温泉はどのようにしてできるのか?

 温泉ができるには何が必要だろうか?答えは簡単「水」と「熱」。以前から「熱」は、火山活動を起こす「マグマ」に由来するものと考えられてきた。火山の近くに温泉が多いことを考えてみても、火山と温泉が深く関係していることは納得できまる。

 しかし「水」に関しては、有力な2つの説が論争を繰り返してきた。ひとつめは、温泉の湧出量が降水量に伴って変化する点に目をつけた「循環水説」(雨水が地下で温められて地表に戻ってくるという説)、ふたつめは、温泉の湧出量が降水量よりはるかに多いことに目をつけた「処女水説」(温泉の水は雨水ではなく、マグマから出てきた水であるという説)である。

 現在では、その両方が正しかったということが分かっている。つまり、雨水(海に近いところでは海水も)とマグマの水が混合したものが温泉水というわけだ。



 もちろん火山とは無関係の温泉もあって、太古の海水が地底に閉じこめられた化石海水がボーリング(調査のために地表から地下に向かって穴を掘ること)の際に出てきた温泉や、放射性元素の崩壊熱(訳注)や地層運動などの摩擦熱で地下水が温められた温泉などがそうだ。日本にはこのような温泉は少なく、多くは火山活動に関係している。

 では、マグマに含まれる水はどこから来たのだろうか?それは、プレートが沈み込む際に一緒に取り込まれた海水であると考えられている。2013年5月、京都大学の川本竜彦助教らの研究グループは、天然のマントルの岩石を観察し、沈み込むプレートがマントルに海水を運んでいると提案した。

 今回、広島大学大学院理学研究科の畠山航平さんと片山郁夫教授らの研究グループは、このプレートが運ぶ海水によって、将来海がなくなってしまうという驚くべき研究成果を発表した。


 海の水はあと6億年で干上がってしまう?

 46億年前に地球が誕生してから10億年後までには海ができ、そこで生まれた生物が、やがて陸に上がってきた。海はそんな大昔から、つねに地球とともにあった。だが、地球には海があるものだという「常識」は、たんなる思い込みなのかもしれない。広島大学博士課程の畠山航平(はたけやま こうへい)さん、片山郁夫(かたやま いくお)教授らがこのほど発表した論文によると、海の水は、予想より速いペースで地球内部に取り込まれているという。単純に計算すると、6億年後にはなくなってしまうペースなのだ。

 地球上の水は、姿を変えながら地球全体をめぐっている。海の水が蒸発し、それが雨となって降ってくる。陸に降った雨は川になって、海に注ぐ。この循環に、世界の海を旅する深層の海流を含めて考えたとしても、ひと回りするのに必要な時間は、せいぜい数千年だ。

 一方で、これよりはるかに長い時間をかけた水のめぐり方もある。畠山さんらの研究は、こちらのめぐり方に関するものだ。地球の表面は、全体が十数枚の巨大なプレート(岩板)に分かれている。これらは互いに押し合ったり横にずれたりしていて、陸地が載っている大陸プレートの下には、それより重い海洋プレートが潜り込んでいる。日本列島が載っているプレートの下にも、東から太平洋プレート、フィリピン海プレートが潜り込んできている。

 この海洋プレートは、上面が海底なので海水を含んでいる。海水を含んだまま地球の内部に潜り込んでいくので、そのぶんだけ海の水が減ることになる。海洋プレートは、何百万年、何千万年かかって潜り込むので、こちらは時間スケールの長い水のめぐり方だ。この海洋プレートの水の含み方を新たな実験で再考したのが、畠山さんらの研究だ。


 アウターライズ断層が海水を取り込む

 海洋プレートは、性質が違う上下の2層でできている。海水に接している上側は、厚さが5キロメートルほどの「地殻」。下側は、それより深くに広がっている「マントル」の最上部だ。海洋プレートが大陸プレートに潜り込む部分は海底の深い溝になっていて、「海溝」とよばれている。海溝の周辺では地震が頻発する。この地震を引き起こす断層のタイプのひとつに、「アウターライズ断層」がある。

 アウターライズ断層は、海溝より沖の海底にできる亀裂だ。この亀裂から、海水が海底下に浸み込んでいく。海水に接している地殻に水が含まれていることは従来から分かっていたが、最近になって、海水は、亀裂が及んでいるマントルにも含まれていることが、地震波の観測から明らかになってきた。しかし、このマントル上部に何%くらいの水が含まれるのかという具体的な点が、よく分かっていなかった。

 地下のマントルが水を含むと「蛇紋岩」という岩石になり、過去の地殻変動で地表や海底に現われていることがある。畠山さんらは、千葉県の房総半島やマリアナ海溝の近くで採取された蛇紋岩を使って、マントルが地下でどれくらいの水を含んでいるのかを、実験で求めた。

 その結果、海洋プレートのマントルは約2.3%の水を含むことができ、地殻が含む水分の約2.1%に匹敵することが分かった。地殻の厚さが5キロメートルくらいであるのに対し、その下のマントルに水が浸み込む深さは約7キロメートル。海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込むあたりでは、上層の地殻にも下層のマントルにも、同じくらいの量の水が含まれていることになる。つまり、海底にしみこんだ海水は、これまで考えられていた速さの2倍のペースで、地球内部に吸い込まれていく。

 この水の量は地球全体で毎年23億トンくらいになり、現在の海から毎年この量が失われていくとすると、約6億年で海の水はなくなる計算だという。

 こうして大陸の下に潜っていった海洋プレートからは、水が絞り出され、上昇したマグマと一緒に地上に放出される。だが、その量は、地球内部に潜り込む水に比べると、はるかに少ないとみられている。

 やがて海の水はなくなってしまうという説は、以前からあった。畠山さんらの研究で、それがいっそう現実味を増した。


  マントルは海水を地球深くまで取り込む

 岩石に含まれた状態で地球内部に貯蔵されている水が、これまで考えられていた以上に地球内部の奥深くまで運ばれている可能性がある...と愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター(GRC)などの研究グループがこのほど発表した。超高温高圧でも安定した状態で水を地球内部のマントル深部へと運ぶことができる新しい結晶構造の「水酸化鉄」を発見した研究成果で、研究論文はこのほど英科学誌ネイチャーに掲載されている。

 研究グループは、大量の水が存在すると推定されながら詳しいことが分かっていない地球深部での水の循環を知る新たな手掛りになると期待している。

 地球の構造は表面から中心に向かって地殻、マントル、核(外核と内核)に大別される。地殻の一部である海底を形成する岩板は「海洋プレート」と呼ばれ、プレート運動によってマントルへと沈み込む際、大量の海水を一緒に引き込むと考えられている。研究グループなどによると、このような沈み込み帯では、その場所特有の高温高圧によって海洋プレートの岩石と水が反応して、水を含んだ鉱物「含水鉱物」がたくさんできる。

 しかし含水鉱物は、さらにマントルの深くまで運ばれると圧力に耐え切れずに水を放出する「脱水分解」を起こすと考えられていた。例えば、含水鉱物の一種で鉄と水からなる「水酸化鉄」はこれまで、マントルの深さ1,900キロメートル、80万気圧の地点まで沈み込むと、脱水分解を起こすとみられていた。

 愛媛大学GRCの西真之(にし まさゆき)助教、桑山靖弘(くわやま やすひろ)助教(現東京大学大学院理学系研究科)、土屋旬(つちや じゅん)准教授、土屋卓久(つちや たく)教授らは、まず、スーパーコンピュータ「京」などを用いて、水酸化鉄の結晶構造の理論計算を行なった。その結果、深さ80万気圧の環境では水酸化鉄は脱水分解するのではなく「パイライト型」と呼ばれる結晶構造に変化する、という解析結果が出た。


 地球の内部に貯蔵できる水の質量は海水の数倍

 この結果を受けて、実際に水酸化鉄にマントル深部に相当する圧力をかける実験を実施したところ、実際にパイライト型の結晶構造になり、その構造中に水の存在を確認した。パイライト型は高密度の構造であることが知られ、今回見つかった水酸化鉄は、これまで知られている含水鉱物の中でも最も高密度な鉱物という。

 実験では、パイライト型の結晶構造の水酸化鉄は、140万気圧でも構造を保つことが示された。これらのことから西助教らは、パイライト型の水酸化鉄は140万気圧に相当するマントル最深部の2,900キロメートルでも脱水分解せずに水を運んでいる可能性が高い、としている。この研究成果は、含水鉱物は1,900キロメートルで脱水分解するという従来の学説を覆すものとなる。

 研究グループなどによると、地球の表層の7割は海に覆われているが、地球の内部に貯蔵できる水の質量は海水の数倍に及ぶと推定されている。このため水は地球表層だけでなく、地球の内部でも重要な成分の一つで地球進化に大きな影響を及ぼしていると考えられている。今回の研究で明らかになった新構造の水酸化鉄は、マントルと核の境界の高圧力下でも存在する可能性が高く、地球深部での水循環やマントルと核との境界でのマントルの上昇など地球深部の運動などに大きな影響を及ぼしていると考えられるという。


参考 サイエンスポータル: http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2017/11/20171101_01.html


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