宇宙を掃除する計画

 スペースデブリ(Space debris)とは、宇宙ゴミのこと。地球の衛星軌道上を周回している人工物体のことである。宇宙開発に伴ってその数は年々増え続け、対策が必要となっている。

 「スペースデブリ」の正体は何だろうか?それは耐用年数を過ぎ機能を停止した、または事故・故障により制御不能となった人工衛星から、衛星などの打上げに使われたロケット本体、その一部の部品、多段ロケットの切り離しなどによって生じた破片、デブリ同士の衝突で生まれた微細デブリ、更には宇宙飛行士が落とした工具…などである。

 今回、日本の町工場でつくったワイヤー製の漁網で、宇宙のスペースデブリを落とす実験計画が進んでいる。網でそれこそ一網打尽に取り尽くすのだろうか?


 だが、宇宙空間を周回するスペースデブリは地表から300~450kmの低軌道では秒速で7~8km/s、36,000kmの静止軌道では秒速3km/sと非常に高速で移動している。さらに軌道傾斜角によっては相対的に秒速10km/s以上で衝突する場合もありえる。いくらワイヤー製の網でも簡単に突き抜けてしまうだろう。

 今回の実験では高速で飛ぶデブリに網状のアルミ製ワイヤを接続して、発生する磁力で1年かけて減速させ、大気圏に落とす。デブリ除去のためのワイヤを宇宙空間で展開するのは世界初の試み。その最先端技術を支えているのは中小規模の町工場の力だ。


 漁網で除去へ 町工場とJAXA協力

 2004年4月、広島県福山市を本拠とする「日東製網」(本社・東京)に宇宙航空研究開発機構(JAXA)から問い合わせがあった。「金属のひもで網が編めますか?」。質問したJAXAの河本聡美・主任研究員は「メーカーに片っ端から協力を依頼して何度も断られた。わらをもつかむ思いだった」と振り返る。漁網が主力製品の同社の技術者らは、不思議に思いながらも引き受けることにした。

 上空700~1000キロに集中しているデブリは過去に打ち上げた人工衛星やロケットの部品が大半で、超高速のため宇宙船にぶつかれば大事故になる。全体の数は1億個以上。危険な10センチ以上のデブリ約2万2000個は動向が把握されているが、年々増える小さな破片は既に対策が不可能な量という。

 2009年に起きた米国とロシアの衛星衝突事故以降は特に増加ペースが加速しているが、人工衛星による回収実績はこれまでわずか数個にとどまっている。

 JAXAが研究しているのは、大きめのデブリに長さ数キロの網状のワイヤを取り付けて磁場を発生させ、1年ほどかけて移動速度を下げることで地球に落とすという方法だ。大半のデブリは大気圏での摩擦熱で燃え尽きるとみられ、最もコストのかからない除去方法と考えられている。河本さんはワイヤの強度確保のため、幅10センチほどの網型にすることにしたという。

 日東製網の技術者・尾崎浩司さんは「引き受けてから10年、商売にならなくてもものづくりのプライドだけで続けました」と話す。材料に提供された太さ0.1ミリのアルミ線は折れやすいため編むのが難しく、100メートルの発注に1メートルしかできなかった時もあった。だが漁網で培ったノウハウで機械の改造を繰り返し、2007年にはJAXAと連名で特許も取得。2009年には漁網用を改造したデブリ除去ワイヤ専用機を完成させた。

 2014年3月までに打ち上げ予定の三菱重工のロケットに搭載される香川大学の人工衛星が、初めて長さ300メートルの網状のワイヤを宇宙空間で展開し磁場を発生させる実験に挑む。同大工学部の能見公博准教授は「日本は宇宙での実験がまだ進んでいない。伸ばしたワイヤに磁場を発生させるのはどの国もまだ成功しておらず、デブリ除去に使えるという証明になる」と説明する。

 JAXAは15年には長さ数キロのワイヤを使い本格的なデブリ除去実験を始める計画で、2019年の実用化を目指す。河本さんは「町工場のものづくりは日本の力。手遅れになる前にここまでこられたのは、民間の技術力のおかげ」と感謝する。水産学の学位を持つ尾崎さんは「海の研究をする僕らの工場が宇宙に関わるなんて想像もしなかった。何とか実験が成功してくれれば肩の荷が下りる」と空を見上げている。(毎日新聞 2014年1月9日)


 欧州"クモの巣"ソーラーセイル衛星のスペースデブリ対策

 一方、ESA 欧州宇宙機関は、2014年に打ち上げを予定しているスペースデブリ(宇宙ゴミ)対策実証衛星『Gossamer Deorbit Sail(ゴッサマー・デオービット・セイル) 』計画について2013年12月20日、最新の情報を公開した。

 Gossamer(クモの巣)と名付けられた超小型衛星は、本体が15×15×25センチメートル、重量2キログラムとコンパクトなもの。1分程度で5×5メートルのセイルを広げることができる。セイルは地球低軌道のごく希薄な大気の抵抗を受けて衛星の周回速度を低下させ、落下して燃え尽きることを目的としている。

 セイルはカーボンファイバー製ブームに、アルミを貼りつけた厚さ7マイクロメートルのカプトンフィルムを取りつけている。非常に軽量だが、重量700キログラムの衛星を軌道から離脱させるにも十分なサイズ。

 ゴッサマー・デオービット・セイル衛星はESAの電気通信システム先進的研究プログラム資金の元、サリー大学宇宙センターが開発し、軌道上実証に向けた一連の試験を終えた。イリジウムやグローバルスターなどの通信衛星が位置する、高度700キロメートルまでの地球低軌道で利用することを目的としている。

 衛星は2014年中に打ち上げられ、数週間はソーラーセイル推進の実証を行う。その後、大気の抵抗を十分に受けられるようセイルの向きを変え、軌道離脱の実証に挑む。高度600キロメートル程度であれば、2~12カ月以内に元の軌道から落下して燃え尽きることが予想されるという。

 ESAが2008スペースデブリ対策として提案した行動規範では、運用を終えた衛星が25年以内に軌道を離脱して地球に再突入し、他の衛星との衝突などの事故をが起きないように対策を求めている。日本、アメリカもこの規範に賛同しており、25年ルールが国際的な基準となりつつある。

 セイル展開式は、軌道変更のために衛星に追加の推進剤を搭載するよりも軽量で効率的だと考えられており、サリー大学宇宙センターの構想では、低軌道で10~1000キログラムの衛星にゴッサーマー衛星のセイル技術を応用可能。また、将来はより高高度の起動で、太陽輻射圧を利用して運用を終えた衛星の軌道を変更する応用も検討されているとのことだ。 (Respose 欧州“クモの巣”ソーラーセイル衛星でスペースデブリ対策実証実験


 スペースデブリとは? 

 スペースデブリ(space debris)とは、宇宙ゴミのこと。なんらかの意味がある活動を行うことなく地球の衛星軌 道上〔低・中・高軌道〕を周回している人工物体のことである。宇宙開発に伴ってその数は年々増え続け、対策が必要となっている。

 旧ソ連がスプートニク1号を打ち上げて以来、世界各国で4,000回を超える打ち上げが行われ、その数倍にも及ぶデブリが発生してきた。多くは大気圏へ再突入し燃え尽きたが、現在もなお4,500トンを越えるものが残されている。

 これらスペースデブリの総数は増加の一途を辿っているうえ、それぞれ異なる軌道を周回しているため、回収及び制御が難しい状態である。これらが活動中の人工衛星や有人宇宙船、国際宇宙ステーション(ISS)などに衝突すれば、設備が破壊されたり乗員の生命に危険が及ぶ恐れがあるため、国際問題となっている。現にニアミスや微小デブリとの衝突などは頻繁に起こっており、1996年にスペースシャトル・エンデバーのミッション(STS-72)で若田光一宇宙飛行士が回収した日本の宇宙実験室(SFU)には、微細なものを含めると500箇所近い衝突痕が確認された。

 スペースデブリは、地表から300~450kmの低軌道では秒速で7~8km/s、36,000kmの静止軌道では秒速3km/sと非常に高速で移動している。さらに軌道傾斜角によっては相対的に秒速10km/s以上で衝突する場合もありえる。運動エネルギーは速度の2乗に比例するため、スペースデブリの破壊力はすさまじく、直径が10cmほどあれば宇宙船は完全に破壊されてしまう。数cmでも致命的な損傷は免れない。さらに数mmのものであっても場合によっては宇宙船の任務遂行能力を奪う。5 - 10mmのデブリと衝突するのは弾丸を撃ち込まれるに等しい。

 このような衝突を防ぐことを目的として地球近傍のデブリ等を観測する活動はスペースガードと呼ばれる。北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)の宇宙監視ネットワーク(Space Surveillance Network、略称:SSN)、ロシアの宇宙監視システム(Space Surveilance System、略称:SSS)などでは約10cm以上の比較的大きなデブリをカタログに登録して常時監視が行われており、日本でも美星スペースガードセンター(BSGC)、上斎原スペースガードセンター(KSGC)の2施設でデブリの監視が行われている。カタログ登録されたデブリの数だけでも約9,000個に及び、1mm以下の微細デブリまでも含めると数百万とも数千万個とも言われる。(Wikipedia)


参考 Wikipedia: スペースデブリ 


ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please