ロイコクロリディウム

 カタツムリといえば、見ていてとても心が和む可愛い虫だが、フランスでは高級食材エスカルゴになる。これだけならある程度大きなカタツムリならば食べることができるように感じるだろう。しかし、実際に野生のカタツムリを食べるのは非常に危険だ。

 エスカルゴのように食用のカタツムリは専用の施設で飼育され、育成に使用される餌も清浄なものが使用されている。 飼育施設を使用することで、ある程度環境に左右されずに安定した数のエスカルゴを確保することが最も大きな目的であるが、それだけではなく、綺麗な餌を与えることでカタツムリの体内に寄生虫などを溜めないことで安全を確保することが目的でもある。

 仮に野生のカタツムリを食べようと考えた場合には、恐ろしい寄生虫が宿ることもある。例えば、ロイコクロリディウムという虫がいるが、この虫がカタツムリに寄生することがある。では、このロイコクロリディウムについてどんな特長があるかというと...。



 ロイコクロリディウム(Leucochloridium)は吸虫の属の一つで寄生虫。レウコクロリディウムとも。カタツムリの触角に寄生してイモムシのように擬態し、だまされた鳥がこれを捕食し、鳥の体内で卵を産み、鳥の糞と共に卵が排出され、その糞をカタツムリが食べて再びカタツムリに侵入する。

 一般に寄生虫というのは、中間宿主にこっそり隠れており、最終宿主がこれを気付かず食べることが多い。しかしロイコクロリディウムは最終宿主に食べられるよう、積極的に中間宿主を餌に似せるところに特徴がある。

 この吸虫の卵は鳥の糞の中にあり、カタツムリが鳥の糞を食べることでカタツムリの消化器内に入り込む。カタツムリの消化器内で孵化して、ミラシジウムとなる。さらにスポロシスト、中に10から100ほどのセルカリアを含んだ色鮮やかな細長いチューブ形状へと成長し、カタツムリの触角に移動する。

 その状態で膨れたり脈動したりする事で、触角に異物を感じたカタツムリは触角を回転させてあたかもイモムシのように振舞う。このような動きを見せるのは主として明るい時であり、暗いときの動きは少ない。

 また、一般のカタツムリは鳥に食べられるのを防ぐために暗い場所を好むが、この寄生虫に感染したカタツムリは、おそらく視界が遮られることが影響して、明るいところを好むようになる。これをイモムシと間違えて鳥が捕食し、鳥の消化器内で成虫であるジストマへと成長する。つまり、カタツムリは中間宿主であり、鳥が最終宿主である。

 ジストマは扁形動物らしく長く扁平な体をしており、腹に吸盤がある。鳥の直腸に吸着して暮らし、体表から鳥の消化物を吸収して栄養としている。無性生殖が可能だが、雌雄同体で交尾もできる。鳥の直腸で卵を産み、その卵は糞と共に排出され、またカタツムリに食べられる。

 こうして、寄生虫は宿主と中間宿主の間を何度も何度も繰り返して生き続ける。もちろん寄生虫の中にはヒトの体内に入り込む仲間も存在する。そして、ヒトを死に至らせる存在もあるのだ。


 広東住血線虫

 オーストラリア人のサム・バラード氏は19歳のとき、パーティで友人たちにけしかけられてナメクジを食べた。数日のうちに、彼は珍しいタイプの髄膜炎にかかり、それから1年以上昏睡状態が続いた。意識が戻った後も首から下の麻痺は治っていない。

 医師によると、バラード氏の病気の元凶はナメクジに寄生する広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)だという。

 広東住血線虫の感染者はバラード氏の他にもいる。なかには氏と同じように、周りにけしかけられた結果として罹患した例もある。これまでに少なくとも3件の感染例で、少年や青年がナメクジやカタツムリを食べていたことがわかっている。さらに注目すべきは、この寄生虫が今、世界のこれまで確認されていなかった地域にも広がっていることだ。

 アジア原産の広東住血線虫は現在、アフリカ、オーストラリア、カリブ海諸国、米国南部などでも見られる。2017年には米ハワイ州の疫学者サラ・パーク氏が、同州での感染例が年間10件ほどにのぼると報告した。

 ブラジルの場合、広東住血線虫が国内に持ち込まれた原因は、エスカルゴの養殖だと考えられている。1980年代末、ブラジルではアフリカ産の巨大なカタツムリを養殖するキットが販売され、自宅でできる副業として人気を博した。

 しかし、ブラジルではエスカルゴ料理はさほど好まれなかったようだ。やがてこの仕事が成り立たなくなると、カタツムリは周辺の土地に進出し、同時に広東住血線虫も定着した。ナショナル ジオグラフィックは2007年に、アフリカ産のカタツムリが原因で、ブラジルで2人が髄膜炎にかかったことを報じている。


 カタツムリやナメクジは中間宿主

 広東住血線虫はカタツムリやナメクジの仲間に寄生する。寄生しても明らかな兆候が見られないため、屋外で目にする個体がキャリアなのかどうかを見分けることは不可能だ。

 「カタツムリにはたくさんの寄生虫がいます。鳥をはじめ、多くの動物の餌になりますから。寄生虫にとっては、他の動物に食べられる宿主がありがたいのです」。米フロリダ州南部で広東住血線虫の調査をおこなったフロリダ大学の寄生虫学者、ヘザー・ストックデール・ウォルデン氏はそう語る。

 水に入り込んだカタツムリが動物に食べられることもある。フロリダ州では、イヌ、馬、鳥の他さまざまな野生動物から広東住血線虫が見つかった。2004年には、広東住血線虫が原因でマイアミ州メトロ動物園のシロテテナガザルが死に、2012年には、マイアミ在住の個人が飼育していたオランウータンが、カタツムリを食べたあとで死亡した例も報告されている。

 広東住血線虫が世界中に広がりつつある今、我々人間の方が現状に適応しなければならないと専門家は言う。そのためにまず心がけたいのが、生のカタツムリやナメクジを食べないことだ。


 温暖化で世界に広がる生息域

 英語で「rat lungworm(ネズミ肺線虫)」と呼ばれる通り、広東住血線虫は生涯の一時期をネズミの肺で過ごす。感染したネズミが咳をして、肺から喉に幼虫が吐き出されると、すぐにまた飲み込まれて腸を通り抜け、糞と一緒に排出される。続いてカタツムリやナメクジがこの糞を食べ、幼虫が体内に取り込まれ、しばらくの間、新たな宿主の中で成長する。

 広東住血線虫が繁殖するには、その後、幼虫がネズミの体内にふたたび戻らなければならない。このステップは、感染したカタツムリやナメクジをネズミが食べることで完了する。ネズミの体内に戻った幼虫は脳に移動し、そこである程度まで成長してから、心臓と肺を繋ぐ肺動脈に移る。心臓から血液が送り出されてくるこの場所で、広東住血線虫はようやく交尾に至る。

 広東住血線虫のこうした習性を見ると、カタツムリやナメクジを人間が口にしたとき、なぜあれほど深刻な状況が引き起されるのかがよくわかる。ネズミの場合と同様、体内に入った広東住血線虫は脳を目指す。そして、ときに脳を守る障壁を越えて内部まで入り込むが、いったん入ってしまった虫は外に出られない。広東住血線虫は脳に居座って物理的なダメージを与えるとともに、人間の側の免疫系が炎症を引き起こす。

 1993年、米ニューオーリンズに住む11歳の少年が、頭痛、頸部の硬直、嘔吐、軽い発熱を訴えて地元の病院を訪れた。「少年はその数週間前、そそのかされて道端にいたカタツムリを食べていた」と、医学誌「New England Journal of Medicine」に投稿された記事にある。幸いなことに、この少年は治療をしなくても回復した。

 広東住血線虫が脳内で死ぬと、炎症がさらに悪化する場合があるため、投薬で虫は殺さず、通常は体の免疫の働きに期待することになる。例は非常に少ないものの、広東住血線虫に感染した患者が重篤な髄膜炎になった場合は命に関わる。


 感染を避ける方法は

 生のカタツムリやナメクジと同様、カエルや淡水性のカニやエビを生で食べることもおすすめできない。米疾病対策センター(CDC)によると、こうした食材は少なくとも3分間茹でるか、内部の温度を最低74℃まで上昇させた状態で(鶏肉も同様)、少なくとも15秒間調理して寄生虫を殺す必要がある。

 ナメクジを食べないようにすることなど簡単だと思う人もいるかもしれないが、ふとした偶然から小さな個体を口にしてしまうことは十分に考えられる。また、ナメクジが通った後に残る粘着物にも寄生虫がいることがある。

 「家や庭周辺のカタツムリ、ナメクジ、ネズミなどを除去することも、リスク軽減につながります」と、CDC寄生虫性疾患局疫学チームの責任者スー・モンゴメリー氏は言う。「野菜を生で食べるときにはよく洗い、水筒などはカタツムリやナメクジが入らないよう、確実に蓋を閉めてください」

 庭の野菜につくナメクジを退治する際には、死骸をその場に置きっぱなしにしないようにすることが重要だ。ネズミ、ペット、野生動物などが死骸を食べてしまうおそれがある。

 そしてアメリカ北部に住む人たちにとっても、これは他人事ではない。ウォルデン氏は言う。「温暖化で気温が上昇するにつれ、カタツムリは北へ移動しています。遅かれ早かれ、彼らは北部へもやってくるでしょう」(National Geographic news)


 ロイコクロリディウムとは何か?

 ロイコクロリディウム(学名:Leucochloridium)は吸虫の属の一つで寄生虫。レウコクロリディウムとも。カタツムリの触角に寄生してイモムシのように擬態し、だまされた鳥がこれを捕食し、鳥の体内で卵を産み、鳥の糞と共に卵が排出され、その糞をカタツムリが食べて再びカタツムリに侵入する。

 一般に寄生虫というのは、中間宿主にこっそり隠れており、最終宿主がこれを気付かず食べることが多い。しかしロイコクロリディウムは最終宿主に食べられるよう、積極的に中間宿主を餌に似せるところに特徴がある。

 この吸虫の卵は鳥の糞の中にあり、カタツムリが鳥の糞を食べることでカタツムリの消化器内に入り込む。カタツムリの消化器内で孵化して、ミラシジウムとなる。さらにスポロシスト、中に10から100ほどのセルカリアを含んだ色鮮やかな細長いチューブ形状へと成長し、カタツムリの触角に移動する。

 その状態で膨れたり脈動したりする事で、触角に異物を感じたカタツムリは触角を回転させてあたかもイモムシのように振舞う。このような動きを見せるのは主として明るい時であり、暗いときの動きは少ない。また、一般のカタツムリは鳥に食べられるのを防ぐために暗い場所を好むが、この寄生虫に感染したカタツムリは、おそらく視界が遮られることが影響して、明るいところを好むようになる。これをイモムシと間違えて鳥が捕食し、鳥の消化器内で成虫であるジストマへと成長する。つまり、カタツムリは中間宿主であり、鳥が最終宿主である。

 ジストマは扁形動物らしく長く扁平な体をしており、腹に吸盤がある。鳥の直腸に吸着して暮らし、体表から鳥の消化物を吸収して栄養としている。無性生殖が可能だが、雌雄同体で交尾もできる。鳥の直腸で卵を産み、その卵は糞と共に排出され、またカタツムリに食べられる。


 広東住血線虫症とは何か?

 広東住血線虫症(カントンじゅうけつせんちゅうしょう、angiostrongyliasis)とは広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)の幼虫寄生を原因とする人獣共通感染症。

 広東住血線虫の終宿主はネズミであり、ネズミから排出された第1期幼虫が中間宿主であるナメクジ類に摂取されると、その体内で第3期幼虫まで発育する。このナメクジ類がネズミに摂取されると第3期幼虫は中枢神経に移動し、第5期幼虫まで発育する。第5期幼虫は肺動脈へと移動して成虫となる。中間宿主が待機宿主に摂取されると第3期幼虫のまま寄生する。

 ヒトでは中間宿主や待機宿主に汚染された食品の摂取により寄生が成立する。ヒトの体内に侵入した第3期幼虫の多くは中枢神経へと移動し、出血、肉芽腫形成、好酸球性脳脊髄膜炎などを引き起こす。サイアベンタゾールやメベンタゾールなどが治療に使用される。第3期幼虫が中枢神経へ移動する理由としては、免疫システムからの回避、成長に必要な脳由来酵素の獲得、槍型吸虫やロイコクロリディウムのような宿主のコントロールといった仮説が挙げられる。


参考 National Geographic news: http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/032000125/


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