セラミックとファインセラミック
 セラミック(Ceramic)といえば、陶磁器であるが、基本成分が金属酸化物で、高温での熱処理によって焼き固めた焼結体を指す。
 最近では単なる陶磁器ではなく、さまざまな付加価値をつけた「ファインセラミックス(Advanced ceramics)」が多用されている。「ファインセラミックス」とは、セラミックスのうち組成や組織、形状、製造工程を精密に制御し、新しい機能や特性をもたせたもの。

 例えば、フェライト磁石は磁性を持たせたファインセラミックであるし、圧電素子は、圧力を加えると電気信号に変えるファインセラミックである。

 今回、東北大学 原子分子材料科学高等研究機構(WPI-AIMR)は、スーパーコンピュータによる計算と元素識別可能な分析装置(電子エネルギー損失分光器)を搭載した「超高分解能走査透過電子顕微鏡」を駆使して、セラミックスの1種である「酸化マグネシウム」内の結晶の欠陥構造を設計・制御し、原子レベルでまったく新しい超構造を作りだすことに成功したと発表した。


 この成果は、近年の超高分解能走査透過電子顕微鏡とスーパーコンピュータの技術革新によるものである。セラミックスにこれまで存在していなかったような転位芯構造を人工的に合成することができた。今後、転位制御によるセラミックス材料の高性能化多様化のさらなる進展が期待できるとしている。


 原子多数・複雑な構造を持つセラミックス
 セラミックスは、金属や酸素など複数の種類の原子が結びついた構成で、陶器から耐熱材料や電子部品まで幅広い用途で利用されており、金属材料同様に実用的に用いられている材料だ。しかしセラミックスが金属材料と異なる点は、まずそれに含まれる原子の種類の多さや結合状態(イオン結合性や共有結合性)に起因して、大変複雑で独特な結晶構造を持つことが挙げられる。

 また、原子の種類や割合(組成)を変えることによって、例えば、「絶縁体のように電気が流れない状態から金属のようにスムーズに電気が流れる状態への変化」のように、金属材料では不可能な特性(電気や熱、光の伝わり方など)の自在な制御が可能になりつつあり、セラミックスは学術と工学の両面から新たな展開や領域開拓、その体系化が期待されているところだ。

 セラミックスにおいて、結晶構造の欠陥は特に重要であり、透明導電性やイオン伝導性、超伝導性などの優れた電気特性(電気の流れやすさ)の観点から活発に研究開発が行われてきた。この電気特性は、セラミックス特有の複雑な結晶構造のわずかな変化(歪みや欠陥など)によって著しく変化する。逆に、歪みや欠陥を意図的に制御すれば、電気特性の向上、さらには新奇な特性の発現が期待できるというわけだ。


 結晶の欠陥構造を設計・制御した超構造
 研究チームは、セラミックスの結晶の欠陥部である「転位」そのものに着目してきた。転位とは、原子の配列あるいは結晶格子の乱れが1つの線に沿って生じているものであり、結晶固体に外から引っ張りや圧縮などの力を加えると、ある程度以上大きい力に対しては、転位が導入され、変形を起こしたまま元に戻らない塑性変形を引きおこす。また、転位芯近傍では、本来の結晶とは異なる特有の構造や電子状態を形成している。

 研究チームによれば、バルク結晶には存在しない構造を持つ転位そのものに、特異な物性が期待されるという。これまで難しいとされてきた原子構造の人工制御は、界面上に規則配列した転位をターゲットとすることで、理論的にも実験的にも取り扱い易くしたことで可能になりつつある。

 このような超構造を固体内に閉じ込めることができ、デバイスへの応用の容易さやハンドリングの良さだけでなく、学術的にも固体-量子構造の相互作用効果(電子やスピン制御)も期待できる段階に来ているという。さらに、量子構造を高密度に自己配列させることができれば、大容量化によってデバイスとして工業的な実用化も可能だとする。

 今回の研究のねらいは、スーパーコンピュータによる大規模な構造モデル計算と最先端の超高分解能走査透過電子顕微鏡を併用することによって、最適なセラミックス材料の組み合わせや機能、安定転位芯構造を予測し、実験的に特別な機能を持ったまったく新しい超構造を原子スケールで作りだすことに挑戦することであった。そして、存在し得る欠陥構造をスーパーコンピュータで予測し、それとまったく同じ原子構造を忠実に結晶界面に集積させる実験に成功したというわけである。(マイナビニュース: 結晶の欠陥構造を設計・制御した超構造のセラミックス


 セラミックとは何か?
 セラミック(Ceramic)とは、広義には陶磁器全般であるが、狭義では、基本成分が金属酸化物で、高温での熱処理によって焼き固めた焼結体を指す。近年では、シリコンのような半導体や、炭化物、窒化物、ホウ化物などの無機化合物の成形体、粉末、膜など無機固体材料の総称として用いられている。

 セラミックスの語源は、ギリシャ語の「keramos」(粘土を焼き固めたもの)と言われている。 セラミックスは次のような性質を持っている。 常温で固体 硬度は高いが、脆性破壊する 強度、破壊靭性が内部の局所的な欠陥構造に左右されやすい 耐熱性に優れるが、熱衝撃破壊を起こしやすい 金属より軽く、プラスチックより重い ただし、上記のようにセラミックスと呼ばれる物質群は、極めて広汎で、その特性も様々であり、上記の性質が必ずしも当てはまらないものもある。

 古くは土器に始まる。日本においては、縄文式土器、弥生式土器に始まり、時代を経て陶器・磁器へと発展し、近年では、光触媒機能をもったセラミックス繊維も開発されている。

 昔、日本では可塑性の合成樹脂材料をプラスチックと呼び、その製品をプラスチックスと区別していたように、セラミックスも、材料をセラミック、製品をセラミックスと呼んでいた。だが、最近では、両者の区別があいまいになっている。 一般的には伝統的なガラスや陶磁器製品とは区別されて、1980年代以降はファインセラミックスに相当するものを「セラミックス」と呼ぶことが多い。

 なお、英語のセラミック(ceramic)は物質名詞としてよりも、「陶器の」、「陶芸の」という意味の形容詞として用いられる例の方が多く、本項のように各種の製品を総称する場合はセラミックス(ceramics)が正しい。しかし、日本では、この意味においても1文字短いセラミックという語が広く使われている。(Wikipedia: セラミックス


 ファインセラミックとは何か?
 ファインセラミックスとは、セラミックスのうち組成や組織、形状、製造工程を精密に制御し、新しい機能や特性をもたせたもの。英語ではAdvanced ceramicsという。

 ファインセラミックスという言葉が一般的に使われるようになったのは1970年代以降です。1959年の創業時より主に電子工業用セラミック製品を製造していた京セラ株式会社(当時:京都セラミック株式会社)は当初より、創業者である稲盛和夫が「ファインセラミックスとは、従来のセラミックスとは異なり、工業用部品として高い付加価値を有するもので、その価値は量で量るものでは無く、物性的にも構造的にもファインなもので無ければならない。」と訴え続けており、現在使われているような意味で「ファインセラミックス」という言葉を使い始めました。

セラミックス製品は、硬くて耐熱性、耐食性、電気絶縁性などに優れており、陶磁器や耐火レンガ、セメント、ガラスなどがその代表的なものです。

ファインセラミックスは、以上の性質に加え、さらに、機械的、電気的、電子的、磁気的、光学的、化学的、生化学的に優れた性質、高度な機能を持っています。今日では半導体や自動車、情報通信、産業機械、医療などさまざまな分野で活躍しています。

セラミックスとファインセラミックスの違いは、主に原料とその製造法に起因します。セラミックスは陶石、長石、粘土など、天然の鉱物を用いて混合し、成形、焼成するといった方法でつくられます。

これに対しファインセラミックスは、高純度に精製した天然原料や、化学的プロセスにより合成した人工原料、天然には存在しない化合物などを使います。これらの原料を配合することによって、目的とする性質を持つ物質を得ることができるのです。また、配合された原料は、成形、切削、焼成、研削など、精密に制御された複雑な工程を経て、高度な寸法精度、かつ高機能を備えた高付加価値製品となります。


 ファインセラミックの種類
 ファインセラミックスには、アルミナやジルコニア、炭化ケイ素、窒化アルミニウムなど、いろいろな種類があります。製造技術が進化し、使用する原料の種類や粒子の細かさ、焼き方などを変えることで、それぞれ違った特性を持たせることができます。用途や目的によって、製品づくりに適したファインセラミックスの材料を選び、形を決め、焼結させて、製品を作りあげることができるのです。

チタン酸バリウム BaTiO3: セラミックスの中でも高い誘電率を持ち、電気をためる性質に優れているため、主にコンデンサ部品材料に使われます。添加元素により誘電性が大きく変化します。

チタン酸ジルコン酸鉛 Pb(Zr,Ti)O3: 電気信号を加えると振動したり、反対に振動を電気信号に変える働きを持つ圧電材料です。この特性(圧電性)を生かし、さまざまな電子部品(セラミック発振子、セラミックフィルタなど)に使われています。

フェライト M2+O·Fe2O3: セラミックス磁性体です。透磁率が高く、電気抵抗と耐摩耗性が大きいので磁気ヘッドや高周波用磁芯として広く用いられています。

アルミナ Al2O3: ファインセラミックスの代表として最も広く利用されている材料です。機械的強度、電気絶縁性、高周波損失性、熱伝導率、耐熱性、耐摩耗性、耐食性が良好です。サファイアはアルミナの単結晶です。

フォルステライト 2MgO·SiO2: マイクロ波損失が小さく、高温の絶縁性にも優れます。表面が平滑であり、電子管部品、回路部品基板などに用いられます。熱膨張係数が大きく、金属やガラスと接合させやすいことも特長です。

ジルコニア ZrO2: ファインセラミックスの中で、最も高い強度と靭性をもったセラミックスです。従来は不可能とされていた刃物(ハサミや包丁など)にも利用されています。単結晶は屈折率が大きくダイヤモンドのような輝きが得られ宝飾品にも利用されています。 

ジルコン ZrO2·SiO2: 熱膨張係数が小さく、耐熱衝撃性に優れるため、耐熱部品、巻線抵抗ボビン、電子管部品などに用いられています。
  
ムライト 3Al2O3·2SiO2: 耐熱性および耐熱衝撃性に優れ、特にクリープ特性が良好な、優れた耐熱材料ですが、熱膨張係数が半導体Siチップに近いことも特徴です。

ステアタイト MgO·SiO2: 電気的、機械的特性は普通磁器より優れており、機械加工性も良好です。

コーディエライト 2MgO·2Al2O3·5SiO2: 特に低熱膨張であるので耐熱衝撃性に優れます。多孔質材料としてハニカム担体など、また、電熱器耐火物、化学工業用装置材料などに用いられます。

窒化アルミニウム AlN: 熱伝導率が高いので、放熱性が求められる半導体部品のパッケージ材料などに用いられています。

窒化ケイ素 Si3N4: 高温における強靭性、耐熱衝撃性に最も優れ、軽量で耐食性も高いため、エンジン部材として最適の材料です。

炭化ケイ素 SiC: 天然には存在しない人工化合物で、珪砂と炭素から合成されます。高温(1,500℃)まで強度が持続するほか、軽量で耐食性の高い、最も優れた耐熱材料です。 (京セラ: ファインセラミックとは?


先進セラミックスの作り方と使い方
クリエーター情報なし
日刊工業新聞社
トコトンやさしいセラミックスの本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)
クリエーター情報なし
日刊工業新聞社

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