合成ダイヤモンド
 ダイアモンドは、地球内部の非常に高温高圧な環境で生成される。1797年にダイヤモンドが炭素のみで構成されている事が発見されると、科学者らは安価な炭素材料を用いてダイヤモンドの合成を試みた。1879年から1928年にかけて、人工ダイヤモンドの合成が試みられたが、全て失敗している。

 1940年代には、アメリカ合衆国、スウェーデン、そしてソビエト連邦が化学気層蒸着(CVD)法と高温高圧合成(HPHT)法を用いたダイヤモンド合成を体系的に研究し始め、1953年頃に最初の再現可能な合成方法を発表した。現在はこの2つの方法で主にダイヤモンドは合成されている。

 合成ダイアモンドの再現に貢献したのが、1946年ノーベル物理学賞を受賞した、パーシー・ウィリアムズ・ブリッジマン(Percy Williams Bridgman)である。



 受賞理由は「超高圧装置の発明と高圧物理学の研究」。ダイアモンド合成に必要な超高圧圧縮機を発明した。1951年にニューヨーク州のスケネクタディ研究所で、トレイシー・ホール率いる高圧合成ダイヤモンド研究チームが結成され、この研究所でダイヤモンドアンビルセルが、パーシー・ブリッジマンによって設計・改善された。

 現在、限りなく無色透明に近いダイヤモンドも合成されており、宝石としても使用される。合成された宝石と同等の価値をもつダイヤモンドは化学的、物理的、光学的にも天然ダイヤモンドと同一またはそれ以上の性質を有する。

合成ダイヤモンド宝石の台頭により、天然ダイヤモンドの取引企業は市場を守る為に、様々な対策を講じている。赤外線や紫外線、X線によるスペクトル分析で天然ダイヤモンドがどうか識別できる。デビアスが開発した分析装置では、蛍光紫外線を用いて合成ダイヤモンドに含まれる窒素、ニッケルや他の金属の不純物を検出できる。


 パーシー・ブリッジマン
 パーシー・ウィリアムズ・ブリッジマン(Percy Williams Bridgman、1882年4月21日~1961年8月20日)はアメリカの物理学者である。高圧の研究で、1946年ノーベル物理学賞を受賞した。受賞理由は「超高圧装置の発明と高圧物理学の研究」である。

 ブリッジマンは、1882年マサチューセッツ州ケンブリッジに生まれた。1900年にハーバード大学に入り、物理を学んだ。1910年から教官を務め、1919年教授になった。1905年から高圧下の物質の性質の研究を始め、高圧装置の改良を行った。

 当時の装置が300MPaの圧力しか発生できなかったのに対して10GPa以上の高圧を出すことのできる装置を発明した。液体自体の圧力を用いてシールする方法も開発し、ブリッジマン・シールと呼ばれる。

 開発した高圧装置を使って、高圧下の物質の電気抵抗などを研究した。また単結晶を成長させる方法をタンマンと別に開発しブリッジマン法と呼ばれる。科学哲学の分野で、「操作主義」と呼ばれる科学観の提唱者としても知られる。世界平和に関してラッセル=アインシュタイン宣言に署名した11人の科学者の1人である。

 1950年にはヒギンス教授職に就き、54年には退職して名誉教授となる。その後、不治の病に苦しみ、61年8月20日、ニューハンプシャーのランドルフの自宅で自ら命を絶つ。享年79歳。


 ブリッジマンの業績
 ハーバード大学において、ブリッジマンは卓越した実験家として活躍した。工作機械の扱い、ガラス細工の腕前も抜群であった。静的高圧下での彼の研究は1908年に始められ、初めは6500気圧付近の圧力に限定して行われた。

 その後、その圧力を10万気圧以上にまで拡張し、最終的には40万気圧にまで達した。この研究分野は彼以前には未開拓であったため、実験装置の大部分を自分で作成した。

 彼の行った発見の最も重要なものは、ガスケット内の圧力が、圧力をかけられている流体のよりも常に大きくなるように調節する、特殊な型の密閉法である、超高圧圧縮機の発明がある。

 この実験装置なしでは彼の高圧実験不可能であったと思われる。

 これら、超高圧圧縮機の発明および、これを用いた高圧物理学上の発見の功績に対して、ノーベル物理学賞が贈られた。

 また、人工ダイヤモンドの合成も手がけ、55年に成功、彼の実験技術によっておびただしい数の鉱物結晶が合成されるようになった。また、高温高圧研究における新しい地質学の流派が形成された。著書には「高圧物理学」、また科学哲学の分野では、「現代物理学の論理」などがある。


 人工ダイヤモンド合成の試み
 1797年にダイヤモンドが炭素のみで構成されている事が発見されると、科学者らは安価な炭素材料を用いてダイヤモンドの合成を試みた。1879年にジェームス・バランタイン・ハネイ(英語版)が初めて合成に成功し、1893年にアンリ・モアッサンも続いて合成している。

 彼らの方法は、炭素を含む鉄製のるつぼに木炭を3500°Cまで加熱し合成させる方法であった。ハネイは炎熱管を用いたが、モアッサンは新しく改良したアーク炉を使用した。溶融した鉄は水に浸すと急激に冷やされ、恐らくその鉄が凝固した際に発生した体積の収縮が、黒鉛がダイヤモンドに変化するのに十分な高い圧力を発生させたのではないかと考えられた。モアッサンは1890年代に研究論文を発表している。

 但し、当時の実験を再現しても温度や圧力が足らず、モアッサンが行った実験と同等の結果は得られないとされており、同じ作業を延々と繰り返され根が尽きた助手が実験を切り上げるようにダイアモンドの粒を混ぜたのではないか、という説が存在する。

 多くの科学者がモアッサンの実験を再現しようと試みた。ウィリアム・クルックス卿が1909年に成功し、またオットー・ルフが1917年に直径7mmまでに成長したダイヤモンドを合成したと報告したが、後にそれを撤回している。マクファーソン大学(英語版)のウィラード・ハーシー博士はモアッサンとルフの実験を再現しダイヤモンドを合成させた。その試料はアメリカ・カンザス州のマクファーソン博物館(英語版)に展示している。しかし他の実験者は、3人の実験方法を試しても合成することが出来なかった。

 蒸気タービンを発明したことで知られる技術者のチャールズ・アルジャーノン・パーソンズ卿が最も信頼できる合成方法を確立させた。彼は40年の歳月と財産の大部分を費やし、ハネイとモアッサンの実験を行ったが、結果的には彼独自の合成方法を編み出した。

 彼は労を惜しまず研究を続け、几帳面に実験結果を記録していた。現在彼が作成した全ての試料はさらなる分析を行う為に保存されている。また彼は高温高圧合成法を用いて小さなダイヤモンドの合成に成功し、それに関する多数の論文を書き上げた。

 しかし、モアッサンやパーソンが行った全ての実験ではダイヤモンドは合成できないと明言した論文が、1928年にC.H.デッシュ博士により発表された。デッシュは、当時合成されたとされるダイヤモンドの多くは合成スピネルと類似した物質であろう、と推測した。


 GEダイヤモンド計画
 1941年にダイヤモンド合成のさらなる改良を目指して、ゼネラル・エレクトリック(GE)社、ノートン社、カーボランダム社の3社合同で研究を始めた。彼らは数秒間の3.5GPaの圧力下で3000°Cまで炭素を加熱させるのに成功したが、その後の第二次世界大戦により計画を中断せざるを得なくなった。

 1951年にニューヨーク州のスケネクタディ研究所で再開し、トレイシー・ホール(英語版)率いる高圧合成ダイヤモンド研究チームが結成された。

 この研究所のダイヤモンドアンビルセルが、1946年にノーベル物理学賞を受賞したパーシー・ブリッジマンによって設計・改善された。

 GEは炭化タングステン(英語版)製アンビルを用いて、、カトリナイト(英語版)の容器に入れた試料に圧力をかける方法を使用した。偶然にもその方法でダイヤモンドが合成されたが、再現性は得られなかった。後にそのダイヤモンドは結晶核として用いられた天然ダイヤモンドと判明した。

 ホールはベルトプレス型アンビルを用いて、1954年12月16日に最初の商業的な合成ダイヤモンドを完成し、1955年2月15日に公表された。このベルトプレス型アンビル内では温度2000°C以上、圧力10GPa以上の状態を作り出すことができ、溶融したニッケル・コバルト・鉄で溶解したグラファイトを葉ろう石の容器に入れ使用する。融解した金属は"触媒"のような役割を果たし、グラファイトを溶かすだけでなく、ダイヤモンドへ変化させる速度を上げている。

 彼が合成した最大のダイヤモンドは直径0.15mmで、それはあまりにもサイズが小さく宝石としては不完全なものであったが、工業用研磨材として利用できる。ホールの同僚たちもダイヤモンドを合成することに成功し、研究結果を科学専門誌ネイチャーに掲載した。ホールは再現・証明可能なダイヤモンド合成を行い、また十分な裏付けのある合成過程を創出した人物となった。

 彼は1955年にGEを退社、3年後新しくダイヤモンド合成用のアンビルを開発し、これまでの研究成果を讃えられアメリカ化学会賞を受賞している。(Wikipedia)


参考 Wikipdeia:合成ダイアモンド バーシー・ブリッジマン ノーベル賞受賞者業績辞典:日外アソシエーツ(新訂第3版)


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