睡眠不足が健康に悪い理由 
 最近、忙しくてなかなか眠れない。やらなければならないことがあり、なかなか眠ることができない。日本人は世界の人と比較するとあまり寝ていないそうだ。

 OECD(経済協力開発機構)の2009年の報告では、加盟18カ国中、日本は韓国に続いて2番目に睡眠時間が短かった。中でも問題は中高年世代だ。2010年にNHKが行った「国民生活時間調査」によると、日本人の平均睡眠時間は7時間14分。他の年代はすべて7時間以上寝ているのに、男女とも40代と50代だけが6時間台で、全体の足を引っ張っている。

 しかし、睡眠不足は身体によいわけはない。身体にどんな影響があるのだろう?

 睡眠不足は起きている時間が長くなり、食欲が増えるので肥満を引き起こしやすい。睡眠不足は心拍数が増え、高血圧になりやすく集中力も落ちる。また、免疫力が低下し病気にかかるリスクを高め、早死する確率も高まることがわかっている。病気は鬱病、糖尿病、心臓病、風邪など様々な病気にかかりやすくなる。

 「睡眠時間が短い人は早く老ける」というのも、あながち俗説とは言えないようだ。「睡眠中は成長ホルモンが出て細胞を再生する。睡眠不足だと、その分泌が少なくなるので老化が進んでしまう。同じく抗老化ホルモンであるメラトニンも、やはり夜に分泌される」という。


 今回、睡眠の新しい効果が発見された。それによると脳は神経活動などによって生じた老廃物を睡眠中に排出していることが明らかになった。これは、物質輸送を伴う脳の「リフレッシュ機能」を実証した世界でも初めての成果で、18日付けの科学誌 “Science” に論文が掲載される。

 脳は頭骨内に満たされた脳脊髄液という透明な液体の中に浮かんでいます。この脳脊髄液が脳細胞に栄養を運んだり、神経細胞の活動によって生じる老廃物を排出する機能を持っていることは以前からわかっていたが、その作動メカニズムについては明らかになっていなかった。

 脳の老廃物の中にはアミロイドβという、アルツハイマーの原因になるタンパク質も含まれている。脳には老廃物を脳髄から排出するための “glymphatic system(グリンパティック系)” という脳脊髄液の循環システムが存在していることがわかっているが、今回、同グループはこの活動が、睡眠状態で活発になることを発見した。今回の成果は脳の神経性疾患や精神疾患のメカニズムを解明するための大きなヒントになるという。

 AFP通信の記事「脳の老廃物排出、就寝後にスピードアップ」より引用する。


 脳の老廃物排出、就寝後にスピードアップ
 眠りに入った後の脳は、施設の照明が消えた後に清掃員が廊下の掃除を始めるようなもの──就寝後の脳内に起きる大きな変化により、老廃物が排出され、疾患を防いでいるとする研究論文が17日の米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 研究論文は、なぜ人間が人生の約3分の1を寝て過ごすのかという問いに対する新たな答えを提供するもので、また睡眠が認知症や神経疾患などの治療に役立つ可能性についても触れている。

 ネズミを使った実験で研究者らは、脳細胞にたまった老廃物がどのようにして脳内血管を通じて循環系から肝臓へと排出されるのかを調べた。これらの老廃物には、蓄積するとアルツハイマー病の発症につながるとされているアミロイドベータと呼ばれるタンパク質が含まれている。

 脳内老廃物は、脳脊髄液が脳組織を循環することで排出されるが、そのスピードは就寝中に増加する。就寝中は脳細胞が約60%収縮するため、脳脊髄液がより速く、より自由に脳内を流れるためだ。

 脳内老廃物の排出は「グリンパティック系」と呼ばれる循環システムで起こる。この循環システムは、目が覚めている時よりも寝ている間にその活動量が約10倍になるとみられている。

 研究を主導したロチェスター大学医療センター(University of Rochester Medical Center)のマイケン・ネーデルガード(Maiken Nedergaard)氏は「脳が自由に使えるエネルギーには限界がある。ハウスパーティーを開く家の主に例えると、来客を楽しませることと、(散らかった)家をきれいにすることを同時にできないようなものだ」と述べた。

 米国立衛生研究所(US National Institutes of Health、NIH)から支援を受けた今回の研究には、共著者にオレゴン健康科学大学(Oregon Health and Science University)とニューヨーク大学(New York University)の研究者らが名を連ねている。(AFPBB News 2013年10月19日)


 睡眠の効果を上げるためには体温を上げる
 では、「よく眠る」ためにはどうすればいいのだろう?いくつか条件をあげてみたい。

 人間は日中活動している間は体温が高く、夜、体温が下がると眠くなる。この体温低下の幅が大きいほど眠気が強くなり、寝つきがよくなって、深く眠ることができる。

 したがって、眠りに就く前に体温を上げておくと、脳は体温を下げようと指令を出すため、深い睡眠を得られる。体温を下げるためには体中の血液を冷やす必要があるが、この役割は手足が行う。手足の表面に熱い血液が流れてきて、汗をかくことにより、体から気化熱を奪って血液を冷やし、体温を下げる。

 ちなみに冷え性の人は体温が高くても手足が冷たく、手足からの放熱ができず体温を下げにくいので、夏でも手袋や靴下をはくことで、放熱を促し、体温を下げやすくなる。

 睡眠の3時間前までに、辛くて温かい食事をとる。夕飯は辛くて熱い献立にする。夏でも鍋ものがおすすめ。熱いものを食べれば単純に体温が上がる。また辛いものとしては唐辛子がよい。唐辛子の成分であるカプサイシンは急激に体温を上げて、そのあとにぐっと下げる働きがある。

 睡眠の2時間前には、適度な運動がよい。食後の運動をかねて、近所をウォーキングしたりヨガやストレッチなど、自分に合った運動をして体温を上げる。

 睡眠の1時間前には入浴がよい。寝る前の入浴(38~40℃のぬるめのお湯にゆっくりと10~20分)でさらに体温を上げる。入浴は体温を上げるだけでなく、リラックスすることにより副交感神経を優位にして、体を休息モードにスイッチしてくれる。 このとき、体を温める効果のある入浴剤などを加えれば、よりよい眠りが得られる。

 床に就く前、ホットミルクなど温かいものを飲むとよい。食事や入浴でせっかく体温を上げても、風呂上がりに冷たいビールなどを飲んでしまっては体温を下げてしまう。体温を下げてしまうと、入眠に必要な温度差をつけにくくなるため、眠りにくくなる。

 床に就いてからは、眠りを誘うリラックスミュージックを流す。音楽を聴くことで脳波をα波優位の状態にして、心身ともにリラックスする。(健康かけいぼ:快適睡眠でアンチエイジング


 睡眠のための7つの条件
1.酒、タバコ、コーヒーを控える: コーヒーや紅茶に含まれているカフェインが眠りを妨げるのは常識。タバコに含まれるニコチンには興奮作用があり、同じく入眠を妨害する。意外なのはお酒だ。「ナイトキャップ」という言葉もあるように、アルコールは眠気を誘うような気がするが、「微量だと興奮作用がある。たくさん飲むと寝つきは良くなるが、夜中に目が覚めやすい。レム睡眠(深い眠り)が減り、交感神経が興奮するので翌日に疲れが残る」と白川代表は話す。

2.寝る直前に食べない: 体内時計を正常に動かすためには、朝食を食べることが大切だ。ところが寝る直前に食べると胃に食べ物が残り、朝食が食べられなくなる。「特に脂肪は体内時計を狂わせるので最悪」と白川代表は注意する。夕食は寝る3時間前までにすませよう。どうしても就寝直前になってしまった場合は、糖質や脂肪が少ない低カロリーのものを。

3.夕方から夜にかけて体を動かす: 運動は朝よりも夜のほうがいい。白川代表によると、「人間の体温は就寝から19時間後に最も高くなる。よく眠るためには、このタイミングで有酸素運動を30分くらいするのがベスト」という。午前1時に布団に入るなら午後8時前後ということ。どうしても時間が取れない人は、帰宅時に最寄り駅より1駅前で降りてウォーキングを行うのも有効だ。

4.寝る前にPCやスマホを見ない: 夜になると、脳の松果体からメラトニンというホルモンが出る。これに覚醒拮抗作用があり、眠くなるというワケ。PCやスマホに使われるLEDが出すブルーライトはメラトニンの分泌を抑え、眠気を追い払ってしまう。また、「寝る前は情動的に興奮しやすいので、メールの返信やネットへの投稿はやめたほうがいい」(白川代表)。朝は窓を開けて太陽の光を浴びよう。メラトニンの分泌が抑えられ、体内時計を正常化してくれる。

5.眠りを誘う香りを使う: 女性に人気のアロマセラピーは男性にもよい。「ヒマラヤ杉などに含まれる香気成分セドロール(シダーウッド)、バニラに含まれるヘリオトロピンは眠りを誘う効果が確認されている」と白川代表。その他、カモミール、ラベンダー、白檀(サンダルウッド)なども鎮静効果があるので、好みの香りを選んで寝室に置いておくといいだろう。就寝直前よりも2時間ほど前から香らせておくとよい。

6.就寝前の入浴はぬるめのお湯がいい: 熱めのお湯が好みという男性は多いと思うが、もし就寝直前に入浴するのであれば、40℃ぐらいのぬるめのお風呂にゆっくりと浸かるのがいい。熱めのお風呂は交感神経が興奮して目が冴えてしまうため、入浴する場合は就寝2時間前までに済ませるとよい。

7.無理に眠ろうとしない: 眠くなければ、無理に布団に入らないほうがいい。睡眠不足は良くないが、どうしても眠れないときは「一晩くらい徹夜したって死なん!」と開き直ることも大切だ。翌日どうしても眠かったら、時間を見つけて15分ほど仮眠を取ろう。「直前にコーヒーを飲むといい。カフェインが効いて、すっきり目が覚める」。(日経Trendy:睡眠不足は酔っぱらい状態と同じ) 


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