アオコが発生する条件は?
アオコ(青粉)とは、富栄養化が進んだ湖沼等において微細藻類(主に浮遊性藍藻)が大発生し水面を覆い尽くすほどになった状態、およびその藻類を指す。粒子状の藻体がただよって水面に青緑色の粉をまいたように見えることから、「青粉(あおこ)」と呼ばれるようになった。
水面をアオコが覆うと、水草など他の水生植物は、光合成ができず死滅する。水草の森は、魚類の産卵や稚魚の成育場所として重要であり、その消滅は生態系の破綻を招くおそれがある。
夜間の呼吸作用により溶存酸素が消費され、魚類などの動物が酸素欠乏により死滅する。湖沼は河川に比べて酸素の供給効率が低く、新鮮水による洗い流し効果も無いため、酸欠を招きやすい。また、アオコの死骸が湖底で腐敗すると、硫化水素などの還元性物質が発生し、やはり酸素を消耗する。
また、藍藻には非リボソームペプチドであるミクロシスチン (Microcystin-LR:MC-LR)などの毒素を生産する個体群が含まれており、赤潮と同様に魚類のエラを閉塞させ窒息させるほかにも、毒素によりカモなどの鳥類(アイガモ)の肝臓組織に蓄積し斃死を引き起こすことがある。
ではどのような条件で、アオコが発生し湖面を覆うのだろうか?
昔、茨城県のある湖に行ったとき。岸の近くを歩いていたら、なにかが腐ったような異様なにおいを感じた。岸辺の湖面は緑色に濁っていて、岸に打ち上げられた緑の物体は、すこし干からびていた。悪臭の源は、この「アオコ」だった。異常に繁殖した小さな植物プランクトンが吹き寄せられ、腐っていた。
ここまで増えてしまうと困りものだが、本来水中の生態系にとって、植物プランクトンは重要な存在だ。水面近くの浅いところに届く太陽の光を吸収し、植物に特有の「光合成」で栄養分を作りだす。これを食べた動物プランクトンを小魚などが食べ、それがさらに大きな動物のえさになる。生き物たちに必要な栄養の大本を作るのが、この植物プランクトンだ。
植物プランクトンは太陽の光を受けて栄養分を作るので、太陽光がよく当たれば増える。そう考えられていた。だが、東京大学の山道真人(やまみち まさと)講師らの研究グループが池で実験したところ、そうはなっていなかった。太陽光を増やすと植物プランクトンは減り、代わりに底の水草が増えていた。
光が好きなはずの植物プランクトンが、光が少ないと増えるという不思議
アオコは、植物プランクトンが異常に増殖した状態だ。畑の肥料や家庭からの汚れた水が流れ込むことなどで湖や池の栄養が増えすぎることが、その原因とされる。これが海だと赤潮となる。その色は植物プランクトンの種類で決まり、じつはアオコも、色は緑だが広い意味で赤潮の一種だ。山道さんによると、湖での植物プランクトンの増殖について、これまで湖水の栄養分との関係はよく研究されてきたが、光の量との関係についての研究例は、あまりない。そこが、この研究のユニークな点だ。
山道さんらが実験したのは、米ニューヨーク州にあるコーネル大学の実験池。1辺が30メートルの正方形の池で、中央の最深部は1.5メートル。水温などが水面近くと底とであまり違わない浅い池だ。この池を六つ使った。このうち二つは水面の4分の3をシートで覆い、これが光の少ない池。もう二つは6割ほどを覆った、光が中程度の池。残りの二つはシートで覆わなかった。最初に水を干してからフィルターでこした水を入れ、最初の条件を統一してから2015年7~9月に実験を行った。
すると、予想に反して、光の少ない池のほうが植物プランクトンの量が増えた。光が中程度の池の2~3倍にもなっていた。その代わり、底に生えているシャジクモなどの水草が少なかった。植物プランクトンと水底の水草が、どうも競合しているらしい。
その点を明らかにするため、山道さんらは、この競合のしくみを数式で表し、コンピューターで解いてみた。その結果、光の量が少ないと水底まで届く光が減って水草が育たなくなり、そのぶん植物プランクトンが栄養分を得やすくなって増殖することがわかった。たとえば湖面に発電用の太陽光パネルを広く置いたりすると、水に差し込む光が減って植物プランクトンが増殖し、湖水が緑に濁ってしまう可能性があることをうかがわせる結果だ。
もうひとつ、面白いことがわかった。シートで覆わなかった35個の池を調べたところ、水草が多い池と少ない池の2種類に分かれたのだ。中間型は少なかった。
これについても、さきほどの数式を使って理由を調べてみた。その結果、光がとても多ければ、水草が圧倒的に優位になって植物プランクトンはほとんど発生しない。逆に光が少ないと、植物プランクトンが優位になる。
生態系では実現可能な2通りの状態が存在する
だが、光がその中間のほどほどの量だと、「水草優位」の池と「植物プランクトン優位」の池の二通りが、理論的に存在可能なのだ。その中間型は、かりに存在したとしても不安定で、すぐに二通りのどちらかになってしまう。シートで覆わなかった実験池では、光がほどほどの量になっていて、理論通りに二通りの池が実現していたのではないかと、山道さんらは考えている。
ということは、この実験池に差し込む太陽光がもう少し多くなれば、すべての池が突然「水草優位」になり、逆に少なくなれば、全部が一気に「植物プランクトン優位」の濁った池になってしまう。理論的には、そんな急変もありうることになる。
山道さんによると、生態系ではこのような「実現可能な二通りの状態」が、しばしば現れるという。生態系だけではない。大気と海洋、陸地が複雑に関係しあう地球の気候でも、この二通りの状態が指摘されている。
現在のような温暖な気候と、今から6億~7億年ほど前、赤道近くまで氷に覆われていた「スノーボールアース」の寒い気候だ。生態系にしろ地球にしろ、今まで「二通り」が可能でそのどちらかが実現していたのに、ちょっと条件が変わるだけで、急に「一通り」しかありえなくなる可能性がある。
あるときを境に、がらりと状況が変わってしまうかもしれないということだ。この「二通りの状態」は、自然界のあちこちにみられるらしい。私たちは、けっこうきわどい世界に暮らしているのかもしれない。
アオコの問題点
アオコは人間社会において、湖沼自体の利用障害となる(例えば鯉をはじめとする養魚、淡水漁業、近隣の生活環境、親水、観光産業など)ほか、取水源として利用する水道水の異臭・異味の原因となったり、さらには人や家畜への健康被害も懸念される。 また、湖沼周辺の生態系など自然環境を損なうおそれも高い。
遮光によるもの
水面をアオコが覆うと、水草など他の水生植物は、光合成ができず死滅する。水草の森は、魚類の産卵や稚魚の成育場所として重要であり、その消滅は生態系の破綻を招くおそれがある。
酸欠によるもの
夜間の呼吸作用により溶存酸素が消費され、魚類などの動物が酸素欠乏により死滅する。湖沼は河川に比べて酸素の供給効率が低く、新鮮水による洗い流し効果も無いため、酸欠を招きやすい。また、アオコの死骸が湖底で腐敗すると、硫化水素などの還元性物質が発生し、やはり酸素を消耗する。
毒素によるもの
藍藻には非リボソームペプチドであるミクロシスチン (Microcystin-LR、略:MC-LR)などの毒素を生産する個体群が含まれており[1]、赤潮と同様に魚類のエラを閉塞させ窒息させるほかにも、毒素によりカモなどの鳥類(アイガモ)の肝臓組織に蓄積し斃死を引き起こす[2]ことがある。また、アメリカ、オーストラリアなど放牧が盛んな国では、飲用した家畜の斃死被害が多発しているほか、ヒトに対しても、1996年ブラジルで、肝不全による死者50名を出す事件が報告されているほか、発癌性(肝臓ガン)が指摘されている。
赤潮とは何か?
赤潮(あかしお)は、プランクトンの異常増殖により海や川、運河、湖沼等が変色する現象である。水が赤く染まることが多いため「赤潮」と呼ばれるが、水の色は原因となるプランクトンの色素によって異なり、オレンジ色、赤色、赤褐色、茶褐色等を呈する。赤潮を引き起こす生物は、色素としてクロロフィルの他に種々のカロテノイドを持つ場合が多く、細胞がオレンジ色や赤色を呈する為にこう見える。水系の富栄養化が主な原因とされる(→栄養塩)。
従来、合成洗剤に含まれているリン酸塩(リン)が問題視されたが、近年では栄養塩の供給側の問題に加えて、塩に対する浄化側の作用低下の一因として、護岸工事による干潟の減少が問題視されている。また、養殖業の発達により、養殖生命体の老廃物、死骸による塩の過剰供給を指摘する研究者も多い。
干潟に住むアサリなどの生物は、そこに棲む微生物やプランクトン等を餌として取り込み海洋への栄養塩や有機物の流入を食い止めるという、いわば自然の浄化槽の役割を果たしてきた。しかし、護岸工事などにより干潟が大幅に減少し湾内の富栄養化が進行。これを一因としてプランクトンが大量発生すると考えられている。諫早湾の干拓事業においては、干拓に伴う経済的な利害関係と並び、有明海での赤潮発生との因果関係が議論されている。
参考 サイエンスポータル:https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2018/07/20180711_01.html
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