豪雨と猛暑は30年に1度の「異常気象」

 7月は、各地で異常ともいえる暑さが続いた。月末には埼玉県熊谷市で最高気温が41度1分となり、歴代全国1位を更新したほか、7月1か月間の平均気温は、東日本では統計開始以来1位、西日本では2位の高温となった。

 気象庁でも「災害と認識している」とコメントするほど異例の暑さとなった原因について、世界気象機関(WMO)のエレナ副事務総長は、日本を含む北半球の記録的な高温や熱波などの極端な気象は「温室効果ガス」と「海面水温」の影響と話している。

 気象庁は8月1日、7月の天候まとめを発表した。平均気温は昭和21年の統計開始以降、7月の最高記録を更新した東日本を中心に全国的に上昇。降水量は豪雨や台風に見舞われた西日本で多く、特に太平洋側は平年の2倍の雨量となった。気象庁気候情報課の竹川元章予報官は「豪雨と猛暑は30年に1度よりも発生確率が低いという意味で異常気象だ」と総括した。



 気象庁によると、太平洋高気圧とチベット高気圧に覆われて晴天が続いたため、各地で気温が上昇。東日本(関東甲信、北陸、東海)の平均は平年よりも2.8度高く、7月の最高記録を更新した。西日本(近畿、中国、四国、九州)も1.6度高く、7月として統計史上2位の高温だった。

 また、梅雨前線や台風の影響で降水量は北海道の日本海側、近畿、四国、中国の山陽側で平年の2倍を超えた。沖縄は平年の3倍を超えた。 東日本の日本海側の日照時間は7月としては統計史上最も長かった。


大都市の地表面では40度を超す猛暑 地球観測衛星が捉えた画像

 大都市の地表面では40度を超えて一部では50度も超える猛暑になっているー。地球観測衛星「しきさい」が本州の地表面温度を1日午前に観測した画像を宇宙航空研究開発機構(JAXA)が同日午後公表した。

 「しきさい」は大気や海、陸を観測し、地球温暖化の仕組みなどを調べるために昨年12月に打ち上げられた。高度800キロを回りながら2,3日で地表の全域を観測する。19種類の波長を観測できる光学センサ「多波長光学放射計(SGLI)」を搭載し、その中の熱赤外の波長帯の観測によって地表面温度を知ることができる。

 観測は1日午前10時40分ごろで、画像は熱赤外の波長帯の観測による地表面温度を示している。東北南部から近畿地方や中四国の東部をカバーし、温度が高いほど濃い赤で示されている。昼前にも関わらず首都圏のほか、大阪府や京都市、名古屋市など、大都市周辺の広い範囲で40度以上の高温となり、猛暑に見舞われている様子がはっきりと分かる。

 JAXAによると、埼玉県熊谷市や京都市周辺では50度以上の高温だった。また、例えば東京都を、詳しく見ると都市部でも皇居や代々木公園など樹木が多い場所や緑地では、周りより温度がやや低くなっていたという。

 8月1日の東京都の最高気温は35.1度だった。今回公表された地表面温度のデータは、発表された気温が30度以上で35度前後の猛暑の場合、地表面は40度を超えがちで、長時間屋外にいると危険であることを示している。


 アマゾンの都市 10年で気温4度上昇 森林伐採など影響か

 世界的にも猛暑が続いているが、ブラジルのアマゾン地域の都市・ベレンも、連日、一日の平均気温が30度前後の日が続いている。地元の研究機関は、森林伐採などの影響で都市の中心部では気温が過去10年で4度上昇しているという研究結果を発表した。

 ブラジルのアマゾン地域は赤道に近く、1年中気温が高いことで知られている。南半球にあるブラジルは、今は冬の季節に当たるが、アマゾンの都市ベレンは連日、一日の平均気温が30度前後の日が続き、アマゾンの豊富なフルーツの果実を使った手作りのアイスクリームが飛ぶように売れている。

 アマゾン地域のパラ州にあるパラ大学の研究機関は、2016年までの10年間で州都ベレンの中心部の一部では平均気温が4度上昇して34度になっているという研究結果を発表しました。

 ベレン周辺の森林が急激に伐採されたことや、高層ビルが増えたことで熱がこもり、気温が下がりにくくなったことを原因にあげている。

 世界自然保護基金(WWF)は、森林の伐採がこのまま続けば、2050年までにアマゾン地域全体の気温が3度程度上昇し、多くの動物や植物の生態系に影響を及ぼしかねないと警告している。


世界の異常高温「2022年まで続く」、最新予測研究

 人為的な地球温暖化と自然要因による地球表面温度の上昇の相乗作用により、今後5年間は異常な高気温が続くとの予測を示した研究論文が8月14日、発表された。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された論文によると、気候変動といわゆる自然変動のダブルパンチは、海洋表層水での「異常な温暖化現象」の発生確率を2倍以上に高め、ハリケーンや台風の危険な温床を形成するという。

 論文の主執筆者で、仏ブレスト大学(University of Brest)の気象学者フロリアン・セベレック(Florian Sevellec)氏は、AFPの取材に「この温暖期は、長期にわたる気候変動を助長している」と指摘し、「この温暖期は少なくとも5年間は続くと予想される」と続けた。

 地球の平均表面温度は常に変動してきた。過去数百万年間では、氷河期と現在より気温が高かった温暖期との間をほぼ10万年ごとに揺れ動いた。過去1万1000年間では、この気温変動が極めて穏やかになった結果、人類が繁栄することができた。

 この小規模な自然変動に加えて、主に20世紀に大気中に放出された多量の温室効果ガスに起因する人為的な気候変動が生じており、今日では自然変動を圧倒する恐れもある。

 人為的な影響と自然変動の影響を分離することは、熱帯低気圧、干ばつ、洪水やその他の種類の異常気象に気候変動が及ぼす影響の定量化を試みている科学者らを長年悩ませてきた。


 自然温暖化vs人為的変動

 セベレック氏と研究チームは異なる角度からこの問題に取り組んだ。

 第1に、大半の気象学者にとっては気候変動の特徴的パターンを見えにくくする「ノイズ」である自然変動に着目したこと。第2に、最も長期的な予測をもたらす包括的な気候モデルではなく、簡素化した統計的手法を用いたことだ。

 「今回の研究では、気候における経年の(短期的な)自然変動を予測するためのシステムを開発した」と、セベレック氏は説明する。その結果、「2018~2022年の期間については、平年値からの差(偏差)が人為的温暖化の影響と同等であることを発見した」という。すなわち、自然温暖化は今後5年間で人為的気候変動とほぼ同程度の影響を及ぼすということだ。

 これによると、海の熱波など、海の「温暖化現象」の発生確率は150%増加すると予測されている。

 確率予報(PRObabilistic foreCAST)を略して「PROCAST」と命名されたこの最新手法は、過去の気温記録と比較して検証した結果、少なくとも標準的なモデルと同程度の予測精度を持つことが判明した。

 PROCASTはノートパソコン上で数秒間で実行可能で、スーパーコンピューターでの数週間に及ぶ計算時間を必要としない。

 「このシステムは気候予測を実行できる可能性をより多くの研究者らに、特にスーパーコンピューターを容易に利用できない国々の研究者らに向けて開くものだ」と、セベレック氏は述べた。

 研究チームは、地域的な予測や、気温に加えて降雨量や干ばつ傾向などの評価を行えるようにPROCASTシステムを適合させる予定だ。( AFP/Marlowe 2018年8月5日)


参考 AFPBBnews: http://www.afpbb.com/articles/-/3186119

異常気象と温暖化がわかる ~どうなる? 気候変動による未来~ (知りたい! サイエンス イラストレーテッド)
クリエーター情報なし
技術評論社
NHKカルチャーラジオ 科学と人間 変わりゆく気候―気象のしくみと温暖化 (NHKシリーズ)
クリエーター情報なし
NHK出版

ブログランキング・にほんブログ村へ 人気ブログランキングへ   ←One Click please