地球の磁場とは何か?

 磁場とは、磁極に対して力を及ぼす空間のこと。磁場は永久磁石、電流を流したコイル、ソレノイド、電磁石などによってつくられるが、その強さは磁極からの距離の2乗に反比例する。磁場内において、その点における磁場の接線方向に一致する曲線を磁力線line of magnetic forceといい、磁力線の密度はその点における磁場の強さに比例している。

 地球にも磁場がありこれを地磁気という。地磁気は、地球により生じる磁場(磁界)である。地球の磁場は、概ね磁気双極子で(つまり、地球の中心に仮想的に置かれた一つの棒磁石として)近似でき、現在は北極部がS極、南極部がN極に相当し、それぞれ北磁極と南磁極と呼ぶ。

 地磁気の磁力線は、赤道付近を除けば、地面に対して平行ではなく、地面と斜めに交わるかたちになっている。地球の磁場は、主に地球(電離層等を含む)に流れる電流に起因する。地磁気の発生原因は、今でも完全には解明されていない。



 地磁気の成因の99%は地球内部にあり、1%は地球外(太陽表面から荷電粒子等)にある。ガウスは、地磁気のデータから、地球の磁場の成因の99%は地球内部にあることを証明し、80%は双極子(棒磁石)で説明できることを明らかにした。

 では、なぜ地球は棒磁石になっているのだろうか?

 これには、地球そのものが永久磁石であるという説と地球内部の電流による電磁石であるという説の2つがあるが、永久磁石になるには他に磁力の存在が必要であり、その両方が関係すると考えられている。

 地球内部が電磁石になっている理由は、地球内部の鉄やニッケルを多く含んだ核(コア)の流動物質が自転と熱対流によって回転することで電流を生じ、この電流が電磁石あるいは発電機(ダイナモ)のように磁場を生成・維持すると考えられている。これを流体ダイナモ説(ダイナモ理論)という。


 天体と磁場の関係

 地球に地磁気という磁場があることは理解できるが、他の天体ではどうなっているのだろうか?

 太陽系から話を始めよう。地球以外の惑星でも、このダイナモ効果によって磁気が発生すると考えられるが、 火星における観測結果では地磁気にあたる磁場の存在は無い。この原因は、火星が地球よりも小さいために核が早く冷えてしまい核の流動が起こらなくなってしまったためと考えられている。

 これに関連してNASAのマーズ・グローバル・サーベイヤによる観測では、 地球の古地磁気にあたる岩石中の磁場の痕跡が発見されており、火星の核が まだ熱かった時代にダイナモ効果が発生していた証拠ではないかと言われている。

 一方、木星型のガス惑星では、地磁気よりも遥かに大きな磁場が存在する。木星型惑星の中心部では高圧によって液体水素が存在すると考えられているが、 この液体水素は金属のように電気を通すため、高速で自転する惑星運動によって 大きな電流が発生し惑星磁気圏を形成している。

 木星の磁気圏は、バンアレン帯などで知られる地球磁気圏よりも数十倍も大きいことが観測されている。 地磁気に相当する磁場の惑星赤道上での値は、木星400×10-6、土星20×10-6、天王星30×10-6テスラとの報告がある。

 太陽表面の磁場は、惑星磁場とは性質が異なる。太陽黒点が磁場の影響によって変化することは近年の太陽観察で有名になった。太陽では星の大気を構成するプラズマが 流動することで磁場が発生すると考えられている。従って太陽表面の磁場は、地球のように南極と北極にNとSの磁極が有るような構造ではなく、プラズマ流に対応した 多磁極の構造になっている。また磁場の大きさは0.1~1Tのオーダと地磁気に較べてかなり大きくなっている。その他の恒星も太陽と似たメカニズムの磁場が存在すると考えられている。

 現在知られている範囲で、最も大きな磁場を有する天体は中性子星。ご存知のように、中性子星は超新星爆発の残骸で、周期的に強力なX線を放出するパルサーとして観測される。このX線放出のメカニズムから予測される磁場の大きさは1兆テスラとも言われている。実際の観測ではヨーロッパ宇宙機構のX線観測衛星ニュートンの測定結果が、上記の理論予測の30倍以上弱い磁場である可能性が報告されているが、いずれにしても我々の身の回りで到達しうる磁場と比較すると、遥かに大きな磁場であることには変わりない。


 火星にねじれた磁場の尾が存在

 今回、火星探査機「メイブン」の観測データから、火星に弱い磁場の尾があり、その尾が太陽風による磁場との相互作用でねじれていることが明らかになった。尾を形成するプロセスによって、火星大気の宇宙空間への流出が引き起こされている可能性があるという。

 火星探査機「メイブン」の観測データから、火星には太陽風との相互作用でねじれた磁場の尾(磁気圏尾部)が存在することがわかった。この尾は、固有の磁場を持たない金星、内部から発生する磁気圏を持つ地球それぞれの磁気圏尾部の特徴を合わせたような独特のものだという。

 NASAのGina DiBraccioさんたちの研究チームでは、「磁気リコネクション」(磁力線のつなぎ替え)と呼ばれるプロセスによって磁場の向きが太陽風に沿った角度から45度ねじれることを理論的に予測していた。メイブンの観測データはこの予測とよく一致していたため、磁気リコネクションが火星の磁気圏尾部の形成に大きな役割を果たしている可能性が高いと見られる。

 火星の複雑な磁場環境を示したイラスト。太陽風に沿って形成された磁場(黄色の線)が火星の表面磁場(青い線)のうち正対方向のものとぶつかって「磁気リコネクション」(火星左側の白く光った部分)が発生している。つなぎ換わった磁場(赤)は磁気圏尾部を通って火星表面から宇宙空間に伸びる。


 磁気リコネクションと大気の流出

 火星は数十億年前には生命に適していた環境だったが、その後大気と水が失われ不毛の地となったと考えられている。火星を全体的に取り囲んだ磁場も、今では弱い磁場が部分的に残っているのみだ。今回の研究では、こうした火星地表の磁場が太陽風で運ばれてきた磁場と磁気リコネクションにより結合することで、磁気圏尾部が形成されたとしている。

 磁気リコネクションにより、一部の大気の流出も起こる。地表磁場と太陽風磁場がつながるため、上層大気の荷電粒子が磁力線に沿って宇宙空間に逃げ出してしまうのだ。ゴムがぱちんとはじけるように磁力線がつなぎ変わることでエネルギーが放出され、磁場圏尾部を通して荷電粒子を活発に押し出す。

 火星表面には部分的にしか磁場が存在しないため、その磁気圏尾部も、磁場がない金星、全球的な磁場を持つ地球、それぞれのものを合わせた特徴を持つと予測されていたが、メイブンの観測から初めてこのことが確認された。

 今後研究チームでは、流出粒子の分布が磁気リコネクションの発生領域と一致するかを磁力計以外の搭載データから調べることで、磁気リコネクションが火星大気の流失に大きな役割を果たしていることを確認する予定だ。

 磁力計データの調査も引き続き行い、火星の自転にともなう表面磁場の変化が、磁気圏尾部にどのように影響するかについても調べていく。表面磁場、そして絶えず変化している太陽風磁場とあいまって、磁気圏尾部も極めて変化に富んでいるはずだ。(2017年10月27日 NASA)


人工磁場で太陽風防ぎ、火星を居住可能に

 将来火星を人類が居住できる環境にするため、火星と太陽の間に人工的な磁場を発生させ、太陽風を防ぐことで火星の周囲に大気層を作る――。そんな大胆な計画を、米航空宇宙局(NASA)の科学者らがこのほど提案した。

 太陽風を防ぐとなぜ環境が改善するのか NASAは2月27日から3月1日にかけて、「惑星科学ビジョン2050」と題したワークショップを開催。火星の環境を改善する計画(PDF)はこのなかで提案された。

 火星には現在ごく薄い大気しか存在しないが、かつて液体の海に覆われていたと考えられ、地表の一部や地下には大量の氷があることがこれまでの調査でわかっている。

 太陽から放射される太陽風には高エネルギーの粒子が含まれ、強い浸食作用により火星の地表で蒸発した水蒸気を吹き飛ばしてしまう。この太陽風を人工磁場でさえぎることができれば、大気の損失が止まり、シミュレーションによると数年のうちに気圧が地球の半分ほどに上昇。気温も摂氏約4度に上昇し、北極の極冠にある二酸化炭素の氷を溶かすようになる。

 この結果、大気中の二酸化炭素が温室効果をもたらし、さらに火星の氷を溶かして川や海の形成を助けるという。


 人工磁場を保つ方法

 では、どうやって長期間にわたり宇宙空間に人工磁場を保つのか。NASAの提案では、火星と太陽の重力が均衡するラグランジュ点の1つ(L1)の位置に、人工的に磁場を発生させる装置を宇宙船で運んでから「置く」ことで、その後は火星と太陽の間で相対的な位置を保ち続けるという。

 人類共通の目標に大きな一歩、NASAが地球と似た惑星を7つ発見 NASAが示したイメージ図によると、この磁場発生装置の影響により、磁気鞘(しょう)、磁気圏界面、磁気圏尾という3層のシールドが出現。これらのシールドにより、太陽風の浸食作用を大幅に低減できるとしている。 提案によると、この磁場を発生させる装置に必要な磁力(磁束密度)は1〜2テスラ程度。

 ちなみに、山梨県で試験中のリニアモーターカーには1テスラの超電導磁石が使われているといい、磁力だけに限って言えば既存の技術で実現可能ということになる。(2017年3月7日 NASA)


参考 Newsweek: http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/03/nasa-3.php


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