オパールの中に虫の化石

 オパールは二酸化ケイ素の凝集した球の積み重なりの間に水が充満したもので、その成り立ちから、硬度も非常に柔らかい石である。

 珪酸球の並びが規則的なものは、見る角度によって変化しながら虹色に輝く遊色効果を持つ。そういったタイプのオパールを「プレシャスオパール」と呼ぶ。それ以外のきらめかないタイプのものは「コモンオパール」と呼んで区別する。

 主に火成岩または堆積岩のすき間に、ケイ酸分を含んだ熱水が充填することで含水ケイ酸鉱物としてできる。そのほかにも、埋没した貝の貝殻や樹木などがケイ酸分と交代することで生成されたり、温泉の沈殿物として生成されるなど、各種の産状がある。特に、樹木の化石を交代したものは珪化木と呼ばれる。

 今回、インドネシアのジャワ島で珍しいオパールが見つかった。オパール片の中に、はるか昔の昆虫が閉じこめられていた。かつてない発見だ。少なくとも400万年〜700万年前のものと思われる昆虫で、保存状態がすばらしい。

 これまでにも、樹脂が化石化した宝石である琥珀の中からは、古代の虫がたくさん見つかっている。固まる前の樹脂に動物が急に閉じこめられると、死骸がとてもよい状態で保存されることがある。

  これに対して天然のオパールは、シリカ(二酸化ケイ素)を含む水が地中の隙間を満たす状況の下で、数千年からときに数百万年かけて形成されるのが普通だ。そのため、なぜこのような形で昆虫が入り込むことになったのかについて、大きな謎を呼んでいる。

 前代未聞、琥珀以外の宝石の中に古代の虫化石

 天然オパールだが形成過程や昆虫は謎だらけ、「到底ありえない」と専門家が驚嘆している。地殻を下に潜ってみれば、宝石の鉱床がある。宝石はどのようにしてできるのだろうか。

 「到底ありえないものです。しかし、自然界における貴重な発見の多くは、実在すると確認されるまで、存在するわけがない、理論的にありえないと考えられてきたものなのです」。オーストラリア、ニューサウスウェールズ州ライトニングリッジにあるオーストラリア・オパール・センターのジェニ・ブラモール氏は、そうコメントしている。同氏はオパールやオパール化した化石の専門家だ。

 目下のところ、この標本は個人の所有物であるため、古生物学や地球化学の専門家による詳しい調査は行われていない。しかし、本物と確認されれば、今回の発見は、貴重な化石が閉じこめられた場所としては、今までにない例となるだけでなく、オパールという人気の宝石についての常識を変えるものになるかもしれない。

 ブラモール氏がこの標本について知ったのは、2017年のことだ。オパールに閉じこめられた別の虫とおぼしき画像も見たことがある。ジャワ島の同じ鉱山から見つかったものだが、見たのは写真だけで、科学的な調査結果も発表されていないため、詳しい見解を述べるのは難しいとしている。

 「今までの常識では非常に考えにくいということを除けば、本物であることを疑う理由は何もありません。しかし、科学的な調査結果が出るのを待つ必要があるでしょう。本物であることを期待しています。もし本物なら、オパールの形成についてとてもおもしろいことが明らかになると思うからです」

宝石学会は本物の天然オパールと鑑定

 ジャワ島のオパール商人がこの奇妙な標本を見つけたのは2015年だった。その後、何人かを経て、米ペンシルベニア州フィラデルフィアの宝石鑑別士兼ディーラーであるブライアン・T・バーガー氏が購入した。バーガー氏自身も、最初はこの標本が本物であるか疑問だったので、米国宝石学会(GIA)で分析してもらった。同学会の専門家は、ナショナル ジオグラフィックに対しても、この標本が改変されていない本物の天然オパールだと答えている。

 「偽物に違いないと考えていました」とバーガー氏は言う。「新手の技法でも使ったのだろうと思いました。しかし、調査してもおかしなところは見当たりません。GIAもそれを認めました」。その後、バーガー氏は、「Entomology Today」(今日の昆虫学)というブログにこの標本のことを投稿している。

 オパール化した化石は、オーストラリアのライトニングリッジからもたくさん出土している。ただし、その形成過程は、ジャワ島で見つかったという今回の標本とはおそらく異なる。ライトニングリッジのオパールは、かつて骨や歯が占めていた地中の空間にシリカを含む水が入り込んでできたもの。

 いわば型に流し込んで作ったゼリーのようなものだ。元の組織は残っておらず、「交代」化石と呼べるかもしれない。オーストラリアのアーミデイルにあるニューイングランド大学の古生物学者フィル・ベル氏は、このようにオパール化した化石片から、新種の恐竜を発見している。

 「オパール化した化石は、何百万年も地中にあって、押しつぶされたり熱せられたり、あらゆることを経験したはずです」とベル氏は言う。そのため、昆虫がそのまま保存される可能性は、ありえなくはないものの、疑わしいと考えている。

 琥珀がオパール化した可能性

 バーガー氏を含む多くの専門家は、別の考えを持っている。琥珀でできていた標本が、何らかのメカニズムでオパール化したのではないかという説だ。

 ドイツ、ベルリンにあるフンボルト博物館所蔵のティラノサウルス・レックスの頭骨。2010年に、米モンタナ州にある白亜紀後期のヘルクリーク累層で発見された全長約12メートルの化石は、発掘と復元に4年の歳月を要した。

 「直感的には、オパールに包まれた琥珀のかけらのようだと思いました」と言うのは、カナダのレジャイナにあるロイヤル・サスカチュワン博物館で琥珀の化石について研究しているライアン・マッケラー氏だ。ジャワ島では、オパール化した木の化石がよく見つかる。それを考えれば、樹脂がオパールでくるまれる可能性もありそうだ。

 閉じこめられた虫を特定するには「通常、オパールは隙間を埋めるように形成されます」とマッケラー氏は話す。「その場合、木の中にある琥珀ごとオパール化することもあるかもしれません」。カナダで見つかったある琥珀の標本は、木片の割れ目を埋めるようにして形成されており、外側がシリカに変わっていたという。

 「今回の標本も同じような過程を経たのかもしれません。しかし、化学的分析を行い、昆虫がどのようにして保存されたのかを詳しく調べるまでは、想像の域を出ません」

 標本の分析を検討中

 中に閉じこめられている昆虫が何なのかについても、詳しい科学的分析が行われるまで推測を控えたいという科学者が多い。

 しなびたように見える翅から、さなぎから羽化したばかりの成虫であるとも考えられる、と英オックスフォード大学自然史博物館の古昆虫学者リカルド・ペレス=デ・ラ・フエンテ氏は言う。しかし同氏は、その生態について「十分信頼に足る議論」をするには、正式な研究が不可欠だと強調する。

 ドイツ、カールスルーエ工科大学の昆虫学者トーマス・ファン・デ・カンプ氏も、この虫の調査を希望する専門家の一人だ。詳細なX線スキャンを行い、虫の全体像を3Dで再現したいと考えている。

 琥珀の中に閉じ込められた昆虫の化石はたくさん見つかっているが、それらは樹木に生息していた種である可能性が高い。一方、今回新たに見つかった標本がオパールだけでできているとすれば、異なる環境に生息していた生物について知ることができる貴重な機会になるかもしれない。

 「琥珀の中以外で立体的に保存されている昆虫は、私たちの視野を広げるうえで非常に価値あるものなのです」とファン・デ・カンプ氏は話す。

 現在、バーガー氏は、世界中の研究者や博物館の専門家と話し合いながら、どのように連携して標本の科学的調査を進めてゆくかを検討しているという。その後、標本を博物館で展示したいとしている。

 「博物館に売却するかもしれませんし、寄付するかもしれません。私が所有したまま、展示用に貸し出すだけになるかもしれません。どうするかはまだ決めていません」とバーガー氏は話している。文=JOHN PICKRELL/訳=鈴木和博

 オパールとは何か?

 オパール (opal) は、鉱物(酸化鉱物)の一種。潜晶質であるため、厳密には準鉱物であるが、国際鉱物学連合ではオパールを正式な鉱物としている。和名は蛋白石(たんぱくせき)。

 西洋語のオパールを指す語は、ギリシア語 opallios、または、そのラテン語化 opalus に起源を持つ。これらの語は、サンスクリット語で(宝)石を意味する upālā[s] という語との関係が指摘されている。 主な産地はオーストラリアのクーバーペディやライトニング・リッジ等と、メキシコなど。

 化学組成は SiO2・nH2Oで、成分中に10%ぐらいまでの水分を含む。モース硬度 5 - 6。比重 1.9 - 2.2。劈開性なし。 非晶質である「opal-A」と、結晶構造の始まりを示す潜晶質(隠微晶質)であり肉眼では非晶質のようにみえる「opal-CT」がある。opal-Aは二酸化ケイ素の凝集した球の積み重なりの間に水が充満したもので、二酸化ケイ素の球の大きさによって「プレシャス・オパール」と「コモン・オパール」に分けられる。

 opal-CTはクリストバライトや鱗珪石の非常に細かい結晶の積み重なりであり、またの名をLussatiteとも言う。これは高圧下で水分含有量が少ないlussatine(またの名を「opal-C」)となり、水分が蒸発したのちに結晶構造を持つクリストバライトや鱗珪石となり、最終的に水晶や玉髄に変化する。

 ブドウ状または鍾乳状の集合体や小球状のものとして産出される。透明なものから、半透明・不透明なものまである。ガラス光沢・樹脂光沢をもつものは宝石として扱われ、無色のものから乳白色、褐色、黄色、緑色、青色と様々な色のものが存在する。まれに遊色効果を持つものも存在する。

 主に火成岩または堆積岩のすき間に、ケイ酸分を含んだ熱水が充填することで含水ケイ酸鉱物としてできる。そのほかにも、埋没した貝の貝殻や樹木などがケイ酸分と交代することで生成されたり、温泉の沈殿物として生成されるなど、各種の産状がある。特に、樹木の化石を交代したものは珪化木と呼ばれる。

 オーストラリアでは、恐竜や哺乳類の歯などの化石がアパタイトからケイ酸分に入れ替わり、オパール化して発掘されたこともある。

 なお、微化石の一種にプラントオパールと呼ばれるものがあるが、これは植物が生きているうちに組織内に形成した非晶質のケイ酸分であり、風化しにくいため、年代当時の地層中にある植物を同定することにも用いられる。

 オパールの分類

 遊色効果をもつオパールをプレシャス・オパール (precious opal) といい、遊色効果が無いか、あっても不十分なオパールをコモン・オパール(Common opal)または普通蛋白石と言う。両者の違いは内部構造である。

 プレシャス・オパール

 プレシャス・オパールは遊色があり、キラキラと輝く(これをオパールの「火」(fire)と言う)。そのため、宝石としての価値が高い。

 プレシャス・オパールは、直径150nmから300nmくらいの二酸化ケイ素の分子が六方最密充填構造または立方最密充填構造を形成しており、それゆえ準鉱物(Mineraloid)として扱われる。分子の大きさがどれだけ揃っているかと、分子の充填度が、宝石としてのオパールの品質を決定する。分子の大きさがバラバラで、あまり充填されていないものは遊色を見せず、コモン・オパールに分類される。

 プレシャス・オパールは、地色によってブラック・オパール(黒蛋白石、black opal)、ファイアー・オパール(火蛋白石、fire opal)と区別される。ファイアー・オパールのファイアーとは斑を意味し、play of color または playing fire ともいい、遊色効果を意味する。

 コモン・オパール

 コモン・オパールは遊色がなく、石の地色しか見えない。そのため、宝石としての価値が低い。ミルキーオパールは乳白色から緑がかった青色で、色がきれいなものは宝石として扱われる。他に珍重されるコモン・オパールは、玉滴石(hyalite)、乳珪石(Menilite)、間欠石(geyserite)、木蛋白石(wood opal)などがある。

 玉滴石 … 岩石の表面に球状に付着して産出するものを、玉滴石(ぎょくてきせき、hyalite)という。紫外線を照射すると蛍光を発するものがある。日本では飛越地震の際に立山温泉新湯とともに噴出したことがある(発見後すぐに採り尽され、深く掘ったために温泉が打たせ湯になったという)なお、立山カルデラ砂防博物館には採掘された玉滴石が展示されている。

 木蛋白石 … 堆積岩中に埋没した樹木の幹や動物の遺骸と交代したものがあり、樹と交代したものを木蛋白石 (wood opal) という。研磨するときれいな木目がでることから珍重されている。色の美しいものは宝石として扱われ、10月の誕生石とされている。特に日本で好まれている宝石で、乳白色の地に虹色の輝き(遊色効果)をもつものは中でも人気が高く、「虹色石」とも呼ばれる。カボション・カットでカットされ、ブローチや各種の装飾品に加工されている。

 オパールは宝石の中で唯一水分を含むため、宝石店などでは保湿のため、水を入れた瓶やグラスを置くところもある。水分がなくなると濁ってヒビが入ることがあるためである。オパールの原石はカットされる前に充分天日で乾燥させなければならない。乾燥に耐えられたオパールだけをカットし指輪などの宝飾品に加工される。このようなオパールは普通に取り扱っている限りは特に問題がない。(Wikipedia)

参考 Natinnal Geographic news: https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/020100072/

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