岐阜市で発見「豚コレラ」とは何か?

 岐阜市にある農場9月3日から8日までに、約80頭の豚が死んだ。国の研究所が検査した結果、9日の朝「豚コレラ」が原因だと分かった。豚コレラは豚の病気で、人にはうつらない。

 この農場では、全部で610頭の豚を育てていた。岐阜県は10日の朝までに、農場にいる豚を全部殺した。岐阜県は、この農場から半径10km以内にある3つの農場に、豚を売ったりほかの場所に移したりしないように指示。岐阜県の知事は、他の農場も消毒して豚コレラになる豚が増えないようにすると話した。


 豚コレラの症状は、発熱し食欲減退、急性結膜炎を起こす。初期に便秘になったのち下痢に移行。全身リンパ節や各臓器の充出血、点状出血などが認められる。

 アジアを中心に発生。日本では家畜伝染病予防法において法定伝染病に指定されており、対象動物は豚、猪。日本では生ワクチンの使用が限定的に認められていたが、2006年3月にワクチン接種を完全に中止して摘発淘汰を基本とした防疫体制となり、鳥インフルエンザと同じく殺処分が行われる。

 2007年4月1日より国際獣疫事務局(OIE)の規約に基づき、日本は豚コレラ清浄国となった。26年前、1992年での熊本県での感染例以後は確認されていなかったが今回、2018年9月に岐阜市の養豚場で発生した。


 610頭殺処分、感染ルートは不明

 岐阜県は9日、岐阜市の養豚場で死んだ豚を検査し、豚コレラのウイルスが検出されたと発表した。国内での感染確認は1992年以来、26年ぶり。豚やイノシシ特有の病気で人には感染せず、感染した豚の肉を食べても影響はない。場内の他の豚の殺処分を進める。農林水産省は豚肉の輸出を停止した。

 豚コレラはアジアを中心に発生しているが、国内での発生は熊本県で92年に5頭への感染が確認されて以来。農水省のホームページによると、国内では2007年に「清浄化」を達成したとされる。今回の感染ルートは分かっておらず、県が調べる。野生のイノシシや飼料が原因の可能性があるという。

 農水省は防疫対策本部の会議を開き、対応を協議。斎藤健農相は「まん延防止には初動対応が大事だ」と述べ、封じ込めに取り組む考えを示した。輸出停止は、発生の確認で日本が豚コレラの清浄国ではなくなったため。再び清浄国になるには少なくとも3カ月かかる見込み。輸出相手国が了承した場合は、輸出できる可能性があるという。

 県によると、養豚場では3日に1頭が急死。県の簡易検査では感染が確認できなかったが、国の精密検査で9日早朝、感染が判明したという。

 既に養豚場内では4~8日に約80頭が相次いで死んだ。残る610頭は殺処分を進め、12日までに埋却や場内の消毒を終える見通し。現場の養豚場には9日朝、白い防護服やマスク、ゴーグル姿の県職員が到着。ショベルカーで敷地内の空き地に埋却用の穴を掘るなど防疫作業を進めた。

 豚コレラは家畜伝染病に指定され、発熱や食欲減退、歩行困難などの症状が現れる。感染力が強く、致死性が高い。〔共同〕


豚コレラ ブタの殺処分完了 感染拡大確認されず

 岐阜市の養豚場で国内では平成4年以来となる豚コレラの発生が確認された問題で、岐阜県は10日朝までにこの養豚場のすべてのブタの殺処分を終えた。県によりますと、今のところ感染の拡大は確認されていない。

 岐阜市の養豚場で今月3日から8日にかけて、およそ80頭のブタが死んでいるのが見つかり、検査の結果、国内では平成4年以降、確認されていなかった豚コレラウイルスの陽性反応が出た。

 岐阜県は9日朝から、この養豚場でブタの殺処分を続けてきたが、10日朝までに処分を終えた。また、県内のほかの養豚施設で飼育されているブタに異常がないか聞き取り調査を行ったところ、51あるすべての施設が「異常は確認されていない」と回答した。

 県は引き続き、養豚場から半径10キロ以内を「搬出制限区域」に指定し、5か所で、畜産関係の施設に出入りする車の消毒作業を行うとともに、殺処分したブタを敷地内に埋める作業や農場の消毒作業を進めることにしている。


 中国で3万8千頭の豚が殺処分「死の病」アフリカ豚コレラ

 中国国営新華社通信によると、同国で8月に初めて確認されたアフリカ豚コレラ(ASF)の感染が5省に広がり、9月1日の時点で3万8000頭以上の豚が殺処分にされた。

 ASFはバルト三国やポーランド、ルーマニアなど欧州連合(EU)域内でも拡大しており、国連食糧農業機関(FAO)は注意を呼びかけている。

 日本上陸はまだ確認されていないものの、訪日客は年に中国735万人、欧州152万人にのぼる。ASFに感染した豚のふんが旅行者の靴に付着してウイルスが日本国内に持ち込まれる恐れもあり、農林水産省や養豚農家は警戒を強めている。

 農水省や国際獣疫事務局(OIE)によると、ASFはアフリカ豚コレラウイルスがダニの媒介や直接的な接触、豚やイノシシのよだれやふんを介して豚やイノシシに感染していく伝染病。致死率は100%に近く、2~10日間で死亡。発熱、食欲不振、全身や内蔵の出血性病変が特徴。

 有効なワクチンや治療法がなく、 感染が拡大した場合、畜産業界への影響は甚大だが、人への感染はない。

 日本ではこれまでASFの発症は確認されたことがないが、家畜伝染病予防法で「家畜伝染病」に指定され、患畜・疑似患畜を見つけた場合、速やかな届出と殺処分が義務付けられている。


中国とEUは2大生産地

 中国とEUは豚の2大生産地。世界最大の生産国である中国では8月初めに遼寧省で同国第1例目のASF発生を確認した。

 同月1日に農家の豚にASFらしき症状が現れ、飼っていた383頭のうち47頭が発病、47頭が死亡。同月3日になって動物衛生・流行病学センターがASFと診断した。

 中国の農業農村部はASF緊急計画に基づき、封鎖、殺処分、無害化処理、消毒を行い、封鎖された地域への豚、感染しやすい動物、物品の持ち込み・持ち出しを禁止した。

 これまでに遼寧省、河南省、江蘇省、浙江省、安徽省で7例のASF発症を確認し、3万8535頭の殺処分を行っている。河南省で発症した豚は2000キロ離れた黒龍江省の市場から運ばれていた。

 浙江省と江蘇省は、日本との行き来が多い大都市・上海市に隣接している。農業農村部は8月31日、ASFを含めて動物疾病の発生予防と管理に関するビデオ会議を開催。9月1日時点で2303万5000農場、1億300万頭の豚の検査を終えた。


アフリカから欧州に侵入

 ASFは1978~81年にブラジルで、78~84年にハイチで大流行したことがある。欧州では60年にスペインやポルトガル、イタリアのサルデーニャで確認された。

 93年のポルトガルに続き、95年にはスペインが根絶に成功。85年にベルギーで、86年にオランダでも限定的に流行したが、根絶された。欧州においてASFはサルデーニャの地方病として残った。

 しかし、2006年末ごろ、ASFは再びアフリカから欧州に侵入し、07年にジョージアで発症が確認されている。その後、アルメニア、アゼルバイジャン、ロシア、ウクライナへと広がり、14年以降、バルト三国やポーランド、ルーマニアへと一気に拡大していく。

 英紙ガーディアンは「『これはもしではなく、いつの問題だ』。豚の死の病が世界中に拡大する」と報じている。感染拡大のスピードがこれまで以上に速く、世界の半分近い豚を生産する中国にも飛び火した。

 野生イノシシはASFウイルスを保有したまま移動するため、感染地域を広げる。感染した豚を処理した肉の中のウイルスや、衣服、靴、土に付着したウイルスの生存期間は長く、感染経路を完全にシャットアウトするのは至難の業。

 ロシアでは08~12年に、約10億ドル(1100億円)の被害が出た。スペインやポルトガルはASFを根絶するのに30年以上かかった。

 こうしたことから、EU最大の生産国ドイツでは、養豚農家がASFウイルスを媒介する野生イノシシの70%を駆除するよう求めている。

 デンマークでは野生イノシシの侵入を防ぐためドイツとの国境にフェンスを張り巡らすことを計画している。ASFがデンマークで発生するのも時間の問題だとして、ASFが流行した場合、最大100億デンマーク・クローネ(1730億円)の被害を想定している。

 2016年と2017年に世界で30万頭以上の豚が殺処分にされた。EUはASFの拡大防止のため120万ユーロ(1億5465万円)を関係国に配布した。 ちなみに、1971年にキューバでASFが流行し、50万頭の豚が殺処分にされたのは、米中央情報局(CIA)の工作員がウイルスをキューバに持ち込んだからだという疑惑が報じられたことがある。

 一度、上陸を許すと、感染した豚のふんが着いた車などによって一気に拡大する恐れがある。備えあれば憂いなし。訪日客が多い隣国・中国でのASF発生を受け、日本でも警戒が必要なのは言うまでもない。(Yahoo news 2018.9.4)


参考 朝日新聞: https://www.huffingtonpost.jp/2018/09/08/pig-cholera_a_23521292/