宇宙の約30%を占める謎の物質「ダークマター」

 宇宙はおもしろい。観察すれば観察するほど不思議な現象が発見されるからだ。

 宇宙を構成するものは何だろう? 宇宙は、ダークマター(暗黒物質)27%、ダークエネルギー(暗黒エネルギー)69%、目に見えている物質はわずか4%しか存在しないという。ESAの人工衛星「プランク」が、宇宙マイクロ波背景放射を詳細に観測した結果である。

 「ダーク」というのはその正体がわかっていないことを意味する。ニュートリノとする説もあったが実験や観測で否定され、現在は未発見の素粒子とする説が有力だ。



 ダークマター(暗黒物質)は1970年代、回転する銀河が遠心力でばらばらにならないことや、遠方の天体からの光が地球に届く途中に重力で曲げられている現象から、光や電磁波では全く見えない重い物質が宇宙空間にあるとして考え出された。

 今回、ダークマターをほとんどまったく含まない銀河が6500万光年彼方に見つかった。銀河形成の標準的な理論に見直しを迫る発見で、ダークマターの正体についても新たな手がかりをもたらすかもしれない。


 ダークマターをほとんど含まない銀河を発見

 銀河に含まれている星や星団の運動速度から求めた銀河の質量は、銀河全体の明るさから星やガスの総量を求めて導いた質量に比べて10倍以上大きな値になることが知られている。このことから、光などの電磁波を出さずに重力だけを及ぼす「ダークマター(暗黒物質)」と呼ばれる物質が銀河の質量の9割以上を担っていると考えられている。

 しかし、米・イェール大学のPieter van Dokkumさんたちの研究チームは、この経験則にまったく当てはまらない銀河を見つけた。彼らはDragonfly Telephoto Arrayと命名された独自開発の望遠鏡を使って、非常に淡く暗い天体を観測するプロジェクトを進めている。

 van Dokkumさんたちが今回観測した「NGC 1052-DF2」という銀河は、地球から約6500万光年ほど離れたくじら座の方向にあり、NGC 1052という巨大楕円銀河を中心とする銀河群に含まれるメンバーの一つだ。NGC 1052-DF2は天の川銀河と同じくらいの直径を持つが、星の数は天の川銀河のおよそ200分の1しかない。大きさのわりに明るさが非常に暗いことから、研究者はこのタイプの銀河を「超拡散状銀河(ultra-diffuse galaxies; UDG)」と呼んでいる。

 2015年にvan Dokkumさんたちが発見し、全質量の99.99%がダークマターであることが判明した銀河「Dragonfly 44」も超拡散状銀河だ。近年の観測で、こうした大きく淡い銀河が銀河群や銀河団の中にかなり多く存在することがわかっている。

 研究チームは米・ハワイのケック望遠鏡を使ってNGC 1052-DF2を取り巻く10個の球状星団の運動速度を測定し、星団が秒速10.5km以下というかなり小さな速度で運動していることを突き止めた。この速度から銀河の質量を計算すると、太陽質量の約3億4000万倍となる。一方、この銀河の明るさから見積もった恒星質量の合計は、太陽質量の約2億倍という結果になった。誤差を考えると、この銀河の質量はほぼすべて恒星が担っていると言ってもよく、ダークマターは予想の約400分の1しか含まれていないことになる。

 「私たちはこれまで、すべての銀河にはダークマターが存在し、ダークマターがあるからこそ銀河が生まれると考えてきました。ダークマターはあらゆる銀河の主成分なので、これをほぼまったく含まない銀河が見つかるというのは予想外でした」(van Dokkumさん、以下同)。


 中心にブラックホールも存在しない?シースルーのような銀河

 研究チームでは、NASAのハッブル宇宙望遠鏡やハワイのジェミニ望遠鏡でこの奇妙な銀河の性質をさらに詳しく調べた。NGC 1052-DF2には典型的な渦巻銀河に見られる明るいバルジや渦巻腕、円盤部などがない。かといって楕円銀河の特徴とも似ておらず、ほとんどの銀河の中心に存在すると考えられている大質量ブラックホールを持つ証拠もない。他の銀河と過去に相互作用をした痕跡もない。球状星団の色の観測から、この銀河の年齢はおよそ100億歳と推定される。

 「この銀河は非常にレアです。非常に希薄なので背景の遠方銀河が透けて見えていて、まさに『シースルー銀河』です。この銀河には恒星からなるハローと球状星団しかなく、それ以外の要素がまったく存在しないようです。このような銀河が形成された過程はまったく不明です」

 van Dokkumさんは、銀河群の中心銀河であるNGC 1052が成長する過程で、NGC 1052-DF2からダークマターを失わせるような何らかの役割を果たしたのかもしれないと考えている。また、NGC 1052に向かって落ち込むガスの塊が分裂してNGC 1052-DF2が作られたという説や、NGC 1052の中心で生まれた超大質量ブラックホールが強烈な風を放出してNGC 1052-DF2の形成を助けたという説も考えられている。

 銀河のダークマターについては、運動から求めた銀河の質量が明るさから求めた質量よりも必ず大きな値になることから、この食い違いはダークマターのせいではなく、私たちが前提としている重力の法則自体が間違っているためだとする考え方もある。しかしvan Dokkumさんたちは、2つの方法で求めた質量に食い違いがほとんどない銀河が今回見つかったことから、ダークマターは確かに存在し、恒星やガスなど、銀河の他の成分と分離することもありうる存在であることが示されたと考えている。

 「今回の発見は、銀河の振る舞いに関する標準的な理論に見直しを迫るものです。この発見はまた、ダークマターが現実に存在することを示しています。銀河の他の成分とは別個の存在として確かに存在するのです。今回の結果から考えると、銀河が形作られるにはいくつかの道のりが存在するのかもしれません」(アストロアーツ 2018.4.3)


ダークマターない銀河の発見、なぜ重要?

 地球から6500万光年の彼方にある銀河を詳細に観測したところ、通常の銀河には必ず含まれている重要な要素が欠けていることが明らかになった。それは、ダークマターと呼ばれる謎の物質だ。

 はるか彼方の銀河が、謎の物質の「存在」ではなく「不在」によって、天文学者たちの首を傾げさせている。この銀河は、3月29日付けの学術誌「ネイチャー」で報告された。

 今回発見された銀河は、約6500万光年の彼方にあるNGC1052-DF2だ。薄く広がった暗い銀河で、質量は私たちの銀河系の約200分の1である。

 銀河の質量は、すべてが見えるわけではない。なぜなら、普通の物質に加えて、ダークマターが存在しているからだ。普通の物質とは恒星や惑星や私たち生物そのもののことであり、これらはもちろん見える。対して、ダークマターは目に見えず、直接観察するすべもない。それなのに存在が知られているのは、普通の物質にその重力が影響を与えているためだ。そして、ダークマターは宇宙の質量の多くを占めている。

 NGC1052-DF2のような孤立した銀河には、ほかの銀河から類推すると、普通の物質の約100倍のダークマターがあるはずだった。論文によると、だがしかし、この銀河にはダークマターが欠けていた。

 米エール大学のピーター・バン・ドッカム氏が率いるチームは、多数のレンズを組み合わせたドラゴンフライ望遠鏡を使って、NGC1052-DF2を詳細に調べた。この銀河の中にある10個の星団の運動を追跡して銀河の質量を見積もったところ、驚いたことに、見えている恒星の質量の総和と同じだった。

 「ダークマターは銀河の単なるおまけ的なものではないと真剣に考えていました」とバン・ドッカム氏は言う。研究チームは精査を要する奇妙な銀河をほかにもいくつか発見しているという。


 逆説的に「ダークマター」の存在を証明

 奇妙な観測結果が1回出ただけでは、理論は必ずしも破綻しない。しかし、ダークマターがない銀河が見つかったことは、いくつかの非常に興味深い事実を示唆している。第一に、この発見は銀河の形成に関する現在の理論に疑問を突きつける。

 「今日の銀河形成理論では、銀河はダークマターハローという、ダークマターが重力によって集まった塊の中で形成されると理解されています」と、米スタンフォード大学のリサ・ウェクスラー氏は言う 。「少なくとも銀河が形成されるときには、恒星の数とそこにあるダークマターの量との間に緊密な関係があります」

 つまり、ダークマターがなければ銀河は形成されないということだ。

 バン・ドッカム氏らは、ダークマターのない銀河の形成と進化を説明できそうなシナリオをいくつか提案しているが、どれも気に入っていないという。ウェクスラー氏もこの結果に当惑していて、ダークマターがなくても銀河が形成されるなら、非常に興味深いと言う。

 「その場合、銀河とは何かというところから考え直す必要があります」とウェクスラー氏。

 逆説的だが、NGC1052-DF2にダークマターがないという発見はまた、ダークマターが存在している証拠にもなる。

 修正された重力理論のように、宇宙には目に見えるより多くの質量があることを、ダークマター以外で説明する理論もある。しかし、今回発見された銀河は、見えている恒星の分の質量しかないのに、通常の重力理論にしたがっていた。修正された重力理論がもし正しいなら、通常の重力理論にしたがう銀河の質量は、見えているよりも多くなければならず、この銀河を説明できない。

 バン・ドッカム氏は言う。「ですから、ダークマターをもたない銀河の発見は、ダークマターが本当に存在していることの証拠になるのです」 


99.99%ダークマターでできた銀河

 一方、2016年8月には、かみのけ座の方向に、天の川銀河と同程度の質量を持ちながら、そのほとんどがダークマターでできている銀河も見つかっている。こんな天体が存在するとは驚きだ。

 今回と同じ米・イェール大学のPieter van Dokkumさんたちの研究チームが、米・ハワイにあるW. M. ケック望遠鏡とジェミニ北望遠鏡を使った観測から、かみのけ座銀河団内に新たに銀河を発見した。約4億光年彼方という宇宙スケールでは近いところにあるにもかかわらず、昨年になってようやく見つかったのは、この銀河「Dragonfly 44」がとても暗いためだ。

 さらに詳しく調べてみると、Dragonfly 44には見えている(電磁波で観測できる)以上の物質が存在することがわかった。星(見えている質量)が少なすぎるため、銀河を一つにまとめる働きをする何かがない限り、銀河がバラバラになるはずだからだ。

 そこで、Dragonfly 44の質量を測るために、銀河内の星の運動速度が測定された。星の運動が速いほど、銀河には多くの質量があるということになる。星の運動速度からDragonfly 44の質量を求めたところ、太陽1兆個分と見積もられた。これは天の川銀河とほぼ同程度の質量だ。

 そしてこの全質量のうち、星や普通の物質が占める割合は、わずか0.01%であることもわかった。つまり残る99.99%はダークマター(暗黒物質)だということになる。これほど大きな銀河でありながらほとんどがダークマターという銀河の存在は予想外であった。

 質量のほとんどがダークマターという銀河はこれまでにも見つかってきたが、それらはDragonfly 44よりもはるかに軽い矮小銀河だ。「こんな銀河がどうやって作られたのか、まったく見当もつきません」という。(カナダ・トロント大学 Roberto Abrahamさん)。

 「Dragonfly 44は、ダークマターの研究に大きな意味を持ちます。天体のほとんどがダークマターということは、星やその他の銀河内物質などとの混同を避けることができるからです。質量の大きい新たな種類の天体を対象とした研究分野の幕開けです」(van Dokkumさん)。


参考 National Geographic news: http://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/18/033000143/


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