血液中のタンパク質の発見
 血液の成分といえば、赤血球、白血球、血小板、血清(血漿)であるが、血清は何でできているだろう?血清は、91%の水と、7%のタンパク質と、2%の養分、不要物などでできている。血清をつくるタンパク質とはどんなものだろうか?

 血清には、アルブミンや免疫グロブリンをはじめ、100種類以上の蛋白が存在している。健常人では、それらは合成されたり分解されたりすることで、一定の濃度に維持されている。では、これらのさまざまなタンパク質はどのようにして発見されたのだろうか?

 タンパク質の分析やDNAの分析で、現代でもよく利用されるのが、電気泳動法だ。タンパク質やDNAの混合物に電圧をかけると、電荷を持っているものはその荷電と反対の極に向かって移動する。だが、その移動速度は分子量の大きいものほど移動しにくい。この性質を利用して、タンパク質やDNAなどの高分子の分類ができる。


 1930年代、電気泳動法を確立し、血漿のタンパク質がアルブミンおよび、アルファ(α)、ベータ(β)、ガンマ(γ)の3種類のグロブリンで構成されていることを発見したのが、スウェーデンの生化学者、ウィルヘルム・ティセリウスである。彼はこの業績により、1948年のノーベル化学賞を受賞する。


 ウィルヘルム・ティセリウス
 ウィルヘルム・ティセリウス(Arne Wilhelm Kaurin Tiselius,1902年8月10日~1971年10月29日)はスウェーデン王国ストックホルム出身の生化学者。

 早くに父をなくして家族とともにイェーテボリに移り、教育を受けた。ギムナジウムを1921年に卒業し、ウプサラ大学に入学し、化学を専攻した。ウプサラ大学で1925年からスヴェドベリの助手を務め、1930年にタンパク質の電気泳動法に関する研究によって博士号を取得。それから1935年までゼオライトにおける主成分の吸着と脱離に関するいくつかの論文を発表した。

 そしてこの研究によってプリンストン高等研究所でロックフェラー財団の研究奨励金を受けた。その後ウプサラ大学へと戻ってからは物理学的な手法を用いてタンパク質の生化学的な問題について研究し、電気泳動法をより綿密なものとした。

 第二次世界大戦後の1948年に電気泳動の研究等でノーベル化学賞を受賞。その後スウェーデン化学界の発展に尽力し、1951年から1955年まで国際純正・応用化学連合の理事長を務めた。ウプサラで没。


 電気泳動法で博士号取得
 1921年ウプサラ大学に入学。T.スベドベリー(1926年ノーベル化学賞「超遠心機によるコロイド研究」)のもとで学ぶ。1925年スベドベリーの研究助手になる。1930年にタンパク質の電気泳動に関する論文で博士号を取得。助教授となりウプサラ大学にとどまる。

 ティセリウスの手法は、溶液中の成分の電場内でその移動を調べるもので、その移動海面は蛍光写真によって観測される。しかしそれでは不十分であることが分かり、石英レンズと特殊なフィルターを用いて、紫外線写真で構成分子の移動を観測する方法を開発した。

 この研究論文で博士号を取得後、ウプサラ大学にはまだ生化学講座がなかったので、無機化学の分野にもどり、ゼオライト結晶内での拡散と吸着の現象を研究した。

 1934年ロックフェラー財団の奨学金を得、特別研究員としてアメリカに渡り、1年間プリンストン大学で研究を行う。このとき蛋白質研究の意欲をかきたてられる。

 1935年に帰国後、まず電気泳動装置の改良に取り組み、1937年新しい型の装置を発表した。この装置の開発によって、蛋白質研究は大きな進展を示し、中でも特筆すべきことは、血清タンパクがアルブミンおよび、アルファ(α)、ベータ(β)、ガンマ(γ)の3種類のグロブリンで構成されていることを発見したことである。

 1940年から吸着法の研究を手がけ、界面分析法と置換分析法の改善を行った。この研究ではクロマトグラフ法を用いて定量分析の精度向上をはかった。これらの業績に対して1948年ノーベル化学賞が贈られた。受賞理由は、「電気泳動装置の考案および血清タンパクの複合性に関する研究」。


 電気泳動とは何か?
 電気泳動は、荷電粒子あるいは分子が電場(電界)中を移動する現象。あるいは、その現象を利用した解析手法。特に分子生物学や生化学ではDNAやタンパク質を分離する手法としてなくてはならないものである。

 19世紀初めにロシアの物理学者Reussが水中の粘土粒子で発見したのに始まる。19世紀終わりからタンパク質やアミノ酸などの研究に用いられ、1930年代にティセリウスによってタンパク質の移動度を調べる方法として確立された。これは水溶液を用いる「無担体電気泳動」であったが、第2次大戦後、濾紙やデンプンゲルなどの担体を用いた電気泳動が発展した。

 濾紙電気泳動(現在は主としてセルロースアセテート膜を使う)は臨床検査で血清タンパク質を分析する方法として用いられている。一方ゲルとしては、その後 アガロース がよく用いられるようになり、現在でもDNA断片の分離・分析に用いられる。また1960年代に ポリアクリルアミドゲルが開発され、これはタンパク質の分析やDNAの塩基配列決定に用いられる。

 ポリアクリルアミドゲルを用いたタンパク質分析法の一種として等電点電気泳動や二次元電気泳動がある。最近では無担体電気泳動であるキャピラリー電気泳動が自動塩基配列決定に用いられている。

 荷電粒子や分子はその荷電と反対の極に向かって移動する。移動中にpH 勾配があると、荷電が0となる点(等電点)で停止する。これが等電点電気泳動であり、タンパク質の分析に用いられる。

 担体を用いる場合には、DNAやタンパク質などの高分子が担体分子に遮られ分子量の大きいものほど移動しにくくなる「分子ふるい効果」が働く。特にアガロースやポリアクリルアミドなどのゲルではこの効果が顕著なのでよく用いられる。核酸は一様にマイナスに荷電しているので一定方向(陰極→陽極)に泳動して分子量による分離が容易に行える。なお別の原理に基づいて大分子量のDNAを分離するパルスフィールド電気泳動もある。

 タンパク質の荷電は種類によって大きく異なるが、陰イオン系界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)存在下ではSDS分子がタンパク質分子に付着するため、タンパク質分子は陽極に向かって移動する。この方法がSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGEと略す)で、核酸の場合と同様に分子量による分離が行える。

 担体を用いた電気泳動では各種の染色法で核酸やタンパク質の位置を検出することができる。例えば臭化エチジウムなど蛍光色素による核酸の検出、染料(クーマシー・ブリリアントブルーなど)や銀染色法によるタンパク質の検出がよく使われる。

 泳動には直流電流を用いる。一般的な電源では交流電流であるので、AC-DCコンバータ(あるいは整流器ともいう)を用いて直流電流に変換してから電流を流す。(Wikipedia)


 血清タンパク質とは何か?
 血清タンパク質とは、血中にあるタンパク質のこと。100種類以上存在するとされる血清タンパク質は、pH8.6以上の緩衝液中においてすべての成分が陰性に荷電している。

 この状態で電気泳動を40分程度行うと、各蛋白成分は陽極側へ移動するが、各成分が異なる電気的荷電と粘性を有しているため、移動度に差が生じ、その結果として蛋白成分が5つのグループに分画される。

 これらの成分は、陽極側から順にアルブミン(Alb)、α1‐グロブリン、α2‐グロブリン、β‐グロブリン、γ‐グロブリンと呼ばれています。この5分画は全自動電気泳動装置(AES)のデンシトメーターによりグラフ化され、曲線パターンとして図示される。

 では血清のタンパク質は、どこで合成されているのだろう?それは、大きく2つに分かれる。1つは、肝臓もう1つは、リンパ器官です。肝臓では、アルブミン、 α1‐グロブリン、α2‐グロブリン、β‐グロブリンを主に合成している。

 リンパ器官ではγ‐グロブリンを主に合成している。つまり、肝臓がタンパク合成に重要な役割をはたしている。なので、もし肝炎や肝硬変などの肝機能不全になると、タンパクの合成ができなくなる。

 血清タンパク質分画検査は、少ない検体量で容易に、そして安価に測定ができ、蛋白成分の質的・量的変動など多様な情報が得られることから、病態把握や治療効果の判定に有用な検査とされている。この検査を実施することにより、多発性骨髄腫やネフローゼ症候群、さらには急性・慢性炎症、膠原病に至るまでおおよその目安をつけることができる。


参考 Wikipedia: ウイルヘルム・テルシウス 血清 電気泳動装置


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