ハイブリッド動物(キメラ)で人間の臓器をつくる

 米国では、人間の臓器を持った羊や豚などのハイブリッド生物を作り出そうとしている。ハイブリッド動物を作る目的は、臓器移植を必要とする患者を救うため。臓器の需要に比べて供給は少ないため、腎臓移植の場合でも2~3年は待つ必要があるとされているからだ。しかも生死に関わる病気にかかった場合、移植が間に合わず死んでしまうケースも多くある。

 報告によれば、「キメラ」とも言うべきハイブリッド生物は人間の幹細胞を動物の胚に注射することで作られていく。キメラ (chimera) とは、同一個体内に異なったDNA(遺伝情報)を持つ細胞が混じっていること。またそのような状態の個体のことをいう。

 研究者らは羊や豚の胚の中に人の幹細胞を入れる。それをメスの家畜に埋め込み妊娠、出産させる。生まれたハイブリッド生物は成長と共に体内で人間の臓器を育て、やがてそれが摘出され、病気の患者に移植されていく。



 実際、報告では2015年、米国の複数の大学において、約20頭の動物にハイブリッド胚が受胎させられたと予想。どれもが公式に発表されていないが、他の科学者が人間の細胞を組み込んだ豚の胚や赤ちゃんを明らかにした例もあるようだ。

 だが、こうした研究は、ヒトと動物が混じるため、倫理的な問題があるとして、日本国内では動物の子宮に戻すことなどが禁止されている。一方米国、カリフォルニア州では、受精卵を子宮に戻して4週間まで培養することが認められている。

 小保方氏の発見した「STAP細胞」。2014年12月19日、理化学研究所は都内で記者会見を開き、検証実験でSTAP細胞を再現できなかったと発表した。小保方晴子氏の退職届を承認し、今回の検証結果を踏まえて、来年3月まで予定していた検証実験も打ち切ると報告した。

 この検証実験では「STAP細胞」の再現には成功したが、この細胞を受精卵に入れて全身の細胞に分化させる「キメラマウス」を作ることには成功しなかった。

 理研は会見で、身体のさまざまな部分の細胞に変化する性質である、細胞の多能性などが確認できなかったと、検証実験結果を説明している。日本の科学界は先の論文は「ES細胞の混入によるねつ造だった」として否定した。「STAP細胞」の証明に必要だったのがキメラ動物だった。


 ヒトの細胞もつブタ胎児の作成に成功、臓器作り見据えた研究

 米ソーク研究所などの研究チームは1月26日、幹細胞技術を使ってヒトの細胞や組織をブタの胎児の中で作ることに成功したと、科学誌「セル」で発表した。

 もっとも、ヒトの臓器を他の動物の体内で作って再生医療につなげる日は当分先だと、論文の主著者であるソーク研究所のジュン・ウー研究員は言う。
「それぞれの種は別々に進化しており、発達プログラムを規定する要素は数多い。つまりある種の動物の細胞を他の種の発育中の受精卵に混ぜることは困難だ」とウー研究員は言う。

 この研究プロジェクトは、臓器の細胞を別種の動物の体内で育てることが可能であることを証明するために始まった。チームはまず、ラットとマウスという近縁種で実験を行った。

 まず、膵臓(すいぞう)のないマウスの胎児を作り、その体内にラットの幹細胞を注入した。同様の実験は、スタンフォード大学の中内啓光教授らがすでに成功させている。

 幹細胞はマウスの体内でラットのすい臓へと育ち、マウスは健康に本来の寿命をまっとうした。さらに研究チームは、同じ方法でラットの目と心臓をマウスの受精卵に移植する実験も行った。

 次に研究チームは、ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を作成し、それをブタの受精卵に注入する実験に着手した。ブタが使われたのは、臓器の大きさや発育に要する時間が人間と近いからだ。

 受精卵はブタの体内に移植されたが、安全性への配慮から、実験は4週間で終了となった。ブタの胎児の中のヒトの細胞を調べたところ、一部は分化を始めて前駆細胞に変わっていたという。だが成功率は、ラットとマウスの実験に比べてずっと低かった。


ヒトのiPS細胞がブタの体内で臓器のもとになる細胞に

 あらゆる臓器や組織に変化するヒトのiPS細胞をブタの受精卵に入れて、双方の遺伝子が入った受精卵を作ることに、アメリカなどの研究グループが初めて成功した。ヒトのiPS細胞はその後、肝臓などのもとになる細胞に変化したということで、将来、ブタの体内で移植用の臓器を作れるようにしたいとしている。

 この研究はアメリカ・カリフォルニア州にあるソーク研究所などのグループが行い、科学雑誌「セル」に発表した。このグループでは人工的に移植用の臓器を作るための研究を進めていて、今回、ブタの受精卵の中にヒトのiPS細胞を入れて、母ブタの子宮に戻した。

 ブタの妊娠期間はヒトの3分の1ほどで、受精卵の成長のスピードが異なるため、双方の遺伝子が入った受精卵を作るのは難しいと考えられていたが、培養の方法が異なる複数のiPS細胞を入れることで、初めて成功したという。

 受精卵はその後成長し、4週間後にはブタの体内で、ヒトの肝臓や心臓などのもとになる細胞に変化したという。一方、脳の細胞には変化しなかった。

 こうした研究は、ヒトと動物が混じるため、倫理的な問題があるとして、日本国内では動物の子宮に戻すことなどが禁止されている。カリフォルニア州では、受精卵を子宮に戻して4週間まで培養することが認められているということで、研究グループでは「倫理のガイドラインに従って研究を重ね、思うようにヒトの臓器を作れるようにしたい」としている。


 倫理問題、日本の研究の状況は?

 動物の体内でヒトの臓器を作り出す研究をめぐっては、4年前の平成25年に国の専門委員会が条件付きで認める見解をまとめていて、現在、文部科学省の委員会が動物の受精卵にヒトの細胞を加えた「動物性集合胚」を動物の子宮に戻すことを認めるかどうか、研究指針の改定を協議している。

 国内では、すでに東京大学の研究グループが、ヒトのiPS細胞が入ったマウスの受精卵を作ることに成功していて、より規制が緩やかなアメリカで、ブタやヒツジの体内でヒトのすい臓を作る研究を進めている。

 東京大学の正木英樹助教は「ヒトと臓器の大きさがほぼ同じブタで、ヒトの細胞が入ったブタの胎仔が出来たということは、将来、動物の体内で作った臓器を移植する研究に向けた大きな一歩だ」と話している。


参考 NHK news: ヒトiPS細胞がブタ体内で臓器のもとになる細胞に


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