大阪北部地震発生!

 2018年(平成30年)6月18日7時58分頃、日本の大阪府北部を震源として発生した「大阪府北部地震」には驚いた。

 大阪で地震が起きるなんて誰も予想していなかったからである。地震の規模はM 6.1で、震源の深さは13 km。最大震度6弱を大阪府大阪市北区・高槻市・枚方市・茨木市・箕面市の5市区で観測した。

 地震当日の気象庁による記者会見後、時事通信などマスメディア各社は「気象庁が1923年(大正12年)に観測を開始して以来、大阪府で震度6弱以上の揺れを観測したのは初めて」と報道した。



 しかし、あの1995年の阪神淡路大震災(兵庫県南部地震)では、気象庁の現地調査により大阪府の一部地域(大阪市西淀川区・豊中市・池田市)が震度6であったと判定されており、あれ以来の大地震となった。

 阪神淡路大震災も、これまで無いといわれていた地域の活断層が動いた地震であり、今回もこれまで発見されていなかった活断層が動いた可能性がある。つまり、このことは日本で安全な場所など何処にもないということである。

 それ以前では1936年の河内大和地震(Mj 6.4)、さらに遡ると有馬-高槻断層帯が起震断層と推定されている1596年の慶長伏見地震(M7.5)がある。

 今回の地震による被害は、7月5日18時までの総務省消防庁の集計によると、大阪府内で死者4名、2府5県で負傷者434名(うち重傷者15名)、住家の全壊9棟・半壊87棟・一部破損27,096棟に加えて、非住家被害は686棟、火災は大阪府と兵庫県で7件が確認されている。死者は大阪市東淀川区、高槻市および茨木市で発生しており、うち2名はブロック塀の崩落、1名は本棚の下敷きとなり死亡した。滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良の5府県のエレベーター214基で閉じ込めがあったが、当日中にすべて救助された。

 高槻市では寿栄小学校のプール沿いのブロック塀が倒れ、登校途中の小学生が下敷きになり死亡した。倒壊した壁は、元々あった高さ1.9mの壁の上に、目隠し目的でブロックが8段分(1.6m)積み上げられた部分だったため、建築基準法施行令により定められたブロック塀の高さ基準2.2m以内を遥かに超えていた上に、高さ1.2m以上のブロック塀に設置が求められている控壁もなかった。

 さらに、2015年11月に防災アドバイザーが壁の危険性を指摘していたにもかかわらず、同市教育委員会の職員2名が2016年2月に目視や打音による簡易検査を行い問題なしと判断していたことが判明した。


大阪北部地震は「見えない」活断層が起こした?

 今回の大阪北部地震は、こうした既に知られている活断層ではない場所で起きた可能性がある。

 日本各地で地震が頻発する中、大阪府北部で今月18日に震度6弱を観測する地震が発生した。これは大阪にあるいくつかの活断層の近くで起きた。日本列島には「中央構造線」という長い断層帯が横断しているが、こうした断層との関連性はあるのか。別の地震を誘発する可能性はあるのか。地球物理学者で武蔵野学院大学特任教授の島村英紀氏に寄稿してもらった。

 大阪府北部でマグニチュード(M)6.1の地震が起きた。震源の深さは13キロと浅かった直下型地震。このため、最大震度6弱を観測した。

 大阪府で震度6以上の地震が起きたのは、気象庁が地震観測を始めてから80年余りで最初。神戸や淡路島で被害が大きかった阪神淡路大震災(1995年)の前と同じように「関西には地震がない」と思い込んでいた地元には、驚天動地の出来事だった。

 日本の都市部の中でも、近畿地方は例外的に活断層が「よく見えている」地域である。今回も大阪平野の北縁にある「有馬-高槻断層帯」として知られていた活断層の東端に近くで起きた。またここは、大阪の東部を南北に走る「生駒(いこま)断層」というよく知られていた活断層の北方の延長上でもある。

 実は、大阪市の中心部には「上町(うえまち)断層」が南北に走り、生駒断層と並行している。この活断層は大阪駅(梅田駅)をはじめ、大阪の中心部を南北に縦断しているので、もしこれが地震を起こせば、阪神淡路大震災並みか、それ以上の被害を生むのではないかと、かねてより恐れられてきていた。大阪の防災計画で一番の要注意事項は、この上町断層が起こすM7クラスの直下型地震だった。

 しかし、今回の地震は上町断層ではないところで起きた。上町断層が「近畿地方で一番直近の地震」を起こす断層ではなかったことになる。


 「地表に見えているもの」が活断層の定義

 そして、どの活断層が起こした地震なのか、いまだに分かっていない。活断層が地震を起こしたときに見られる地表面の大きな変形が見られなかったからだ。

 これはM6クラスという、直下型地震としては最大級ではない規模の地震だったためだと考えられている。日本に近年起きてきた直下型地震のうちで、活断層の存在が十分に知られていない場所だったり、あるいは地震が起きて、はじめて活断層が知られたりした例も多い。今回も、すでに知られていた活断層が起こしたのではない可能性が強い。

 地震は「地震断層」が起こします。だが活断層には明確な定義があり、「地震断層が浅くて地表に見えているもの」である。だから日本の都会のほとんどの地下には活断層が「ない」ことになってしまう。

 しかし、実際は活断層が引き起こすのと同じような直下型地震が起きている。つまり、活断層が「見えない」だけで「ない」わけではない。

 1855年に江戸(現在の東京)で起きた「安政江戸地震」は、阪神淡路大震災(地震名としては兵庫県南部地震)以上の、犠牲者1万人以上という日本史上最大の被害を生んだ直下型地震だった。震源は隅田川の河口付近だと考えられている。だが、ここには厚い堆積物があって、地下の岩の割れ目である活断層が見えない。つまり、活断層がないところで起きた、活断層が起こすのと同じ直下型地震が起きた。

 三大都市の一つ、名古屋を形作った濃尾平野など、日本の都会のほとんどは厚くて平らな堆積物の上に展開されています。それゆえ、活断層は「ない」ことになっている。


 見えない活断層の方が遥かに多い

 ところで、すでに知られているある活断層が大地震を起こすのは、長ければ数万年以上に一度に過ぎません。それゆえ、注目されている活断層が、注視されている間に地震を起こす可能性はごく低い。

 例えば高槻市が政府の「地震調査研究推進本部」の資料から作成した防災資料「ゆれやすさマップ」では、有馬-高槻断層帯による30年以内の地震発生確率は「ほぼ0%~0.02%」。それだけではない。2014年に熊本を襲った震度7の2回の地震の前には布田川断層帯で30年以内に地震が起こる確率は「ほぼ0~0.9%」だった。

 天気予報で20%の降水確率ならば、数字としては低いのだが、傘を持って家を出る人はいるかもしれない。だが、活断層でもっと低い確率を発表されても、それは気休め程度にしかならない。この種の確率の発表は、世間を誤解させるだけなのだと思う。内陸直下型地震が日本のどこを襲うのか、科学的には分からない現状では、この種の発表は人を惑わせるだけだ。

 つまり、太平洋プレートやフィリピン海プレートに押されている日本列島がねじれたりゆがんだりして、内陸直下型地震が日本のどこにでも起きる可能性がある。そのうちのいくつかは、すでに知られている活断層が起こすものかも知れないが、多くは、知られている活断層ではないところで起きる地震である。


 「見えない」中央構造線が起こした?

 「中央構造線」という日本最長の活断層帯がある。鹿児島県から熊本県を通り、大分県から瀬戸内海を抜けて、長野県まで達している長大な断層。熊本の地震は明らかにこの活断層帯で起きて、それゆえ、いまだに震度4や3の地震が続いている。ちなみに阪神淡路大震災は同じM7.3でしたが、余震は2か月ほどで収まった。

 しかし、日本人が日本列島に住み着いたのは日本の地震の歴史に比べれば長くはない1万年あまりだから、日本人が見て記録した地震は限られている。それでも「慶長3連動地震」だけは、日本人の目の前で起きた大地震として多くの記録に残っている。

 この「慶長伏見地震」が起きたのは16世紀末のことで、京都で大きな被害が出た。地震による死者数は京都や大阪・堺で1000人以上だったと伝えられていて、この地震は今回の大阪の地震より被害が大きかったと考えられている。

 被害を記録した古文書の様子から、今回と同じような場所で起きたのではないかと考えられている。しかし、当時は地震計などもちろんなく、今回の大阪北部の地震の震源近くより京都の方がずっと人も多く、古文書もたくさん残っていたのだが、当時の震源の場所は厳密には分からない。今回の地震で被害が多かった高槻市や茨木市などとその周辺の地域は、大阪と京都の中間にあって戦後に開発された新興住宅地が多く、昔は人がほとんどいなかった場所だった。

 慶長伏見地震の4日前には現在の愛媛で「慶長伊予地震」が、また前日には現在の大分・別府湾口付近で「慶長豊後地震」が起きた。いずれも、それぞれの地域で大きな被害を生んで、そのために、縁起をかついで、同年中に文禄から慶長へ改元が行われたほどだ。いずれも、日本で起きる内陸直下型地震としては最大級のM7クラスだったと思われている。

 中央構造線は、紀伊半島の北部を東西に横断していて、今回の地震の震源からはある程度南に離れているが、今回の地震も中央構造線絡みで、その構造線の近辺で起きる内陸直下型地震の一つであった可能性がある。

 この中央構造線がは長野県に至っていることは分かっているが、その先、太平洋岸まで続いているかどうかは、学説が分かれている。つまり、堆積物が厚くて長野県より東は断層が見えないので確定した学説がない。

 だから、例えば6月17日に起きた群馬県渋川市の直下型地震は、この「見えない」中央構造線が起こした可能性も否定できないということになる。


 東日本大震災が動かした岩盤の影響?

 2011年に起きた東日本大震災(地震名は東北地方太平洋沖地震)はM9.0という、いままで地震計が記録した日本最大の地震だった。

 この地震は日本列島の地下全体にある基盤岩を一挙に動かしてしまった。その量は、震源に近い宮城・牡鹿半島で5.4メートル、遠くに行くにしたがって小さくなるが、それでも首都圏で30~40センチメートルにもなった。プレートが年間4~8センチメートルというゆっくりした速さで動いて日本列島のひずみを増していくのと比べて、一挙に数十年分以上を動かしてしまったことになる。

 この影響が、じわじわ数年から数十年かけて出てくるに違いない。地震も火山も、いままでよりは多く発生するだろう。

 もしかしたら、最近、日本各地で頻発している地震、たとえば最大震度5強を記録した5月25日の長野県栄村の地震(M5.2)、最大震度5弱だった6月17日の群馬・渋川市の地震(M4.7)、そして6月18日の大阪府北部の地震も、その一環かもしれない。


 大阪北部地震とは?

 大阪府北部地震は、2018年(平成30年)6月18日7時58分頃、日本の大阪府北部を震源として発生した地震。地震の規模はM 6.1で、震源の深さは13 km(ともに暫定値)。最大震度6弱を大阪府大阪市北区・高槻市・枚方市・茨木市・箕面市の5市区で観測した。 防災科学技術研究所によると、本震は西北西 - 東南東を圧縮面とする逆断層型。気象庁マグニチュード暫定値はMj 6.1である。なお、その後の余震活動では地震活動域の北側で逆断層型、南側で横ずれ断層型というように混在した型の地震が発生している。

 気象庁は、地震検知から3.2秒後の7時58分41.9秒に緊急地震速報(警報)を大阪府・京都府・兵庫県南部及び淡路島・滋賀県・奈良県・三重県中部と北部・福井県嶺南・和歌山県北部・香川県東部に発表した。

 なお、気象庁はこの地震の命名を行っておらず、公的機関では「大阪府北部を震源とする地震」や「大阪府北部の地震」などと称呼されている。

 地震当日の気象庁による記者会見後、時事通信などマスメディア各社は「気象庁が1923年(大正12年)に観測を開始して以来、大阪府で震度6弱以上の揺れを観測したのは初めて」と報道した。

 しかし、この間に震度の観測法や観測点の密度は大きく変わっており、過去の地震で観測された震度などの情報と本地震を単純に比較することはできない。また、気象庁震度階級が大きく変わる契機となった1995年の兵庫県南部地震では、気象庁の現地調査により大阪府の一部地域(大阪市西淀川区・豊中市・池田市)が震度6であったと判定されている。

 この地震は新潟-神戸歪集中帯の南西部で発生した。また、震源の周辺には有馬-高槻断層帯や生駒断層帯、上町断層帯など複数の断層帯が存在するが、地震当日の地震調査委員会の発表によると、周辺の断層帯が今回の地震活動に関連している可能性はあるが、今後の調査・観測結果等を待って検討する必要があるとしている。

 大阪府付近の被害地震としては、1995年の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災、Mj 7.3)以来で、それ以前では1936年の河内大和地震(Mj 6.4)、さらに遡ると有馬-高槻断層帯が起震断層と推定されている1596年の慶長伏見地震(M7.5)がある。


 大阪北部地震の被害

 7月5日18時までの総務省消防庁の集計によると、大阪府内で死者4名、2府5県で負傷者434名(うち重傷者15名)、住家の全壊9棟・半壊87棟・一部破損27,096棟に加えて、非住家被害は686棟、火災は大阪府と兵庫県で7件が確認されている。死者は大阪市東淀川区、高槻市および茨木市で発生しており、うち2名はブロック塀の崩落、1名は本棚の下敷きとなり死亡した。滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良の5府県のエレベーター214基で閉じ込めがあったが、当日中にすべて救助された。

 高槻市では寿栄小学校のプール沿いのブロック塀が倒れ、登校途中の小学生が下敷きになり死亡した。倒壊した壁は、元々あった高さ1.9mの壁の上に、目隠し目的でブロックが8段分(1.6m)積み上げられた部分だったため、建築基準法施行令により定められたブロック塀の高さ基準2.2m以内を遥かに超えていた上に、高さ1.2m以上のブロック塀に設置が求められている控壁もなかった。

 さらに、2015年11月に防災アドバイザーが壁の危険性を指摘していたにもかかわらず、同市教育委員会の職員2名が2016年2月に目視や打音による簡易検査を行い問題なしと判断していたことが判明した。濱田剛史高槻市長は18日に記者会見で謝罪した。

 高槻市の事故を受け、文部科学省は事故が発生した小学校に職員と専門家を派遣すると共に、全国の小学校・中学校設置者に対して敷地内のブロック塀についての緊急点検を実施するように緊急の要請を行うことを決定した。また大阪府箕面市では「市内の公立の全小・中学校に設置されているブロック塀について、全て撤去する」方針を決定した。国土交通省住宅局建築指導課は、6月21日に一般建築物に於けるブロック塀のチェックポイントを作成し、特定行政庁などに対してチェックポイントに基づいて安全点検を行うように通知を行った。


 ライフラインの復旧

 関西電力では、18日8時20分時点で、大阪府内の約17万250戸、兵庫県内の約690戸で停電していたが、10時20分までにすべて復旧した。

 本地震発生後に、高槻市の道路や大東市の住宅街では、上水道管が破裂し水が噴き出たことが確認され、高槻市・箕面市・茨木市・枚方市などでは、断水や水の混濁が発生した。

 大阪ガスでは、茨木市で6万4,254戸、高槻市で4万5,745戸、吹田市で1,208戸、摂津市で744戸の合わせて11万1,591戸を対象に、安全確保のために都市ガス供給を停止した。ガスの供給は地震から6日後の24日に全地域で復旧した。

 地震発生から47分後の8時45分時点で、NTTドコモやNTT東日本・NTT西日本は、災害時優先電話の確保と輻輳防止のため、大阪方面への通話を制限していたが、同日12時までにほぼ解除した。

参考 THE PAGE: https://thepage.jp/detail/20180630-00000004-wordleaf