ヒトを動かすエネルギーの正体は?

 車のエンジンはガソリンを燃焼し動くが、ヒトはどうやって動いているのだろう?

 筋肉を直接動かすエネルギー、答えは「ATP」という物質。これは、アデノシントリフォスフェート、「アデノシン三リン酸」という物質。このエネルギーは非常に効率がよく完全燃焼し、ADP と水が生まれるのみとなる。では、ATP の元となるものは何だろう?

 それが、人の食物から得られる栄養素「ブドウ糖(グルコース)」である。細胞基質中には「解糖系」という代謝経路があり、やたら速い ATP 生成能力を持っている。筋肉で使われる ATP のほとんどが、この「解糖系」で作られた ATP を使っていると言っても過言ではない。もともとあった ATP が2つ消費され  4つの ATP が生成される。この解糖系の過程では酸素は必要としない。



 解糖系で「ブドウ糖」が分解されて「ピルビン酸」が生成される。「ピルビン酸」は、「酸素がない状態」だと「乳酸」になるが、「酸素のある状態」であればミトコンドリアに入り、ミトコンドリアのマトリックスで「アセチルCoA」となる。脂肪酸が β 酸化されることによっても「アセチルCoA」が生成されるが、この「アセチルCoA」がミトコンドリアの「TCA回路」に組み込まれ、酸化されることによって「36ATP」ものエネネルギーが生成される。いかに酸素が重要かが分かる。

 このように、ヒトを含む哺乳類は酸素呼吸によってエネルギーのほとんどを産生しており、生命活動を維持するためには酸素が必須であると考えられていた。最近では地中や海中など酸素の少ないところで生活する生物がいて、何をエネルギー源にしているかで話題になっている。例えば熱水噴出孔のバクテリアの大部分は嫌気的に金属を還元する「テルル酸呼吸」によりエネルギーを得ている。またメタン菌は、二酸化炭素と水素からメタンガスを生成する化学変化から、エネルギーを得ている...など、多様な生物による多様な「呼吸」法が発見され注目されている。

 今回、酸素の代わりに硫黄代謝物を利用した「硫黄呼吸」が、生物のエネルギー産生に関与していることを世界で初めて発見された。その生物は微生物ではなく、我々ヒトを含む多くの哺乳類である。

 この発見は、これまでの常識を覆し、老化防止・長寿、呼吸器・心臓疾患やがんの診断・予防・ 治療についての新薬の開発など様々な分野で応用が期待される。


東北大、ヒトを含む哺乳類における「硫黄呼吸」を発見

 東北大大学院医学系研究科の赤池孝章教授らの研究グループが、ヒトを含む哺乳類が硫黄代謝物を利用した新規なエネルギー産生系(硫黄呼吸と命名)を持つことを明らかにしたことを発表した。この成果は10月27日、英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。

 生物は、生命活動を維持するために酸素を利用してエネルギーを産生している。 ヒトを含む哺乳類は、酸素呼吸によってエネルギーのほとんどを生産しており、生命活動を維持するためには酸素が必須であると考えられていた。しかし、筋肉など酸素消費が大きい組織、造血幹細胞、悪性度の高いがんでは低酸素状態になることが多く、酸素に依存しないエネルギー産生経路が存在する可能性が示唆されてきた。

 赤池教授らのグループはこれまでに、硫黄が含まれているアミノ酸(システイン)に、さらに硫黄が付加された物質(システインパースルフィド)が、哺乳類の生体内で多量に存在することを明らかにしてきた。

 システインは側鎖にチオール基 (-SH 基)を持った含硫アミノ酸である。システインパースルフィドは、 チオール基にさらに過剰な硫黄が結合した構造を持っている。この僅かな違いにより、システインパースルフィドは酸素の代替物として働くことができる。

 今回、東北大学加齢医学研究所の本橋ほづみ教授、生理学研究所の西田基宏教授らとの共同研究により、システインパースルフィドのミトコンドリアにおける新しい代謝経路を発見し、硫黄代謝物がエネルギー産生の過程で酸素の代わりに利用されていることを明らかにした。


 硫黄代謝不全マウスの成育

 これは、従来の定説を覆す画期的な発見であり、この新しいエネルギー産生経路を「硫黄呼吸」と名付けた。さらに「硫黄呼吸」に必要な硫黄代謝物を処理できないマウスを作製したところ、正常のマウスに比べ、成長が著しく悪くなることを見いだした。このことから「硫黄呼吸」は生命活動に極めて重要な役割を果たしていると考えられる。

 今後、「硫黄呼吸」を自在に調節し、生体内のエネルギー産生量を増加させることで、老化防止・長寿や慢性難治性の呼吸器や心疾患の予防・治療法の開発につながることが期待される。また、酸素の少ない状況でも増殖できる悪性腫瘍(がん)は、「硫黄呼吸」を積極的に利用していることが予想されるため、硫黄代謝物をがんのバイオマーカーにした診断法や、「硫黄呼吸」を制御することによるがん予防や治療法の開発も期待される。


 硫黄の栄養と働き

 硫黄というと、温泉の「二酸化硫黄」や「硫化水素」など、臭い毒ガスというあまり良いイメージを持つ人はいなかったのではないだろうか?ましてや、食品として考えた人の少ないのではないだろうか?

 しかし、確かに硫黄は体に必要な主要ミネラルの一つである。ミネラルは、炭水化物・タンパク質・脂質の三大栄養素にビタミンを加えた五大栄養素として、その摂取が重要視されている。

 ミネラルは自然界に存在し、人間の身体の中では決して作られないので、必ず食品から摂取する必要があります。約100種類ほどあるミネラルの内、人間の身体の中で必要な働きをするために摂取しなければならないミネラルの数は16種類で必須ミネラルと呼ばれており、硫黄はその中の一つである。

 必須ミネラルは、1日に摂取しなければならない量が100mgを越えると「主要ミネラル」と呼ばれ、100mg以下で良いミネラルは「微量ミネラル」と呼ばれている。硫黄は、主要ミネラルであり、体内では、カルシウム・リンについで多く存在している。

 硫黄とは、タンパク質やアミノ酸の構成要素で、他の元素と結合する働きのあるミネラル分。硫黄は、単独ではなく「シスチン」というアミノ酸に含まれているので、肉を食べていればあらため摂取する必要はない。

 体内に摂取された硫黄は主に、身体や髪の毛・爪・軟骨などの組織をつくる重要な物質となる。硫黄の主な働きは、ビタミンB群と共に糖質・脂質の代謝に働きかけ、有害なミネラルの蓄積を防ぐなどの有益な働きをする。その他、角質を軟化させる作用や、殺菌、殺虫作用があるため、ニキビ予防や肌を美しくする効果、水虫や疥癬などに効果がある。

 更に、硫黄は体内の代謝を活発にして毒素を取り除く働きもあることから、体調を崩していたり体力が低下している人に、微量の硫黄を与えると回復しやすいとも言われている。


 硫黄の栄養が多く含まれている食品

 硫黄を多く含む食品は、すなわちシスチンを多く含む食品ということになり、牛肉、羊肉、牛乳、小麦粉、大根やニラ、玉ねぎなどに含まれている。但し、肉類でシスチンを摂取する場合は、他の野菜と組み合わせて摂取することが効果的とされている。

 硫黄は肉類、魚類、大豆、卵、にんにく、たまねぎ、ニラ、大根などに多く含まれています。臭いの強い食品に多く含まれている傾向があります。アミノ酸の中でも硫黄を含むものを含硫アミノ酸といいます。含硫アミノ酸にはメチオニン、システイン、ホモシステイン、タウリンなどがある。

 メチオニン: 肝機能を高め、ヒスタミンを制御するのでアレルギーの予防や緩和に働く。肉類、マグロ、カツオ、乳製品、大豆製品、全粒小麦などに含まれる。

 システイン: 髪や爪を丈夫にします。メラニンの生成を抑えるのでシミの予防効果がある。解毒作用もあり。肉類、乳製品、鮭、小麦粉に含まれる。

 タウリン: 肝機能を守り、カキ、いか、たこに多く含まれている。

 ホモシステイン: メチオニンを活性化するのに必要な必須アミノ酸だが過剰になると脂質を酸化させ動脈硬化などの悪影響が出る。

 硫黄は食品、特に野菜の中でも何らか成分と結合して硫黄化合物として存在する。それらの硫黄化合物の多くは人体に有益な成分として、注目されているものがある。

 アリシン: ニンニク、タマネギ、長ネギ、ニラ、ラッキョウなどに含まれていて、抗菌作用に優れており生活習慣病の予防や疲労回復に効果がある。

 アリイン: 生のニンニクに含まれるスルホキシドという成分で、アリシンの前駆体。

 アホエン: ニンニクをすりつぶして温油で加熱すると生成される成分で強力な抗酸化作用、抗血栓作用、抗菌作用があり認知症予防にも効果があるといわれている。抗酸化作用がつよいのでがん予防効果もある。

 イソチオシアナート: がん抑制作用、殺菌作用、食欲増進作用があるといわれている。大根、わさび、にんにくなどをすりおろした時に生成される辛味成分。

 アリルメチルトリスフィド、ジアリルスルフィド: 血液の凝固を防ぎ血栓、脳卒中や心筋梗塞なふぉを予防する。ニンニク、タマネギなどに含まれる。

 ニンニクは、調理をしても食べても強い臭いがあり、場所によっては敬遠される食品だが、抗酸化物質の宝庫のような食品。ニンニクの臭いの元こそ硫黄なのだ。


参考 マイナビニュース: http://news.mynavi.jp/news/2017/10/31/019/


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