている。ところが、インスリンの働きが悪くなるとブドウ糖濃度が上昇する。これが糖尿病の原因だ。

 では、どうなるとインスリンの働きが悪くなるのだろう?インスリンは細胞のインスリン受容体と結びつき、糖を吸収しやすくする働きがある。ところが、肥満により、脂肪細胞に多くの中性脂肪がたまることでインスリン受容体の数が減って、インスリンの効きが悪くなる(インスリン感受性の低下)。このため、血糖値が上がってしまう。

 ところが、今回、順天堂大学を中心とした研究チームは、マウスおよびヒトを用いた研究結果から、インスリンと共に「膵β細胞」から分泌される亜鉛が肝臓でのインスリン分解を抑制することで、肝臓を通り抜けて全身に向かうインスリン量を十分に確保する仕組みあることを発見した。


 日本人に多い2型糖尿病では、インスリン分泌量の減少が指摘されており、この原因として、遺伝子変異による亜鉛の分泌量の低下が、インスリンを分泌する膵β細胞に慢性的に過剰な負荷をかけ、2型糖尿病のリスクを高めている可能性があることがわかった。

 マイナビニュース記事「糖尿病の原因の1つに亜鉛分泌量不足の可能性」から引用する。」


 糖尿病の原因の1つに亜鉛の分泌量不足の可能性が浮上
 順天堂大学は9月19日、理化学研究所、杏林大学、慶應義塾大学との共同研究により、マウスおよびヒトを用いた研究結果から、インスリンと共に「膵β細胞」から分泌される亜鉛が肝臓でのインスリン分解を抑制することで、肝臓を通り抜けて全身に向かうインスリン量を十分に確保する新しい仕組みがあることを発見したと発表した。

 成果は、順天堂大大学院 医学研究科・代謝内分泌内科学の藤谷与士夫准教授、同・綿田裕孝教授らの研究チームによるもの。研究の詳細な内容は、米科学誌「Journal of Clinical Investigation」9月24日号に掲載される予定だ。

 糖尿病患者では尿中の亜鉛排泄量が増えるなど、体内の亜鉛が失われる傾向にあることから、亜鉛不足が糖尿病発症リスクを高め、亜鉛の摂取が糖尿病に効くといった説が広がっているが、その科学的根拠は実は明らかではない。

 近年、膵β細胞のインスリン分泌顆粒内に亜鉛を汲み入れる「亜鉛トランスポーター(ZnT8)」のヒトの遺伝子の「一塩基多型」により、その機能が低下すると糖尿病の発症リスクが高まることがゲノム相関解析より報告された。

 しかし、これまでいくつもの研究チームがZnT8の機能低下がなぜ糖尿病に結びつくのかを調べてきたが、どのチームもその理由をうまく説明することができていない。そこで、藤谷准教授と綿田教授の研究チームは今回、生体内の亜鉛の流れに着目し、今回の実験を実施した。


 亜鉛トランスポーター(ZnT8)欠損マウス
 研究チームは、インスリンと共に蓄えられている亜鉛にどのような役割があるのか、ZnT8の機能が悪くなると、なぜ糖尿病のリスクが高まるのかについて調べた。まず、膵β細胞でZnT8を欠損するマウスが作製された。すると、このマウスではインスリン分泌顆粒内の亜鉛が枯渇するために、正常なインスリン結晶構造が作られず、また糖を与えると軽い耐糖能異常を示し、その時の末梢血中のインスリン濃度は正常マウスに比べて低い値を示すことが確認されたのである。

 そこで、膵β細胞からのインスリン分泌を直接調べたところ、予想に反して、正常マウスよりも約2倍のインスリン分泌の上昇が認められた。さらにZnT8を欠損させたマウスの詳細な調査が行われ、膵β細胞からのインスリン分泌はむしろ高まっているのに、同時に亜鉛が分泌されないために、肝臓で過剰にインスリンが分解されてしまい、その結果、筋肉などの末梢組織に届く全身のインスリン量が減少することが判明した。

 一方、正常なマウスでは、インスリンと共に分泌される亜鉛が門脈を介して肝臓へ流れ込む、いわゆる「亜鉛の流れ」があり、亜鉛の存在が肝細胞へのインスリンの取り込みと分解を抑え、末梢でのインスリン量を保つ新たなメカニズムの存在が明らかとなったのである。


 亜鉛不足でインスリン量増加、肝臓では分解促進
 ヒトにおいてZnT8遺伝子は一塩基多型により2つのタイプがあり、その内、機能が弱いほうのタイプを有するヒトでは、マウスと同様に肝臓でのインスリンの分解が亢進し、全身に送られる末梢血中のインスリン濃度が低くなってしまう。

 それゆえ、正常な人たちと同じ程度のインスリン量を保つためには、膵β細胞がより多くのインスリンを分泌する必要があることがわかったのである。すなわち、遺伝子変異による亜鉛の分泌量の低下が、インスリンを分泌する膵β細胞に慢性的に過剰な負荷をかけ、2型糖尿病のリスクを高めている可能性があるというわけだ。

 これまで糖尿病の原因は、「膵β細胞からのインスリン分泌の低下」と「末梢組織でのインスリン感受性の低下」により説明されていたが、今回の研究により「亜鉛分泌が少ないことによって起こる肝臓におけるインスリン代謝の亢進」も糖尿病発症に関わることが明らかにされた。

 インスリンを無駄なく全身で働かせることができるように、膵β細胞での亜鉛トランスポーターの働きを高める薬の開発などをできれば、糖尿病の新しい治療法に大きく貢献する可能性があるとしている。(マイナビニュース)


 “インスリン抵抗性”とは何か?
 インスリンの分泌量は同じでも、糖尿病患者の糖取り込みは健常者の半分になるという。これをインスリン抵抗性というが、なぜインスリン抵抗性が生じるのか?ここで大きくかかわってくるのが肥満、中でも内臓脂肪の蓄積だ。

 エネルギーが過剰になると、脂肪細胞は肥大化する。これを「大型脂肪細胞」と呼び、正常な状態にある脂肪細胞は「小型脂肪細胞」と呼ぶ。

 脂肪細胞は、単なるエネルギー貯蔵庫ではなく、さまざまな生理活性物質を分泌する内分泌器官として働くが、同じ脂肪細胞でも大型か小型かによって、その働きは大きく異なる。

 小型脂肪細胞は、インスリン抵抗性を改善する“善玉”の生理活性物質「アディポネクチン」などを分泌する。一方、大型脂肪細胞は、インスリン抵抗性を増悪する“悪玉”の生理活性物質「TNFα」「PAI-1」などを分泌する。

 これらの悪玉生理活性物質は、インスリンが標的細胞の表面にある「インスリン受容体」に結合したとき起こる細胞内のさまざまな反応を阻害し、糖を取り込みにくくする。


 すべては相互に関連し合い悪循環を形成する
 このような状況を打破すべく、インスリン抵抗性の進展に伴い、膵β細胞はより多くのインスリンを分泌する。しかしそれも、やがて限界を迎える。インスリン分泌不全に陥り高血糖状態が続くと「糖毒性」が生じ、膵β細胞が傷つけられ機能が低下する。

 正常にインスリンが分泌されていれば、インスリンは脳に対して食欲抑制ホルモンとしても働く。これが足りなくなるということは、肥満を誘発する原因にもなる。

 脂肪細胞でインスリンは、脂肪の合成を促し分解を抑えるように働くが、インスリン分泌不全になると脂肪の分解が進み、「遊離脂肪酸」を血液中に放出する。この遊離脂肪酸もTNFαやPAI-1同様、筋肉や肝臓で悪玉物質として作用して糖の取り込みを阻害し、膵β細胞の機能を低下させる。

 肥満、インスリン抵抗性、インスリン分泌不全、糖毒性、β細胞の機能低下……。これらすべてが悪循環を形成し、2型糖尿病の発症や重症化を来している。(novonordisk.co.jp インスリン抵抗性


インスリン抵抗性
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糖尿病学イラストレイテッド~発症機序・病態と治療薬の作用機序
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