世界で3番目の偉業
 嫦娥3号は、中国の月探査計画嫦娥計画に基づく月探査機。ランダーと月面ローバーからなる探査機。2013年12月2日1時30分 (CST) に打ち上げに成功、12月14日21時11分 (CST) に月面への軟着陸に成功した。

 中国の月探査において初めて月面軟着陸を達成した探査機で、この着陸は1976年のソ連のルナ24号ミッション以来となる37年ぶりのものであった。嫦娥3号の成功により、中国は旧ソ連、アメリカに続き、月面軟着陸を成功させた3カ国目の国となった。

 日本はといえば、国際宇宙ステーション(ISS)への参加や小惑星探査機「はやぶさ」の計画では実績があるが、有人宇宙飛行には本格的に着手していない。安倍政権は宇宙開発に力を入れており、14年度の予算請求額を前年度から446億円増やし、3666億円とした。しかし、アメリカは約4兆5000億円でロシアが約4900億円、中国も推定3900億円であることを考えれば、充分とは言えない。


 宇宙開発の技術で日本が世界トップレベルであることは、中国の軍事台頭に対する抑止力になる上に、月には核融合発電の燃料として期待される「ヘリウム3」やチタンなどの鉱物資源が多く、資源開発という意味でも有効な投資と言える。日本の未来産業を開き、日本や世界の安全を守るためにも、月や火星の探査計画、さらには有人宇宙飛行の実現に向けて、宇宙戦略を立てていくべきだろう。 

 着陸船(ランダー)は、月の赤道付近にある虹の入江地域に着陸するよう計画された。重量は約1,200kgで、着陸後は3ヶ月間にわたって科学観測を行う予定。 14日間も続く月の夜の期間も活動できるように、プルトニウム238の崩壊熱を利用する放射性同位体熱電気転換器 (RTG) を電力源として搭載している。

 米露以外に宇宙機でRTGを使用するのは中国が初めてとなる。 ランダーは7種類の装置を搭載し、その1つであるの天体望遠鏡では世界初となる月面からの天体観測を実施する。 


 中国月面着陸までの37年の空白
 中国の月面探査車、玉兎号が着陸した地域「虹の入り江(Sinus Iridum)」。 (Map by NG. Source: NASA/JPL/USGS)

 中国の無人月探査機、嫦娥(じょうが)3号が現地時間12月14日、月面軟着陸に成功した。月に探査機が軟着陸するのは実に37年ぶりのことだ。

 嫦娥3号に搭載され、現地時間12月2日に打ち上げられた月面探査車の玉兎(ぎょくと)号は今後、写真を撮影し、月の表面を調査し、2つの望遠鏡で観測を行う予定だ。

 ロケット補助による軟着陸を成功させ、重量100キロの探査車を月面に送り込んだ中国は、ソ連(現ロシア)、アメリカに次いで、月面に宇宙船を軟着陸させた3番目の国となった。

 それ以前に月面軟着陸が行われたのは1976年、月の石を地球に送った旧ソ連のルナ24号が最後だ。その4年前の1972年には、アポロ17号が現時点で最後となる月への有人飛行ミッションを行っている。アメリカにとっては、これが現時点で最後の月面軟着陸でもある。

 それ以来なぜ、ロシアやアメリカは月面着陸を行っていないのか? そしてなぜ、最後の着陸からこれほど間があいたのか?

 「簡単な答えは、再び月へ行くだけの十分な科学的理由がなかったからだ」と宇宙政策の専門家で、『John F. Kennedy and the Race to the Moon』(ジョン・F・ケネディと月着陸競争)の著者ジョン・ログスドン(John Logsdon)氏は述べる。「そして今もおそらく十分な理由はない」。

 NASAのアポロ計画は、合計382キロの月の石を地球に持ち帰った。その分析結果は月の年齢に関する疑問解明に役立ち、現在では、月は約45億年前に地球と火星サイズの天体が衝突して誕生したと考えられている。

 またこれらのミッションは、人間を月に送り込むのは費用と危険を伴うことを証明した。特に、危うく死者を出すところだった1970年のアポロ13号の事故後、当時のアメリカ大統領リチャード・ニクソンは慎重になり、既に1972年の再選後には宇宙開発予算を削減することを考えていたとログスドン氏は述べる。


 月を目指す中国
 
「そもそも月は地球から遠く、人類にとって明確な短期的利益はない」。北京にある中国科学院国家天文台の宇宙科学者、鄭永春(Yongchun Zheng)氏は電子メールでの取材に対してこのように述べる。

 しかし、中国にとって「月探査計画は、国家の科学目標にのっとったものだ。その目標とは、月、地球、および太陽系の歴史を解明し、その未来を予測することだ」と鄭氏は述べる。

 今回の月面軟着陸は、中国が10年以上前から取り組んできた月探査計画の集大成だ。中国はこれまでに2007年と2010年の2度、探査機を月周回軌道に投入することに成功している。

 またこの10年間に、中国は有人宇宙飛行も成功させており、無人宇宙実験室との有人ドッキングを行うなど、アメリカとロシアが40年前に宇宙開発史に刻んだ足跡を後追いしている。

 「こうした取り組みが当然行き着く先は、入念な計画のもと、いずれ人間を月面に降り立たせることだろう」と、NASAの元職員で、ワシントンD.C.にあるジョージ・ワシントン大学のスコット・ペース(Scott Pace)氏は述べる。


 新たな月着陸競争
 
中国が探査機を月に送り込む10年ほど前から、世界各国の宇宙機関は再び月に関心を向け始めている。1994年にアメリカ空軍とNASAの月探査衛星クレメンタインが打ち上げられ、月に凍った水が存在する可能性を示すレーダー実験の結果を報告したことが大きなきっかけとなり、近年になって月面への関心が再燃しているのだ。

& 2010年には、NASAの観測機エルクロス(LCROSS:Lunar Crater Observation and Sensing Satellite)ミッションが、2度にわたる月面への“硬着陸”を行った。観測機とその上段ロケットを、わざと月面に衝突させて塵を舞い上がらせるというもので、衝突の結果、月の南極域にある日光の当たらないクレーターの下に、氷が隠れていることが確認された。

 この発見は、アメリカの次なる有人宇宙飛行計画をめぐる議論に影響を与え、将来のミッションで月の水を採掘するべく、アメリカとカナダはリゾルブ(RESOLVE:Regolith and Environment Science and Oxygen and Lunar Volatile Extraction)という月探査ローバーの共同開発を進めている。また、ビゲロー・エアロスペース社のロバート・ビゲロー(Robert Bigelow)氏のような民間宇宙起業家は、月コロニーの建設を促進するため、“月の採掘権”を与えるよう求めている。

 そのほか「グーグル・ルナー・エックスプライズ」では、目下10以上の民間チームが賞金4000万ドル(約41億円)をかけて争っている。同レースは、2015年までに月面に無人探査機を着陸させ、月面を500メートル以上移動させられるかを競うものだ。

 中国の玉兎号は、現地時間12月15日には月面に無事上陸し、その点ではひとまずエックスプライズの参加チームに“勝利”した。

 「月は宇宙開発の新興国や民間企業にとって、困難ではあるが達成可能な目標だ。そこで当然、地球低軌道の次は月を目指すことになる」とジョージ・ワシントン大学のペース氏は述べる。

 「月の周回軌道を回るのは、軟着陸よりはるかに簡単だ。ましてや月面に探査機を走らせることに比べれば」というペース氏の言葉は、新たな探査機が月面に降り立つまでこれほど年月がかかった理由を十分に説明している。(Dan Vergano for National Geographic News 2013.12.16)


 日本は宇宙計画の練り直しを
 中国の無人月探査機「嫦娥(じょうが)3号」が14日夜に、月面への軟着陸に成功した。着陸地点は、月の北半球で地球からも見える「虹の入り江」と呼ばれるクレーター。今後、月面の探査車「玉兎(ぎょくと)号」が、地形や地質構造のデータを収集する。

 月への着陸に成功したのは、米国、旧ソ連に続いて3カ国目。中国は「月の資源開発」など科学的な目的を掲げているが、「軍事目的」というのが中国内外の見方だ。それは、今回の衛星を打ち上げた西昌衛星発射センターが人民解放軍の施設であることからもうかがえる。

 複数の中国メディアは、「誘導技術は非常に先進的で、ミサイル開発に応用できる」など中国の専門家のコメントを報じているほか、海外メディアも、「科学技術目的なのか、月の軍事基地建設の一歩なのか」(10日付Fox News電子版)と報道。「中国が、月を『デス・スター』(映画「スター・ウォーズ」に出てくる宇宙軍事要塞)化するのではないか」などと懸念する声が上がっている。

 中国は、2012年に中国版GPSの運用を始めており、20年には宇宙ステーションの独自運用を計画している。一方で、アメリカやロシアは、長年にわたって財政問題などで宇宙開発が停滞しており、最近になって両国大統領が再び宇宙開発に力を入れはじめたところだ。

 日本はといえば、国際宇宙ステーション(ISS)への参加や小惑星探査機「はやぶさ」の計画では実績があるが、有人宇宙飛行には本格的に着手していない。安倍政権は宇宙開発に力を入れており、14年度の予算請求額を前年度から446億円増やし、3666億円とした。しかし、アメリカは約4兆5000億円でロシアが約4900億円、中国も推定3900億円であることを考えれば、充分とは言えない。

 宇宙開発の技術で日本が世界トップレベルであることは、中国の軍事台頭に対する抑止力になる上に、月には核融合発電の燃料として期待される「ヘリウム3」やチタンなどの鉱物資源が多く、資源開発という意味でも有効な投資と言える。日本の未来産業を開き、日本や世界の安全を守るためにも、月や火星の探査計画、さらには有人宇宙飛行の実現に向けて、宇宙戦略を立てていくべきだ。(The Libertyweb 2013.12.16)


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