宇宙はどのような構造になっているのだろう?

 まず、私たちの太陽系は、太陽および太陽の周囲を公転する天体(惑星系)と微粒子、さらに太陽活動が環境を決定する主要因となる空間から構成される領域である。太陽の周囲を公転する天体には、現在確認されているだけで8個の惑星、5個の準惑星、多数の太陽系小天体がある。

 太陽系小天体には小惑星、太陽系外縁天体(ただし外縁天体のうちの冥王星型天体は準惑星に含まれる)、彗星、惑星間塵などがある。惑星や準惑星、太陽系小天体にはその周囲を公転する衛星や環を持つものもある。

 太陽系の中心に位置する太陽は、約10万光年の直径を持つ銀河系(天の川銀河)と呼ばれる銀河を構成する、約2000億個の恒星の一つである。銀河系の中ではオリオン腕に位置する。銀河系の中で太陽は典型的な恒星の一つであると考えられている。太陽系は銀河系の中心から26100±1600光年ほどの位置にあると考えられている。太陽系は240±14km/sの速度で銀河系内を周回しており、約2億2600万年で銀河系内を1公転する。



 銀河系のような銀河は数百から数千集まって銀河群、銀河団を形成している。この銀河群や銀河団が更に集まって超銀河団を形成しているが、この超銀河団は平面状の壁のような分布を示している。この巨大な壁をグレートウォールあるいは銀河フィラメントと呼ぶ。

 1980年代になって、1枚の銀河フィラメントと他の銀河フィラメントとの間には光を発する天体がほとんど無い領域があることが明らかになった。これを超空洞(ボイド)と呼び、その直径は1億光年を超える。


 宇宙全体の構造は大規模構造(large‐scale structure of the cosmos)と呼ばれ、宇宙の大規模構造は銀河フィラメントと超空洞が複雑に入り組んだ構造で、あたかも石鹸を泡立てたときにできる、幾重にも積み重なった泡のような構造を持っている。つまり、泡の膜面たる銀河フィラメントに銀河が存在し、泡の中の空洞たる超空洞には銀河がほとんど存在しない。

 グレートウォールの発見をもたらした CfA赤方偏移サーベイ以降、観測技術の発展に伴ってより遠方の銀河をより大量に観測する大規模な銀河サーベイ観測が行なわれるようになっている。その代表例として、スローン・デジタル・スカイサーベイ(SDSS)や2dF銀河赤方偏移サーベイなどがある。

 宇宙の大規模構造は宇宙初期のゆらぎが重力不安定性によって成長してできたものだと考えられている。この構造を作っている銀河の相関関数の観測と数値シミュレーションとの比較から、現在のような構造を作るためには、宇宙の質量の大部分は冷たいダークマターからできている必要があると考えられている。 プラズマ宇宙論では、宇宙の大規模構造となる巨大なガスのかたまりが最初に生まれた、と考えられている。


 宇宙は原始銀河団であふれている

 今回、すばる望遠鏡が約120億光年彼方の宇宙に、銀河団の祖先である「原始銀河団」を200個近く発見した。従来の10倍もの発見数という大規模なサンプルから、遠方宇宙における原始銀河団の特徴が初めて統計的に明らかにされた。

 宇宙に存在する銀河は渦巻銀河や楕円銀河など多種多様で、その性質は周囲の環境と密接に関係していることが知られている。現在の宇宙では、数十個以上の銀河が密集する銀河団のような領域には年老いた重い楕円銀河が多く存在し、銀河があまり存在しない領域には活発に星形成をしている若い渦巻銀河が多く見られる。そのような関係がいつどのように生まれたのかは、現代天文学の大きな謎の一つだ。

 環境が銀河進化に与える影響を解明するためには、現在の宇宙に存在する完成した銀河団だけではなく、銀河・銀河団がまさに成長しつつある過去の姿を、遠方宇宙の原始銀河団の観測を通して直接調べることが重要だ。しかし、銀河団のように非常に密度の高い領域は宇宙全体でもごく稀なため、研究は困難であった。現在の宇宙で銀河団が占める体積の割合はわずか約0.38%しかなく、遠方宇宙にいたっては、原始銀河団の発見数はこれまで20個にも満たなかった。

 遠方宇宙での銀河進化に影響を及ぼす環境効果を理解するためには、まず原始銀河団の大規模なサンプルを構築する必要がある。国立天文台の柏川伸成さんたちの研究グループは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「HSC(Hyper Suprime-Cam、ハイパー・シュプリーム・カム)」を用いたサーベイ観測のデータから約120億年前の銀河を選び出し、それらの分布を調べることで遠方宇宙における原始銀河団の探査を行った。

 その結果、研究グループは約120億年前の宇宙に原始銀河団を200個近く発見し、それらが不均一に分布することを明らかにした。この発見数は従来の約10倍で、遠方宇宙における原始銀河団の統計的な研究を初めて可能にさせる画期的な成果である。原始銀河団の分布の解析から、原始銀河団を包み込む暗黒物質の塊「ダークマターハロー」の質量が太陽質量の10兆倍以上と初めて推定された。これらの領域がいずれ銀河団(太陽質量の100兆倍)に成長することを強く示唆するものである。


 原始銀河団とクエーサーの関係

 さらに研究グループは、HSCの観測で得られた原始銀河団の大規模サンプルを使って、原始銀河団とクエーサーとの関係についても調査した。クエーサーとは、その中心に存在すると考えられている超大質量ブラックホールが周囲のガスを大量に飲み込む過程で非常に明るく輝いている特殊な銀河だ。

 クエーサーの起源として、「銀河が衝突合体する時に、ブラックホールがその銀河のガスを大量に飲み込んでクエーサーが出現する」という説が現在最も有力と考えられている。この仮説が正しければ、銀河が密集し衝突頻度も高い原始銀河団ではクエーサーが生まれやすい、つまり原始銀河団領域にクエーサーが見つかりやすいと予想される。しかし、原始銀河団もクエーサーも宇宙空間において非常に稀であるため、仮説の検証はこれまで困難だった。

 研究グループが、HSCによって得られた原始銀河団と同じ時代に見つかっている明るい151個の遠方のクエーサーを利用して両者の位置関係を調べたところ、原始銀河団に属する明るいクエーサーはほとんどないことがわかった。さらに、最も明るいクエーサーは原始銀河団を避けるように分布することも初めて明らかになった。

 この結果は、従来の予想とは異なり、銀河の衝突を原因としない別のクエーサー発現メカニズムが必要である可能性を示唆するものだ。一方、クエーサーからの明るい放射によって周囲の銀河成長が抑制されたために周囲に銀河が観測されなかった可能性も考えられ、今後のさらなる議論が待たれる。

 もう一つの興味深い発見は、原始銀河団に属していた稀なクエーサーのうち4個が「ペア」として存在していたことだ。クエーサーのペアは、特に遠方宇宙においては非常に珍しいものである。この2つのペアが原始銀河団中に発見されたことにより、原始銀河団中では単体ではなく複数の超大質量ブラックホールが同時に活動的になりやすいという新たな可能性が示された。「HSCの広く深い観測によって、私たちはかつてない数の原始銀河団を見つけ、さらに活動的なブラックホールが属する環境の多様性について、極めてユニークかつ新しい発見をすることができたのです」(柏川さん) 。

 2つのクエーサーのペアと周囲の銀河分布。星印がクエーサー、丸印と点はそれぞれ明るい銀河と暗い銀河。等高線が平均に対する銀河の密度超過を示し、中心のペア周囲が高密度になっていることがわかる

 「今後観測を継続することによって、原始銀河団サンプルの数がさらに増えるでしょう。すばる望遠鏡の戦略枠観測が完了すると、120億光年彼方の原始銀河団を約1000個発見できると期待されます。その上で、110億光年から130億光年にわたる原始銀河団の成長過程を明らかにしていきます」(東京大学宇宙線研究所 利川潤さん)。


 超広視野主焦点カメラ(HSC、ハイパー・シュプリーム・カム)とは何か?

 Hyper Suprime-Cam (HSC)は国立天文台が国内外の諸機関と共同で開発した、すばる望遠鏡用のデジタルカメラ。 望遠鏡が大きいのでカメラも大きく、立てかけると人の背よりも高くなり、重さは3トンにもなる。HSCは一度に広い天域を撮影することでき、新しい天体や現象を探査する研究に力を発揮する。

 カメラは、レンズ・フィルター・シャッター・光センサーで構成されている。光センサーは新開発の高感度CCDで、合計約8億7000万画素を有す。CCDは真空容器に封入され-100度に冷却される。第一レンズの直径は約82 cmで、レンズ筒の長さは165 cmある。ピント合わせなどの位置調整は特別に開発された6 本の精密機械式ジャッキで行う。

 すばる望遠鏡に搭載された超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(HSC、ハイパー・シュプリーム・カム)で進められている大規模な戦略枠観測プログラム(HSC-SSP)の第1期データが、2017年2月27日(ハワイ現地時間)、全世界に公開されている。

 HSCは104個の科学データ取得用CCD(計8億7000万画素)で約1.77平方度の天域を一度に撮影できる超広視野カメラで、すばる望遠鏡の主焦点に搭載されている。これは「宇宙の国勢調査」とも言える大規模なデータで、これにより、宇宙の起源とその進化の解明にまた一歩近づくことができる。この美しい天体画像は天文学者のみならず、一般の方も利用することができるようになっている。

 すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)は、2014年のファーストライト以降、順調に観測を続けている。

 国立天文台、東京大学などの研究チームは、満月9個分の天域を一度に撮影できるHSCの性能を生かし、従来のカメラでは観測が不可能だった暗い天体を、1000平方度(満月5000個分)もの広い天域に渡って高解像度で撮影する大規模な探査観測を進めている。このHSCによる観測データから、ダークマターの大局的な分布をこれまでにない精度で描き出し、加速膨張宇宙の謎に迫ろうとしている。この大規模な探査観測は、2019年の末まで続く予定。

 この度、最初の2年間の観測にもとづく初期結果がまとめられ、日本天文学会欧文報告の特集号として発刊された。HSCで観測取得されたデータは、多くの研究分野で有用なものであり、上記特集号の40本の論文の研究テーマは、太陽系天体の探査から銀河、活動銀河核、銀河団、宇宙論まで、宇宙の全ての階層に渡っている。(国立天文台 2018.2.27)


 銀河団と暗黒物質

 星がたくさん集まった集団が銀河であり、さらにその銀河が数十個から数千個集まった天体が「銀河団」。銀河団は宇宙最大の天体であり、それが宇宙にどのように分布しているか、どのように進化してきたかなどを調べることで、宇宙全体の進化の謎に迫ることができる。

 ただし、銀河団は銀河だけが集まってできているのではない。実は、銀河団に含まれる銀河を全てあわせても、銀河団の重さのせいぜい数%にしかならない。残りは何かというと、1千万度を超えるような高温のガスがだいたい15%くらいで、あとの約80%は暗黒物質になる。

 暗黒物質は可視光やX線といった電磁波は全く出さないが、質量は持っていて、周囲に重力を及ぼしている未知の物質のこと。暗黒物質の正体についてはさまざまな候補が提案されているが、現在のところはっきりと分かってはいない。

 暗黒物質を電磁波で直接捉えることはできないが、銀河団の中の暗黒物質が周囲に重力を及ぼしている証拠が、少なくとも3つ存在する。

 1つ目は、銀河の運動です。銀河団に含まれる銀河は決して静止しているのではなく、毎秒数百km~1000kmという速さで飛び回っているが、その運動が暗黒物質の重力によって強く影響を受けていることが観測されている。これは地球の公転運動の速さが太陽の重力によって影響されるのとほぼ同じ原理だ。

 2つ目は、先ほど述べた高温ガスの存在。暗黒物質がなければ、高温ガスは銀河団から外に飛び出してなくなってしまうはずだが、実際にはそうならずに銀河団中にとどまっていることから、暗黒物質の重力によって引きつけられていることが分かる。

 3つ目は、重力レンズ効果と呼ばれる現象です。これは、我々から見て銀河団の向こう側にある天体からやってくる光が、暗黒物質の重力によって、あたかもレンズを通過した時のように曲げられるなどして観測される現象が観測されている。可視光で観測すると、銀河団は多数の銀河が互いの重力によって銀河が引き合って形成された集団のように見える。

 しかし、銀河団内の銀河の運動速度は、可視光で見えている銀河同士の重力で束縛されているとするには速すぎる。このことから、銀河団には光では観測できない別の質量成分が存在することが示唆される。

 X線での観測によって、銀河団には高温の銀河団ガスがあり、X線源は約108Kという非常に高温のガスの熱制動放射によるものであることが明らかになっており、ガスの総質量も目に見える物質の大半を占める膨大な量である。

 しかし、静水圧平衡にあると仮定して求めた銀河団と銀河団ガスの総質量を考慮に入れても、これらを銀河団の中に束縛するのには十分ではなく、実際の総質量はずっと大きい。この見えない正体不明の質量成分は暗黒物質(ダークマター)と仮定されている。典型的な銀河団では、銀河として存在するのはおそらく全質量の数%程度、X線を放射する高温ガスが約20%に過ぎず、残りはダークマターが占めていると考えられている。

 これまでの観測から、地球から少なくとも 80 億光年かなたにまで宇宙の大規模構造がつながっていることが確認され、また宇宙誕生からわずか 10 億年後に既に形成されつつある原始銀河団が見つかっている。

 銀河は宇宙初期の小さな密度揺らぎが重力によって成長して形成されたと考えられている。銀河が群れ集まった銀河団や超銀河団などの大規模構造も、長い宇宙の歴史の中で重力がつくりあげた物質分布のパターンだと考えられる。


参考 国立天文台: https://www.nao.ac.jp/news/science/2018/20180305-hsc.html


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