気温は南極以下… 米中西部、大寒波で数千万人に影響

 2019年1月末、米中西部では大寒波に見舞われ、シカゴなどの一部地域で気温が南極大陸以下にまで下がり、多数の航空便が欠航となったほか、休校や臨時閉店が相次いだ。当局や専門家は、数分で凍傷や低体温症につながるとして警戒を呼び掛けた。

 米国内の約10州では、数十年ぶりの大寒波により気温が氷点下20度以下まで下がり、郵便物の配達が中止され、住民は屋内にとどまるよう勧告された。シカゴでは30日午前に氷点下30度を記録。風速冷却による体感温度は氷点下46度となった。これはアラスカ州の州都よりも寒く、さらには南極大陸の一部よりも低い気温となる。

 米国の数千万人が影響を受けた今回の寒波は、通常は北極を覆っている極渦から分離した大気の渦によって引き起こされた。米メディアによると、先週末の気温低下と暴風雪、そして現在の寒波により、これまでに少なくとも5人が死亡したという。

 冬になると寒波がやってきて、異常な低温を記録する米国だが一方で地球温暖化も進んでいる結果が出ている。

 2014年〜2018年は観測史上、最も暑い5年間だった。また2018年は、観測史上4番目に暑い年だった。米海洋大気局(NOAA)と米航空宇宙局(NASA)が2月6日、それぞれ独立した調査結果を報告した。

 地球は、過去数十年にわたり着実に温暖化してきた。エルニーニョ現象のような自然の気候サイクルに応じて毎年わずかに上下するものの、一貫して上昇傾向にある。NOAAによると、2018年の陸地の気温は20世紀の平均より1.12°C高かったという。 

過去5年間は史上最も暑かった、米政府機関が発表2018年単年では4位

 「まるで温暖化というエレベーターに乗り続けているようです」と米ノースカロライナ州にあるNOAA国立環境情報センターの地球観測部長ディーク・アーント氏は話す。

 気候が温暖化すると、夏は酷暑になり、冬もかつてほど寒くならないが、それだけではすまない。気象パターンが乱れ、嵐や豪雨は激しさを増す。雪が降ったり湖が凍る時期と場所も変わる可能性がある。海洋の循環にさえ影響が出るかもしれない。

 「2018年は、ますます頻発する豪雨に驚かされました」と同氏は言う。

 しかし、上がる一方の気温は、世界中の人間や生物にとっても脅威となる。この1年、熱波が、欧州からオーストラリアに至る世界中で猛威をふるった。あちこちで最高気温の記録が破られ、壊滅的な山火事が引き起こされた。科学者によると、欧州が熱波に見舞われる頻度は、人為的な気候変動の影響でおよそ2倍に高まったという。

 また、米国西部を襲った山火事が惨事を招いたのも気候変動の影響だ、と科学者は結論づけた。高温と乾燥で草木から水分が失われ、火がつきやすく燃えやすくなったのだ。

今年はエルニーニョでさらに暑くなる予想

 気温上昇の影響で、異常気象による災害も増え続けている。NOAAによると、米国では2018年、10億ドル以上の被害を出した気象災害が14回も発生した。死者は少なくとも合計で247人、被害総額は910億ドル以上にのぼった。ハリケーン「フローレンス」と「マイケル」による被害が最も大きく、通過した地域に壊滅的な被害をもたらした。そのすぐ後には、米国西部を山火事が襲った。

 同様の現象は今後も増えると予想される。英国気象庁の予測では、2019年は、2018年よりさらに暑くなる可能性が高い。その原因のうち少なくとも一部は、エルニーニョ現象の発生によるものだという。エルニーニョ現象が発生すると、ほぼ必ず世界中の気温が上昇するからだ。しかし科学者はこう強調する。気温を上昇させる一番の原因は、過去数十年においても将来においても、温室効果ガスの排出であることに変わりはない。

 寒波は地球温暖化と関係があるのか?

 20年来の寒さに見舞われ、各地で気温が氷点下20度以下まで下がっている米国。北極のような寒さをもたらした大寒波は、気候変動と関係があるのだろうか?

 専門家らは、その可能性を否定していない。ただ、今回の大寒波における地球温暖化の関与をめぐっては、議論の余地があるとも指摘している。

 AFPの取材に応じたマイアミ大学(University of Miami)ローゼンスティール海洋大気科学部(Rosenstiel School of Marine and Atmospheric Science)のベン・カートマン(Ben Kirtman)教授(大気科学)は、「極渦とは北極を覆っている大量の冷たい空気の渦で、普段はジェット気流によって北極上空にとどまっている」と説明する。

 通常、この冷気は強い空気の流れであるジェット気流によって北極に閉じ込められているが、ジェット気流がうねったり弱まったりすると北極の外に流れ出る。

 「極渦は蛇行することがある。今回の大寒波がまさにそうだ。うねる幅が大きくなると冷気が遠く離れた南方まで到達する」とカートマン氏は話す。

 気象専門テレビ、ウェザー・チャンネル(Weather Channel)が伝えたところによると、今週米国を襲った大寒波は、「中西部に20年ぶりの寒さをもたらし、各種の観測史上最低記録を塗り替えている」という。

 なぜジェット気流は蛇行するのか?

 ジェット気流は、熱帯と南極・北極の気温差に結びついており、気温差が開くほど強まる。理論上は、北極の冷気は北極にとどまっている可能性が高い。

 だが、ジェット気流が強くなり過ぎると不安定になることもあるという。これについてカートマン氏は、「不安定になるとジェット気流がうねり、蛇行が始まる」と説明した。

 一方で、南極・北極が温暖化の影響を受けると、熱帯との気温差が狭まり、ジェット気流がうねって冷気が北極から流れ出すという指摘もある。北極については、それ以外の地域に比べ、気温上昇が倍のペースで進んでいることが知られている。今回の大寒波は気候変動が理由なのか?

 カートマン氏はこう説明する。「ジェット気流が弱まると、極渦は勢力を強め、さらに南下するのかとの疑問が浮かんでくる。これが正しければ、極端な寒波は気候変動と結びついていると言える」

 そして、この仮説を検討するため、研究者らがまだデータを調べている最中であることに触れながら、「気候変動との結びつきをほのめかすものもあるが、まだ判断は下されていないことを強調したい」と続けた。

 科学者らはこれまで、気候変動が特定の異常気象に果たす役割を解明してきた。今のところ、豪雨、干ばつ、熱波、山火事は気候変動と明確な関連があることが判明している。だが、突然の寒波については、関連性は依然として不明だ。(c)AFP/ Kerry SHERIDAN【1月31日 AFP】

参考 サイエンスポータル: https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/02/20190214_01.html

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