1キログラム物語 1kgはどうやって決められたか?

 「1kg」はどうやってきめられたか?「1kg」はなんと、毎年重くなったり軽くなったりしている!...というのはご存知だろうか?

 といってもその量は、極々わずかなので私たちの生活に問題はない。1メートルだったら、いつ誰が計測しても変わることのない光の速度を基準にしているが、1kgは「国際キログラム原器」という物体の質量を基準にしているから、このようなことが起きる。

 実際にフランスにある「国際キログラム原器」の質量は、表面吸着などの影響により年々増加している。その量は年に0.1µg程度と見られている。1980年代に42年ぶりに国際キログラム原器の洗浄が行われた。これにより国際キログラム原器の質量は約60µg減少した。これは1キログラムの6×10-8倍に当たるので、現行の国際キログラム原器による定義の精度は8桁程度ということになる。



 2007年9月、国際キログラム原器が50µg軽くなっている事が判明した。“50µg”とは指紋が付いた分に相当するという。同時に作られた複製品には異常がなく、また厳重保管されているのに、なぜこのような状態になったかは未だに不明だという。

 物体は物質でできており、物質は他の物質を吸着したり、反応したりするからこのようなことが起きる。かつては1メートルも、国際会議で、基準はメートル原器とすると定められた。1875年にメートル条約が締結され、日本は1886年(明治19年)にこの条約に加入した。メートル条約を受けて、各国で使用するためのメートル原器が30本作られた。

 しかし、同じ理由でメートル原器の長さにわずかな違いが生じてしまった。そこで現在は普遍的な数値として「1m」は光の速さで、真空中を約3億分の1秒に進む距離(正確には1秒の299 792 458分の1)として定義されている。


重さの「キログラム」定義 130年ぶりに見直しか

 「1kg」の方も普遍的な数値を探していたが、なかなか適当なものが見つからない。

 ところが今回、質量の単位「キログラム」の新たな基準を「量子力学」の定数を使って作り出すことに成功したと、つくば市の産業技術総合研究所などの研究チームが発表した。チームによると、来年の国際会議で、およそ130年ぶりにキログラムの定義が見直される見通しだという。

 質量の単位「キログラム」は、1889年以降、フランス・パリの国際度量衡局に保管されている分銅「国際キログラム原器」の質量を1キログラムとして定義されてきたが、表面の汚染などでごくわずかに質量が変動していた。

 このため、産業技術総合研究所などで作る5か国の国際チームは、原子など極めて小さな物質を扱う「量子力学」の定数「プランク定数」を使って1キログラムを定義し直す取り組みを進め、原子と原子の間の距離をレーザーなどで精密に測って重さ1キログラムのケイ素の球体を作成した。

 その結果、「国際キログラム原器」では、その精度が1億分の5だったのに対し、新たな基準では1億分の2.4以下にまで精度を高めることに成功し、来年11月に開かれる国際機関の会議で、およそ130年ぶりにキログラムの定義が見直される見通しになったという。

 産業技術総合研究所の藤井賢一首席研究員は「世界共通の単位の定義に日本が初めて貢献できるのはうれしい。新薬の開発など微小な質量を測定する分野で役立つ」と話している。


 キログラム原器とメートル原器

 今回、質量単位の新定義となる定数を超精密に測定することに成功したのは、産業技術総合研究所(産総研)であるが、産総研のほか海外の研究機関も同様の測定に成功している。

 質量の単位「キログラム」はこれまで約130年もの間、世界に一つしかない金属製の「国際キログラム原器」が基準になってきた。

 国際キログラム原器はプラチナ(白金)90%、イリジウム10%からなる合金でできており、直径・高さともに39mmの円柱である。フランス・パリ郊外セーヴルの国際度量衡局に、二重の気密容器で真空中に保護された状態で保管されている(世界のすべての質量計測の基準であるので、万一にも錆などにより質量が変化しては困る)。国際キログラム原器の質量は "Le Grand Kilo" と呼ばれる。

 国際キログラム原器を元に40個の複製が作られて各国に配布・保管されており、約10年ごとに特殊な天秤を用いて国際キログラム原器と比較されることになっている。日本には1889年に複製のうちの1つ (No.6) が配布され(日本到着は翌1890年)、日本国内ではこれをキログラムの基準に使用している。この日本国キログラム原器は現在、茨城県つくば市の独立行政法人産業技術総合研究所に、国際キログラム原器と同様の容器内に保管されている。日本国キログラム原器は国際キログラム原器に比べて0.170mg重いことが分かっている。

 長さの単位「メートル」は1870年、全世界の単位をメートル法に統一するメートル条約を締結するための会議で、単位系の基準はメートル原器とすると定められた。このメートル原器は白金90%、イリジウム10%の合金で、発案者の名前から「トレスカの断面」と呼ばれるX字形の断面をしている。両端附近に楕円形のマークがあり、その中に3本の平行線が引かれていて、0℃のときの中央の目盛り同士の間隔が1メートルであると定められた。30本のうち、"No.6"の原器が「アルシーブのメートル」の長さに最も近かったため、これを「国際メートル原器」とした。

 1889年の第1回国際度量衡総会において他の原器がくじ引きで条約加盟各国に配布され、国際メートル原器との差が伝えられた。例えば日本に配布されたものは"No.22"で、国際メートル原器との差は0.78 µmであった。

 現在の「メートル」の基準はレーザー技術が進歩により、1983年から光の速度を基準にしている。

 2018年11月の「国際度量衡総会」(CGPM)で産総研などの測定により信頼性が確認された定数が質量単位の新定義として採用されると、長い間使われてきた原器は不要になる。


 プランク定数の超精密測定に成功

 質量の単位の新定義には、約200ある定数の中から量子力学の基本的な定数である「プランク定数」を利用することが2011年のCGPMで決まっていた。プランク定数はドイツの物理学者マックス・プランク博士が1900年に導入した定数だが、その値(推奨値)は最新の知見によりわずかずつ変化してきた。

 産総研のほか、米国やフランス、カナダなどの研究機関も、質量を正確に量る新定義としてふさわしいプランク定数の最新値を定めるための超精密測定を試みてきた。

 産総研は、高い精度のレーザー干渉計と表面分析システムを用いて直径約94ミリのシリコン単結晶球体の形状を1ナノメートル未満の超精密精度で測定することに成功した。この成果は世界最高レベルの精度でプランク定数の最新値を出したことを意味し、キログラムを厳密に定めるのに必要な水準をクリアしたという。

 産総研以外の研究機関が行った定数の値測定でも、産総研が測定した値と近い結果が得られたことから、専門の委員会はこれらの結果を基にプランク定数の値を決定。このプランク定数が質量の新基準の定義として利用できる見通しになったという。 産総研は「世界の基本的な単位の定義に日本が関わるのは初めてで、約130年ぶりになるキログラムの定義改定に貢献する歴史的な成果」としている。

 日本にも国際キログラム原器と同じ寸法・同じ材質で作られた分銅「日本国キログラム原器」が茨城県つくば市の産総研に保存されている。


 普遍的な物理量による定義へ

 1キログラムの当初の定義は「1リットルの水の質量」であった。当初案の定義では「大気圧下で氷の溶けつつある温度(すなわち0度)における水について」となっていたが、その後、水の体積は温度依存することが分かり、結果として定義は、1790年に「最大密度(=液温摂氏4度)における蒸留水1立方デシメートル(1リットル)の質量」と定義された。しかし、水の密度は気圧と温度に影響され、気圧にはその因子に質量が含まれている。すなわちこのキログラムの定義には循環依存が含まれていた。

 他のSI基本単位は普遍的な物理量に基づく定義に改められているのに対し、キログラムだけが人工物に依存する単位として残ってしまった。キログラム原器のような人工物による定義では、経年変化により値が変化し、また、焼損や紛失のおそれもある。1970年代から、普遍的な物理量によるキログラムの定義が検討されてきた。

 現在の定義に変わる新しい定義の候補として、アボガドロ定数やプランク定数などを用いた各種の提案がある。

 その中で最も有力なのが、一定個数のケイ素 (Si) 原子の質量をキログラムとするという原子質量標準である。アボガドロ定数の値をより正確に求めることができれば、そこからケイ素1キログラムに含まれるケイ素原子の数を決定することができる。ケイ素が採用されたのは、ケイ素が不純物を含まない単結晶を作りやすいからである。現在、国際度量衡委員会 (CIPM) が中心となって、各国の研究機関でケイ素を用いてアボガドロ定数の不確かさを少しでも小さくするための研究が行われている。

 現在のアボガドロ定数の値 NA = 6.022 141 5(10)×1023 mol-1(CODATA2002年推奨値。括弧内は標準不確かさ)には、7桁目に不確かさがある。現行の定義による精度は8桁なので、あと1桁精度を上げることができれば、キログラムの定義を原子質量標準に置き換えることができる。なお、アボガドロ定数のCODATA2002年推奨値は、日本の産業技術総合研究所(産総研)とドイツの物理工学研究所 (PTB) によって報告されたもので、各研究機関からの報告の中で最も信頼性が高いとして2002年の推奨値に反映されたものである。


 「グラム」ではなくなぜ「キログラム」か?

 ところで、なぜグラムではなくキログラムが、SI基本単位とされたのだろう?

 フランスにおいて1790年当時フランス王ルイ16世の号令の元、新しい時代の度量衡としてメートル法を策定すべく、主に科学者達で構成された委員会が結成された。当時その委員会において、質量単位のモデルとして1メートルの10分の1で構成された立方体の升に入った水の質量、すなわち1リットルの大気圧下で氷の溶けつつある温度(0度)における水について、grave(グラーブ、記号G)と名称が与えられた質量単位を標準とする事が提案された。その語源はgravity(重力)から由来したものである。

 当初はこのgrave(グラーブ)が質量の基本単位として原器が作られる予定であった。またこれを元として、1graveの1000分の1を別の質量単位名でgramme(グラム)ないしgravet(グラベト)、また1graveの1000倍を別の質量単位名を用いてtonne(トン)ないしbar(バー)と称するように名称が考案されたりもした。

 そしてやがて来るフランス革命の波に襲われ、科学者達の研究は途中で中断するのだが、その後、新しい革命政府が樹立されると再びメートル法が注目されるようになった。しかしそのフランス革命の後、質量の単位は大きな転機を迎える事となる。


 フランス革命の影響

 1795年の(暫定)メートル法制定当初、革命後の共和政府が当初の質量の基本単位をgrave(グラーブ)から、その1000分の1を表すgramme(グラム)へと変更したのである。

 理由は諸説あるが、有力な説の一つとして、1graveという大きさの質量が当時、メートル法以前の昔から使われてきたいくつかの質量の旧単位と比較しても、大きな単位であるということがある。その為フランスの科学者達は、グラーブは日常的に使う質量単位としては大き過ぎるであろうと危惧し、フランス共和政府と共に、質量の基本単位は1グラーブの1000分の1である1グラムを質量標準として使用すべきであると決定したという説があるが、真相は定かではない。

 しかしながら質量標準を1グラムとすると非常に使い勝手が悪く、とりわけ1グラムを定義した原器を作るにはあまりにも小さすぎた。そこで共和政府は基本単位とした1グラムの1000倍、即ち当初の予定通り1graveの質量原器を作る事を決めた訳であるが、その名称が使われる事はなくグラムの1000倍を表す為に接頭辞のキロ (k) をつけた名称、"キログラム (kg)"の名前を冠した原器を作る事と決めた。

 これはあくまでも質量の基本単位をグラムにした事に起因する。こうして当初の質量単位grave(グラーブ)の名称は姿を消すのである。

 これが後の1799年に作成された"確定キログラム原器"となった。こうしてメートル法制定当初、長さの単位をm(メートル)、質量の単位をg(グラム)とした基本単位が出来上がった。しかし、メートルとグラムとではその規模が異なる。


 CGS単位系とMKS単位系

 すなわち、グラムで量られる質量を持つものはセンチメートル台の大きさであることが多く、逆にメートルで測られる大きさを持つものはキログラム台の質量を持つことが多い。そのため、メートルの代わりにセンチメートルを採用し、センチメートル・グラム・秒を基本単位とする単位系が構築されるようになった。これがCGS単位系である。

 しかし、電磁気学の発展に伴い、CGS単位系では不都合が生じるようになった。CGS単位系を元に電磁気学の単位を作ると、値が大きくなってしまう。これは、電磁気学の現象を記述するには、センチメートル・グラムでは小さすぎるということである。

 そのため、科学で使われる単位系の主流はメートル・キログラム・秒を基本単位とするMKS単位系へと移行した。また上記に記された1889年のキログラムの新定義により、それ以降のメートル法において質量の基本単位としての礎を築いた。MKS単位系を更に発展させた国際単位系 (SI) においても、キログラムが基本単位として引き継がれている。(出典:Wikipedia) 


参考 サイエンスポータル: http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2017/10/20171026_01.html


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