今、話題の感染症とは?

 感染症というと、インフルエンザ、ノロウイルス、コレラなどが思い浮かぶ。最近では、韓国で流行したMERS、西アフリカで流行したエボラ出血熱がある。昨年5月に始まったMERSの流行もようやく終息に向かっているようだが、エボラ出血熱の流行はどうなったか?

  今年は「人食いバクテリア」との異名があり、手足が壊死(えし)して発症から数十時間以内に約3割が死亡する「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の感染者も増えている。

 国立感染症研究所によると、今年の患者数は279人で過去最多になっていることがわかった。手足の腫れなど感染が疑われる症状が出た場合には、すみやかに医療機関を受診するよう呼びかけている。



 また、これまで感染症の原因とは思われていなかった、「古細菌」による感染で、物忘れやうつなど認知症の症状が発見された。鹿児島大や京都大のチームが「古細菌」が感染し、脳脊髄(せきずい)炎が起きたことを発表した。古細菌による感染症の確認は世界初という。

 古細菌は火口や海底など特殊な環境に存在し、病気の原因となるとは考えられていなかった。メタン生成菌や亜硝酸菌、高熱菌、硫酸還元菌、高度好塩菌などがある。

 我々のまわりにはいついかなる時にも、目には見えない細菌やウイルスなどに囲まれている。それらのものが、人体にどんな影響を与えるか、わかっていないことも多いのだ。手洗いやうがいなどしかできないが、体調管理には気をつけたいものだ。


 人食いバクテリア、患者数過去最高

 「人食いバクテリア」との異名があり、手足が壊死(えし)して発症から数十時間以内に約3割が死亡する「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」の患者が、統計を取り始めた平成11年以降、患者は徐々に増える傾向にある。

 去年は273人だったが、国立感染症研究所によると、ことしは8月9日の段階ですでに279人に上り、統計を取り始めて以降最も多くなった。都道府県別にみると、最も多いのが東京都で44人、次いで大阪府が28人、神奈川県が20人、千葉県と兵庫県が15人などとなっている。

 レンサ球菌は通常、人の鼻や口などから感染し、無症状なことも多く、咽頭炎や皮膚の感染症で済む。ところが、まれに菌が傷口から血液などに侵入し、劇症化する場合がある。

 劇症型の初期症状は手足の腫れや激しい喉の痛みなどで、急激に手足が壊死し、錯乱状態となり、多臓器不全などでショック状態から死に至ることがある。三十代以上が中心で、高齢者が多い傾向にある。予防方法は傷口を清潔に保つ程度に限られ、発症したら迅速な治療が重要だが、手足の壊死した部分を切除するなど対症療法にとどまる。

 一方、同じレンサ球菌が原因で、子どもが感染する割合が多い「溶血性レンサ球菌咽頭炎」も流行の兆しがある。

 咽頭炎は発熱や咽頭痛の症状が出るが、適切な治療を受ければ、重篤になることは少ない。同じレンサ球菌でも、この咽頭炎の菌が、必ずしも劇症化する菌につながるわけではなく、実態は分かっていない。

 保健予防課は「レンサ球菌でも、劇症化する菌と、咽頭炎の菌を明確に区別し、冷静に受け止める必要がある。劇症化すると致死率が高いため、十分に注意して早急に治療を受けてほしい」と呼び掛けている。


 古細菌の感染を初確認!

 物忘れやうつなど認知症の症状がある患者の脳にウイルスや細菌と異なる生物グループ「古細菌」が感染し、脳脊髄(せきずい)炎が起きていたとする研究成果を、鹿児島大や京都大のチームが米神経学会誌に発表した。古細菌による感染症の確認は世界初という。古細菌は火口や海底など特殊な環境に存在し、病気の原因となるとは考えられていなかった。

 研究チームによると、2005~2012年にかけて、認知症の症状が進行する南九州の40~70代の男女4人の磁気共鳴画像化装置(MRI)の検査で、脳や脊髄に炎症が見つかった。4人の脳組織の一部を顕微鏡で調べたところ、核や細胞壁を持たない未知の微生物が血管の周りに集まっていた。

 微生物のDNAを調べると、塩分の強い環境にすむ「高度好塩菌」という古細菌の一種と似た配列が多数見つかり、形状などから新種の古細菌と判断したという。いずれの患者も抗菌薬などで症状が改善した。古細菌は、細胞内に核を持つ細菌とは進化の系統上、別生物とされている。

 鹿児島大の高嶋博教授(神経科学)は「新たな患者は見つかっておらず感染の広がりはないと考えられる。古細菌はこれまで医学では触れられることがほとんどなかった。原因不明の慢性の病気や感染症の原因解明につながる可能性がある」と話した。

 また、感染症に詳しい川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「4人の患者で同じような組織の変化が見られているということで興味深い。感染症として研究を進めるには、病原体を培養して増やす試みや性質、病気を起こす仕組みなど、本体に迫る必要があり、さらなる検証が必要だ。」と述べている。


 ウイルスや細菌と別の生物、古細菌とは何か?

 古細菌(archaeum)は、生物の分類の一つで、sn-グリセロール1-リン酸のイソプレノイドエーテル(他生物はsn-グリセロール3-リン酸の脂肪酸エステル)より構成される細胞膜に特徴付けられる生物群、またはそこに含まれる生物のことである。古"細菌"と名付けられてはいるが、細菌(バクテリア。本記事では明確化のため真正細菌と称する)とは異なる系統に属している。始原菌(しげんきん)や後生細菌(こうせいさいきん)と呼ばれることがある。

 形態はほとんど細菌と同一、細菌の一系統と考えられていた時期もある。しかしrRNAから得られる進化的な近縁性は細菌と真核生物の間ほども離れており、現在の生物分類上では独立したドメインまたは界が与えられることが多い。一般には、メタン菌・高度好塩菌・好熱好酸菌・超好熱菌など、極限環境に生息する生物として認知されている。

 古細菌は、生物を基本的な遺伝の仕組みや生化学的性質を元に大きく分類する3ドメイン説において、真核生物ドメイン(植物、動物、真菌)、真正細菌ドメイン(大腸菌や藍藻などの普通の細菌)と並んで全生物界を三分する「古細菌ドメイン」を構成する生物グループである。これまでによく知られている古細菌の例としては、高NaCl濃度の環境に生育する高度好塩菌や、温泉や熱水噴出孔などに見られる好熱菌などがあり、われわれから見れば極めて過酷な環境にも分布している。

 形態的には真正細菌と同じ原核生物に属し、細胞の大きさ、細胞核を持たないことなどの点で共通する。このため長らく真正細菌と同じグループ(モネラ界)として扱われて来た。しかし分子レベルでの研究が進むにつれ、その違いが明らかになってきている。

 たとえば、古細菌とその他の生物(特に真正細菌)の間には、以下のような違いが知られている。
1.細胞膜を構成する脂質の構造が対掌体の関係にある。具体的には、真正細菌を含むその他の生物がグリセロール骨格のsn-1、sn-2位に炭化水素鎖が結合するのに対し、古細菌は例外なく炭化水素鎖が sn-2、sn-3 位に結合する。
2.細胞膜中の脂質に脂肪酸残基が一切含まれず、グリセロールにイソプレノイドアルコールがエーテル結合した脂質骨格を持つ。真正細菌を含むその他の生物の細胞膜にはグリセロールに脂肪酸がエステル結合したリン脂質が含まれている。
3.真正細菌の細胞壁はムレイン(ペプチドグリカン)であり、N-アセチルムラミン酸、D-アミノ酸を含むのに対し、多くの古細菌の細胞壁は糖タンパク質であり、N-アセチルムラミン酸、D-アミノ酸を持たない。

 これらの違いに加え、進化系統的にはむしろ真正細菌よりも真核生物に近縁で、DNAの複製やタンパク質合成系といった生命の基幹部分の機構が真核生物に類似している。このような生化学的差異、系統学的位置が明らかになるに従い独立のドメインとして扱われるようになった。

 古細菌についての研究は、病原性がないとおもわれていたり、知られたのが遅かったことなどから真正細菌に比べ立ち遅れている。その生体システムは未だ不明な点が多いが、原始生命体や真核生物の起源、あるいは有用酵素の利用・メタン発酵などと関連して研究が進められている。


参考 NHK news: 手足の壊死を引き起こす人食いバクテリア過去最多 毎日新聞: 古細菌の感染、初確認


古細菌 (UPバイオロジー)
クリエーター情報なし
東京大学出版会
人食いバクテリアから貰ったもの―致死率90%からの生還 (新風舎文庫)
クリエーター情報なし
新風舎

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