関東甲信地方が梅雨明け

 気象庁は6月29日、関東甲信地方が梅雨明けしたとみられると発表した。記録が残る1951年以降、同地方では最も早い梅雨明けで、6月は初めて。これまでで最も早かったのは2001年の7月1日だった。昨年より7日早く、平年より22日早い。

 今年の梅雨明けはこれまで沖縄地方と奄美地方だけ。昨年に続き、2年連続で九州より早い関東甲信の梅雨明けとなった。梅雨の期間(梅雨入りした6月6日から梅雨明け前日の6月28日まで)の日数は23日となり、1978年(6月11日から7月4日まで)に並んで1番の短さであった。

 気象庁によると、6月29日は太平洋高気圧におおわれ、関東甲信とその周辺で気温が上がり、昼過ぎまでに新潟県長岡市で37.0度、山形市で36.7度を記録。いずれも6月の最高を更新した。東京都心では6月28日まで4日連続で真夏日となっており、29日を含め、今後1週間先まで最高気温が30度を超える日が続くとみられる。



 しかし、太平洋高気圧の西端にあたる。九州北部地方では梅雨前線に湿った空気が流れ込んだ影響で、猛烈な雨が降っている地域がある。30日正午までの24時間降水量の予想は、福岡、佐賀、長崎、熊本の各県で120ミリ、大分県で100ミリ、山口県で80ミリ。気象庁は土砂災害や浸水害、河川の氾濫(はんらん)への厳重な警戒を呼びかけている。


 これまでの梅雨の記録

 梅雨明けの時期は、平年だと7月21日ごろ、これまで最も早かったのが、2001年7月1日であり、最も遅かったのが1982年の8月4日である。

 もっとも早い記録と遅い記録では34日の開きがある。ただし、梅雨明けが8月までずれ込んだケースは過去63年の中で4回しかない。確率としては約6%。

 また、もっとも多い日は7月19日ごろで過去7回ある。さらに7月12日から27日までの16日間に梅雨明けしたケースは45回あり、過去データのみで予想すると、この期間に梅雨明けする確率は約67%。どうも梅雨入りと比べると、その変動幅は小さいものの日にちが分散する傾向にあるようだ。

 梅雨期間の日数は、平年だと44日間。最短は、24日間で、1978年の6月11日~7月4日であった。最長は80日間で、1963年の5月6日~7月24日ごろ。もっとも短い記録と長い記録では56日間の開きがある。

 最短の1978年は平年より3日遅く梅雨入りし17日も早く梅雨明けしています。いっぽう、最長の1963年は梅雨入りも最も早かった年ですね。平年よりも1ヶ月以上早く梅雨入りした上に梅雨明けも遅かったことから、これほど長くなってしまったようだ。

 こうして見ると、梅雨入りが早まったからといって梅雨明けが早くなるというわけではなく、同様に梅雨入りが遅くなったからといって梅雨明けが遅くなるとは、必ずしも言えないようだ。


 猛暑の予想 熱帯の海や欧州の猛暑が影響? 

 今年の関東甲信地方の梅雨入りは6月6日とみられるので梅雨の期間は24日となり、1カ月を切った。梅雨明けが過去もっとも早かったのは2001年の7月1日で、今年はこれよりもさらに2日、平年と比べると22日も早い。

 2001年の梅雨の間の雨量は平年の6割程度と少なかった。今年も、首都圏の水がめとなるダムがある関東北部山沿いなどでかなりの少雨傾向だ。6月9日~28日の合計雨量が平年の半分程度のところもある。

 2001年は梅雨明け後に前線が戻ったり北のオホーツク海高気圧が強まったりして、やや不順な天候になった。台風も近づき雨をもたらした。気象庁によると今年は今のところ、しばらく安定した夏空が続く見通しだ。それだけに、夏場の水不足への懸念も大きい。

 今夏、関東甲信地方に早い梅雨明けをもたらした原因の一つが、夏の主役となる太平洋高気圧の勢力拡大だ。日本の東海上から東日本まで覆い、梅雨前線を北へ押し上げた。

 さらに注目すべきは、その南にあたるフィリピン東方沖の熱帯太平洋の状態だ。海面水温が平年よりも高く、その分だけ上昇気流も活発に起きやすい状態が続いている。上空に上がった空気は北側で降りて下降気流を作り、太平洋高気圧を強める働きをする。このため梅雨前線は北の方にとどまり再南下はしない見通しで、気象庁は梅雨が明けたと判断した。

 ただ、6月29日の時点では太平洋高気圧の勢力圏は関東甲信にはかかっているものの、西日本にまでは及んでいない。まだ中途半端な勢力といえ、高気圧の縁を回る南からの暖かく湿った気流がちょうど九州や四国の太平洋側に吹き込む形になっている。上昇気流が強まりやすい山の南側斜面付近などで、局地的な豪雨の危険がある。

 また、梅雨のないはずの北海道に加え、東北地方も活発な梅雨前線のために大雨になりやすい。「梅雨明け」と聞くと「安定した夏空」を思い浮かべがちだが、晴天が続くのは関東甲信など一部に限られる。少なくともここ数日は、西日本や北日本はこれまで以上に豪雨への警戒が必要だ。


 梅雨明けが早まった理由

 実は太平洋高気圧以外にも、梅雨明けへ向けて「決定的な一押し」をした現象があると専門家はみている。その正体は欧州付近から中国大陸を伝わってきた特殊な大気の波だ。

 欧州では5月以降、広い範囲で猛暑に見舞われており、場所によっては100年に一度あるかないかの記録的な暑さになっている。この異常な暑さをもたらす大気の変動のエネルギーが日本に到達する現象は「シルクロード・パターン」とも呼ばれる。日本付近における偏西風の蛇行をもたらし、猛暑続きの引き金となる。

 太平洋高気圧が勢力を強めるのとほぼ時を同じくして、欧州からの波動が到達した。そして、2つの効果が重なって梅雨前線を一気に北へ押し上げたというのが真相のようだ。

 これらに加えて、さらにもう一つ、気になる現象がある。それは熱帯太平洋とインド洋の海面水温の変化だ。気象庁や米気候予測センターによると、これから冬にかけて熱帯太平洋東部の海面水温が平年より高くなるエルニーニョ現象が発生する可能性があり、既に水温は上昇傾向が始まっているようだ。

 海洋研究開発機構アプリケーションラボの分析によると、これから起きるエルニーニョはやや「クセのあるタイプ」になりそうだという。平均的なエルニーニョよりも、海面水温が高めの海域がやや西に寄る可能性が高いとみている。こうなると大気との熱のやりとりを通して日本付近の夏の気温の上昇を招きやすいことがわかっている。現時点での影響ははっきりしないが、暑さがさらに厳しくなるきっかけとなるかもしれない。

 また、同ラボはインド洋でも特殊な現象を予測する。インド洋東部の海面水温が平年より低め、西部で高めとなる、正の「インド洋ダイポールモード」のパターンが顕著になるとみている。これも大気の流れに影響し、日本の夏の気温を押し上げる効果が知られる。

 つまり、今夏は猛暑との関連が指摘されているいくつもの現象が重なる公算が大きい。台風の発生場所やコースによっては夏の天候が大きく変わることもあり、はっきりしない部分も多いが、暑さ対策と水不足への備えはしっかりしておいた方がよさそうだ。

 最後に、西日本や北日本を飛び越えて、関東甲信が梅雨明けしたケースが過去に何回あるか見てみると合計9回もある。気になるのは、13年以降に頻度が高まっており、4回も起きている点だ。これが大気の流れや海洋の循環の影響なのか、背景に温暖化のような気候変動があるのか、今後の研究が待たれる。(日本経済新聞 安藤淳)


参考 tenki.jp:https://tenki.jp/forecaster/deskpart/2018/06/29/1103.html