HIVとAIDSの違い

 HIVとは、Human Immunodeficiency Virus(ヒト免疫不全ウイルス)のことで、ヒトの体をさまざまな細菌、カビやウイルスなどの病原体から守る(このことを"免疫"という)のに大変重要な細胞である、Tリンパ球やマクロファージ(CD4陽性細胞)などに感染するウイルスである。HIVは大きく分けて、HIV1型とHIV2型がある。

 HIVがTリンパ球やマクロファージ(CD4陽性細胞)などに感染した結果、これらの細胞の中でHIVが増殖する。このため、免疫に大切なこれらの細胞が体の中から徐々に減っていき、普段は感染しない病原体にも感染しやすくなり、さまざまな病気を発症する。この「深刻な症状のデパート」状態になった時の病名がエイズだ。代表的な23の疾患が決められており、これらを発症した時点でエイズと診断される。

 エイズは、後天性免疫不全症候群(Acquired Immune Deficiency Syndrome; AIDS)のことである。



 HIV感染者は、全世界に潜在患者が3670万人おり(2015年末)、毎年110万人近くが死亡しているエイズ(後天性免疫不全症候群)。現在、抗HIV薬は様々なものが開発され、著しい発展を遂げてきている。基本的に多剤併用療法(Highly Active Anti-Retroviral Therapy:HAART療法)にて治療は行われる。

 ただ完治・治癒に至ることは現在でも困難であるため、抗ウイルス薬治療は開始すれば一生継続する必要がある。HAART療法では、進行を遅らせることはできるが、これまで根本的な治療法はなかった。

 今回、英国5大学の合同研究チームがエイズを引き起こすHIVウイルスを患者の血液から完全に消滅させることに成功したと、2016年10月2日発表した。「サンデー・タイムズ」(2016年10月2日付)や「テレグラフ」(2016年10月3日付)など英国メディアが報道した。


休眠HIVウイルスを活性化、血液からHIVウイルス完全消去

 サンデー・タイムズによると、5大学はオックスフォード、ケンブリッジ、インペリアル・カレッジ・ロンドン、ロンドン大学、キングス・カレッジ・ロンドンの5校。HIVウイルスは、人間の体の免疫系であるT細胞やマクロファージを乗っ取り、働かなくしてしまう。このため、普段は感染してもほとんど影響がない、ささいな病原菌にも発症し重大な症状を引き起こす。そして、全身が「深刻な症状のデパート」状態になった時の病名がエイズだ。

 従来の治療は「抗レトロウイルス療法」と呼ばれ、抗ウイルス薬をいくつか組み合わせHIVウイルスの増殖を抑える方法がとられてきた。しかし、HIVウイルスが潜伏中の細胞には効き目がないという欠点があった。

 今回、合同チームがとった方法は次の2段階になっている。

(1)まず、ワクチンを使い、体内のHIVウイルスが感染した細胞を除去する。

(2)次に、「Vorinostat」と呼ばれる新開発の薬剤を使い、HIVウイルスに感染したT細胞を活性化させる。そして、体中にひそんでいるHIVウイルスを攻撃、消滅させるというものだ。

   合同チームは、この臨床試験を50人の患者に行なった。すると、そのうち1人の44歳男性ソーシャルワーカーの血液からHIVウイルスが完全になくなった。患者の血液からHIVウイルスが消滅したのは世界で初めてだという。

  研究を支援した英国国立衛生研究所のマーク・サミュエル所長は、サンデー・タイムズの取材に対し、「まだ初歩の研究であるにもかかわらず、驚きの成果をあげた」と称賛した。

 しかし、研究チームの1人、インペリアル・カレッジ・ロンドンのサラ・フィドラー医師は、あくまで慎重にこう語っている。「研究室レベルでは、潜伏中のものを含めてHIVウイルスを完全に除去することに成功しました。人体にも効果があるでしょう。しかし、実際の治療行為に使われるまでは、まだまだ長い道のりがあることを強調しておきます」

 これまでHIVウイルスは、治療法を見つけるのがとりわけ困難だった。HIVウイルスは、細胞の中に休眠した状態でとどまることができるからだ。今回、英国の科学者たちが開発した治療法は、ウイルスを休眠状態から誘い出したうえで、体内の免疫システムの反応を起こし、ウイルスを攻撃するというものだ。

 「キック・アンド・キル(kick and kill)」または「ショック・アンド・キル(shock and kill)」と名付けられたこの手法は、臨床試験で成功を収めてきた。2014年には『Cell』誌に、HIVに感染したマウスのウイルスをすべて取り除くことに成功したという研究が発表されている。

 世界保健機関(WHO)の統計によると、2014年には、世界中で3,690万人の人がHIVウイルスに感染しており、2001年の2,980万人から増加している。 最も感染者が多いのが、サハラ以南のアフリカだ。全世界でこれまでに3,500万人が亡くなったが、治癒したことが知られているのはたった1人である。


HIV感染後エイズに至るまでの症状

 HIVに感染した後は、(1)感染初期(急性期)、(2)無症候期、(3)エイズ発症期の経過をたどる。感染初期では、HIVは体内で免疫のしくみの中心であるTリンパ球などに感染し、急激に増殖する。このため、感染者は発熱などのインフルエンザ様症状がみられることもあるが、感染者の体内の免疫応答により、数週間で消失する。

 その後、無症候期に入ります。無症候期は数年〜10年以上続く人もいますが、感染後、短期間のうちにエイズ発症をする人もいる。無症候期の間も、HIVは体の中で毎日100億個くらい増殖しており、Tリンパ球は次々とHIVに感染して平均2.2日で死滅していく。そのため、免疫に大切な細胞が体の中から徐々に減って行く。

 健康な時には血中1μl中に700〜1500個あるTリンパ球が200個未満になると免疫不全状態となり、日頃かかることのない様々な病気にかかりやすくなり、エイズを発症する。

 HIVに感染してから2〜6週間(急性期)には、50〜90%の人に何らかの症状(発熱、リンパ節腫脹、咽頭炎、皮疹、筋肉痛、頭痛、下痢等)がみられると言われている。しかし、いずれもHIV感染に特異的な症状ではないため、HIVに感染したかを調べるためにはHIV検査を受けるしかない。

 HIV検査は全国のほとんどの保健所等で無料・匿名で検査が受けられる。有料だが、医療機関でもHIV検査は受けられる。陰性であればその日のうちに結果が判明する「即日検査」を実施している保健所も増えている。少しでもHIV感染の心配があれば、検査を受けてみよう。

 HIV感染症の治療開始の遅れは、生活の質の低下や生命予後の悪化につながる。しかし、現状では、エイズの発症によって、HIVに感染していたことが分かる例がHIV感染者全体の3割を占めている。エイズを発症して未治療の場合の予後は2〜3年。エイズを発症してからの治療もある程度は奏功するが、その効果は、発症前と比較して明らかに劣る。

 エイズ発症前の無症候期の間にHIV感染を知ることができれば、定期的な医療機関での受診およびフォローアップ検査により、最適な時期に治療を始めることができる。


抗HIV薬の併用「HAART療法」

 現在、HIVを体内から完全に排除できる治療法はないが、抗HIV薬によってウイルスの増殖を抑え、エイズの発症を防ぐことで、長期間にわたり健常時と変わらない日常生活を送ることができる。Tリンパ球(CD4陽性リンパ球)は健康な時には血中1μl中に700〜1500個あるが、それが350個未満になった場合に、HIV療法を開始するか検討する。

 抗HIV薬は、日本では、核酸系逆転写酵素阻害剤10種類、非核酸系逆転写酵素阻害剤3剤、プロテアーゼ阻害剤8剤、インテグラ―ゼ阻害剤1剤が使用可能であり(2008年11月現在)、これらを3剤以上併用して服薬する。この3剤以上併用して服用する治療のことを、HAART療法(はーと療法、多剤併用療法:Highly Active Anti-Retroviral Therapy)と言う。

 HIVの血中ウイルス量が検出限界未満になるように抗HIV薬を組み合わせる。いったん治療を開始したら、特別な場合を除き、治療を継続する必要がある。

 日本では1985年に初めてエイズ患者が報告され、2014年までにHIV感染者16,903件、エイズ患者7,658件、合わせて24,561件の報告があった。

 2014年の新規報告者数は,HIV感染者が1,091件、エイズ患者が455件、合わせて1,546件で、2007年以降、年間1,500件前後の新規報告が続いている。性別・国籍別では、日本国籍男性が88%を占めており、感染経路別では、同性間性的接触が68%、異性間性的接触が19%となっている。

 エイズ発生動向調査は1984年より始まり、厚生労働省エイズ動向委員会が4半期ごとにデータを解析して発表している(http://api-net.jfap.or.jp/status/index.html)。

 世界では1981年に初めてエイズ患者が報告された。2014年には、全世界で3,690万人がHIVに感染しており、1年間に200万人が新たに感染していると推測されている。2000年以降、2,530万人がエイズに関連する原因により亡くなっているが、2015年3月時点で1,500万人が抗HIV治療を受けており、年間死亡者数は最も多かった2004年の200万人から、2014年の120万人と約40%減少している。


参考 WIRED:HIVウイルス、抑制ではなく「根絶」に成功:英研究


完治――HIVに勝利した二人のベルリン患者の物語
クリエーター情報なし
岩波書店
性病検査STDチェッカー【タイプJ(男女共通)】 1項目:HIV(エイズ)
クリエーター情報なし
株式会社アルバコーポレーション

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please