観測史上最大の銀河団

 われわれの宇宙はどうなっているのだろう?星がたくさん集まった集団が銀河であり、さらにその銀河が数十個から数千個集まった天体が「銀河団」である。

 銀河団は宇宙最大の天体であり、それが宇宙にどのように分布しているか、どのように進化してきたかなどを調べることで、宇宙全体の進化の謎に迫ることができる。

 ただし、銀河団は銀河だけが集まってできているのではない。実は、銀河団に含まれる銀河を全てあわせても、銀河団の重さのせいぜい数%にしかならない。残りは何かというと、1千万度を超えるような高温のガスがだいたい15%くらいで、あとの約80%は暗黒物質(ダークマター)になる。



 暗黒物質は、可視光やX線といった電磁波は全く出さないのですが、質量は持っていて、周囲に重力を及ぼしている未知の物質のこと。暗黒物質の正体についてはさまざまな候補が提案されているが、現在のところはっきりと分かってはいない。

 今回、およそ100億光年の彼方にある銀河団「エルゴルド」が、天の川銀河3000個分の質量を持つことがわかった。当時の宇宙においてこれほど重い銀河団は珍しい。ハッブル望遠鏡がとらえた「エルゴルド」の観測から判明した。


 巨大質量銀河団「エルゴルド」

 ほうおう座の方向97億光年彼方にある巨大銀河団「エルゴルド」(ACT-CL J0102-4915)が、従来の推測よりも43%重いことがわかった。

 銀河団の質量による重力レンズ効果で向こう側(銀河団より遠い)の天体の像がどれだけゆがんで見えるか、ハッブル宇宙望遠鏡を用いて観測した結果、エルゴルドの総質量は天の川銀河のおよそ3000倍、太陽3000兆個分と見積もられた。その質量のうち銀河団に含まれる数百個の銀河の寄与はほんの一部で、多くは銀河間の高温ガスや暗黒物質(ダークマター)によるものだ。

 エルゴルドがひじょうに重いことは、高温ガスが放つX線や銀河の動きを調べた2012年の研究で明らかになっていた。その後、エルゴルドは2つの巨大銀河団が衝突合体したものであるとわかり、衝突合体がX線や銀河の動きにどう影響するのか不明であること、また観測されていない方向の銀河の運動があると考えられることから、さらに精度よく質量を求めるために今回のハッブルの観測となった。

 天の川銀河の近隣ならともかく、遠方の(つまり過去の)宇宙においてこれだけ質量の大きい銀河団は珍しい。宇宙論モデルを考えるうえでもエルゴルドの質量を正確に知ることが重要視されたのだ。 

 James Jeeさん(米カリフォルニア大学)ら研究チームでは、今後ハッブルを用いたエルゴルドのモザイク撮影を行い、その全容をとらえたいという。(アストロアーツ:天の川銀河3000個分 巨大質量銀河団


 観測的宇宙論

 宇宙はどうなっているのだろうか?「観測的宇宙論」とは、宇宙がどのようにして始まり、現在に至るまでどのように変化してきたのか、今後どうなるのかを研究する学問であるが、その中で特に観測によって実証できるテーマについて研究するのが観測的宇宙論である。

 主な観測手段は、可視光や電波、X線などの電磁波(広い意味での光)で、宇宙空間に存在するさまざまな天体や物質などを調べる。宇宙空間を電磁波が伝わるのには時間がかかるため、遠い宇宙を見ることは、それだけ昔の宇宙を見ることになる。

 宇宙の誕生は約140億年前だといわれるが、電磁波では誕生直後の宇宙を直接見ることはできない。最も遠くを見られるマイクロ波でも、誕生から38万年後の宇宙までが限界だ。

 それよりも早い時期は、宇宙の密度と温度が非常に高いため、電磁波が通らない。それ以前の宇宙については、現状ではさまざまな理論を組み合わせて推測するしかない(将来は、重力波やニュートリノなどによって観測できる可能性がある)。


 宇宙の始まり「ビッグ・バン」

 宇宙はどのように始まって、どう成長していったと考えられているのでしょうか?

 宇宙はものすごく高温で高密度の状態、いわゆるビッグバンで始まった。そこから膨張して、物質がどんどん冷えていき、その過程でいろいろな天体が生まれ、私たち生命も誕生したと考えられている。

 天体ができたのは、宇宙の物質の密度にわずかな「むら」、つまり陽子や電子など粒子の分布に「むら」があったから。これを「密度ゆらぎ」と呼ぶ。

 密度が高い領域はその分だけ重力が強くなるので、周囲の物質をどんどん引き集める。物質が集まるとその部分の密度が高くなり、さらに重力が強くなって多くの物質を集める…というように、最初は小さな塊だったのが段々大きくなり、そこから銀河や銀河団が誕生したというわけ。

 実際に、マイクロ波による観測からは、誕生から38万年後の宇宙にわずかな密度ゆらぎが確かに存在していたことが見つかっている。

 しかし、このような大まかなシナリオは描けているものの、観測される星や銀河、銀河団のさまざまな性質には、まだよく分かっていない点もたくさん残されている。また、直接観測することができない宇宙のごく初期の時代も、多くの謎に包まれている。


 銀河団の質量のほとんどを占める暗黒物質

 星がたくさん集まった集団が銀河であり、さらにその銀河が数十個から数千個集まった天体が「銀河団」です。銀河団は宇宙最大の天体であり、それが宇宙にどのように分布しているか、どのように進化してきたかなどを調べることで、宇宙全体の進化の謎に迫ることができます。

 ただし、銀河団は銀河だけが集まってできているのではない。実は、銀河団に含まれる銀河を全てあわせても、銀河団の重さのせいぜい数%にしかならない。残りは何かというと、1千万度を超えるような高温のガスがだいたい15%くらいで、あとの約80%は暗黒物質になる。

 暗黒物質は、可視光やX線といった電磁波は全く出さないのだが、質量は持っていて、周囲に重力を及ぼしている未知の物質のこと。暗黒物質の正体についてはさまざまな候補が提案されているが、現在のところはっきりと分かってはいない。

 暗黒物質を電磁波で直接捉えることはできないが、銀河団の中の暗黒物質が周囲に重力を及ぼしている証拠が、少なくとも3つ存在する。

 1つ目は、銀河の運動である。銀河団に含まれる銀河は決して静止しているのではなく、毎時数百km~1000kmという速さで飛び回っているのでが、その運動が暗黒物質の重力によって強く影響を受けていることが観測されている。これは地球の公転運動が、太陽の重力によって影響されるのとほぼ同じ原理である。

 2つ目は、先ほど述べた高温ガスの存在です。暗黒物質がなければ、高温ガスは銀河団から外に飛び出してなくなってしまうはずだが、実際にはそうならずに銀河団中にとどまっていることから、暗黒物質の重力によって引きつけられていることが分かる。

 3つ目は、重力レンズ効果と呼ばれる現象である。これは、我々から見て銀河団の向こう側にある天体からやってくる光が、暗黒物質の重力によって、あたかもレンズを通過した時のように曲げられるなどして観測される現象である。


引用元 アストロアーツ:天の川銀河3000個分 巨大質量銀河団「エルゴルド」 JAXA:宇宙の進化解明の鍵となる銀河団に迫る


階層構造の科学―宇宙・地球・生命をつなぐ新しい視点
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東京大学出版会
nature [Japan] August 15, 2013 Vol. 500 No. 7462 (単号)
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