金を濃縮する生物
 生物濃縮とは、ある種の化学物質が生態系での食物連鎖を経て生物体内に濃縮されてゆく現象をいう。これには、水銀濃縮による水俣病、カドミウム濃縮によるイタイタイ病などの公害病があり、あまりよいイメージがない。

 生物濃縮による環境被害は、レイチェル・カーソンが著書「沈黙の春」でDDTなどによる生物濃縮問題を論じたことで、よく知られるようになった。生物濃縮は、一部の農薬や重金属で起きやすい。

 しかし、中には金などの貴金属を濃縮するシロアリ、ヒョウタンゴケなどの生物も存在する。こうなると価値は大逆転する。

 今回、地中深く埋蔵されている金を探すための、驚くべき目印を発見したと、オーストラリアの研究チームが22日、発表した。金鉱脈の上に生えているユーカリの木の葉に、微量の金が含まれていることが分かったという。


 ユーカリというとコアラが食べる植物なので、コアラを探せば金が発見できるかもしれない。さらに、その体内には金が生物濃縮されるかもしれない。だが、コアラが食べるユーカリの種類は限られており、数百種以上あるユーカリのうち数十種の葉しか食べない。また食べたとしても大部分は排出されるだろう。

 新たな金鉱脈の発見はここ10年間で45%減少しており、各国の金保有量は縮小を続け、金価格は急騰している。だが、英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された論文によると、今回の珍しい発見は、金鉱脈を探す人々にとって朗報になるかもしれない。

 AFP通信とNational Geographic newsの記事を引用する。 


 ユーカリの葉に微量の金、鉱脈探査の指標に 豪研究
 地中深く埋蔵されている金を探すための、驚くべき目印を発見したと、オーストラリアの研究チームが22日、発表した。金鉱脈の上に生えているユーカリの木の葉に、微量の金が含まれていることが分かったという。

 ユーカリの木は、乾燥した地域で水を探すために地中深く根を張る。根は金を豊富に含む地層にも進入し、水分を吸い上げる際に微細な金属粒子を吸収する。研究チームは、ごく微量の金がユーカリの根に吸収され、木の内部を通って葉にまで到達することを明らかにしたという。

 業界団体ワールド・ゴールド・カウンシル(World Gold Council、WGC)によると、文明の始まり以来、地球から抽出された金の量は17万4000トン以上に及ぶ。米地質調査所(US Geological Survey、USGS)の2011年の推計では、世界の金の埋蔵量は5万1000トンとされている。

 金の価格は、2000年12月から今年3月の間に482%も急騰している。金の60%は宝飾品に使われるが、金は電子機器の重要な材料でもあり、がん治療などのための医療技術にも使用されている。

 研究チームは、豪州の南部と西部にある金の埋蔵地2か所で、ユーカリの木の葉・枝・樹皮と、腐葉土や土壌に金が含まれているかどうかを、X線画像を用いて調べた。

 高さが10メートル以上に成長することもあるユーカリの木は、地下にも非常に深く広い根系を持っており、地下40メートルに達したものも記録されている。

 金の濃度は、1トン当たり数百分の1から数千分の1グラムと極めて低いが、葉中の濃度が最も高いことを研究チームは明らかにした。「金はおそらく、植物にとっては毒であり、(葉などの)末端部位に移動されるのだろう」という。

 微量の金が植物で見つかったことはこれまでにもあったが、それらが吸収されたのか、風でそこに吹き飛ばされてきたのかは明らかになっていなかった。

 今回の最新の調査結果により、金鉱脈探査の精度を高め、持続的な金の供給を可能とする新技術の開発への機運が高まったと、論文の著者らは記している。(AFPBB News 2013年10月23日)


 ユーカリの木で金鉱探査
 ユーカリの木には金が含まれている。オーストラリアの研究者が、ユーカリの葉の中に、地下の金鉱脈に由来する金の粒子が存在することを確認した。

 ユーカリの根は、乾燥した土地で水を求めて地下40メートル以上深く伸びることがある。

 ユーカリの葉の中に見つかる金の粒子が、風で運ばれてきて付着しただけなのか、実は地下の金鉱脈から吸い上げられてきた成分なのかについては、研究者の間でも長く論争の種となっていた。このほど、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)地球科学資源工学局のメルビン・リンターン(Melvyn Lintern)氏が率いる研究チームが、この論争に決着を付けた。

 金は1オンス(約28.3グラム)で1300ドル(約13万円)以上する。そのため研究チームは、鉱山業者がこの研究結果に強い関心を抱くかもしれないと考えている。新しい金鉱の発見は、過去10年で約45%減少している。

 「発見される金鉱が減り、金鉱石の品質が低下し、金の需要が高まっているにもかかわらず、ある種の樹木の深く根を張る力を利用する金鉱脈の新しい探査技法は、ほとんど報告されてこなかった」と研究論文には書かれている。


 調査の方法・結果
 研究チームは、西オーストラリア州で、金の探鉱場所に生えているユーカリの葉と、そこから800メートル離れた場所のユーカリの葉を比較した。また、温室で、金の粉を混ぜた土と、金を含まない普通の土を使ってユーカリの木を育てた。

 ユーカリの木の中でも、とくに葉に、平均直径約8マイクロメートルの金の微細な粒子が多く蓄積していた。研究チームは、この粒子は地下に由来するもので、おそらく根系により吸い上げられたと推測している。木の下に金があるかどうかを統計的に明らかにするには、約20枚の葉を調べる必要があった。

 「金はおそらく植物にとって毒であるため、有害な生化学的反応を抑えるために、末端(葉など)か、細胞内の特別な領域に運ばれる」と、研究チームは結論づけている。

 しかし、急いでユーカリの葉を財布に詰め込むのはやめたほうがいい。ユーカリの葉に含まれる金の平均蓄積量は、わずかに約46ppb、つまり葉の重さの0.000005%以下にすぎない。

 それでもユーカリの木は、金鉱を掘り当てようとしている人にとって、手がかりとして、これまでよりも安価で優れた手段になるかもしれない。とくに、広範囲の試掘では見逃されてしまう小さな金鉱には有効だろう。植物の葉が地下に隠れた秘密を明かす仕組みを「利用し、理解すれば、鉱物探査の役に立つはずだ」と、研究チームは話している。

 この研究結果は、「Nature Communications」誌に10月22日付けで発表された。(Dan Vergano,National Geographic News October 23, 2013)


参考 National Geographic news:ユーカリの木で金鉱探査


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