水星探査機「メッセンジャー」の成果

 メッセンジャー (MESSENGER; MErcury Surface, Space ENvironment, GEochemistry and Ranging) は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のディスカバリー計画の一環として行われている水星探査ミッション、及び探査機の名前である。

 2004年8月3日に打ち上げられ、2011年3月18日に水星の周回軌道に投入されて観測が行われ、2015年5月1日に水星表面に落下してミッションを終了した。当初の計画では約1年間観測を行う予定だったが、最終的には5年も観測できたのは幸運なことであった。

 地球から水星に到達するためには高い技術的ハードルがある。水星の軌道は地球に比べて3倍も太陽に近いため、地球から打ち上げた宇宙機を水星重力に捕らえさせるためには、太陽の重力井戸を 9,100万 km 以上も下らなくてはならない。



 また、軌道速度は地球が約30 km/sなのに対し水星は48km/sであり、そのために宇宙機が水星のホーマン遷移軌道に入るために変更しなければならない速度差ΔVは他の惑星探査よりも大きくなってしまう問題がある。水星探査では、太陽の重力井戸を下る運動をするために位置エネルギーが運動エネルギーとなって宇宙機の速度が増す。

 しかし、水星周回軌道への投入や着陸を行おうとすると、急激に速度を落とさなければならず、そのために宇宙機のエンジンを使う必要が生じる。水星は大気が薄いため空力ブレーキの効果は期待できない。計算では、水星探査に使われるエネルギーは太陽系外へ向かうよりも多くなる。これらが、水星探査機の実現回数が少ない理由である。

 今回、NASAの水星探査機「メッセンジャー」が取得した5年間にわたるデータから、初めて水星全球の立体モデルが作られた。水星全体の地形が驚くほど詳細にわかり、水星の地質学的な歴史を解明していく道が開かれた。


 水星の全球立体モデル

 2011年から昨年まで水星を周回探査した「メッセンジャー」は10テラバイト以上に及ぶ水星のデータを地球へ送り届け、約30万枚もの画像や多くのスペクトル、地図などが得られた。15回目となる今回のデータ公開では、プロジェクトにとって最も画期的な成果の一つとなる、水星全球の立体モデル(高度図)が発表された。 ムービーを見る

 これまでにも地形図はあったものの、北半球と赤道付近の領域のみのもので、南半球のほとんどはこれまで知られていなかった。今回のモデル作成には、メッセンジャーが周回軌道上のいろいろな地点から撮影した、光の当たり方が異なる画像10万枚以上が使用されており、そのおかげで水星全球の表面にある地形が決定できたのである。

 水星の最高地点は水星で最も古い地形のうちの一つである赤道の南に位置しており、標高は4.48km。一方、最低地点は水星の平均高度より5.38km低い、ラフマニノフ盆地の底だ。二重の天体衝突の跡であるラフマニノフ盆地には、水星上で一番最近起こった火山活動による堆積物が存在しているのではないかと考えられている。

 また、水星の北極近くに見られる火山活動で作られた平原の詳しい様子も明らかになった。極の付近は太陽の光が横からしか当たらないため、長い影ができ岩石の色の特徴がはっきりしないが、影が最も短い時に5つの異なるフィルターで撮影して作られたものだ。

 研究者たちは、ミッションで得られたデータが今後も利用され、水星の現在の様子だけでなく形成や進化に関わる幅広い謎の解明に役立てられることを願っている。


 「水星植民計画」の理由

 灼熱の惑星「水星」のイメージが強いが、実は一年中光のあたらない所があり、水の存在が確認されている。また、地表には将来、核融合エネルギーに期待されているヘリウム3が大量に存在する可能性がある。そのほか水星に住む理由をあげてみる。

1.月との類似性: 地球の月と同様、水星には大気がほとんど無い。太陽の近くで、月と同じくとても小さな傾斜の自転軸でゆっくりと回転している。この類似性のため、水星の植民では月の植民で考え出されたいくつかの科学技術や手法、設備を使えるかもしれない。


2.極クレーターの氷: 水星の北極 太陽に最も近い惑星であるため、水星の表面は700K(437℃)という鉛を融かすのに十分なほどの暑さに達する。しかしながら、極地域の温度ははるかに低く、永遠に影となるクレーターには氷の堆積物でさえ存在する。また、極の地域では、水星の他の地域で晒されるような昼夜による極端な温度変化も見られないだろう。

3.水星の北極: 太陽に最も近い惑星であるため、水星の表面は700K(437℃)という鉛を融かすのに十分なほどの暑さに達する。しかしながら、極地域の温度ははるかに低く、永遠に影となるクレーターには氷の堆積物でさえ存在するかもしれない。また、極の地域では、水星の他の地域で晒されるような昼夜による極端な温度変化も見られないだろう。

4.太陽エネルギー: 太陽へ最も近い惑星であるため、水星は膨大な量の太陽エネルギーを利用できる。そこでの太陽定数は9.13kW/m2で、地球や月での6.5倍に上る。その軌道と比べて自転軸の傾斜が低い(約0.01°)ので、月と同じく水星にも「永遠の陽射し」(PEL)と呼ばれる、極の高所で太陽からの絶え間ない放射に晒される場所が存在する可能性がある。もし存在していないとしても、この傾斜であれば人工的に建設することも可能である。

5.貴重な資源: 水星の土には、綺麗な核融合の燃料として重要で将来の太陽系の経済の鍵となると思われる、大量のヘリウム3が含まれているのではないかという予測がある。また、その構造から、鉱業に利用できる重要な高価値の鉱石があることも期待される。

6.大きな重力: 水星は月より大きく(水星は直径4879km、月は3476km)、鉄のコアのせいで高い密度も持っている。その結果、水星の表面重力は0.377gで月(0.1654g)より大きく、火星の表面重力と同じぐらいである。長期にわたり低重力に晒されることにより人間の健康に問題があることが判っているため、この観点からは、水星は長期間の人間の居住地として月より魅力的かもしれない。(Wikipedia)


 メッセンジャーの残した謎をベピコロンボが解き明かす

 2015年の4月までメッセンジャーが水星表面の観測を行っていた。次のベピ・コロンボ (BepiColombo) は、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) と欧州宇宙機関 (ESA) の共同プロジェクトによる水星探査計画である。水星の自転と公転の共鳴関係を発見したことや、マリナー10号のミッションを成功に導く複数回のスイングバイを計画したことなどの業績を残したイタリアの数学者、天文学者のジュゼッペ・コロンボ(英語版、イタリア語版)の愛称に因んで命名された。

 メッセンジャーとベピコロンボはどんな違いがあるのだろうか。

 メッセンジャーでは、熱に耐えるためにサンシールドという盾のようなものが取り付けられていた。それによって観測に制限がかかっていた。水星を周回する軌道も熱に耐えることを優先して設計されていて、探査機が水星に最も近づく近水点では200〜400キロメートル、もっとも遠ざかる遠水点では1万5000キロメートル程度という、とてもゆがんだ楕円軌道を周回していた。そのため北半球は詳細に観測できたのですが、南半球の観測は北半球に比べると精度が低かった。

 水星は行くのも大変、行ってからも大変。だからそう簡単には探査機を送ることができない。それなら行く以上は、その時点で最高の観測をやってやろうということで、ベピコロンボでは周回軌道も観測をメインに考えられている。MPOは円に近い楕円軌道で極軌道に投入されて、北半球も南半球も詳しくサーベイすることになっている。

 また、MMOは同じ極軌道ですが、長楕円の軌道に入れることで水星周辺のさまざまな領域を観測することになっている。北極と南極の上空を通る極軌道は、惑星全体を観測するのに適している。

 たとえば地球の衛星である月は、地球を向いている側と反対側とでは表面のようすがかなり違う。地球でも北半球は南半球に比べて陸地が多い。太陽系の天体は、半球だけでは全体像がわかるとは限らない。MPOは近水点400キロメートル、遠水点 1500キロメートルの極軌道から、水星の全球を詳しく調べる予定。

 メッセンジャーとベピコロンボは、同じような時期に計画がスタートした。

 メッセンジャーは、いろいろな制限は承知の上で、まずは先行して水星に行くということを選んだ。計画のスタート当初は、ある意味ライバル関係にあったのだが、メッセンジャーが打ち上げられてからは協力関係にある。メッセンジャーが先に行っていろいろなことを発見する、そしてベピコロンボが後から行って詳細に観測することで、メッセンジャーの発見した謎を解き明かすという役割分担になっている。

 メッセンジャーのデータの解析はこれからも続く。メッセンジャーはたくさんの新発見をもたらした。それによってわからないことだらけになったというのが現状。メッセンジャーは水星表面に落下して探査を終了したが、その直前の時期にかなり低高度で観測を行った。それが今年4月頃のことだから、今後も、たくさんの成果が出てくるのではないだろうか。そういった成果も取り込みながら、ベピコロンボで最高の成果を出すにはどうするのが良いのかという検討を続けていく。


参考 アストロアーツ:メッセンジャーの観測データから作成、水星全球立体モデル


太陽系探査の歴史 (ジュニアサイエンス)
クリエーター情報なし
丸善出版
地球と惑星探査 (図説 科学の百科事典)
クリエーター情報なし
朝倉書店

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