第24回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP24)

 地球温暖化対策として始まった国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP)も昨年で24回目を迎えた。結果はどうだったか?

 ポーランドのカトウィツェで開かれていた国連気候変動枠組み条約第24回締約国会議(COP24)は、地球温暖化の国際枠組であるパリ協定の実施ルールを採択した後、現地時間の16日未明に閉幕した。12月4日から14日までの日程で開かれていた会議は先進国と発展途上国との間などで主張が対立して交渉は難航した。

 会期を延長して議論を進めた結果、最後は全ての国が共通の厳しいルールの下で温室効果ガスの排出削減を進めることで合意した。実施ルールの大枠では何とか合意に至ったが、2020年の協定の運用開始に向けていくつかの重要課題は先送りとなった。

 COP24事務局が公表した関係文書や地球環境研究機関の関係者らによると、温室効果ガスの新たな排出削減目標や、削減実態を検証する方法などについては、先進国と発展途上国との間で差をつけず、共通の基準を適用する、というパリ協定の根幹をなすルールで合意した。

 前回、ドイツのボンで開かれていたCOP23では、温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」を運用するルール作りについて、2018年に合意を目指すことを目標としていたので何とか目標は達成した形だ。

 世界中の参加国が一致して温室効果ガスを排出削減する方向で機運が高まっているが、排出量世界第2位の米国は2017年6月にトランプ米大統領によって協定からの離脱を表明している。

そもそもパリ協定とは?

 パリ協定とは、京都議定書に代わる地球温暖化対策として、2015年に定められた新しい国際ルールのことだ。フランスで行われた、国連の気候変動枠組み条約締約国際会議(COP21)で採択され、2016年11月に発効した。

 パリ協定は、先進国だけに削減の義務を課した京都議定書とは違い、世界196カ国・地域すべてに、温室効果ガス削減の目標を定めている。

 協定の主な内容として、以下の項目が挙げられる。

1.地球の気温上昇を2度より「かなり低く」抑え、1.5度未満に抑えるための取り組みを推進する

2.温室効果ガス排出量を、2050~2100年の間に森林・土壌・海洋が自然に吸収できる量にまで、減らしていく

3.途上国の気候変動対策として先進国が2020年まで年間1000億ドル支援し、2020年以降も資金援助の約束をする

4.これに加えて、主要排出国は、温室効果ガスの排出量削減目標の提出および、実績点検を義務付けられている。

 しかし、世界第1位の排出国である中国は、2030年までは事実上、排出量削減をしなくていいなど、矛盾も多い。

 地球温暖化のためトウモロコシや大豆などの収穫量減少

 地球温暖化は、私たちが食糧にする農作物の収量に直結する。とくにトウモロコシや大豆のような世界中で広く食べられている穀物に、地球温暖化ですでにどれだけの被害が出ているのかは、気になるところだ。

 農業環境変動研究センターの飯泉仁之直(いいずみ としちか)主任研究員らの研究グループがこのほどまとめた論文によると、トウモロコシ、小麦、大豆だけでも、被害額は世界で年間5兆円近くに達しているという。

 いま進行中の地球温暖化で、世界のトウモロコシや小麦の収量は、温暖化がないと仮定した場合に比べて数%低下しているといった推定は、これまでにもあった。しかし、これまでの研究は、おもに「気温と収量」「降水量と収量」といった個々の気象要素と収量の実績の関係に注目した方法だった。植物の成長が気候の変化にどう左右されるかという視点は含まれていない。そこで、まったく別の方法でその推定の正しさを確かめることが求められていた。

 飯泉さんらの方法では、植物の成長の仕組みを考えている。気温や降水量などの気象条件を「原因」とし、それに植物がどう影響を受けるかを考えて、収量という「結果」を算出する。つまり、地球温暖化と作物の収量を因果関係としてとらえる新しい手法だ。これに、肥料の使用や品種改良、温暖化にともなう種まき時期の変更なども考慮して計算した。

 膨大なデータベースでシミュレーション

 飯泉さんらが出発点にしたのは、地球温暖化が進みつつある現在の気候と、温暖化がなかったと仮定した場合の気候を比較できる、「d4PDF」という膨大なデータベースだ。これをもとに、現実の地球温暖化ですでに被害を被っているはずの穀物の収量を推定した。

 1981~2010年の30年間の平均をとったところ、世界のトウモロコシは、地球温暖化がないと仮定した場合に比べて収量が4.1%減っていた。小麦(春小麦)は1.8%減、大豆は4.5%減。2005~2009年の生産者価格で金額に換算したところ、この3種類の合計で年間424億ドル(約4兆8000万円)もの損失になっていた。米については、はっきりした温暖化の影響は表れていなかった。

 地域別にみると、トウモロコシ、小麦、大豆、米の収量はいずれも低緯度地域で減り、高緯度地域で増えていた。本来ならば気温が低くてこれらの穀物が育ちにくかったはずの高緯度地域でも、すでに地球温暖化で栽培しやすくなっていると考えられる。生育期間の気温がもともと高い低緯度地域では、さらに気温が上がってしまい収量が減ったらしい。

 この研究結果をもとにすると、地球温暖化による国別の被害額も算出できる。低緯度地域に多い開発途上国に対する資金援助の際、その科学的な基礎データとしても利用できるという。

 地球温暖化による穀物4種の収量の増減。赤は収量の低下を、緑は収量の増加を、地球温暖化がなかったと仮定した場合に比べてパーセントで示している。白い部分では、その穀物が栽培されていない。

 2018年東日本の年平均気温過去最高に、世界の年平均気温も上昇中

 気象庁は、2018年の年平均気温(12月20日までの速報値)が東日本で平年を1.1度上回り、1946年の統計開始以来で最も高くなる見通しだと発表した。大陸から張り出したチベット高気圧と下層の太平洋高気圧が重なった「2重」の高気圧による夏の猛暑が最大の理由だが、地球温暖化の影響も大きいとみられる。

 東京大学大気海洋研究所などの研究によると、地球温暖化が進んでいなければ今年7月の気温は2度低く、記録的猛暑になる確率はほぼ0%だった。同研究所の渡部雅浩教授(気象力学)は「今まで猛暑を体験していなかったような地域でも今後起こる可能性はある」と話す。

 世界の年平均気温も速報値で平年を0.30度上回り、1891年の統計開始以来4位となる見通し。欧州や東アジアなどの北半球を中心に高温となった。異常気象による災害も世界各地で発生し、インドでは6~9月の大雨で1500人が死亡。ナイジェリアや東アフリカでも大雨で多数の死者が出た。

参考 サイエンスポータル: https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2018/12/20181217_01.html

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