驚くほど多様な色彩「冥王星」NASA探査機が観測

 7月14日に冥王星に最接近した探査機「ニューホライズンズ」は膨大な撮影データを少しずつ地球に送信中であるが、観測データから、驚くべきことが発見されている。

 準惑星の冥王星の表面は豊かな色彩にあふれていることが分かった。NASAが9月15日に発表したこの分析結果に、天文学者らは非常に驚いている。

 前回の報告では、冥王星には大気があり、窒素が循環していることが発見された。循環という点において冥王星が地球のようであることは驚きであった。



 今回初めて発表された、ニュー・ホライズンズの観測データの科学分析結果は、冥王星の赤道付近に暗赤色の部分があり、緯度が高くなるにつれて赤が薄くなり、青みがかってくることを明らかにした。


 地殻に水の氷が豊富に存在

 天文学者らはこれまで、冥王星の色彩について、明確な認識を持っていなかった。 「これほどまでに壮観な冥王星表面の色彩と地質の多様性を目の当たりにして驚いた」と、米メリーランド大学(University of Maryland)の天文学研究員で、ニュー・ホライズンズ表面組成研究チームの一員であるシルビア・プロトパパ(Silvia Protopapa)氏は話した。

 米科学誌サイエンス(Science)に掲載された冥王星の最新カラー画像は、ニュー・ホライズンズに搭載されている「マルチスペクトル撮像装置(Multispectral Visible Imaging Camera、MVIC)」で撮影されたものだ。

 NASAは「これまでに地球に送信されてきた観測データは、冥王星上に驚くほど多種多様な地形と地形年齢があること、さらには、表面の色彩、組成、アルベド(反射率)に多様性があることを示している」と述べている。

 また、地殻に水の氷が豊富にあること、冥王星の大気圏に地表面上方の多層大気が存在すること、冥王星が予想よりやや大きく、氷に富んでいることに関する証拠が、研究チームによって発見された。


 冥王星に「青空」と「水の氷」

 太陽から遠く離れたカイパー・ベルト(Kuiper Belt)に位置する冥王星に関して、これほど詳細な観測結果が得られたのは初めて。太陽系内の海王星の先にあるカイパー・ベルトは極寒の領域で、彗星(すいせい)や小惑星が多数存在する。

 米サウスウェスト研究所(Southwest Research Institute)のニュー・ホライズンズ主任研究員、アラン・スターン(Alan Stern)氏は「カイパー・ベルトで青空だなんて、誰が予想できただろうか。これは素晴らしい」と話した。

 NASAは観測結果の発表と同時に、ニュー・ホライズンズの搭載カメラが撮影した、冥王星を囲む青いもやの層の画像を公開した。

 地球上の空が青く見えるのは、窒素の微粒子が太陽光を散乱するため。一方の冥王星では、「光を散乱する粒子は、これより大きいながらもまだ比較的小さい、すすに似た粒子『ソリン(tholin)』だと思われる」と、サウスウエスト研究所の科学チーム研究員、カーリー・ハウェット(Carly Howett)氏は話した。

 NASAによると、ニュー・ホライズンズの膨大な最新観測データから得られた「2番目に重大な発見」は、地上に凍った水が露出している小さな領域が、冥王星に多数存在することだという。

 科学者チームは、ニュー・ホライズンズに搭載された「分光組成マッピング装置」と呼ばれる機器を用いて、冥王星表面のさまざまな部分にある氷の痕跡をマッピングした。

 科学者チームの一人、サウスウエスト研究所のジェイソン・クック(Jason Cook)氏は「冥王星表面の広い範囲で、露出した水の氷はみられない」「なぜなら、冥王星の大部分が、揮発性の高い他の種類の氷で覆われているようにみえるからだ」と話す。「今後の課題は、水が今ある場所にしか現れず、他の場所ではみられない理由の解明だ」という。


 青いもやに包まれた冥王星

 「地球では窒素分子が太陽光を散乱し、そのおかげで空が青く見えます。冥王星の場合はどうやら、窒素分子より大きい「ソリン」と呼ばれる粒子が、その役割を果たしているようです」(米・サウスウエスト研究所 Carly Howettさん)。

 ソリンの粒子は、高度の高い大気中で作られると考えられている。そこでは太陽の紫外線が窒素やメタンの分子を分解・電離し、より複雑なイオンができる。初めて土星の衛星「タイタン」の上層大気中で確認されたプロセスと同様、イオンは再結合してさらに複雑な高分子となり、それらが結合して小さな粒子となる。その後、粒子に霜がつき、大気中から冥王星表面へと降って、冥王星の表面が赤っぽくなるのである。

 また、ニューホライズンズは冥王星の表面に、水の氷が露出した領域を検出した。領域は小さいものの、数多く見られる。

 「冥王星上では、別の物質の氷で覆われれているため、広い範囲にわたって水の氷の露出は見られません。今回の場所で水の氷が露出していて他の場所でしていないのはなぜか、今後解決すべき課題です」(サウスウエスト研究所 Jason Cookさん)。

 水の氷のスペクトルがはっきりと見られた領域が、冥王星の明るい赤い領域と対応していることは興味深い。氷は非常に赤いのだが、赤っぽいソリンの色素との関係はわかっていない。(AFPBB News)


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