台風26号の次は台風27号
 台風26号が関東をかすめ、伊豆大島に1時間に122ミリという記録的な大雨を降らし、土石流の発生により46名もの犠牲者を出した。関東を直撃したらどうなっただろうか?

 そして、次は台風27号が発生、10月18日午前9時現在、マリアナ諸島にあり、時速15キロで北北西へ進んでいる。中心気圧は955ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は45メートルで、非常に強い勢力となっている。また、中心から110キロ以内では風速25メートル以上の暴風となっている。

 今年の夏は集中豪雨、猛暑、竜巻などがあり、気象庁も異常気象を宣言した。台風の発生もハイペース。すでに27個で、平年の年間発生数25.6個を上回る。今後、平年通りに発生が続けば、36個だった年間記録に迫る勢いだ。地球温暖化の影響が現在も継続しているといえる。


 それにしても今回の、大島の土石流では避難勧告が出されなかったという。1時間に100ミリを超える大雨を記録しながらなぜ避難勧告が出されなかったのだろう?また、なぜそんな大雨が降ったのだろう?そして、地球温暖化の影響でどんなことが起きるのだろうか?

 朝日新聞10月17日の記事「台風26号記録的な大雨はなぜ?海面の水温が影響か」を引用する。


 台風26号、記録的な大雨はなぜ? 海面の水温が影響か
 台風26号は、中心気圧955ヘクトパスカル、最大風速40メートルほどの強い勢力で関東などを襲い、各地に記録的な大雨を降らせた。気象庁の内田裕之主任予報官は接近前の15日、「関東でこの気圧は2004年の台風22号以来。これほどの台風は久しぶり」と会見で語り、厳重な警戒を呼びかけていた。

 今回、大雨をもたらした理由は、勢いを弱めることなく日本列島に急速に近づいたことだ。

 気象庁が大島町に大雨警報を出した15日夕には、1時間雨量は30ミリに満たなかった。だが深夜から雨脚が急に強まり、16日午前1時からは、1時間雨量が90ミリを超える猛烈な雨が4時間も続いた。

 伊豆諸島付近では15日夜、南の湿った空気と北からの冷たい空気がぶつかって前線ができた。そこへ台風26号が16日未明、伊豆大島の南を通過。湿った空気が前線に大量に入り込んだ。東京大大気海洋研究所長の新野宏教授は「地上付近では台風が運んできた南からの湿った空気と、北側にある冷たい寒気がぶつかっていたとみられる。それにより上昇気流が起き、積乱雲が多く発生したのでは」と話す。

 観測史上最大の雨量は大島のほか、千葉県や茨城県の各地でも観測された。横浜国立大の筆保弘徳准教授は「岡山でも停電被害があるなど、広範囲に影響が出たのも今回の台風の特徴だ。周囲に湿った空気が多かったことが横方向にサイズを広げた原因ではないか」と推測する。

 海水温度が暖かい熱帯地方で発生する台風はふつう、水温の下がる日本近海で勢力を弱める。なぜ、台風26号は勢いを保ったまま日本列島に達したのか。

 気象庁によると、26号が通ってきた海域は海面水温が26~27度と高かった。台風はまた、偏西風に乗って急加速したため、衰える間もなかった。さらに気象研究所の和田章義主任研究官は、日本近海の海面水温が平年より1度以上高かったことに注目する。「海からもどんどん、前線に水蒸気が供給されることになり、雨が大量に降る条件がそろってしまった」

 10月に入って2度目の台風襲来は、地球温暖化と関連があるのか。先月公表された国連の報告書によると、1971年以降、世界的な海洋表層の水温は10年ごとに0.11度上昇している。将来、日本周辺に襲来する台風の頻度は減るが、風速や降水量などの強度は増すと予測する研究もある。

 国立環境研究所の江守正多・気候変動リスク評価研究室長は「今回の台風との因果関係は分からない」としながら、「温暖化が進めば大気中の水蒸気量は増えていく。降水量が増える可能性は非常に高く、大雨への警戒が必要だ」と指摘する。(asahi.com 2010年10月17日)


 伊豆大島の雨量、史上最多 特別警報なぜ出なかった
 重大な災害の危険性が著しく高まっているときに発表される「特別警報」。伊豆大島で局地的に観測された雨量は、発表の水準となる「50年に1度」を上回るものだった。だが、特別警報は出されなかった。

 伊豆大島では午前4時前までの1時間に122.5ミリ、16日午前8時20分までの24時間雨量は824ミリと、観測史上1位の降水量となった。

 気象庁が伊豆大島に大雨警報を出したのは15日午後5時38分。当時、1時間雨量は30ミリに満たなかった。海面水温が26~27度と高い海域を通ってきた台風は勢力が衰えないまま接近。伊豆諸島では、特に水蒸気を多く含む中心付近が通過したため、湿った空気が大量に入り込み、前日から停滞していた前線を刺激した。16日未明から急に雨脚が強まった。

 伊豆大島にある気象庁の観測場所は9カ所。一方、同庁が特別警報を発表する目安は、48時間雨量で50年に1度の水準になる地点が50カ所以上、3時間雨量では10カ所以上あることだ。

 警報発表の単位も「県程度の広がりの地域」が基本。伊豆大島の9カ所では今回、いずれも基準を超える3時間雨量を記録したが、県単位の広がりはないとして発表しなかった。「特別警報は広域的な大規模災害を前提にした制度。今回のような一地域の現象は対象にはならない」と担当者は言う。

 気象庁は15日午後6時5分に大島町に土砂災害警戒情報を発表。15日深夜から16日未明にかけて東京都に3回と大島町に1回、「特別警報級」の警戒をするよう連絡したが、被害を防げなかった。同庁は特別警報の制度や運用を直ちに見直す考えはないとしながら、「情報の提供方法については今後の検討課題としたい」(業務課)と話している。 (ashai.com 2010年10月16日)

 なるほど、特別警報は観測地点が10カ所という範囲なので、今回狭い範囲での大雨では特別警報が出なかった。また、日本近海で海水温が高いことも、勢力が強いまま台風が直撃する原因となっている。

 海水温が高いのは、地球温暖化の影響であるが、この温暖化このままでいくとどうなるのだろうか?IRORIOの記事「2047年には、今の猛暑が冷夏に」から引用する。


 2047年には、今の「猛暑」が「冷夏」に…… 米大学が「気候逸脱点」を予測
 今世紀半ばの地球は、最も寒い年でも、これまでで最も暑かった年より暖かくなる──。米ハワイ大学マノア校の研究チームがこんな予測を明らかにした。温室効果ガスの排出がこのまま増加を続けると、2047年には現在の「猛暑」が「冷夏」になってしまうようだ。

 米ハワイ大学マノア校のカミロ・モラ博士らは、世界12カ国の21機関で運用されている39の気候モデルを分析した。これまでの研究が主に地球全体の平均気温の変化についてのものだったことに着目し、研究チームは地球を約1000平方キロメートルずつに分割。それぞれの地域について、温室効果ガスの排出がこのまま増加を続けるものとして、39の気候モデルの結果を平均して分析した。

 その結果、地球の過半数の地域で、2047年以降の最も寒い年が、1860年〜2005年の間で最も暑かった年よりも暖かくなることが判明した。このように「以降の気温が、過去最も暑かった年よりも暖かくなる」年を「気候逸脱点(climate departure)」と名付け、世界の主な都市についても分析している。ニューヨークでは同じく2047年、モスクワでは2063年といった具合だ。熱帯では気候逸脱点が早くやってくると予測され、メキシコシティーでは2031年、ジャカルタでは2029年となっている。

 研究では、温室効果ガスの排出を削減する努力がなされれば気候逸脱点を20〜25年遅くすることができることも指摘している。短い時間にも思えるが、研究チームは「自然や人間社会が新たな気候に対応したり、さらに温室効果ガスを削減するための技術を開発したりする時間ができる」としている。猛暑ばかりの未来はもう避けられないのかもしれないが、それに立ち向かう準備をするためにも、温室効果ガスを削減する努力を続ける必要があるだろう。


地球温暖化はどれくらい「怖い」か? ~温暖化リスクの全体像を探る
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