成長するブラックホール

 宇宙では謎の現象があちこちで起きている。その中でもブラックホールの存在は謎そのものだ。極めて高密度かつ大質量で、強い重力のために物質だけでなく光さえ脱出することができない。

 2012年11月、宇宙観測史上最大かもしれない超大質量ブラックホールを2億2000万光年離れた小さな銀河「NGC 1277」の中心部に発見したことを、米天文学者らが発表した。質量は太陽の170億倍で、銀河の7分の1を占めるという。

 なぜそんな巨大なブラックホールが存在するのであろうか?

 ブラックホールは周りの天体を飲み込み、時にはブラックホール同士が合体して巨大なブラックホールは形成されていく。



 米大学などの「LIGO」研究チーム は、2015年9月14日、ブラックホールの合体により生じた重力波を捉えることに成功した。10億年以上前に2つのブラックホールが互いに強く引かれ合い、激しい抱擁を交わしたことで発生した。この重力波がさざ波のように宇宙空間に広がり、地球を通過したところを天文学者が捉えた。ブラックホールは成長しているのである。

 そんな巨大なブラックホールは、宇宙の初期から存在するという。いったいどうやってできたのだろうか?


 巨大ブラックホール 宇宙誕生初期のガス流で形成

 宇宙空間に存在する重さが太陽の数十億倍というブラックホール、「モンスターブラックホール」は、その誕生の仕組みが謎だったが、宇宙が誕生した初期に吹き荒れていたガスの流れによって生まれたとするコンピューターシミュレーションの結果を東京大学などの研究グループが発表した。

 「モンスターブラックホール」は、質量が太陽の数十億倍もあるブラックホールで、宇宙空間での観測がこの10年余りで相次いでいるが、どのようにしてこうした巨大なブラックホールができるのか謎であった。

 東京大学などの研究グループは、宇宙が誕生してからおよそ10億年後までの時期に、局地的に発生していた猛烈な「ガスの流れ」に注目し、スーパーコンピューターを使って宇宙の進化に与えた影響を調べた。



 その結果、「猛烈なガス」の流れがあると宇宙誕生からおよそ1億年後に星が誕生し、さらに星がガスを吸収して、最後には太陽の3万4000倍ほどの質量を持つブラックホール「中間質量ブラックホール」ができたという。一方、ガスの流れがないと、星の質量は太陽の100倍ほどには成長したが、ブラックホールはできなかったという。

 「中間質量ブラックホール」は、成長すると「モンスターブラックホール」になるとされていて、研究を行ったアメリカのテキサス大学の平野信吾さんは「ガスの流れによって長年の謎だったモンスターブラックホールの起源が説明できた。宇宙の成り立ちの解明につなげたい」と話している。

 研究グループはこのようにブラックホールの誕生過程を明らかにしたほか、ダークハローの形成時期や超音速ガス流の速度分布から、超大質量ブラックホールのもととなる巨大ブラックホールの出現確率を計算。その見積もりは、これまでに発見された超大質量ブラックホールの観測数と一致することが分かった。

 これにより、近年観測された最遠方の宇宙に存在する超大質量ブラックホールの起源と成長が説明可能になったほか、将来的にはさらに初期のブラックホールを発見することで、ブラックホールが成長する様子を実際の観測からも示すことができる可能性があるとした。


ブラックホールの成長が止まる仕組み

 では、ブラックホールはどこまでも永遠に大きくなるのだろうか?

 ブラックホールの成長が「光の力」で止まる仕組みを、京都大理学研究科の上田佳宏准教授や欧米の国際研究グループが突き止めた。

 ブラックホールに吸い込まれるガスが放つ「光の力」が大きくなると、光で周囲のガスが吹き飛ばされ、ブラックホールの“食べる餌”がなくなってしまうからだという。ブラックホールや銀河の成長メカニズム解明の手がかりとなる成果で、英科学誌ネイチャーで28日発表する。

 光さえも吸い込むブラックホールはそれ自体としては光を出さないが、吸い込まれる直前のガスは光を放つことが分かっており、明るく輝く「活動銀河核」として観測ができる。グループは、約400個の活動銀河核を宇宙や地上から観測したデータを用いて、ブラックホールの質量、周囲から出る「光の力」の大きさ、周囲にあるガスの量をそれぞれ求めて解析した。

 その結果、ガスが外向きに放つ「光の力」が、ブラックホールがガスを吸い込む「重力」を超えると、周囲のガスの量が減ることが分かった。その理由として、光が周囲のガスを重力の及ばない外側にはじき飛ばしているからだと推測した。

 上田准教授は「光の力が重力を超えたブラックホールは、やがて吸い込むガスが無くなるために成長が止まり、周囲の光の輝きも消えてしまうと考えられる」と話している。


 超大質量の「モンスターブラックホール」の誕生過程解明

 太陽の10億倍以上もの質量を持つ「モンスターブラックホール」の誕生過程が判明。東大の吉田直紀教授や京大の細川隆史准教授らの研究グループが発表。

 東京大学、京都大学を中心とする研究グループは9月29日、太陽の3万4000倍の質量を持つ巨大ブラックホールの誕生過程を、スーパーコンピュータを用いたシミュレーションから明らかにしたと発表した。これにより、太陽の10億倍以上もの質量を持つ「モンスターブラックホール」の出現を、観測数も含めて説明できるようになったという。

 研究グループは、ビッグバン後宇宙の始まりの頃に存在した「超音速ガス流」に着目。国立天文台天文シミュレーションプロジェクトが運用する「アテルイ」や、筑波大学計算科学研究センターが運営する「COMA」などのスーパーコンピュータを用いてシミュレーションを行い、高速ガス流が乱流ガス雲となり、その中で星が誕生・急成長する様子を再現したという。

 シミュレーションより得られたブラックホール形成時のダークマター分布(背景)とガス分布(内側下3パネル)

 宇宙全体ではガスを含む一般的な物質よりも、ダークマター(暗黒物質)が多く存在。ダークマターはその重力で集積して高密度な領域「ダークハロー」を形成し、宇宙年齢1億年頃に、その質量は太陽の2000万倍ほどにもなるという。

 巨大なダークハローは強い重力で高速のガス流を補足し、高温・高密度で乱流状態にあるガス雲を生成。そこから生まれた原始星へガスが流れ込み、星の表面が膨張していくという。成長した原始星は太陽の3万4000倍の質量を持つ巨大星となった後、ガス雲全体を取り込んでいき、最期には同質量のブラックホールを生み出すという。さらに、こうした巨大ブラックホールはガス降着やブラックホール同士の合体で成長し、太陽の10億倍以上の質量を持つ超大質量ブラックホール――モンスターブラックホールへ進化できるとした。


参考 アストロアーツ: http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/9419_blackhole


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