熊本地震発生から1年 余震多発、懸念なお

 大きな被害を出した熊本地震から4月14日で1年。熊本地震では昨年4月14日夜と16日未明に2度の震度7を観測し、熊本、大分両県で225人が亡くなった。この日、犠牲者を悼む黙禱(もくとう)が捧げられた。

 今年3月末現在、熊本県の仮設住宅に4179世帯、民間賃貸などを借り上げるみなし仮設に1万4621世帯が暮らす。県内の公営住宅に1026世帯、県外に296世帯が入居。こうした「仮住まい」の被災者は4万7578人にのぼる。

 2回起きた震度7の地震はどのように発生したのか。小規模も含めて余震が多発したが、震源に近い断層でまだ本格的に活動していない地域もあり、次の大地震を懸念する専門家もいる。



 熊本地震は、昨年4月14日に発生したマグニチュード(M)6.5の前震、同16日にあったM7.3の本震の両方で、震度7を記録したことで注目された。観測したのは熊本市の東の熊本県益城(ましき)町だ。前震と本震それぞれを起こした2本の断層帯が地下で交わるうえ、軟弱な地盤だったことが影響したとみられている。

 小規模なものも含めて地震が多発したことも特徴だ。気象庁によると、揺れを感じない小さな地震も含めると、九州全体で1年間に13万回も発生。大部分が熊本地震の余震だ。M3.5以上に限っても339回も起きた。最大震度7を記録した他の内陸型地震の発生後1年間を見ると、2004年の新潟県中越地震(M6.8)は200回台半ば、1995年の阪神大震災(M7.3)は100回を少し上回る程度で、熊本地震での多さが際立つ。

 東北大の遠田晋次教授(地震地質学)は「九州には、分かっている活断層のほか、隠れた小さな断層もたくさんあると考えられる。それが地震の多さにつながっているのではないか。活断層の末端はほうきの穂先のように細かく広がっているという考え方があるが、まさにそんな形で震源が分布している場所もある」と指摘する。


 軟弱地盤はゆれやすい

 小さなものも含めて余震が多発した一方で、比較的大きな余震が少ない地域がある。今後そこが本格的に活動し、大地震が起きるのではないかと心配している専門家も少なくない。

 前震を起こした日奈久断層帯では、南西側の日奈久区間から八代海区間がこれに当たる。調査を進めている産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の宮下由香里・活断層評価研究グループ長は、「特にこの区間がかかっている八代平野は、過去は海だった軟弱な地盤の所が多いので、地震が起きると非常に揺れやすい土地と言える」と注意を呼びかける。

 マグニチュードや震源からの距離が同じであっても、「地盤のやわらかな場所」では地盤の固い場所に比べて「揺れ」が強くなり、震度が大きくなるので注意が必要だ。

 地震の波は、固い岩盤を伝わり表層のやわらかい地盤に入ったときに増幅されるため、地震の「揺れ」である 震度が大きくなる。そのため、震源から遠くても、軟弱な地盤のところでは建物の倒壊などの被害が多くなる。

 新潟県中越地震の被害調査は、住宅や建物の構造や建て方自体よりも地盤崩壊や軟弱地盤が被害を大きくしたと指摘されている。阪神・淡路大震災で震度7を記録した地域も、地震波の増幅が原因だったと指摘されている。

 地震が発生すると、震源地付近が最大に揺れ、大きな災害が発生するとは限らない。新潟中越沖、能登半島、岩手・宮城県などの地震でも震源地から遠く離れた場所で大きな揺れを観測し、岩手県沿岸北部地震では、震源地から約80Km離れた場所が最大震度を記録した。


 関東の表層地盤 5000か所余で想定の1.5倍以上の揺れ

 近い将来、首都直下地震の発生が懸念される関東地方では、ごく浅い表層の地盤によって、木造住宅に大きな影響を与える地震の揺れが、これまでの想定の1.5倍以上に強まる可能性のある地域が5000か所余りに上ることが、国の研究機関の分析で初めて明らかになった。

 去年4月の熊本地震でも表層の地盤によって、局所的に揺れが強まって大きな被害につながったと見られ、専門家は想定の見直しなどの対策が必要だとしている。

 去年4月の熊本地震で、震度7の揺れを2度観測した熊本県益城町では、表層の地盤によって、木造住宅に大きな影響を与える周期1秒前後の揺れが増幅され、局所的に2倍以上に強まっていたと見られることが明らかになっているが、関東地方の表層の地盤については、これまで詳しい調査は行われていなかった。

 防災科学技術研究所の研究グループは、関東地方の1万か所以上で行った高性能の地震計による調査や、およそ28万件のボーリング調査のデータから、関東地方の表層の地盤について250メートル四方ごとに詳しく分析した。

 その結果、関東地方の5000か所余りで、木造住宅への影響が大きいと考えられる周期0.5秒から1秒の揺れが表層の地盤によって増幅され、これまでの想定よりも1.5倍以上強まる可能性のあることがわかった。

 東京・台東区の住宅街では、これまでの2.7倍と都内で最も大きくなったほか、千葉県香取市では場所によって3倍以上となり、震度に換算すると、震度6弱の揺れが震度6強に強まるおそれがあるという。

 防災科学技術研究所の先名重樹主幹研究員は「揺れが大きくなる地域では、従来の被害想定を見直す必要がある。また、個人では自分が住む場所の地盤のリスクを認識して、必要があれば家の補強などの対策を進めることが重要だ」と話している。

 防災科学技術研究所では、年内にも揺れやすさの地図を作成し、公開したいとしている。


 高さや構造ごとに揺れやすい周期

 建物は高さや構造ごとに、揺れやすい揺れの周期がある。一般に低い建物は、がたがたとした短い周期の揺れで、高い建物はゆっくりとした長い周期の揺れで揺れやすくなる。

 一方、地震の揺れには、がたがたとした揺れや、ゆったりとした揺れなど、さまざまな周期の揺れが含まれていて、地盤の性質によって増幅される揺れが異なる。

 例えば固い地盤であれば、揺れはそれほど増幅されずに地表に到達しやすく、軟らかい地盤が厚いところでは周期の長いゆっくりとした揺れが増幅されやすくなる。

 地盤の揺れ方と建物の揺れ方が一致すると、共振と呼ばれる現象が起きて、建物が大きく揺れる。このため、地震による揺れの影響を調べるには、建物が揺れやすい揺れが地盤によって、どのように増幅されやすいかを詳しく知る必要がある。

 防災科学技術研究所は、ごくわずかな揺れを捉える高性能の地震計を使って、関東地方の平野部のおよそ1万1000か所で、1キロ程度の間隔で調査し、揺れの伝わり方から地盤の構造を調べた。

 さらに鉄道や道路を造る際や、建物を建てる際に行われた、およそ28万か所の掘削調査のデータを集めて、各地の地層を調べ、地下およそ100メートルまでの表層の地盤について、250メートル四方ごとに詳しく分析した。

 一方、現在公開されている、これまでの国の揺れやすさマップは、主に山地や低地などの地形を基に推定している。このため、より細かな地域ごとの表層の地盤による揺れの増幅の影響が、十分に反映されていない可能性があるという。

 防災科学技術研究所では先月末までにまとめたデータを基に、現在、年内の公開を目指して新たな揺れやすさのマップの作成を進めている。


 想定より3倍以上に揺れ強まるところも

 今回、NHKでは防災科学技術研究所が3月末にまとめた最新のデータを基に、地震の際に木造住宅に影響が大きいと考えられる周期が0.5秒から1秒の揺れが、表層の地盤によって、どれくらい増幅するかを示した地図を作成し、データをまとめた防災科学技術研究所の先名重樹主幹研究員とともに検証した。

 地図は250メートル四方ごとに、揺れやすさの違いを色で示し、緑から黄色、赤、紫と色が濃くなるほど、地下およそ100メートルまでの表層の地盤によって揺れが強まる可能性を示している。

 その結果、表層地盤によって揺れが強まるエリアは、利根川や荒川の流域周辺、それに川崎市や横浜市などに広がり、関東の平野部のおよそ4分の1の地域で周期0.5秒から1秒の揺れが、これまでの想定より強まる結果となった。

 また、これまでの想定より、揺れが1.5倍以上に強まる地域は5000か所余りに上るという結果となった。

 東京・台東区内の住宅街では、これまでの想定のオレンジ色から3段階上がり、これまでの想定と比べて揺れは2.7倍と都内で最も大きくなっている。古い木造住宅が密集する地域で、先名主幹研究員は地表から10メートル余りまでの深さに軟らかい粘土層が堆積しているためだと分析している。

 商業ビルや住宅が建ち並ぶ東京・港区内の地域でも、場所によって、これまでの2.6倍に揺れが強まる結果となっている。震度に換算すると震度6強の揺れが震度7に強まるおそれがあるということで、先名主幹研究員は、かつて川が流れていた場所で、地下に軟らかい粘土質の土が堆積していると見られることが原因だと分析している。

また、千葉県香取市では場所によって、これまでの3倍以上となり、従来のオレンジ色から最も揺れが強まる紫に変わっている。分析に当たった先名主幹研究員は「自分の住んでいる場所に、どんな地盤リスクがあるかを認識して備えにつなげてほしい」と話している。


参考 NHK news: 関東の表層地盤5000か所余で想定の1.5倍以上のゆれ


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