地球温暖化?12月の蚊が悩ましい

 最近暖かい日が続いたので、12月になろうとするのに蚊が発生して悩ましい。蚊なんてものはこの世から亡くなった方が良いのではないのだろうか?

 蚊に刺されるとかゆみを生じる。これは、吸血の際、抗凝血作用物質(血が凝固することを防止するためのもの)を含んだ唾液を注入され、この唾液によってアレルギー反応を起こすためである。しかし、蚊の被害で最も恐ろしいのは蚊に刺されることにより、感染症にかかってしまうことだ。

 蚊が媒介する感染症として日本では日本脳炎と、近年ではデング熱が広く知られている。ペットの病気としてフィラリア、海外ではマラリア、デング熱、ウエストナイル熱などがある。



 感染症が大きく取り上げられたのは、2014年8月に約60年ぶりに国内での感染が確認されたデング熱である。その後、日本各地で発症が相次ぎ、立ち入り禁止区域の拡大、イベント中止といった社会問題となった。

 また、近年アメリカ全土を恐怖に陥れているウエストナイル熱は170種以上の鳥を宿主とし、43種以上の蚊が関与しており、感染の拡大を防ぐのは不可能。航空機などの交通機関による日本への侵入も懸念されている。もっとも大切なのは、蚊に刺されないことだ。

 こういう感染症を失くしてしまうことはできないのだろうか?


 この世から蚊を抹殺することは可能

 地上に存在する蚊を本気で絶滅させようと考えている人達がいる。米ミシガン州立大学の研究昆虫学者のジーヨン・シー氏もその一人だ。彼は、こうした蚊を中国から、そして将来的には全世界から一掃したいと考えている。

 シー氏は「われわれは、悪い蚊を退治するのに役立つ善い蚊を作り出している」と語る。白衣に身を包んだシー氏は、数百枚ものトレーの前で身振りを交えながら穏やかな口調で説明してくれた。各トレーには約6000匹の蚊の幼虫が入っている。部屋にはイーストを混ぜた牛の肝臓の粉末の匂いが漂う。この粉末は蚊の幼虫にとって最適な餌だという。

 この「蚊の工場」は、広州市の中心部から車で約1時間の場所にある中山大学のキャンパス内にある。研究所の正式名称は「中山大学・ミシガン州立大学・熱帯病昆虫媒介抑制共同研究センター」。この研究所では、実験助手らが週に最高で500万匹ものヒトスジシマカを育てている。ヒトスジシマカはアジアで多く見られ、デング熱やジカ熱の流行の原因となっている。

 研究所で飼育されている蚊はデング熱などのウイルスが蚊から人間に感染するのを防ぐ働きを持つ細菌に感染している。ボルバキアと呼ばれるこの細菌に感染した雄の蚊は生殖能力を失うため、この雄の蚊と交尾した野生の雌の蚊が産卵しても、その卵が孵化(ふか)することはない。そこでシー氏の研究所は飼育した蚊のうち、雄のみを放出している。

 これらの雄の蚊は、蚊の工場から約60キロ離れた島で放出される。人口1900人のこの村と本土の間には全長300メートルの橋が架かっている。シー氏によると、蚊が飛べる距離はせいぜい50~75メートル程度であるため、島から本土に到達できる蚊の数は限られるという。

 シー氏は、この技術が蚊の数の大幅な減少につながることを期待している。シー氏の手法は型破りではあるが、一部の科学者らは、毎年数百万人の被害をもたらす最も一般的な蚊媒介性疾患のうち、ジカ熱とデング熱の2つを根絶する最も有望な方法の1つと称賛する。


「蚊で蚊を駆除」米で承認 子孫残させず群れの数減らす

 今回、米環境保護局(EPA)は、ジカウイルス感染症(ジカ熱)などを媒介する蚊を駆除するために、人工的に細菌感染させた蚊を「生物農薬」として自然界に放すことを承認した。細菌感染した蚊は交尾しても子孫を残せず、繰り返し放すことで蚊の群れを減らすことができる。殺虫剤を使わない新たな駆除法になると期待される。

 この蚊は、米バイオベンチャー「モスキートメイト」(本部・ケンタッキー州)が開発。カリフォルニアやニューヨークなど全米20州と首都ワシントンで5年間の販売が認められた。ネイチャー誌(電子版)によると、同社は来夏以降、一般家庭やゴルフ場、ホテル向けに販売を始める予定。

 実験室で育てたヒトスジシマカ(ヤブ蚊)に、昆虫に感染する細菌「ボルバキア」を感染させた上で、ヒトを刺さないオスを選んで自然界に放つ。自然界のメスがこのオスと交尾して卵を産んでも、染色体の異常で孵化(ふか)しない。繰り返し放すことで蚊の数が減り、最終的に駆除できるという。

 ボルバキアは、ヒトには感染しない。ハチやチョウなども殺してしまう化学農薬に比べ、蚊だけを狙いうちできて生態系への影響も少ないとされる。モスキートメイト社は、ケンタッキー州などで細菌感染した蚊を試験的に屋外に放ち、効果や安全性を確かめた。ブラジルや中国でも、別の企業や研究機関などが蚊を使った同じ駆除法の導入を進めている。(ワシントン=香取啓介)


 日本で成功した、ウリミバエの根絶

 世界中のウイルスを媒介する蚊を、絶滅させることは果たして可能なのだろうか? 島レベルの小さな範囲ならば、日本でも成功した例がある。

 ウリミバエ(Bactrocera cucurbitae)は、ハエ目(双翅目)・ミバエ科に属するハエの一種。東南アジア原産で、日本では南西諸島に外来種として侵入して重要な農業害虫となったが、不妊虫放飼法により根絶された。

 体長7-8mm。孵化してから20~30日ほどで成虫になり、10日ほどで交尾を行い、メスは腹の先にある産卵管を果実に突き刺し、果実の中に卵を産み付ける。一生(2~3ヶ月)で1000個以上の卵を産むといわれている。その名のとおりスイカやキュウリなどのウリ類を食べるが、ほかにもトマトやピーマン、パパイヤといったさまざまな植物へ加害する。

 日本では1919年に八重山列島で初めて存在が確認され、その後も1929年に宮古列島、1970年に久米島、1972年に沖縄本島、1973年に与論島と沖永良部島、1974年に奄美群島、1977年に大東諸島と分布が拡大していった。

 ウリミバエはウリ類などの農作物に深刻な被害を発生させる。日本生態学会では、本種を日本の侵略的外来種ワースト100に選定している。これ以上の分布拡大を阻止するため、植物防疫法によって発生地から本種の寄生植物の移動が規制されている。

 ウリミバエを防除する方法として不妊虫放飼と呼ばれる手段がとられた。これは、羽化2日前にガンマ線を照射して不妊化した飼育個体を大量に野外へ放虫して野生個体の繁殖を阻止する方法で、個体数を減らし、最終的に根絶を目指すものである。繁殖力が高く、世代交代が早いハエ類だからこそ、効果を発揮する方法で、ウリミバエに対するこの技術はマリアナ諸島で1963年に最初に確立された。

 不妊雌は繁殖能力がないものの、交尾行動は正常に行う。また、不妊雌は産卵管を果実などに挿入して被害を出すことは極めて少ない。しかし、マリアナ諸島での根絶以後は世界50の地域で試されたものの、一度も成功していない。

 原因として個体数の把握ができなかった事にあり、そこで採用されたのがマーキング法(一区画に仕掛けられたトラップに入ったマークしたオスと野生のオスの割合に基づき、その区画の個体数を割り出し、最終的に島全体のウリミバエの数を推定する)と呼ばれる調査方法である。

 その結果、実験地に選ばれた久米島では約250万匹のオス(メスも同数として約500万匹)が生息しているのを始め、沖縄全体では最終的に3億匹まで増殖した。

 最初は石垣島にあった増殖施設で週100万匹の生産だったが、後に大規模な増殖工場が建設されて週に1-2億匹を生産できる体制を整え、久米島ではバケツに入れた蛹が羽化して放飼する方法を採ったが、沖縄諸島等ではヘリコプターなどを使って週に250-400万匹が放虫された。

 こうした大規模な取り組みによって、1993年に根絶を達成することができた。根絶までに費やした経費は全体で204億円に上る。根絶に成功した現在でも、再侵入の危険性が高いと予想される地域では不妊虫放飼が継続されている。尚、ウリミバエは日本の侵略的外来種ワースト100に選定されている生物で唯一根絶に成功した生物である。


参考 朝日新聞: http://www.asahi.com/articles/ASKCB33SVKCBUHBI007.html


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