コオロギは、栄養価が高い

 日本ではコオロギは身近な昆虫の一つで、『枕草子』の昔からその鳴き声を趣があるものと捉えていた。日本で多く聞かれるコオロギは「コロコロ…」「ヒヨヒヨ…」などと表現されるエンマコオロギだが、童謡『蟲のこゑ』に登場するコオロギの鳴き声は「キリキリキリキリ」という擬態語で表現されており、カマドコオロギだと云われる。

 東南アジアでは栄養価が高く、食用として各種のコオロギが市場で大量に売られている。また、大型種は食用や民間療法の薬として利用されることもある。日本では20世紀後半以降一般的ではなくなったが、21世紀に入ってもこれらの利用が行われる地域は世界各地に存在する。

 国際連合食糧農業機関は2013年、昆虫食は食料・飼料危機の特効薬足りえると発表しているが、2014年創業のアメリカのベンチャー企業Exo (企業)(英語版)は、クリケットフラワー (cricket flour)と呼ばれる、コオロギの粉末を原料としたプロテイン・バーを開発・販売し、『料理通信』の報道によれば注目を集めているとされる。



 コオロギは飼育管理に比較的手間やコストがかからず繁殖力も旺盛である。このため、実験動物やカエルやトカゲ、大型肉食魚など肉食の愛玩動物のための手軽な生き餌として大量にヨーロッパイエコオロギ(Acheta domesticus)または、フタホシコオロギ(Gryllus bimaculatus)が人工繁殖、販売がおこなわれている。


コオロギは、音に反応する

 ひと昔まえに、「KY」という言葉がはやった。「空気(K)が読めない(Y)」人のことだ。みんなで盛り上がっているときに興ざめなことを言う。理屈では動かない状況を話し合っている会議で理屈を言う。きょうは上司の機嫌が悪いのに、急ぎでもない相談をして話がつぶれてしまう。空気を読んでばかりいるのも考えものだが、ともかく私たちは、何かの情報をもとにその場の状況を捉え、それに応じて具体的な行動を決める。

 行動にいたるこの二段構えは、はたして虫にもできるのか。それがどうもできるらしい。北海道大学博士課程の福富又三郎(ふくとみ またさぶろう)さんと小川宏人(おがわ ひろと)教授は、コオロギが事前に聞く音の違いでその場の状況を判断し、その後に来る同じ刺激に対して反応を変えていることを実験で確かめた。

 コオロギと音については、これまでにも実験例がある。メスのコオロギに5キロヘルツの高さの音を聞かせると、それをオスからの求愛の音だと思ってそちらに向かっていく。空を飛んでいるコオロギにコウモリが出すような10キロヘルツ以上の高音を聞かせると、避ける方向に飛ぶ。捕食されては困るからだ。これらの場合は、音が行動の直接の引き金になっている。コオロギが音の高低を聞き分け、それぞれに対して別の行動をとる。異なる行動が別々の引き金で起きているということだ。


 コオロギは音と空気で反応を変える

 福富さんらの実験は、それとは違う。与える「引き金」が同じでも、事前に聞かせる音の高低によって別の行動が現われるかどうかを調べるのが目的だ。フタホシコオロギを発泡スチロール製のボールに乗せ、上部から伸ばした棒で背中を固定する。ボールは下から当てた空気で浮かせて自由に動くようにしてあるので、コオロギが前に進もうとすると、自分は動けずにボールが回転する。この回転を測定して、コオロギの動きを記録する。コオロギには1秒間の音を聞かせ、音が終わる0.2秒前に、秒速90センチメートルの弱い空気を横から吹き付けた。音が状況判断のための刺激で、吹き付けた空気は敵の接近を知らせる危険信号、つまり行動の「引き金」だ。

 高さが5キロヘルツと15キロヘルツの二通りの音を聞かせたところ、同じ強さで吹き付けた空気に対し、コオロギは異なる行動をした。コウモリが出す音に近い15キロヘルツの場合は、空気の刺激から逃げ出さずにじっとしていることが多く、逃げ出すときには、その距離が長くなった。また、音を聞かせると、聞かせなかった場合より後ずさりする方向に逃げる傾向がみられたが、その度合いは、15キロヘルツのほうが5キロヘルツより大きかった。逃げる際に体を向ける方向も、15キロヘルツのほうがばらばらだった。

 この結果について、小川さんは「コウモリが周りにいそうだと、見つかる可能性を下げるためコオロギはむやみに動かないが、いざ逃げるとなれば遠くに逃げる。このとき後退したり体の向きを変えたりして、逃げる方向を読みにくくしているのかもしれない」と説明する。今回の実験では、音を聞かせるだけではコオロギは行動をおこさなかった。音は行動の直接の引き金になるのではなく、空気の流れという刺激に反応してどう行動すべきかを決める際の判断材料に使われていた。まさに、その場の「空気」を読むために音が使われたのだ。昆虫の聴覚がこのような「状況判断」を支えていることが確かめられたのは、これが初めてだという。


 コオロギとは何か?

 日本ではコオロギ科コオロギ亜科に分類されるエンマコオロギ、ミツカドコオロギ、オカメコオロギ、ツヅレサセコオロギなどが代表的な種類として挙げられる。ただし人によって「コオロギ」の概念は異なり、コオロギ上科の中でもスズムシ、マツムシ、ケラなどを外すこともある。

 なお、日本史上、中世以前の時代では、「蟋蟀」とはセミをも含むあらゆる鳴く昆虫を指していた[要出典]。このため、現在でも学問的厳密性を要さない日常会話上では、コオロギ上科でないカマドウマやコロギス、ヒメギスなども「コオロギ」に含むことが少なからずある。成虫の体長は10mm前後–40mmほどだが、アリヅカコオロギ、マダラスズ、シバスズなど数mmしかないものもいる。日本に分布するコオロギで最大種は体長30-40mm前後のエンマコオロギやケラだが、海外にはタイワンオオコオロギ(Brachytrupes portentosus)をはじめ50mmを超える種類も多い。

 体色は黒〜茶色のものが多く、太短い円筒形か紡錘形の体つきをしている。頭部には体長以上はある毛髪状の触角を持つ。また、尾端にも後ろ向きに2つの尾毛があり、これも触角同様周囲の様子を探る感覚器である。

 脚の中では後脚が特に長く太く発達し、移動や逃走の際には後脚を利用して跳躍するものが多い。また、前脚脛節のつけ根に耳を持ち、これで周囲の物音や他個体の鳴き声を聞き取る。

 成虫には翅があり、翅を使って飛翔する種類がいる。その一方で前後の翅が鱗状に退化したものや全く消失しているものもいる。

 オス成虫の翅にはやすり状の発音器や共鳴室があり、発音器をこすり合わせて「鳴く」ものが多い。翅を使って鳴く種類のオスとメスを比べた場合、メスの前翅の翅脈は前後に直線的に伸びるが、オスの翅脈は複雑な模様を描く。中にはメスに翅がなく、オスに鳴くための前翅だけがあるカネタタキのような種類や、オスは羽化後に後翅が取れてしまう種類もいる。樹上性の種類の中には、立派な翅があるにも関わらず雄も全く鳴くことが出来ないものも少なくない。

 また、メスの尾端には長い産卵管があり、産卵の際に土中や植物の組織内に産卵管を差しこむ。


 コオロギは夜行性

 ほとんどのコオロギは夜行性で、日中は草地や石の下、穴など物陰に潜むことが多い。中には洞窟性のものやアリヅカコオロギのようにアリの巣に共生するものもいる。触角、尾毛、耳などの感覚器や鳴き声はこれらの暗い空間に適応したものである。夜間に地上を徘徊する種類には飛翔して灯火に飛来するものもいる。

 完全な草食や肉食もいるが、ほとんどが雑食で、植物質の他にも小動物の死骸などを食べる。小さな昆虫を捕食したり、動物性の餌が長らく手に入らなかったり、脱皮中で動けない同種個体と遭遇した場合、共食いをすることもある。飼育下でも雑食性の種類は植物質と動物質の餌を適度に与えた方がよい。脱皮後のコオロギの羽は白色をしており、しばらく時間をかけて羽が固まり黒っぽく色付いていく。また、自身の脱皮した抜け殻を食べる習性がある。

 天敵はカマキリ、クモ、ムカデ、カエル、トカゲ、コウモリ、鳥類などである。このような天敵に遭遇した時は後脚で大きく跳躍して逃走する。また、湿地に適応した種類は水面に落ちてもよく水に浮き、人間の平泳ぎのように後脚で水面を蹴ってかなりの速度で泳ぐ。

 オスが鳴く種類は同種個体との接触に鳴き声を利用し、メスと出会って交尾するか、他のオスと戦って排除する。交尾が終わったメスは土中や植物の組織内に一粒ずつ産卵する。温帯地方に分布するものは秋に成虫が発生し、卵で越冬するものが多い。孵化する幼虫は小さくて翅がない以外は成虫によく似た体型をしており、成虫と同じ食物を摂って成長する。


参考 サイエンスポータル: http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2017/11/20171121_01.html


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