首都直下地震 死者2万人超も
 都心の直下でマグニチュード7クラスの地震が起きた場合、死者は最悪で2万3000人、被害額は95兆円と国の年間予算に匹敵するという首都直下地震の新たな被害想定を国の検討会が公表した。

 検討会は、犠牲者を減らす耐震化や火災対策を進めるとともに首都の中枢機能を維持するための対策が必要だと指摘している。

 東日本大震災を教訓に国が設けた専門家などの検討会は、南海トラフの巨大地震に続いて首都直下地震についても、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震を検討し、被害想定と対策を8年ぶりに見直した。

 首都圏を中心に震源の場所を変えて27の地震を検討し、このうち首都中枢機能への影響が大きいと考えられる都心南部の直下でマグニチュード7.3の大地震が起きた場合の被害想定をまとめた。


 それによると、地震の揺れは東京・中央区や新宿区など都心を中心に、神奈川、千葉、埼玉の4つの都県で震度6強以上になるところがあるとされた。

 冬の夕方、風が強い最悪の場合、揺れと火災などで、全壊または焼失する建物は61万棟に上り、死者は2万3000人、けが人は12万3000人、救助が必要な人は5万8000人とされた。

 また電気や上下水道などライフラインや交通への影響が長期化し、都心の一般道は激しい交通渋滞が数週間継続するほか、鉄道も1週間から1か月程度運転ができない状態が続くおそれがあるとしている。

 被害額は、建物が壊れるなど直接的な被害は42兆円余り、企業の生産活動やサービスが低下する間接的な被害は48兆円近くで、合わせて95兆円と国の年間予算に匹敵するとした。

 一方で、建物を耐震化して火災対策を徹底すれば、死者の数は10分の1の2300人に減らせると対策の効果も示した。

 首都の中枢機能については政府機関を中心に耐震化や非常用電源などハード面の対策は取られているとしたものの、夜間や休日に地震が発生すると激しい交通渋滞などで通勤が困難になるため、要員を確保するなどの対策が必要だとしている。

 政府は、報告書を基に来年3月までに、防災対策の基本方針「大綱」とそれを進めるための具体的な計画や戦略を作ることにしている。


 古屋大臣「政府一丸で防災活動進める」
 検討会の報告を受けて古屋防災担当大臣は、想定や対策を取りまとめた専門家と共に記者会見を開いた。この中で、首都直下で起こりうる地震について取りまとめた東京大学名誉教授の阿部勝征さんは「今回、新たな科学的知見を取り入れて地震の規模を見直したがマグニチュード7クラスの直下型地震はどこでも発生する可能性があり、建物の耐震化を進めていくべきだ。

 また関東大震災のように相模トラフで起きるマグニチュード8クラスの巨大地震はすぐに発生する可能性は低いが、長期的な視点で迎え撃つ必要性がある」と指摘した。

 また、被害想定や対策を取りまとめた検討会の主査で元総務大臣の増田寛也さんは「想定外を減らすという使命を果たすため、これまで検討されなかった深刻な交通まひや停電などの影響も盛り込んだ。地震によって国家の司令塔が失われる可能性もあるので、政府として業務継続計画を作ることが非常に重要だ。夜間の発災を想定して非常参集訓練を行うなど、実効性のある対策を進めてほしい」と述べた。

 報告を受けて古屋防災担当大臣は、「政府としても、地震防災対策大綱の策定を進めるとともに交通まひなどの具体的な検討を始めたい」と述べたうえで、「今回の報告をきっかけに、個人や企業、政府一丸となって命とまちと社会を守るための防災活動、いわば“防活”を進めていきたい」と呼びかけた。(2013年12月19日 NHK)


 M7級の首都直下地震被害想定 中央防災会議
 中央防災会議の作業部会は19日、発生が懸念されるマグニチュード(M)7級の首都直下地震の新たな被害想定を公表した。死者は最悪2万3千人で平成16年の前回想定から倍増し、経済被害は国家予算に匹敵する約95兆円と推計。関東大震災タイプのM8級の地震についても死者7万人と初めて想定し、首都の防災力向上へ対策強化を求めた。

 発生確率が30年以内に70%と高いM7級を防災の主眼とし、強い揺れや火災への対策を急ぐべきだと強調。相模トラフ(浅い海溝)で起きる関東大震災タイプの大正型関東地震(M8.2)は当面の発生確率は低いが、長期的に津波防災を進める対象とした。

 被害が大きくなる都心南部直下地震(M7.3)を新たに想定。東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県の広い範囲で震度強、東京湾岸の一部で震度7の強い揺れとなり、都区部で木造住宅の倒壊や火災が多発。最悪のケースで61万棟が全壊・焼失し、火災による死者は全体の7割の1万6千人に及ぶ。津波による被害は生じない。

 電力供給は半減し、道路や鉄道は深刻なまひ状態に。800万人の帰宅困難者、720万人の避難者が発生。中央官庁の庁舎は耐震化が進んでおり政府機能は維持できる見通しだが、復旧作業は長期化する。

 経済被害は95兆3千億円で、うち建物損壊など被災地の直接被害が47兆4千億円、生産・サービスの低下による全国への影響が47兆9千億円。交通寸断で生産活動が甚大な影響を受け、国際競争力の低下が懸念されるとした。

 電気関係の出火対策を徹底すれば死者は6割、被害額は7割に減らせるとして取り組みの強化を求めた。

 大正型関東地震は、津波による死者は1万1千人で神奈川、千葉両県に6~8メートルが押し寄せる。経済被害は160兆円と試算した。

 作業部会は東日本大震災の教訓を反映するため昨年4月、想定の見直しに着手。内閣府検討会と連携して最終報告をまとめた。これを受け政府は今年度中にも対策大綱を改定し、防災戦略の見直しを進める。

 相模トラフで最大級の地震はM8.7と算出したが、次に発生するとは考えにくいとして防災対象から除外。最大級のM9.1に備える南海トラフ巨大地震対策と対応が分かれた。(産経news 2013.12.19)


 首都直下型地震 企業のBCP対応進む
 政府の中央防災会議が12月19日、近い将来の発生が予想される首都直下地震の被害想定を、最大で死者2万3000人、経済損失95兆円と発表した。東日本大震災の発生以降、事業継続計画(BCP)の策定を進めてきた各企業は、東京からのリスク分散やバックアップ体制の拡充などを急いでいる。

 森ビルが今秋、東京23区に本社を置く大企業など約2100社を対象に行った調査では、BCPを策定済みの企業が52%に達した。業種別の比率では金融・保険業の75%が策定済みと高く、資金・決済機能の中枢を担う東京ならでの対応が進む。

 日本取引所グループは傘下の東京、大阪の両証券取引所がそれぞれ2カ所ずつデータセンターを持ち、1カ所が被害を受けても予備が機能する仕組み。日本銀行も東京の本店と都内に置くシステムセンターと、ほぼ同水準の体制を大阪に整備。りそな銀行も関東・関西の両方に耐震化したシステムセンターを持つ。

 一般企業も、地方が東京の本社機能を支える。ホンダは都内本社が被災した場合、埼玉県和光市の営業拠点に機能を移し、この拠点が機能しなかった場合、埼玉県内の工場に移すなど二重三重の体制をとる。

 災害時の通信対応では、NTTドコモが首都圏に保管する顧客管理システムを関西に分散したほか、スマートフォン(高機能携帯電話)用パケット通信設備を九州に置くなど、重要設備を分散させる。日立製作所は、データセンターを全国に分散、インターネットでどこからでもアクセスできる仕組みを構築した。

 避難者を受け入れる体制作りも進む。三菱地所は東京・丸の内などでの食料を備蓄するほか、東京・大手町で来年度、着工する複合施設に災害時の利用を想定した温泉施設を併設する。JR東日本は首都圏の約200駅で駅構内を一時滞在場所として提供する。

 ライフラインでは物流の確保も課題。セブン&アイ・ホールディングスは商品配送を確実にするため、ガソリンなどの燃料備蓄基地を埼玉県内に建設中で、来春の完成を目指す。味の素は在庫を分散して災害時のリスクを減らすため、埼玉県内に新たな物流センターを整備中、来年4月の稼働を目指している。

 技術面では東京ガスが、ポリエチレンなど耐震性の高いガス導管への交換を進めている。(産経news 2013.12.19 )


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