1947年ノーベル化学賞「アルカロイドの研究」
 1947年のノーベル化学賞はイギリスの科学者ロバート・ロビンソンに贈られた。受賞理由は「アルカロイド」の研究である。

 「アルカロイド」とは何だろうか?アルカロイド (Alkaloid) は窒素原子を含み、ほとんどの場合塩基性を示す天然由来の有機化合物の総称である。炭素、水素、窒素に加えて、アルカロイドには酸素や硫黄、その他稀に塩素、臭素、リンといった元素を含む。

 アルカロイドの最初の発見は、ドイツの薬剤師ゼルチュネルが1804年(1805年という記述もある)にアヘンから分離抽出したモルフィン、つまり「モルヒネ」であるとされている。現在、「アルカロイド」には近似種を含め約数千種があるといわれている。多くのアルカロイドはモルヒネのように薬理作用もあるが、他の生物に対して有毒だ。


 ロバート・ロビンソンが最初にあげた成果は、1917年に発表された「トロピノン」の全合成の報告であった。「トロピノン」(Tropinone)は、第一次世界大戦の際に毒ガス治療薬として不足した「アトロピン」の前駆体として有名な「アルカロイド」である。トロピノン、コカイン及びアトロピンは、全て同じトロパン骨格を持っている。

 第一次世界大戦では大量破壊兵器として毒ガスが大量に使用された。開発された毒ガスの種類は約30種に及んだ。米英独仏の4ヶ国で生産された化学剤の総量は、塩素が19万8千t、ホスゲンが19万9千t、マスタードガスが1万1千tとされる。うち12万4千t(化学砲弾など6600万発)が実戦使用された。英国国防総省によると化学兵器による両軍の死傷者は130万人、うち死者は9万人に上った。

 現在でも、サリンなど有機リンなどのコリンエステラーゼ阻害剤として作用する毒ガスに対して、抗コリン作用を有する薬物として「アトロピン」は使用される。地下鉄サリン事件での治療にも用いられた。米軍では神経ガスに曝露してしまった時に「アトロピン」を打つ事が規定されている。

 次にロビンソンの上げた成果が、1935年に発表された「ロビンソン環化反応(Robinson annulation)」である。この反応は、カルボニル化合物とα,β-不飽和ケトンが、酸または塩基を触媒として反応し、6員環のα,β-不飽和ケトンが生成する反応で、縮環した6員環を含むステロイドやテルペノイドの合成に重要な反応である。

 「アルカロイド」としては、1925年モルヒネ、1946年ストリキニーネの構造を解明した。また、ステロイドやフラボンと呼ばれる植物色素の研究も行った。1947年「アルカロイド」に関する業績に対しノーベル化学賞を贈られた。


 ロバート・ロビンソン
 ロバート・ロビンソン(Robert Robinson、1886年9月13日~1975年2月8日)はイギリスの化学者。イギリス学派に属する。 1912年からシドニー大学教授。1915年にイギリスに戻り、リヴァプール大学、ロンドン大学教授を経て1930年からオクスフォード大学教授を務める。1920年に王立協会のフェローに選出され、1945年から1950年まで王立協会会長。アルカロイドの研究により1947年にノーベル化学賞を受賞した。

 ロバート・ロビンソンは化学、特に有機化学の発展に大きく貢献した。彼は有機電子論を発展させた。1917年にトロピノンの全合成を報告、1935年にロビンソン環化を報告した。ストリキニーネ、ニコチン、モルヒネ等の構造決定に貢献し、抗マラリア剤の開発にも貢献した。

 ノーベル賞以外にも数多くの受賞歴がある。フランクリン・メダル(1930年)、ロイヤル・メダル(1932年)、コプリ・メダル(1942年)、フランクリン・メダル(1947年)、メリット勲章(1949年)、プリーストリー賞(1953年)など。

 1953年日本化学界創立75周年記念会に招かれて来日、「自然物の構造上の関係」などの講演を行う。熱心な登山家で、アルプスを含め欧州各国の山を登り、ニュージーランドの高峰もきわめる。また、チェスの大家でもあったためイギリスのチェス協会会長を務める。

 1975年グレートミッセンデンで死去。享年88歳である。彼のもとへは杉野原晴貞、菅沢重彦、漆原義之ら日本人化学者も留学した。


 複雑なアルカロイドの構造解明
 ロビンソンの有機化学おける広範な研究は、多くの複雑な有機物質の構造解明および合成のほか、有機反応の電気化学的メカニズムの研究にもおよんだ。

 植物色素「アントシアン類」の構造への興味から、植物成分とくにアルカロイドに関する合成が主体をなした。アルカロイドは植物中にある含窒素化合物で、その分子構造はかなり複雑な形に原子が輪を作って構成され、全体がもっとも複雑な1個の分子になっている。

 タンパク質やデンプンのような巨大分子の場合、小さな構成単位に分かれるので、その構造はアルカロイドよりずっと単純である。

 またアルカロイドは、少量でも動物体に対して強く作用し、毒にもなるが適量ならば興奮剤や鎮痛剤、そのほかにも利用価値があると考えられる重要な物質である。

 1925年モルヒネ、1946年ストリキニーネの構造を解明した。ストリキニーネについては、後にR・B・ウッドワード(1965年ノーベル化学賞受賞)によって合成、立証された。また、ステロイドやフラボンと呼ばれる植物色素の研究も行った。1947年、ノーベル化学賞を贈られる。受賞理由は「アルカロイドの研究」である。


 アルカロイドとは何か?
 アルカロイド (Alkaloid) は窒素原子を含み、ほとんどの場合塩基性を示す天然由来の有機化合物の総称である。一部のアルカロイドには中性や弱酸性を示すものもある。また、似た構造を有する一部の合成化合物もアルカロイドと呼ばれる。炭素、水素、窒素に加えて、アルカロイドは酸素や硫黄、その他稀に塩素、臭素、リンといった元素を含む。

 かつては植物塩基(英語: Plant base)という訳語も用いられた。この訳語が提唱されたのは1818年である。現在、近似種を含め約数千種があるといわれている。その元祖と言われているのは、ドイツの薬剤師ゼルチュネルが1804年(1805年という記述もある)にアヘンから分離抽出したモルフィン、つまりモルヒネであるとされている。

 アルカロイドは、微生物、真菌、植物、動物を含む非常に様々な生物によって生産され、天然物(二次代謝産物とも呼ばれる)の中の一群を成している。多くのアルカロイドは酸塩基抽出によって粗抽出物から精製できる。多くのアルカロイドは他の生物に対して有毒である。しばしば薬理作用を示し、医薬や娯楽のための麻薬としてや、幻覚儀式において使用される。

 アルカロイドとその他の窒素を含む天然化合物との境界は明確ではない。アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ヌクレオチド、核酸、アミン、抗生物質のような化合物は通常アルカロイドとは呼ばれない。環外の位置に窒素を含む天然化合物(メスカリン、セロトニン、ドパミン等)は、通常アルカロイドよりもアミンと呼ばれる。しかしながら、一部の著者らはアルカロイドをアミンの特別な場合であると考えている。


 モルヒネとは何か?
 モルヒネ(morphine)は、アヘンに含まれるアルカロイドで、チロシンから生合成される麻薬のひとつ。「モルフィン」「モヒ」とも言う。ベンジルイソキノリン型アルカロイドの一種。分子式 C17H19NO3。分子量285.4。モルヒネからは依存性のきわめて強い麻薬、ヘロイン(塩酸ジアセチルモルヒネ)がつくられる。CAS番号は57-27-2。塩酸塩・硫酸塩は鎮痛・鎮静薬として種々の原因による疼痛(とうつう)の軽減に有効であるが、依存性が強い麻薬の一種でもあるため、各国で法律により使用が厳しく制限されている。

 名前の由来は、ギリシア神話に登場する夢の神モルペウス (Morpheus)。夢のように痛みを取り除いてくれることから。主にアヘンから取り出される。

 医療においては、癌性疼痛をはじめとした強い疼痛を緩和する目的で使用される。モルヒネは身体的、精神的依存性を持つが、WHO方式がん疼痛治療法に従いモルヒネを使用した場合は、依存は起こらないとされる。薬剤の剤形としては錠剤、散剤、液剤、坐剤、注射剤があり、それぞれ実情に応じて使用される。

 軍事用途でも、戦闘により負傷した場合、強い疼痛を軽減する目的で、主に注射剤の形で使用され続けている。資格を持った衛生兵だけが携帯でき、トリアージを行っている間に投与処置を行うこともある。

 毒としてみた場合、非常に強い塩酸モルヒネを例にとると薬物でヒト(経口)LD50:120-500mg/kg。マウス皮下注 (LD50) 456mg/kg、マウス静注 (LD50) 258 mg/kg。乳児・ 小児では感受性が高い。数量にするとヒトに対し6-25gであり、数分から2時間程度で死亡する。


 ストリキニーネとは何か?
 
ストリキニーネ (strychnine) はインドールアルカロイドの一種。非常に毒性が強い。IUPAC許容慣用名はストリキニジン-10-オン strychnidin-10-one。ドイツ語ではストリキニン (Strychnin)。化学式はC21H22N2O2、CAS登録番号は57-24-9。1948年にロバート・バーンズ・ウッドワードにより構造が決定され、1954年に同じくウッドワードにより全合成された。

 化合物の絶対配置は1956年にX線結晶構造解析により決定された。 主にマチン科の樹木マチンの種子から得られ、1819年にマチンの学名 Strychinos nux-vomica にちなみ命名された。主に齧歯類(げっしるい)のような小動物を殺すのに用いられる。名称が似るが、キニーネとは全くの別物である。 単体は無色柱状結晶で、熱湯に溶けやすくアルコール、クロロホルムに少し溶ける。極めて強い苦味を持つ(1ppm程度でも苦味が認識できる)ため、医学においては苦味健胃薬として用いられる。

 ストリキニーネは天然ではトリプトファンから生合成されている。ストリキニーネの2,3位にメトキシ基 (CH3O−) が付いた化合物はブルシン (brucine) といい、同じくマチンに含まれるが、毒性はストリキニーネの約20から30分の1とされる。 ストリキニーネは、 脊髄や脳に存在するリガンド作動性Cl-チャネルであるグリシンレセプター (GlyR) に対してアンタゴニストとして作用する。


参考 ノーベル賞受賞者業績辞典(日外アソシエーツ) Wikipedia: ロバート・ロビンソン アルカロイド ストリキニーネ モルヒネ


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