浮体式洋上発電とは?

 浮体式洋上風力発電とは、洋上風力発電の一種で、洋上に浮かんだ浮体式構造物を利用する風力発電である。水深50mを超えると着床式では採算性が悪化するので、50m~200mの海域では浮体式風力発電機が設置される。

 2011年現在、ノルウェーのスタヴァンゲル洋上10kmに浮かぶ「ハイウインド・プロジェクト」のみが実用化されているが、今後の普及が期待されている。日本は欧州などと異なり遠浅の海岸が少ないため、浮体式の実用化が洋上風力発電普及の鍵になると見られている。日本では、初の実証試験が長崎県五島市の椛島(かばしま)沖で行われている。また、世界初の大規模事業として福島県沖に集合型風力発電所が建設される。

 国土交通省と経済産業省は、国内外で事業展開しやすい環境を整備するため、安全基準の策定、技術開発、国際標準化を進める。外洋では風を遮るものが無いため、陸上や陸地に近い洋上よりも強く安定した風力が利用できるが、水深が深すぎるために着底式の風力タービンが建設できないことがある。浮体式構造物を利用することで、そのような場所でも風力発電を行うことが可能となる。



 浮体式洋上風力発電のコンセプトはマサチューセッツ大学のWilliam E. Heronemus教授が1972年に考えついたものであるが、風力発電の商業性が確立された1990年代半ばに至って再注目され、ようやく実現に向けての本格的な研究が始まった。 既存の着底型の風力タービンによる洋上風力発電は水深30メートルのところまでに限られていたが、水深600メートルまでの外海における風力発電のリソースは比べ物にならないほど豊富であり、また海底電力ケーブルを介して海沿いにある都市まで送電するのは困難なことではない。

 今回、英国スコットランドの「ハイウインド・プロジェクト」が、浮体式洋上風力発電による海上発電所が世界ではじめて営業を開始した。ピーターヘッドという町から約25キロ沖の北海の洋上に、大型の風車が浮かび、発電を行っている。

 この風力発電所を構成しているのは、高さ約250メートル、海中に沈んでいる部分の深さは約80メートルという巨大な5基の風車だ。風車5基で2万世帯分の電力を供給することになっている。

 再生可能エネルギーの推進派は、「ハイウインド・プロジェクト」とも呼ばれるこの取り組みが、同じ技術を導入できる他の地域のモデルになればと期待を寄せている。


 世界初、浮く洋上風力発電所が営業開始、英国

 英国のスコットランドといえば、風光明媚なハイランド地方とタータンチェックのキルトを着た人々を思い浮かべるかもしれない。だが、もうひとつ名物が加わった。浮体式洋上風力発電による海上発電所が世界ではじめて営業を開始したのだ。ピーターヘッドという町から約25キロ沖の北海の洋上に、大型の風車が浮かび、発電を行っている。

 この風力発電所を構成しているのは、高さ約250メートル、海中に沈んでいる部分の深さは約80メートルという巨大な5基の風車だ。

 再生可能エネルギーの推進派は、「ハイウインド・プロジェクト」とも呼ばれるこの取り組みが、同じ技術を導入できる他の地域のモデルになればと期待を寄せている。


 水深700mでも設置できる

 この巨大な風車は、ノルウェーの石油会社スタトイルが自国で組み立て、1600キロほど南のスコットランドに運んできたものだ。スタトイル社は、アラブ首長国連邦(UAE)のマスダール社と提携してこの巨大な構造物を作りあげた。風車は、高さ約16メートル、直径約5メートルの巨大な3つのアンカーによって海底に固定され、洋上で直立する仕組みになっている。

 5基の風車の発電量は30メガワットにおよぶ。

 洋上風力発電所の建設は1990年代から行われてきたが、これまでは水深約60メートルまでの海底に固定する「着床式」だった。しかし、スコットランドの浮体式風車は水深120メートルより深い場所にも固定されており、水深700メートル以上にも設置できるという。

 一度直立して運転が始まれば、風車と町の電力網をケーブルで接続し、スタトイル社によると、風車5基で2万世帯の電力をまかなえるという。

 「風車は海上に浮いていますが、一度直立してしまえば、とても安定します」とスタトイル社の担当者エリン・イザクセン氏は話す。

 イザクセン氏によると、この浮体式洋上風力発電の構想は、2001年にエネルギー技術者たちが考えだしたものだ。2009年に1基のプロトタイプができ、2015年には、スコットランド政府が公式にスタトイル社に資金を提供し、現在北海に浮いている5基の風車の建設に着手した。

 各風車は、6メガワットの電力を電力網に供給できる。すなわち、プロジェクト全体では30メガワットだ。使われていない電力は、すべてリチウム電池に蓄えられる。この電池の容量はiPhone 200万台分以上だ。


 5基で約300億円、候補地には日本も

 地上に設置する風車とは違い、浮体式風車には地形に合わせた調整は不要だ。大量生産できれば、製造コストは安く済む。 とはいえ、現時点での製造コストはまだ高い。

 スコットランドの5基の風車にかかった費用は2億英ポンド。日本円にすれば、約300億円だ。スタトイル社は、その多くをスコットランド自治政府の補助金に頼っている。

 「スコットランドでは、政府が風力発電所の実現を後押ししています」とイザクセン氏。

 英国には、再生可能エネルギー指令という政策があり、2020年までに国の電力の30%を再生可能エネルギーでまかなわなければならない。スコットランド自治政府の報告書によると、すでに消費電力の半分以上は、再生可能エネルギーに由来するものになっている。

 イザクセン氏は、慎重な口ぶりで、スタトイル社にとってこの5基の風車は効率改善に向けたパイロット・プロジェクトだと話す。さらに大きな12メガワットほどの出力を持つ風車も設計中ということだ。現在、世界一大きい風車でも、出力は9.5メガワットしかない。しかし、ここ数年で急速に大型化と効率化が進んでいる。

 イザクセン氏によると、現在のところ、スタトイル社には次の風力発電施設を建設する計画はない。しかし候補地として、日本や米国のハワイ、カリフォルニアなどを考えているという。


 日本の洋上風力発電が巻き返し

 海上に風車を設置し、得られた電気をケーブルで陸上に送る洋上風力発電。日本は欧州に比べて普及で後れを取ってきたが、ここにきて巻き返しの機運が高まっている。発電事業者の参入を促すルール整備が進みつつあるからだ。政府は2016年7月施行の港湾法改正で、港湾内における事業者の公募手順を定めたのに続き、より沖合の「一般海域」についても法整備の検討に入った。事業者が参入しやすくなれば、競争が促され、発電コストの低減などにつながると期待されている。

 昨年の港湾法改正では、港湾管理者が発電事業者を公募によって選べるよう、手順を定めた。併せて、認定された場合の期間が最大10年間から20年間に拡大された。

 日本の港湾は貨物船の寄港地として使われている場合が多い。ただ、港湾周辺には発電所が多く、電力系統に接続しやすいメリットもある。このため、まず港湾での事業化を目指す事業者が少なくない。改正は、こうした事業者にとって大きな後押しとなる。


 沖合の一般海域も有効利用

 一方、一般海域は国有財産法が適用される「公共用財産」で、国が自治体に管理を委託している。各都道府県が独自に条例を定め、占有許可を与えているのが現状。認定期間も3~10年とまちまちだ。

 改正についての検討は内閣府を中心に経済産業、国土交通、環境の4府省が横断的にしているが、占有年数を港湾同様、20年程度に延ばす可能性がありそうだ。長期占有が可能になれば、事業者は事業化の可能性を予見しやすくなり、資金集めも容易になりそうだ。

 ルールの要望は以前から寄せられてきた。経団連は、事業者が一般海域の長期専用を求めた際に、自治体にとって参考となるガイドラインの整備を提言。政府も13年に定めた「海洋基本計画」で「海洋再生可能エネルギーの利用促進」を盛り込み、その一環として洋上風力の普及を図ろうとしている。現在検討中の新法は、そうした流れに沿ったものだ。

 洋上風力は太陽光と違って夜間も発電できる。陸上風力と比べても強い風を安定的に得られるほか、設置面積を広く取れるため風車を大型化しやすい。国土面積が狭く、四方を海に囲まれた日本は、洋上風力向きとされる。


 大型プロジェクト始動

 このため日立キャピタルなどが約1000億円をかけて茨城県の鹿島港で設置を計画するなど、大型プロジェクトが相次ぎ始動。発電設備を手がけるメーカーも絶好の商機ととらえ、三菱重工業とデンマークの風力発電設備大手ヴェスタスの合弁会社、MHIヴェスタスは、日本市場に本格参入し、営業拠点を設けることを検討している。

 ただ、遠浅の海岸が多い英国やドイツには大きく後れを取っている。最近は基礎を海底に固定する従来の「着底式」に加え、沖合のより深い場所に設置可能な「浮体式」の開発が進み、日本はその普及とともに巻き返しを図ろうとしているが、まだまだ差は大きい。それどころか、投資の誘致に積極的な同じアジアの台湾にも後れを取りつつある。

 洋上風力は、建設・維持コストが高くつきがちで、漁業権を持つ漁協の理解を得る必要もある。日本の場合、それらに加えてルールが定まっていないことが障害となってきた。逆に法整備が進めば事業者にとってハードルはかなり下がる。経団連は将来的に浮体式だけで「50兆円規模の経済効果が見込まれる」とする。洋上風力の普及は、環境負荷低減や脱・原発依存にもつながるだけに、一刻も早いルール化が待たれる。


参考 National Geographic news: http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/102000404/


海洋と生物 232 Vol.39-No.5 2017 洋上風力発電と環境影響調査
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