「間質」とは何か?

 間質とは臓器で、実質以外の部分ストローマ、基質ともいう。臓器に固有の細胞群に対し、その間に入り込む結合組織などで、血管、神経、膠原繊維、繊維芽細胞など、生体内のある機能をもつ組織や器官などの実質を、支えたり結合させたりする組織のこと。

 米ニューヨーク大学などの研究チームが、体内の「間質」と呼ばれる空間の構造と分布に関する詳細を研究し、「人体の新しい器官を発見した」として、3月27日の学術誌に論文を発表した。人体で最大の器官かもしれないとの見方も示しているが、この説に対して異論を唱える専門家もいる。

 間質は、全身の組織と組織の間の液体で満たされた空間をさす。間質組織や間質液については従来から知られていたが、今回の研究では、これまで認識されていなかった人体の機能が解明されたとして、間質を「器官」と呼ぶことを提唱した。



 「当初我々は、これを単なる間質組織と考えていた。だが器官とは何かという定義に踏み込むと、器官とは単一構造または単一構造をもつ組織、あるいは単一機能をもつ組織だという考え方に突き当たる」。ニューヨーク大学のニール・シース教授はそう解説し、間質はその両方に当てはまると指摘した。

 「この構造はどこを見ても同じで、我々が解明し始めた機能も同じだった」と同教授は述べ、「これは皮膚よりも大きいと思う」と語る。人体で最大の器官と考えられているのは、体重のおよそ16%を占める皮膚。だが間質の場合、シース教授の推定で体重の20%を占め、若者の身体では約10リットル分に相当する。

 シース教授の研究チームは、共焦点レーザーエンドマイクロスコープと呼ばれる技術を使った高性能の顕微鏡で、ヒトの胆管の生きた健康な組織を調べた。組織のサンプルは、ニューヨーク市内の病院で膵臓(すいぞう)の手術を受けた患者13人から採取した。

 組織を蛍光液に浸して詳しく観察したところ、液体がたまる部分に空間があることが判明。こうした組織はそれまで、顕微鏡で調べると脱水状態になって厚い層のように見えていた。間質は脱水のためにつぶれて、これまでは気付かれていなかったという。

 「生きた組織を共焦点レーザーエンドマイクロスコープ顕微鏡で観察することで、その空間が拡張され、液体で満たされていることがはっきりした」「一度見たものを忘れることはできない」(シース教授)

 間質の真の機能や、体内のほかの部位への影響、「器官」と位置付けるかどうかの論議については、さらなる研究が必要とされる。イエール大学のマイケル・ネサンソン教授は間質について、「それ自体が新しい器官なのではなく、さまざまな器官の間にある新しい部位だと考える」と話す。


 「間質」と病気の関係

 今回の研究では、間質空間ががん細胞の拡散を助け、がんが体内で転移する導管の役割を果たしている可能性があることも分かった。間質液を調べれば、がんの診断に役立つかもしれないとシース教授は述べ、がんだけでなく、ほかの疾患や体内の機能に関する医師の考え方を変えさせる可能性もあると話している。

 間質性肺炎(interstitial pneumonia (IP))という病気は肺の間質組織の線維化が起こる疾患の総称である。進行して炎症組織が線維化したものは肺線維症(はいせんいしょう)と呼ばれる。間質性肺炎のうち特発性間質性肺炎(後述)は日本の特定疾患で、その予後は臨床診断によって様々ではあるが、特に特発性肺線維症(IPF)及び急性間質性肺炎(AIP)については難治性である。

 通常、肺炎という場合には気管支もしくは肺胞腔内に起こる炎症を指すが、間質性肺炎は肺胞と毛細血管を取り囲む間質と呼ばれる組織に生じる病態のひとつ。間質性肺炎の場合は支持組織、特に肺胞隔壁に起こる炎症であり、肺胞性の肺炎とは異なった症状・経過を示す。

 肺コンプライアンスの低下。いわば「肺が硬くなる」状態で、肺の支持組織が炎症を起こして肥厚することで、肺の膨張・収縮が妨げられる。肺活量が低下し、空気の交換速度も遅くなる。

 間質組織の肥厚により毛細血管と肺胞が引き離される。その結果、血管と肺胞の間でのガス交換(拡散)効率が低下し、特に酸素の拡散が強く妨げられる。


 がんと「間質」の関係

 がんの組織片を採取して顕微鏡で見てみると、がん細胞の周囲は「間質」という組織で取り囲まれているのがわかる。これまでがん研究は、間質に包み込まれたがん細胞を対象とし、間質自体にはあまり注意が払われてこなかったが、近年、間質ががん細胞の増殖を促進していることが明らかになってきた。

 つまり、間質はがん細胞に働きかけて、がんの進行を促したり、転移にかかわったりしているらしいのだ。そうした研究の先駆者の一人、折茂准教授は、がんの間質ががんの転移に果たす役割を詳しく解明し、がんの治療に役立てたいと考えている。

 がんの間質には、何種類かの細胞や、線維、生理活性物質、液体成分などが含まれている。その中で折茂准教授が特に注目してきたのは、線維芽細胞という種類の細胞である。線維芽細胞は、がんの間質にだけではなく、体のいろいろな臓器にも一般的に存在しており、体を支えるコラーゲンなどの線維をつくり出すことでよく知られている。また、体に傷ができたときに活発に働く細胞としても知られている。

 折茂准教授はこれまでの研究で、がんの間質では線維芽細胞が活性化されていて、がん細胞の増殖を促進することを証明してきた。悪性度が高くて予後の悪いがんでは、活性化された線維芽細胞がたくさん間質に含まれているのである。

 「こうしたがんの間質の研究成果は、がんの診断や治療に活かせる可能性を大いに秘めています。特に、患者さんの体内でがんが転移したかどうかを知るための診断マーカーに利用できる可能性が高いのです」と折茂准教授は力説する。

 間質は基底膜とともに細胞外マトリックスを形成している。がんの間質には、線維芽細胞、内皮細胞、白血球、周皮細胞といった細胞と、線維、生理活性物質、液体成分などが含まれている。

 線維芽細胞が活性化されると筋線維芽細胞になり、これががん細胞の増殖を促進する。折茂准教授のがん線維芽細胞の研究は、米国のMITホワイトヘッド研究所でのポスドク時代に始まる。

 内科医として臨床と基礎研究の経験を積んだ後の2000年~2007年、ホワイトヘッド研究所で折茂准教授はがんの研究で有名なロバート・ワインバーグ教授に師事し、研究を行った。ちょうど2000年は、ワインバーグ教授が「The Hallmarks of Cancer」という有名な総説を発表した年である。この総説は、がん化の過程をがん細胞の進化という観点から解説し、それによってがんという病気を定義したもので、その斬新な発想により、世界のがん研究者に大きな影響を与えた。

 その総説では、がんは段階的に進展していくものととらえている。そして、「がん細胞は、周囲の正常な細胞を毒化して、共謀者に変化させる。そして、その共謀者とともにがん細胞が働くことで、がんが悪化していく」と説明している。つまり、がん細胞は、周囲の細胞をそそのかして悪者に変え、悪者どうしが協力して、がんという病気を引き起こすというわけである。

 この説明を間質の線維芽細胞にあてはめると、がんが進行していく過程で、がん細胞は間質の線維芽細胞を毒化し、共謀者に変化させる(活性化)。そして、共謀者になった線維芽細胞は、今度は自身ががん細胞に働きかけ、がん細胞の毒化を促進するということになる。

 このように、がん細胞と周囲の細胞の相互作用により、がんが悪化していくと考えられる。この仮説の下、折茂准教授はがん間質の線維芽細胞の詳しい解析を進め、2005年にはその成果を論文として発表した。

 活性化された線維芽細胞の詳しい性質を解析し、この細胞が、「筋線維芽細胞」という名前で呼ばれている細胞とほぼ同一であることを証明した。筋線維芽細胞に、特異的なマーカー(平滑筋αアクチンマーカー=αSMAマーカー)を加えると陽性を示し、茶色に染色される。そこで、線維芽細胞が活性化されているかどうかを見分けるには、このマーカーで染色してみればよいことになる。

 折茂准教授は、がんの間質にある線維芽細胞が活性化されて筋線維芽細胞となるという関係をはっきりさせるため、両者をまとめて「がん内線維芽細胞」という名称をつけた。英語では、carcinoma-associated fibroblasts、略してCAFsと呼ばれている。


 細胞と組織と器官と器官系とは?

 細胞: 生物の体は、すべて細胞からできている。細胞の大きさは、ふつう0.01~0.03ミリぐらいで、顕微鏡でなければ見ることができない。

 1つ1つの細胞は、原形質というねばりけのある物質からできていて、その中に核という、球のような形をしたかたまりがある。この核は、細胞が生きていくために、なくてはならない大切なもの。

 私たもの体も、やはり細胞が集まってできている。しかし、この細胞はでたらめに集まっているわけではない。ふつう、隣り合っている細胞と細胞の間には、細胞間物質というものが詰まっている。

 組織: 細胞には、いろいろな種類があって、それぞれ形や性質が違っている。そして、同じ形や性質の細胞が集まったものを組織という。この組織は、ふつう、つぎの4つに分けられている。

 上皮組織とは、皮膚のように、体の表面を保護する役目のものと腸の内側の細胞のように、栄養分を吸収したり消化液を分泌したりするものとがある。これらの細胞は上皮細胞といわれ、細胞間物質がほとんどなく、細胞と細胞は、直に隣り合っているのが特徴である。

 支持組織とは、体の支持に役立つ組織のことで、骨の組織、軟骨の組織、結合組織などから成り立っている。この組織は、とくに細胞間物質の多いことが特徴です。

 骨の組織がかたいのは、細胞間物質の中にカルシウム分などがふくまれているためで細胞そのものは、やわらかだ。

 筋組織は細長くて、伸び縮みのしやすい筋細胞の集まりである。骨といっしょにはたらいて体を動かす横紋筋、腸や血管などをつくっている平滑筋、心臓をつくっている心筋の3種類がある。

 神経組織、体のある部分に受けた刺激を、ほかの部分に伝えるはたらきをする神経細胞とそれから伸びでた神経繊維とからできている。たとえば、目に入った光の刺激を大脳に伝えて、はじめてものが見えるという感じを起こさせたり、大脳からの命令を筋肉に伝えて運動を起こさせたりする。

 器官: いろいろな組織が組み合わさって特別のはたらきをするようにまとまったものを器官という。

 心臓は、主に心筋組織でできていますが、そのほか、上皮組織・結合組織・神経組織が組み合わさっている1つの器官である。そして、血液を全身にまわすポンプの役目をしている。

 力こぶをつくる上腕二頭筋という筋肉も1つの器官。大腿骨という1本の骨もまた、1つの器官である。

 器官系: 同じようなはたらきをする器官が集まり、互いに助け合うようにまとまったものを器官系という。200個あまりの骨と、これらを互いにつないでいる関節や靭帯と400個あまりの筋肉を、まとめて運動器系という。

 口・喉頭・食道・胃・小腸・大腸などの消化管と肝臓・すい臓など、それぞれ食べ物の消化や吸収に大切な器官の集まりを消化器系という。鼻・喉頭・気管・肺など、私たちの呼吸に大切な器官の集まりを呼吸器系という。

 血液やリンパを循環させるはたらきをする。心臓・動脈・静脈・リンパ管などは、まとめて循環器系とよばれる。

 脳・脊髄・脳神経・脊髄神経などの器官を神経系という。このように私たちの体には、いくつかの器官系がある。そして、これらの器官系が互いに、うまく助け合いながらはたらいているので、私たちは、元気に暮らしていくことができる。


参考 CNN news: https://www.cnn.co.jp/fringe/35116822.html


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南江堂

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