首長竜は今も生きている?

 首長竜というと、中生代三畳紀後期に現れ、ジュラ紀、白亜紀を通じて栄えた海生爬虫類。多くは魚食性だったと思われる。大半は首が長いが、短い種もある。非常に長い時間をかけて繁栄し続けたが、中生代の最後の大量絶滅を乗り切れず、絶滅したとされる。

 ところが絶滅したはずの「首長竜」が現代にも生き延びていた...南太平洋、フィジー諸島のひとつ「パゴパゴ島」に移住してきた徹朗と洋助の父子が嵐の翌朝、珊瑚の潮だまりで50センチほどの生物(COO)を発見した。それは、1億6500万年以上前に生息していた水棲爬虫類(首長竜)プレシオサウルスであった…。ご存知1988年、第99回直木賞を受賞した、景山民夫氏の「遠い海から来たCOO」のストーリー。

 この物語は、夢とロマンのあるSF冒険小説であるが、ひょっとしたら本当に広い海のどこかで生きているのかもしれない。そんな可能性を感じさせる研究成果が発表された。今回、首長竜が過去の大量絶滅の危機を乗り切っていたことがわかった。



 約46億年前にできた地球に初めての生物が誕生したのは、今から40億年ほど昔だと考えられている。バクテリアのような生物だったらしい。それが連綿と現在の生き物たちにつながっているのだが、その途中で、多いときには生き物全体の9割もが絶滅するような「大量絶滅」がおきている。

 大量絶滅は過去に5回あったとされている。もっとも有名なのはその5回目、恐竜がすべて滅んだ約6500万年前の大量絶滅だろう。現在のメキシコ沖に落ちた直径10キロメートル以上とされる巨大な隕石(いんせき)が、その原因らしい。このほか、地球史上最大といわれる3回目の大量絶滅は約2億5000万年前におき、そのあと始まった「三畳紀」と「ジュラ紀」の境目にあたる約2億年前にも、4回目がおきた。

 特定の希少種が姿を消していくのとは違い、大量絶滅では、地球上の大半の種が短い期間に滅んだ。なぜ、こんなにも多くの生物が一度に滅んだのか。もちろん、その点も興味深いが、逆に、どういう性質をもった生物が厳しい環境を生き延びられたのかを探る研究も、それに劣らず興味深い。


 三畳紀の大量絶滅を生き延びた首長竜

 独ボン大学博士課程のターニャ・ヴィントリッヒさんらの研究グループは、ドイツにある三畳紀末期の地層から、「首長竜」と呼ばれる海の爬虫類(はちゅうるい)の化石を見つけ、このほど論文として発表した。体長が約2.4メートルの若い首長竜とみられる。

 首長竜は三畳紀からいたという説もあるが、体の全体を復元できる化石のようなその時代の有力な物証は乏しいため、はっきりしたことは分からなかった。ジュラ紀に入ってから登場したという見方もあった。今回の発見で、首長竜は、すでに三畳紀にジュラ紀と同様の姿に進化しており、そのまま4回目の大量絶滅を生き延びていたことが確定的になった。

 首長竜は、ジュラ紀と、それに続く白亜紀に繁栄した海の大型爬虫類。ちょうど恐竜が栄えた時代に重なっている。胴体はずんぐりしていて首が長く、4本の脚はひれになっていた。同じ爬虫類でも、体からまっすぐ下向きに出た脚を使い、陸上を直立して歩くことができた恐竜とは、まったく別の種類だ。

 研究グループの中島保寿(なかじま やすひさ)・東京大学大気海洋研究所研究員によると、三畳紀の地層から見つかった今回の化石には、体のさまざまな部位が残っており、それが、さきほどの首長竜の特徴とよく一致していた。さらに今回は、化石として残っていた骨の組織から、血管が発達していた痕跡が見つかった。


 首長竜は外洋で生活していた

 これは、現存する生物のなかでも、哺乳類や鳥類のように体の内部で熱を発生させ、成長も速い動物に特有の構造だ。ジュラ紀の首長竜にもこの特徴がみられる。したがって首長竜は、この特徴をもったまま、大量絶滅を乗り越えたことになる。

 首長竜の4本の脚はひれになっており、長い首はあまり柔軟に曲がらなかったらしい。中島さんによると、これは、沿岸ではなく外洋での生活に適した体だという。カメのような格好でも知られる近縁の「板歯類」は、三畳紀末に絶滅している。こちらは、沿岸で生活していたらしい。

 今回の研究結果から、三畳紀末の大量絶滅を生き延びた首長竜は、外洋で生活し、その成長速度が速かったと推定される。外洋で生活していれば、地球環境の急激な変化にともなう海面水位の変動の影響を受けにくい可能性がある。

 海面が急に下がって、生活の場だった浅瀬が奪われることもない。また、成長が速ければ、早く子を産めるようになるのかもしれない。しかし一方で、成長が速ければ、たくさんのえさが必要なはずで、それが生存に有利だったかどうかは分からない。このような確かな事実の積み重ねで、大量絶滅の謎は一歩ずつ解き明かされていくのだろう。


 首長竜は胎生だった

 未だ首長竜については多くの謎がある。その筆頭格が繁殖で、「首長竜は陸に上がって産卵したか?」肺呼吸をする海棲爬虫類が卵を産む場合には、ウミガメやエラブウミヘビ科のウミヘビのように陸に上がらなければならず、そうでなければ海面で幼体を産む必要がある。首長竜の骨格構造では陸に上がる事は不可能と言う見解があるが、反論として陸に上がる事は可能だったとする説もあり、賛否は分かれている。

 しかし、2011年8月「プレシオサウルスという首長竜の仲間は、卵ではなく赤ちゃんを産み、群れで暮らしながら子育てをしていた。」という論文が米科学誌サイエンスに発表されている。

 研究チームが、米カンザス州の7800万年前の地層から掘り出された化石を調べたところ、母親の腹の部分から胎児とみられる骨が見つかった。胎児は1頭。母親の体長は4.7メートル。胎児は少なくとも1.5メートルで、比較的大きかった。

 海で暮らす古代の爬虫類には、卵でなく赤ちゃんを産んでいたとわかっている仲間もいるが、産むのは1度に複数。大きな赤ちゃんを1頭だけ産むという特徴は、むしろシャチや小型のクジラなど、群れを作って子育てをする現代の生き物に近く、チームは「同じような暮らしぶりだったかもしれない」と推測している。(asahicom 2011年8月12日) 


 首長竜は恒温だった

 三畳紀末~ジュラ紀〜白亜紀(約2億〜6500万年前)の海で繁栄した首長竜や魚竜などの海生爬虫(はちゅう)類は、水温に関係なく体温を一定に保てる恒温動物とみられることが、フランスなどのチームの研究で明らかになっており、2010年6月11日の米科学誌サイエンスに発表している。

 海生爬虫類は長距離を速いスピードで泳ぎ回っていた可能性があるという。

 酸素には、質量の異なる「同位体」がある。研究チームは生体内に存在する酸素同位体の比率が、体温と気温・水温の関係によって異なることに注目。水温と体温の差がほとんどない現在の魚の同位体の比率と首長竜、魚竜、海トカゲ竜の化石の歯に含まれるリン酸から取り出した同位体の比率を比べた。

 米国、欧州、オーストラリアなど十数カ所で発掘された化石を分析した結果、これらの海生爬虫類は、体温が35〜39度と高く保たれていたと推計された。現在のクジラに近い数値で、クジラのように水温と関係なく長い距離を機敏に動けたとみられる。中でも、首長竜と魚竜は、12度前後の冷たい海でも、体温を維持できたらしい。

 真鍋真・国立科学博物館研究主幹は「白亜紀末期、首長竜などが絶滅したのは隕石(いんせき)の衝突による寒冷化が原因とされてきたが、低水温に適応できたとすると、説明が難しい」と話す。(毎日新聞 2010年6月12日)


参考 サイエンスポータル: www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2017/20171214.html


フタバスズキリュウ―日本の海にいた首長竜 (なぞとき恐竜大行進)
クリエーター情報なし
理論社
遠い海から来たCOO (上) (ニュータイプ100%コミックス)
クリエーター情報なし
角川書店

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ ←One Click please