カエルは鶏肉の味
 カエルというと食用になる。味は鶏肉ににてさっぱりとしている。フランス料理などの食材に使われるカエルは、ヨーロッパ原産のヨーロッパトノサマガエル。オスの体長は6cmから11cmでメスは5cmから9cmである。このカエルはヨーロッパコガタガエル Rana lessonae とワライガエル Rana ridibunda の種間雑種である。

 日本で「食用蛙」といえば、普通ウシガエルのことを指す。肉は鶏肉のささみに似ており、淡白で美味である。中国をはじめ、欧州など世界的には、カエルを食べることは特別なことではない。ただし、欧州の蛙食の歴史に於いて先駆的であったフランス人は、後続の国々から「カエル喰い」と揶揄を込めて呼ばれていた。

 現在でも英語で frog eater (フロッグ・イーター)やJohnny Crapaud(ジョニー・クラポー。クラポーは仏語でカエル)はフランス人に対する蔑称であり、 frog だけでフランス人を指すこともある。食べ方としてはソテーやパン粉焼きなどがある。


 ところが、イギリスのウィルトシャー州にあり、ストーンヘンジからもほど近い考古学の発掘現場から、明らかに何らかの形で調理された痕跡のあるカエルの骨が発見された。

 National Geographic news:http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20131108001


 1万年前から? 英で蛙食の証拠発見
 この骨のかけらはほぼ1万年前のものと見られる。「これはフランス最古の蛙食の記録よりもはるかに古い」と、発掘を率いたバッキンガム大学のデイビッド・ジェイクス(David Jacques)氏は言う。「フランスでカエルの脚が食べられていたことを示す最古の記録は、12世紀のカトリック教会の年代記に見られる」。

 人類による蛙食の歴史は謎に包まれている。しかしジェイクス氏は、狩猟採集民がカエルの仲間などの小動物を口にしていたとしても驚くには当たらないと言う。「当時は有用なタンパク源であり、(より大きな動物に比べれば)手軽に調理できる一種のファストフードであったことは、十分に考えられる」。

 では、つましい食材であったものが、やがて豪華な料理に使われるまでには、どうした経緯があったのだろうか。文献に残るレシピを見ると、遅くとも18世紀には、カエルの脚はフランスで高級料理に使われていたことが分かると、フランスのフードライターであるベネディクト・ボージェ(Benedict Beauge)氏は言う。だがそこに至るまでの経緯は解明が難しい。その理由のひとつは、数世紀前までは一般大衆向けのレシピ本などほとんど存在しなかったためだ。


 イギリス人はカエルを好まない? 
 イギリス人はカエルを好まないとの評判は、広く理解されている。イギリス人のアラン・デイビッドソン(Alan Davidson)氏は、『Oxford Companion to Food(オックスフォード食物必携)』の中で、カエルは「イギリス人にとっては、フランスの食生活の中枢をなすものと見なされている」と書いている。

 また「蛙食がなぜ特にイギリスで忌避されているのかは、やや不思議である。カエルの見た目が(人間にとって)醜いことが関係している可能性もあるし、カエルはヌルヌルしていて悪臭ただよう沼地に住んでいるといったイメージのせいかもしれない」とも書いている。

 フランスで出された『ラルース料理大辞典』にも、イギリス人の蛙食忌避が反映されている。カエルの脚は「通常、イギリス人には吐き気を催させる」と書かれているのだ。

 それでも、イギリスでも蛙食が好んで行われていたことを示す記録もいくつかは存在する。


 イギリス人もカエルを食べていた
 たとえば、17世紀イングランドの料理人ロバート・メイ(Robert May)による料理本『The Accomplisht Cook(料理名人)』には、生きたカエルを使ったパイのレシピが掲載されている。この料理は「大いなる歓喜をもたらし」、ご婦人がたを「小躍りして叫びださんばかりに」すると説明されている。

 『ラルース料理大辞典』でも、19世紀のフランス人シェフ、ジョルジュ・オーギュスト・エスコフィエのイギリスでの逸話を紹介している。ロンドンのカールトン・ホテルで当時のイギリス皇太子の料理を担当したエスコフィエは、「暁のニンフの腿(cuisses de nymphes aurore)」と称してカエルの脚を出すことに成功したという。

 考古学者のジェイクス氏はもちろん、自身の発見が、蛙食の起源はフランスかイギリスかという次元の話であるとは考えていない。「むしろ、中石器時代にイギリスに住んでいた人々はすべてフランスとその周辺地域にルーツを持っているということも考慮すべきだ」とジェイクス氏は言う。

 またジェイクス氏は、かつてイギリスはヨーロッパ本土と陸続きであり、紀元前5500年頃に大陸から分離したのだとも指摘する。「今回のことは、“英仏和親協商”のチャンスと見るべきかもしれない。当時は私たちもみんなフランス人だったのだ!」(Catherine Zuckerman,National Geographic News November 8, 2013)


フランス 地方のおそうざい―かんたんレシピと地方のワイン
クリエーター情報なし
柴田書店
いちばんやさしい フランス料理
クリエーター情報なし
成美堂出版

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please