有機物の無機的合成法
 石油はどこでどうしてできるのだろう?もちろん、生物の有機物が地中で長い年月をかけて分解してできる。これを「生物起源説(有機的成因論)」というが、他にも説がある。

 地中の微生物の活動により合成されるとする「生物合成説」や、地中で無機的な反応により合成されるとする「無機的合成説」、隕石中に炭化水素が含まれていることから、地球創生期に存在していたものがマントルに残っているとする「マントル起源説」もある。

 今回、「無機的合成説」を支持する研究成果が発表された。東京工業大学(東工大)は1月22日、長野県白馬地域の温泉水が、無機的に合成されたメタンガスを含むことを突き止めたと発表した。この成果は「地球初期の生命誕生のメカニズムを解き明かすことにつながる」ものとしている。


 それによると、地球生命誕生の場として最も有力とされるのが、「蛇紋岩」と呼ばれる岩石に伴う温泉環境だという。蛇紋岩は現在の地表にはわずかしか露出していないが、地球誕生直後の海底では最もありふれた岩石だったと考えられている。この岩石がメタンなどの有機物を生成するきっかけになったという。


 初期地球の生命誕生は、蛇紋岩を中心とする温泉環境だった?
 地球の生命がいつ、どこで、どのように発生したかのかは確かな証拠が得られていないために現在は複数の説が唱えられている状況だが、生命誕生の場として最も有力とされるのが、「蛇紋岩」と呼ばれる岩石に伴う温泉環境だという。蛇紋岩は現在の地表にはわずかしか露出していないが、地球誕生直後の海底では最もありふれた岩石だったと考えられている。

 蛇紋岩は水と反応することで高濃度の水素ガスを生成する特徴を有しており、蛇紋岩が生命誕生に必要なエネルギーと有機物の合成を促したとする説が有力だ。研究チームは、このような特殊な環境の温泉が長野県白馬地域に点在していることを突き止め、初期地球の温泉でなにが起きていたのかを理解する目的で、2010年から調査を行ってきたのである。

 この温泉ガスは約50℃で水素ガスとメタンなどの炭化水素を含む。今回、これらガスの「水素同位体比」(質量数1の水素と質量数2の重水素の比率)を分析したところ、メタン(CH4)が水素(H2)よりも重水素を多く含んでおり、温泉水(H2O)と同じ程度の重水素を含むことが判明した。水素も重水素も安定同位体だが、化学反応の際にわずかに反応速度が異なるため、比率が変化する。その比率の違いを用いて、ガスがどのような化学反応もしくは生物代謝によって生成したものかを区別することができるというわけだ。

 今回の結果は、温泉の「炭化水素」(炭素(C)と水素(H)だけでできた化合物)がH2ではなく水(H2O)を水素源として合成されていることを意味するという。なお、炭化水素は生物を構成する分子の内で比較的単純なものであり、生命誕生前は無機的に合成されたはずと考えられている。

 これまで、高濃度の水素を含む特殊な温泉では、100℃以上でH2と二酸化炭素(CO2)の反応(「フィッシャー・トロプシュ型反応」)によって、さまざまな炭化水素が合成されると考えられてきた。しかし今回の発見により、蛇紋岩温泉での炭化水素合成経路はこれとは別の過程であり、かつ50℃ほどの低い温度でも起こりうることが示された形だ。

 この研究結果から、同様の温泉が豊富にあったとされる生命誕生前の地球上では、これまで考えられていたよりも多くの炭化水素が無機的に合成されており、生命を形作る分子たちを供給したことを示しているという。今後、同温泉に含まれるさまざまな有機物をさらに分析することで、生命起源の研究が進展すると期待されるとしている。(マイナビニュース2014/01/24)


 蛇紋岩とは何か?
 蛇紋岩(serpentinite)は、主に蛇紋石(serpentine)からなる岩石である。変成岩ないし火成岩中の超塩基性岩のどちらかに分類される。岩石の表面に蛇のような紋様が見られることから、蛇紋岩と命名。

 蛇紋岩はかんらん岩が 地下深部で水分の作用を受けて変質してできる岩石で、直接マグマが冷えて固まってできた岩石ではない。しかし便宜上,火成岩の仲間と されている。 地球の表面を覆う十数枚のプレートと呼ばれる巨大な岩盤同士の衝突により、上部マントル(地下:数10km~400km)のかんらん岩は部分的に水分の 供給を受けて蛇紋岩に変化する。

 蛇紋岩は風化作用を受けやすく、もろくて崩れやすい性質がある。そのため、蛇紋岩で形成された山岳(例えば越後山脈の谷川岳や至仏山)などでは、滑落事故が起こりやすい。岩石の表面は、スメクタイトなどの粘土鉱物を含み平滑状となっていることが多く、断層などの滑り面には強い鏡のような光沢(鏡面反射)が形成されることもある。

 クロム、石綿、ニッケルなど鉱物資源を内包していることが多く、産出地においては鉱業開発が進められる場合もある。また、蛇紋岩自体も加工されて肥料として用いられる。

 兵庫県養父市の八鹿町八木地区など一部に広がる蛇紋岩土壌の上で育った米、蛇紋岩米がある。養父市では八木川が蛇紋岩を削るためマグネシウムとカリウムに恵まれた土壌が形成され、氷ノ山・鉢伏山系からの清水や日照、昼夜の温度差などとの相乗効果により非常に高い旨み値を持つ米が育つ。 その味は確かで、無印良品の「Café & Meal MUJI」でも取り扱われている。(Wikipedia)


 フィッシャー・トロプシュ法とは何か?
 無機物から有機物をつくる無機的合成法には、蛇紋岩以外にもある。「フィッシャー・トロプシュ法」もその一つで、第二次世界大戦では、この方法でナチスドイツは合成石油を生成、連合国側からの石油の輸入がストップしても、合成石油で、メッサーシュミットを飛ばし、キング・タイガーを走らせた。

 フィッシャー・トロプシュ法(Fischer-Tropsch process、FT法)は一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて液体炭化水素を合成する一連の過程である。触媒としては鉄やコバルトの化合物が一般的である。この方法の主な目的は、石油の代替品となる合成油や合成燃料を作り出すことである。「フィッシャー・トロプシュ反応」や「フィッシャー・トロプシュ合成」とも呼ばれる。

 基本的なFT法は、以下のような化学反応を用いるものである。
 (2n + 1) H2 + n CO → CnH2n+2 + n H2O
 上記の反応で出発物質となる一酸化炭素 CO や水素 H2 は、メタン(天然ガス)の部分燃焼
 CH4 + 1/2 O2 → 2 H2 + CO
 あるいは石炭やバイオマス(生物資源)のガス化
 C + H2O → H2 + CO
 あるいはメタン(天然ガス)や石油類といった炭化水素のガス化
 -CH2- + H2O → CO + 2H2 (水蒸気改質法)-CH2- + 1/2O2 → CO + H2 (部分酸化法)
 などで作られる。
 石炭や生物資源と水蒸気の反応に必要なエネルギーは、系中に酸素を存在させ、以下の反応式
 C + 1/2 O2 → CO
 で表される燃焼による反応熱によって供給する。

 メタン(天然ガス)や石油類などの炭化水素と水蒸気の反応(水蒸気改質法)に必要なエネルギーは、メタン(天然ガス)や石油などの一部を取り出して反応装置の外部で空気と一緒に燃焼(バーナー)させて供給する。


 ナチスドイツの代替燃料「エアザッツ (Ersatz)」
 カイザー・ウィルヘルム研究所に勤務していたドイツの研究者、フランツ・フィッシャー (Franz Fischer) とハンス・トロプシュ (Hans Tropsch) によって1920年代に開発されたのが起源である。それ以来多くの改良や調整が施され、今日では類似する方法の総称として「フィッシャー・トロプシュ」の名が用いられる。

 1920年代のドイツは石油資源には乏しかったが、石炭には恵まれていたことからこの方法が開発された。第二次世界大戦下のドイツや日本で代替燃料の製造に利用され、ドイツではこの種の代替燃料はエアザッツ (Ersatz) と呼ばれた。ドイツは1944年には25の工場から1日当たり124000バレル、年間650万トンに達する量を作り出した。

 戦後、捕らえられたドイツの科学者たちはペーパークリップ作戦 (Operation Paperclip) によってアメリカに移送され、合成液体燃料計画 (Synthetic Liquid Fuels Program) によって設立されたアメリカ合衆国鉱山局 (United States Bureau of Mines)で合成燃料の研究を続けた。


参考 Wikipedia:フィッシャー・トロプシュ法 マイナビニュース:初期地球の生命誕生は蛇紋岩を中心とする温泉環境だった?

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