副腎皮質ホルモンとは何か?

 1950年のノーベル生理学・医学賞の受賞研究は「諸種の副腎皮質ホルモンの発見およびその構造と生物学的作用の発見」である。

 受賞者は米国の化学者、エドワード・カルビン・ケンダル(Edward Calvin Kendall)米国の医師、フィリップ・ショウォルター・ヘンチ(Philip Showalter Hench)ポーランドの化学者タデウス・ライヒスタイン(Tadeus Reichstein)の3人。彼らは如何にして副腎皮質ホルモンを発見したのであろうか?

 副腎皮質ホルモン(Corticosteroid)とは、副腎皮質より産生されるホルモンの総称だ。炎症の制御、炭水化物の代謝、タンパク質の異化、血液の電解質のレベル、免疫反応など広範囲の生理学系に深く関わっている。ストレス、侵襲などさまざまな影響によって分泌され、医薬品としても使用される。



 副腎皮質ホルモンは、糖質コルチコイドと鉱質コルチコイドに分かれる。コルチコイドとは副腎皮質ホルモンの総称。糖質コルチコイドは、炭水化物、脂肪、およびタンパク代謝を制御し、リン脂質の生成を防ぐことによって抗炎症剤としても働いたり、好酸球の活動を抑制するなど様々な作用を持つ。鉱質コルチコイドは、主に腎臓でナトリウム貯留を促進させ、電解質と水分を制御する働きを持つ。

 糖質コルチコイドの代表としてコルチゾンがあり、鉱質コルチコイドの代表としてアルドステロンがある。コルチゾンとアドレナリンは人体がストレスに対して反応する際に放出される主なホルモンである。これらは血圧を上昇させ、体を闘争または逃避反応 (fight or flight response) に備えさせる。

 副腎皮質ホルモンは、脳下垂体からの副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の刺激により分泌が促進される。また、視床下部からの副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)により分泌が刺激される。そして、糖質コルチコイドにより分泌が抑制される「ネガティブフィードバック」は重要なはたらきである。

 視床下部(CRH)-下垂体(ACTH)-副腎皮質(主に糖質コルチコイド)系の生理的な機能のバランスの変化により、様々な疾病が引き起こされる可能性がある。


 エドワード・カルビン・ケンダル

 エドワード・カルビン・ケンダル(Edward Calvin Kendall、1886年3月8日~1972年5月4日)はコネティカット州ノーウォーク出身のアメリカ人の化学者で、副腎皮質ホルモンの構造と生物学的機能の研究により、タデウシュ・ライヒスタイン、フィリップ・ショウォルター・ヘンチとともに1950年度のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 コルチゾンの発見者としても知られる。彼は1908年に学士号を、1909年に修士号を、1910年に博士号を、全てコロンビア大学で取得した。ノーウォークにあるケンダル小学校は彼の名前にちなむ。

 ケンドールは、1910年代に甲状腺の研究を行った。1914年甲状腺ホルモンのチロキシンを分離。甲状腺から抽出したチロクロブリンというタンパク質を分解し、実際の甲状腺ホルモンを取り出したことで、甲状腺によってホルモンがつくられることを示した。またこの構造を調べ、アミノ酸構造をもつ比較的単純なものであることを示した。

 また、普通のアミノ酸チロシンとの違いは、チロキシンが4つのヨウ素原子をもつことを指摘。これによりホルモン治療の道を開いた。1930年代は副腎皮質ホルモンの研究を行った。副腎は髄質と皮質に分けられ、皮質からはさまざまな物質が生成されていることが知られていた。

 1929年頃皮質から抽出された抽出物コルチンが、アディソン病の症状に対して抑制作用を示すことが解明された。このコルチンの解明の第一歩として、1934年これが純粋な物質ではなく、混合物であることを実証した。まもなく数種の化合物を皮質から分離。ライヒシュタインらがこれらがステロイドであることを実証した。

 分離したステロイドを研究して、1934年強い活性示すステロイドを化合物A,B,E,Fと命名。1935年化合物Eの単離に成功。11-デヒドロ-17-ヒドロキシコルチコステロンと解明し、筋肉の収縮力を回復させることを提示した。

 1944年化合物Aの合成に成功。これは1年早くライヒシュタインが行っているが、もっとも適切な方法で行った。

 1948年、化合物Eがリュウマチ性関節炎に効力をもつことがP.S.レンチによってあきらかにされ、3人には1950年にノーベル生理学・医学賞が贈られた。この他、生体酸化還元反応に関係のあるグルタチオンの結晶化と構造研究を行った。


 フィリップ・ショウォルター・ヘンチ

 フィリップ・ショウォルター・ヘンチ(Philip Showalter Hench、1896年2月28日~1965年3月30日)はアメリカ人の医師で、1948年にエドワード・カルビン・ケンダルとともに副腎皮質ホルモンのコルチゾンを関節リウマチの治療に用いる研究を行った。そしてケンダル、タデウシュ・ライヒスタインとともに諸種の副腎皮質ホルモンの発見およびその構造と生物学的作用の発見の功績によりノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 彼はペンシルベニア州のピッツバーグで生まれ、ジャマイカのオーチョ・リオスで死去した。

 ヘンチはメイヨー病院でリュウマチ性関節炎に関心を抱いた1929年リューマチ性関節炎を患っていた人が急性黄疸にかかるとリューマチ性関節炎の症状が軽減されたという事例に接し、以後5年間観察を続けてこの事例が特異なものでないことを明らかにした。

 この原因については、胆汁の増加もしくは胆汁の中に特別な物質が生成されたためと考え、この仮定に沿って胆汁の投与をリュウマチ性関節炎の患者に試みた。しかし、効果は得られなかった。

 1931年妊娠中の女性に関節炎が軽減されることを発見。以上のことからリューマチが病原菌によるものではないと考え、1938年までに黄疸と妊娠中に共通して出現する物質Xが治癒効果を持ち、このXは男女共通のホルモンであるという説を提唱。それから様々な薬品を用いて治療を行い、物質Xを同定しようとした。

 1948年9月、ケンドルが化合物Eと名付けた物質を同僚のC.H.スローカムと治療に用い、劇的な効果をおさめた。慢性関節炎で寝たきりの婦人は30日で歩行できるまでに回復を示したのである。スローカム、H.F.ポリーらとメイヨー病院の他の患者たちにも投与を行い、その効果を確たるものにし、1949年4月20日これらの成果を発表。同じ病気に苦しむ世界の人々を救った。また、1949年2月には脳下垂体から分泌する副腎皮質刺激ホルモンも同様の効果があることを実証している。

 これらのステロイドは急性リューマチ、ぜんそく、膠原病にも効果を示した。1950年これらの業績により、ノーベル生理学医学賞を受賞した。化合物EはコルチゾンEと呼ばれ、現代ホルモン療法に大きな影響を与えているが、危険な物質なので投与には細心の注意が必要とされている。


 タデウシュ・ライヒスタイン

 タデウス・ライヒスタイン(Tadeus Reichstein,1897年7月20日~1996年8月1日)は、ポーランドのノーベル生理学・医学賞を受賞した化学者である。

 ポーランドのヴウォツワヴェック(Wloclawek)で生まれた。彼の父はエンジニアであり、幼年期をウクライナのキエフで過ごし、ドイツのイェーナの寄宿学校で初めての教育を受けた。

 1933年にスイスのチューリッヒでの研究でにてイギリスのウォルター・ハースと共同研究者とは別にビタミンCの合成に成功した。1937年からチューリッヒ工科大学助教授、1938年からバーゼル大学の生化学研究所教授、1960年には同研究所の所長を歴任した。

 1950年にエドワード・カルビン・ケンダルとフィリップ・ショウォルター・ヘンチと共に副腎皮質ホルモンからコルチゾンを単離する研究により、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。

 彼はスイスのバーゼルで死亡した。ビタミンCの工業的な人工合成法にはいまだに彼の名が見られる。

 ライヒシュタインは1922年化学の博士号を取得した後、コーヒーの芳香成分の研究を行った。また、1932年C.G.キングがアスコルビン酸(ビタミンC)の抽出に成功すると、翌33年、W.N.ハースとほぼ同時に彼とは違うやり方でこの合成を成功させた。

 1934年にこれ以前に副腎皮質から抽出され、アディソン病に効力を持つことが知られていた物質の研究を始めた。そして、ケンドルと同じ時期に、数種の化合物を副腎皮質から抽出し、この化学的性質を研究。これらの化合物はすべてステロイドであることを解明。

 続いてさらに多くの化合物を単離し、この中の活性ステロイドの研究に進んだ。ケンドルが活性ステロイド4種にそれぞれ化合物A,B,E,Fの呼称を与えていたが、1934年ケンドルが成功したのとほぼ同時に、化合物Eの単離に成功。しかし、これらの化合物は天然では副腎にごく少量しか存在しないため、アディソン病治療に用いるには単離よりも合成されることが望まれていた。

 1937年には胆汁酸からごく単純なデオキシコルチコステロンの合成に成功。のちの酢酸デオキシコルチコレステロン(DOCA)は工業化生産される。1943年デオキシコール酸から化合物Aの合成に成功。これらの業績に対し、1950年ノーベル生理学医学賞を受賞した。50年以降も多くの副腎皮質ステロイドを発見した。

 この中では副腎皮質の男性ホルモン、アンドロステロンの発見が有名である。また、植物体の配糖体、特にアグリコロンの研究を行った。1953年 シンプソン (S. A. Simpson) とライヒシュタイン (T. Reichstein) が男性ホルモンのアンドロステロンを単離した。アンドロステロンはテストステロンの代謝産物の1つ。アンドロゲン(男性ホルモン)活性としてはテストステロンの約5%である。


 引用元 日外アソシエーツ:ノーベル賞受賞者業績辞典 Wikipedia:副腎皮質ホルモン エドワード・カルビン・ケンダル タデウシュ・ライヒスタイン フィリップ・ショウォルター・ヘンチ


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