高齢者に肺炎が多い理由

 このごろ様々な病気が怖くなってきた。職場で同僚が肺炎にかかった。高齢になると肺炎になりやすいと聞く、その理由は何だろうか?

 肺炎は、平成27年の死亡原因の3位。人数にすると、およそ12万人。その中でおよそ95%が65歳以上の高齢者であるといわれている。その理由はいくつか考えられるが、もっとも分かりやすい理由は、免疫力の低下や、もともと持っている慢性的な疾患の影響である。

 もともとの慢性的な疾患があると、免疫力は常に低下気味となる。慢性的な疾患があると、それに対抗すべく、体はより多くのエネルギーなどを必要とする。さらに高齢になると食事などからエネルギーを上手く取り込むことが難しくなり、免疫力にまでエネルギーが行きわたりにくくなる。



 この状態で肺炎を発症させるような細菌やウイルスに感染すると、免疫力が十分に働くことができない。高齢者が肺炎になっても、あまり高い熱を出さない理由もここにある。人の体を発熱させるには多くのエネルギーを必要とするが、高齢者になるとこの「発熱させる」機能が十分に働かず、免疫力がその機能を十分に発揮するまで、体温を上げることが難しくなる。

 その結果、肺炎の原因となる細菌やウイルスなどの病原微生物を、早期に排除することが出来なくなり、周囲の人が気づいた時には、すでに命にかかわる状態になっていることも珍しくない。

 今回、歯が抜けると「肺炎死」のリスクが上がるという研究結果が出た。研究者によると、歯周病による炎症により肺炎が引き起こされやすくなるのではないか、歯周病菌とその酵素が肺の組織に何らかの悪さをするのではないか、歯を失ったことで咀嚼力が落ち、栄養不足になったことが影響しているのではないかなど、いくつかの原因を考えている。

 我々の歯は、加齢とともに少しずつ抜けていく。親知らず以外の歯28本が、高齢になっても全て残っている人はほとんどいない。歯を失う理由の一つは歯周病だが、口の中のケアと肺炎には関係があることが知られ、残っている歯の数で肺炎死のリスクがわかるかもしれないという。


 いくつになっても自分の歯で食べたい

 80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという「8020運動」というものがある。日本歯科医師会が中心になって設立した8020推進財団が提唱している運動で、厚生労働省の調査によれば日本人の歯の喪失率と本数は減少傾向にあるようだ。8020運動が奏功しているのかもしれない。

 減少傾向にあるとはいえ、自分の歯(永久歯)を1本でも失った人の割合は、50~54歳で61.5%、60~64歳で79.2%、70~74歳で87.4%、80~84歳で93.8%となっている。失った歯の平均本数は、50~54歳で2.0本、60~64歳で4.6本、70~74歳で8.6本、80~84歳で12.9本であり、80歳以上の高齢者では約半分の歯を失っていることになる。

 歯にも寿命があり、70歳前後になると自然に抜ける歯も出てくる。それ以外の抜ける原因は、主に歯周病と虫歯だ。厚生労働省のホームページ「歯の喪失の原因」によれば、40代から歯周病による歯の喪失が増え、全体として60代に抜歯本数のピークを迎える。

 歯の寿命を長くするためにはどうすればいいのだろうか。前述した8020推進財団のホームページによれば、定期的に歯科検診を受け、自分の歯の健康状態を把握し、細菌が繁殖しやすい歯石などを除去し、歯周病などの治療を受けることなどが重要となる。また、口の中を清潔に保ち、適正な歯磨きや歯肉マッサージ、食事の際の咀嚼回数などにも気をつけるべきだ。


 タバコは歯周病のリスクを高める

 歯周病は単に歯を失うだけではなく他の病気になるリスクも高める。

 よく知られているのが糖尿病だろう。歯周病は2型糖尿病と糖尿病性腎症の凶悪なリスク因子だ。脳卒中などの心血管疾患との関連も疑われている。歯周病の患者は、虚血性心疾患やアテローム性動脈硬化症などのリスクが高まるようだ。

 喫煙も歯周病のリスクを高める。タバコを吸う人はそうでない人に比べ、タネレラ・フォーサイシア(Tannerella forsythia)という歯周病菌が口の中に多いことが知られているが、禁煙者と比較した疫学調査でもタバコが歯周病のリスクを高めるという多くの調査研究がある。ただ、心疾患との関係では、喫煙などが歯周病の交絡要因になっているのではないかという指摘もある。

 いずれにせよ、歯周病が炎症を引き起こし、それが健康に対して様々な悪影響を及ぼしている可能性は高い。前述したもの以外では肺炎を引き起こすことが知られ、口の中を清潔にすると高齢者の肺炎リスクを下げる効果がある。

 歯周病は高齢者が歯を失う大きな理由だが、歯の損失と肺炎の死亡率との関係について新しい研究論文(※8)が米国の科学雑誌『PLOS ONE』オンライン版に出た。これは名古屋大学や九州大学などの研究者による疫学調査で、日本全国の歯科医師が協力してデータを蓄積しているコホート研究「LEMONADE Study」を使っている。


 残った歯の本数と肺炎死の関係とは

 研究者は、2001~2006年のデータ(親知らず以外の失った歯の数、生活習慣、健康状態についてのアンケート調査、1万9775人、51.4±11.7歳、男性92.0%)をこのコホート研究から入手し、肺炎による死亡率との関連を調べた。

 ハザード比(HR)は、性別、年齢、BMI、喫煙状況、運動、糖尿病歴を調整して出した。また咀嚼力減退による影響をなくすため、誤嚥性肺炎による死亡は除いている。経過観察期間の9.5年(中央値)の間の肺炎による死亡者は68名だった。

 その結果、歯を失う本数に応じて肺炎の死亡リスクが有意に上がることがわかったという。全ての歯を失った人は半分まで(0~14本)しか失っていない人に比べ2.07倍のリスクがあり、15~27本の歯を失った人の場合は同じく1.60倍のリスクがあることがわかった。これを1本あたりのリスクに換算すると1.031倍となり、失う歯の本数が増えるほど肺炎死のリスクも上がるようだ。

 なぜ歯を失うと肺炎になるのだろうか。研究者は、歯周病による炎症により肺炎が引き起こされやすくなるのではないか、歯周病菌とその酵素が肺の組織に何らかの悪さをするのではないか、歯を失ったことで咀嚼力が落ち、栄養不足になったことが影響しているのではないかなど、いくつかの原因を考えている。

 歯を失う原因は歯周病だけではないが、高齢になってもなるべく多くの歯を残しておきたい。若いうちからオーラルケアに気をつけておけば、年をとっても自分の歯で食事を楽しむことができ、それは栄養摂取も含めて様々な病気のリスクを下げるはずだ。(石田雅彦 フリーランスライター)


 肺炎の症状 肺炎かな?と思ったら

 肺炎の症状として代表的なものは、せきや発熱、呼吸困難、くしゃみ、たん、のどの痛み、胸痛などがある。風邪の症状に似ているが、肺炎と風邪とのの違いは症状の重さ。

 風邪よりも、かなり激しい咳が出る。細菌性肺炎の場合は、湿った咳が黄色や緑色などの痰とともに出てくる。非定型肺炎の場合は乾いたせきが長く続きますが痰はあまり出ない。非定型肺炎とは、ウイルスより大きく細菌より小さいサイズの病原微生物が原因で起こる肺炎のことで、代表的なものとしてマイコプラズマ肺炎がある。

 風邪の場合は、おおよそ38度前後で治まるが、インフルエンザでは39度以上の高熱が出ることがある。肺炎も高熱が出るので、一時的に39度や40度の熱が出る。しかし、高齢者の場合、あまり高い熱が出ないケースもあり、自己判断で薬を飲んだりすることは避けよう。

 肺胞の中に水が溜まると、息が苦しくなり、呼吸困難となることがある。重症化すると、酸素をうまく取り込むことができず、体全体が酸素不足になり、チアノーゼ(顔や唇が紫色に変色する)になることもある。また、肺に水が溜まっていなくても、気管や肺に炎症が起きている場合は、上手く空気を吸い込むことが難しくなり、呼吸困難となることもある。のどのあたりに痰が溜まっている時も、空気の通り道(気道)が狭くなるので、呼吸困難となる。

 肺の炎症が強くなり、肺の組織を覆っている「胸膜」まで炎症が広がると、胸が強く痛むことがある。痛みが長く続く時や、呼吸の動きに合わせて痛みの強さが変化する時は、胸膜の炎症が起きているかもしれない。

 その他の肺炎の症状としては、全身の倦怠感、悪寒、などがあげられる。発症している日数は、風邪の場合は数日から1週間くらいだが、肺炎の場合は1週間以上症状が長く続き、入院治療が必要となるケースが多くなる。


 肺炎の症状が起こる仕組み

 肺炎は、細菌やウイルスがのどを通過して、肺にある肺胞に侵入し、炎症を起こすことで発症する。肺胞は、酸素と二酸化炭素のガス交換をする役割をしているので、肺胞で細菌やウイルスが増殖すると、本来の肺胞が持つ「ガス交換」という機能が上手く働かなくなり、呼吸困難や息切れなどの症状を引き起こす。

 一般的に、「風邪」はのどに感染し、細菌やウイルスが増殖して起こる病気。そのため、咳とともに痰が出るものの、のどのあたりで作られる痰なので、痰の量が多いことはあっても、比較的、出しやすい痰であることが多い。風邪の時に発熱するのは、私たちの平常時の体温よりも、少し高い体温の方が、免疫機能が働きやすくなるため。

 一方で「肺炎」は、肺の奥の方で感染し、細菌やウイルスが増殖して起こる病気。そのため、咳や痰は肺の奥からこれらを排出しようとして起こるので、強い咳、粘度が高い痰を出そうとする。痰の量も多く、粘度が高いためなかなか吐き出すことが出来ない。肺炎の時に発熱する理由は風邪と同様だが、より強い免疫力で細菌やウイルスと戦おうとするため、高熱が続くことになる。(健康長寿ネット)


参考 Yahoo news:https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20180414-00083969/


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