場所によって時間の進み方が違うのは本当?

 「1日は24時間、時間は全ての人に平等」という言葉がある。しかし都会と田舎では時間の流れ方が違う。なぜだろうか?

 都会と田舎では時間の流れ方が違うというのは、体内時計が関係すると思われる。都会では刺激が多く忙しい心拍数も速くなる。それで早く感じるのかもしれない。田舎に行くと心拍数が落ち体内時計の速度が遅くなって、ゆっくりと感じるのかもしれない。

 だが、アインシュタインの「相対性理論」では、時間の流れは人によって違うという事が科学的に実証されている。それを例えた、有名なエピソードがある。



 「熱いストーブの上に一分間手を載せてみてください。まるで一時間ぐらいに感じられるでしょう。 ところが、好きな人と一緒に一時間座っていても、一分間ぐらいにしか感じられない。 それが相対性というものです。」 (アインシュタイン)

 これはあくまで「相対性」の例えだが、「相対性理論」では時間が遅く「感じる」のではなく、「実際に時間が遅くなる」ことがわかっている。ある人は1年経過したのに、ある人は1時間しか経過していない。ということがあり得る。

 例えば地球の外、宇宙空間を回る人工衛星は、地球上の時間の早さと微妙に違うため、時計がズレていってしまうので、相対性理論でズレる時間を計算し、調整を行いながら回っている。

 これは、人工衛星が高速で運動しているから起きる現象であるが、実は重力の大きさでも時間の進み方に違いがある。重力が強い方が時間の進み方が遅いのだ。

 例えば、標高差が違うと重力が変わってくる。これは、地球の中心から離れるほど重力は小さくなるからだ。したがって正確な時間を計測すれば、標高差がわかるようになる。2016年8月、東京大学(東大)と国土地理院の研究グループが、超高精度の「光格子時計」で約15km離れた2地点間の標高差を5cm精度で測定することに成功している。

 今回、東京スカイツリーの展望台と地上の時間を調べるために、超高精度の時計を東京スカイツリーに設置して、私たちが暮らす日常の空間で時間の進み方がどのくらい違っているのか調べようという実験を、東京大学などのグループが始めることになった。


 東京スカイツリーの頂上は地上より時間が速く進む?

 この実験を行うのは、東京大学の香取秀俊教授らの研究グループ。アインシュタインの一般相対性理論では、時間の流れるスピードは重力の強さによって異なるため、地球の中心から離れれば離れるほど重力が弱まっていき、時間の進み方が速くなることが、理論上わかっている。

 しかし、こうした違いは私たち生活する空間では、ごくわずかなため、実際にその違いを計ることは困難。研究チームは今の1秒の定義を決めている「セシウム原子時計」よりもさらに1000倍精度が高い超高精度の「光格子時計」の開発に成功していて、東京スカイツリーの1階と、450メートルの高さにある展望台の2か所に設置し、時間の進み方の違いを調べることにしている。

 光格子時計は、2台をそれぞれ1センチ高さが違う台の上においても時間の流れが違うことを検出できるほどの高い精度。光格子時計を小型化して、研究室の外の日常生活の場で時間の流れを計るのは初めてで、香取教授は今月、東京スカイツリーを運営する東武タワースカイツリーと実験を行う確認書を交わした。

 物理学の世界では、ことしのノーベル物理学賞に時間と空間のゆがみが宇宙を伝わる「重力波」の検出が選ばれるなど、高度な実験・観測技術の確立によって、時間はどこでも同じように流れるものだという一般の常識を覆す研究成果が相次いで報告されている。

 研究グループもすでに研究室がある東京の都心と埼玉県の和光市とでは、標高の違いによって3日間に100億分の4秒、時間の進み方が違うことを確認していて、香取教授は「時間の流れ方は場所によって違うという考えが一般の人にとってもごく当たり前という時代が来るようになると思う」と話している。


 光格子時計とは何か?

 光格子時計は、東京大学の香取秀俊教授のグループが開発した超高精度の時計。宇宙が誕生した138億年前から動かし続けても現在の誤差が、1秒以下に収まるほど正確に時間を計れる。

 現在の1秒の定義は、セシウム原子時計と呼ばれる時計を使って決められているが、3000万年たつと1秒の誤差が生じていた。この時計は、真空の容器の中にあるセシウム133の原子の振動の回数で時間を計っているが、セシウム原子の熱運動や、原子が互いにぶつかり合うことで振動数にぶれが生じるためである。

 これに対し、光格子時計では、真空の容器の縦横にレーザー光線を走らせ、絶対零度近くにまで冷やしたストロンチウム原子を、この光でつくった格子の中に入れることで原子が互いにぶつかったり、熱運動をおこしたりしないようにした。その結果、セシウム原子時計のおよそ1000倍の精度を実現し、私たちが日常暮らす空間でも時間の流れ方の違いを高い精度で計ることが可能になった。


もはや時計ではない?さまざまな利用法

 極めて高い精度で時間を計れる光格子時計は、さまざまな分野で利用できると考えられている。

 たとえば情報社会を支える超高速の光通信。光通信では、極めて短い時間に膨大な量の情報をやり取りするため、「いつ」送られた情報なのか、情報を送った側と受け取った側で時間をあわせる「同期」という作業が不可欠。このため高い精度の時計を使って時間の刻み方を細かくできればできるほどそこに情報を詰め込み、大容量の通信ができるようになる。

 またここまで高精度の時計になると、地球上で起きる時間や空間のごく小さなゆがみが検出できるようになる。

 光格子時計に詳しい産業技術総合研究所時間標準研究グループの安田正美グループ長によると、たとえば火山の頂上に光格子時計を設置した場合、地中内部の重たいマグマが移動すれば、重力に変化がおき時間の進み方にも変化が生じる。この変化を光格子時計によって捉えれば火山活動の監視に役立つ。

 また地中に空洞がある場合にも、そこだけ重力が弱まり時間の進み方が速まる。これを利用すれば、油田の探索など鉱物資源の開発にも利用できる可能性があるという。


 正確な1秒を求めて

 古代から人類は正確に時(とき)を計ろうとたゆまぬ努力を続けてきた。紀元前3500年頃のエジプトでは石で作った背の高いモニュメント(オベリスク)を建て、その陰の動きで時を知ろうとした。16世紀にガリレオ・ガリレイは振り子が一定の周期で振れることを発見した。この原理を応用した振り子時計によって、人類は自然に頼らずに時を刻む技術を手に入れた。

 かつての1秒の長さの定義は、地球の自転や公転などに基づいた天文学的な定義によるものだった。すなわち1年で地球は太陽のまわりを公転し、地球は1日に1回自転する。これをもとにして、1日を24等分して1時間とし、60等分して60分・60秒を決めたのである。

 だが、実際の地球の動きは理想どうりになっていなかった。1年は365日ピッタリではなく約365.2422日である。このずれを調節するために4年に1回366日の年、閏年(うるうどし)を設けた。また、地球の自転周期は23時間56分4.06秒であるが、地球は自転しながら公転もしているので、1日に換算すると約24時間になっている。

 また、地球の自転速度は、長期的には、主に「潮汐摩擦」(潮の満ち引きによって起こる海水と海底との摩擦)によってだんだん遅くなっている。しかし、数年から20年ぐらいの期間で考えると、地球内部にある「核」の運動の変化や、地球規模での水(海水、陸水、氷河)の分布変化などが原因となって変動し、自転速度は、必ずしも一定の割合で遅くなっているわけではない。

 どうして、そこまで正確な「1秒」を人類は求め続けているのだろうか?実は精度が高まれば高まるほど、新しく見えてくる世界がある。

 例えば、標高差が違うと重力が変わってくる。これは、地球の中心から離れるほど重力は小さくなるからだ。また、アインシュタインの相対性理論によると、重力が強いと時間はゆっくりすすむ。したがって正確な時間を計測すれば、標高差がわかるようになる。

 2016年8月、東京大学(東大)と国土地理院の研究グループが、超高精度の「光格子時計」で約15km離れた2地点間の標高差を5cm精度で測定することに成功している。


参考 NHK news: http://www3.nhk.or.jp/news/html/20171124/k10011234621000.html


1秒って誰が決めるの?: 日時計から光格子時計まで (ちくまプリマー新書)
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時間とはなんだろう 最新物理学で探る「時」の正体 (ブルーバックス)
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