ハビタブルゾーン(HZ)とは何か?
 ハビタブルゾーン (HZ) とは、惑星がその表面に液体の水を持つ、恒星の周囲の理論上の空間である。液体の水は地球の全ての生態系にとり不可欠だとみなされており、エネルギー源の次に、生命の最も重要な要素だと考えられている。

 太陽と地球との距離1億5千万kmの距離が、水が液体で循環するちょうどよい距離とされ、この距離をもとにハビタブルゾーンが決められている。

 ただ、これは水に依存する種にたいする偏見であるかもしれず、もし水を必要としない生命が存在し得る(例えば、代わりに液体のアンモニアを利用できる)なことが発見されれば、HZの考えは大幅に拡張される。

 2013年10月23日、確認された太陽系外惑星の発見数が一気に1010を数えた。そのうち、12の惑星がハビタブルゾーン(水が存在する領域にある)にあるという。


 ところが太陽系外惑星の気候を分析したところ、天の川銀河の生命居住可能な惑星の数は、従来予想の半分近くしかないとする研究結果が発表された。新たな3Dコンピューターモデルを用いた気候分析によって、系外惑星はこれまで予想されていたより高温である可能性が明らかになったためだ。


 生命が存在しうる惑星、予想の半分?
 過去20年の間に、恒星の周囲を公転する惑星が多数発見されており、その一部に我々の知るような生命が存在するのではないかという期待が高まっている。地球では、液体の水があるところにはほぼ必ず生命が存在するため、地球外生命の探査は、恒星のいわゆる“ハビタブルゾーン”(生命居住可能領域)内にある惑星に的を絞って行われている。ハビタブルゾーンとは、惑星温度が高すぎず低すぎず、液体の水の海が存在するのに適しているとされる領域だ。

 NASAの宇宙望遠鏡ケプラーがこれまで発見した惑星に基づく最新予測では、約22%の太陽型恒星のハビタブルゾーン内に、地球サイズの岩石惑星が存在する可能性があるという。天の川銀河には約1000億個の恒星が存在するため、この銀河には220億個もの地球型惑星が存在しうる計算になる。

 ただしこの数字はあくまで、太陽型恒星のハビタブルゾーンを、恒星から0.5~2天文単位(AU)の範囲と定義した場合の話だ。1AUは太陽と地球の平均距離で、約1億5000万キロに相当する。

 一方、パリにあるピエール・シモン・ラプラス研究所の天体物理学者ジェレミー・ルコント(Jeremy Leconte)氏が指揮した今回の系外惑星の大気分析では、太陽型恒星のハビタブルゾーンの内縁は恒星から約0.95AU(1億4500万キロ)で、0.5AUの推定距離より遠いとする結果が出た。

 これに基づくと、天の川銀河に存在する地球型惑星の数は、先に挙げた予測の半分近くに減る可能性がある。


 より複雑な新モデル
 系外惑星の気温を予測する従来モデルでは、基本的に惑星を単なる点、恒星から反射または吸収する熱量を平均した1次元の物体として扱っていた。しかし今回の研究では、3次元の気候モデルを用いることで、空気の流れなどの詳細な要素を取り入れることが可能になった。

 今回のモデルが分析した要素の1つは、熱を吸収する水蒸気だ。惑星があまりに恒星に近いと、惑星表面の水が大量に蒸発することで惑星気温が上昇し、結果的に水がすべて蒸発してしまうため、惑星表面には我々の知るような生命は存在できなくなる。この“暴走温室効果”は、過去に太陽系の金星で発生したと考えられているものだ。

 これまでは、水蒸気の雲が恒星からの熱を反射することで、惑星気温を下げていると考えられてきた。ところが最新モデルで分析したところ、一部の雲は熱を逆に吸収し、系外惑星の気候を不安定にしている可能性が明らかになった。惑星表面に近い雲はたしかに熱を反射するのだが、高高度にある雲は温度が低いため、かえって一部の熱を吸収し、外へ逃がしにくくするとルコント氏は述べる。


 雲に関するこれらの新たな知見は、惑星がこれまで考えられていたよりはるかに暴走温室効果を起こしやすい可能性を示唆しているが、一方で最新モデルは、気候の安定化を助けるその他の要素の存在も明らかにした。

 例えば、大気は暖かく湿った空気を、熱帯地域から極地の寒冷地域へと移動させる。「これらの地域は惑星の気候の安定化にとって重要であり、暴走温室効果の発生を防ぐ」とルコント氏は言う。


 今後の研究
 研究チームは今後、3Dモデルがハビタブルゾーンの外縁についても、従来と異なる予測を示すのかを調べる計画だ。太陽型恒星の周囲を地球サイズの惑星が公転しているハビタブルゾーンの外縁は、現在のところ恒星から1.7~2AUの距離にあると推定されている。「3Dモデルが示す空気の循環によっては、水が凍らない恒星からの限界距離は、従来考えられていたより遠い可能性がある」とルコント氏は話す。

 研究チームはそのほか、地球が属する太陽系とは異なる惑星系の気候についても研究を進められる。例えば、小さい恒星の周囲を回る惑星では、自転と公転が同期して、恒星に対して常に同じ面を向けている可能性が考えられる。

 「その場合、地球の周囲を公転する月のように、常に恒星のほうを向いている昼の側と、常に夜の側とが存在することになる」とルコント氏は述べる。「このことは、大気の循環や雲の位置に大きな変化をもたらす」。

 今回の研究成果は、「Nature」誌オンライン版に12月11月付で発表された。(Charles Q. Choi for National Geographic News December 12, 2013)


 ハビタブルゾーンの2つの条件
 ハビタブルゾーン(HZ:habitable zone)とは、宇宙の中で生命が誕生するのに適した環境と考えられている天文学上の領域。日本語では「生命居住可能領域」と呼ばれる。"安定した"HZとは2つの条件を意味する。

 一つ目に、HZの範囲が長期にわたって変わらないこと。全ての恒星は年をとるごとに光度を増し、HZも自然に外側に移動していくが、これがもし急激に起こる(例えば、大質量の恒星)場合、惑星はHZの中に短い間だけしか居られないかもしれず、生命の誕生する機会もそれ相応に少なくなるかもしれない。HZの範囲と長期間の移動を計算するのは、炭素循環のような負のフィードバックループが光度の増加を打ち消す傾向もあることから、簡単なことではない。大気の状態と地質学により作られた仮説は、恒星の進化によるHZの範囲の推定に大きな影響を持っている。例えば、これまで提案されてきた太陽のHZの値は、説によりそれぞれ大きく異なっている。

 二つ目に、地球型惑星の形成を妨げる木星のような巨大惑星が、HZに近い領域に存在しないこと。例えば小惑星帯の物質は、木星の軌道との共鳴により、惑星を形成することができなかったためのように見える。もし巨大惑星が今の金星と火星の間の軌道に存在していたら、地球は当然今のような形に育たなかっただろう。ただしこの条件は、HZの巨大ガス惑星は適切な条件にあれば居住可能な衛星を持つかもしれない、という提案によりいくらか改善される。

 かつては太陽系の構造から、内側は地球型の岩石惑星、外側は木星型や天王星型の巨大惑星というパターンが他の恒星でも標準だろうと考えられていたが、太陽系外惑星の発見によりこの考えはひっくり返されることになった。多数の巨大惑星が、主にHZの可能性を妨げる中心の恒星に近い軌道で発見された。ただ、現在提示されている太陽系外惑星の情報は、識別がはるかに容易な、恒星に近い、あるいは離心率の高い(楕円の)軌道を持つ巨大惑星に偏っているとみられ、どの種類の恒星系が標準であるのかはまだ判っていない。

 発見された系外惑星の中には、非常に恒星に近い軌道を回っているため、HZに大きな影響を与えないと考えられているものもある。このようなケースでは巨大惑星の外側を居住可能な地球型惑星が周回するという、太陽系とは全く逆の形態の惑星系が存在するかもしれない。(Wikipedia)


参考:Wikipedia: ハビタブルゾーン National Geographic news: 生命が存在する惑星、予想の半分


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