プラスチックごみ、国内で行き場失う恐れ

 環境に広がる、プラスチックごみが問題になっている。さらに日本国内のプラスチックゴミが行き場を失おうとしている。

 今回、日本国内で発生したプラスチックごみの最大の輸出先だった中国が環境汚染の懸念から海外からの流入を厳しく制限。その分が流れる傾向にあった東南アジア諸国でも輸入を規制する動きが出て、ごみは処理に向けた行き場を失って国内在庫が増える恐れがある―。

 こうした実態を地球環境戦略研究機関(IGES)が分析している。IGESは日本国内でのリサイクル材の使用促進策や、アジア地域全体でのリサイクル体制の構築の必要性などを提言している。


 IGESがまとめた報告書「プラスチックごみ問題の行方:中国輸入規制の影響と今後の見通し」(担当・森田宣典、林志浩両氏)によると、2016年に日本国内で発生したプラスチックごみの総量は約899万トン。その内約68万トンは国内でリサイクル材用に使用され、残りの内、約138万トンは中国や香港へ輸出された後、中国国内でリサイクル製品用材として使われている。

 しかし、中国政府が17年7月に世界貿易機関(WHO)にプラスチックごみなどの固形廃棄物の輸入禁止を通告したため、日本を含む多くの国から中国へ輸出できなくなった。

 報告書によると、中国が本格的に規制強化に乗り出したために、日本のプラスチックごみ輸出業者は新しい輸出先を開拓。その結果、ベトナムやタイ、マレーシアの3国を中心に東南アジア諸国への輸出が増えた。

 しかし2018年に入ると、この3国は輸入を禁止したり輸入を一定期間制限。規制強化を検討している国もあり、今後日本からの輸出は厳しくなる可能性が高い。このため、これまで輸出していたごみの推計約3割が国内の廃棄物処理に回り、処理できないと行き場を失って業者が在庫として大量のごみを抱える事態も考えられるという。

プラスチックごみに「高品質」と「低品質」

 プラスチックごみは、単一材質・形態に分けられる「高品質」ごみと、分別や選別が不十分で複数の材質から成る「低品質」のごみに大別できる。

 IGES報告書は、中国がプラスチックごみの輸入を禁止してもリサイクル材の最大の需要国に変わりないことや、東南アジア諸国も高品質のごみであれば輸入を受け入れる可能性があることなどから、ごみの受け入れ基準の統一化・透明化や、適正なリサイクルをアジア地域全体で推進するための国際的なルール作りの必要性を指摘している。また日本国内対策としては、リサイクル材の使用を義務付ける目標設定などをしてリサイクル材製品の市場拡大策を策定することなどを提言している。

 プラスチックごみは、ペットボトルやレジ袋のほか、家電、車、建築資材などさまざまなプラスチック製品の廃棄により発生するごみ。世界的な生産、使用量の増加に伴って海に流出する量も増えている。経済協力開発機構(OECD)は海に流出する量も最大推定量が年間1200万トンに及び、これらのごみをのみ込んだ魚介類を通じて人間の健康を脅かすリスクがあると警告している。

 問題が深刻化しながら国際的な対策が遅れており、近年大きな国際問題になっている。6月に大阪市で開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合では、プラスチックごみの問題が重要議題の一つとして取り上げられる予定だ。

なぜ減らせない?プラスチック

 それにしても昔から言われているプラスチックごみの問題。バイオプラスチックも開発され、リサイクルもすすんだと思っていたが、どうして無くならないのだろう?

 「王子ホールディングス」では、スナック菓子の袋などにも使える、紙の表面に特殊な薬品を塗り、酸素や湿気を通しにくくした包装紙を開発。プラスチック自体を使わないという方針だ。

 「日本製紙は」果物や野菜などを使った飲み物、「スムージー」などを紙の容器に詰めるための専用の機械を開発、キャップ付きの紙の容器とともに来年度から飲料メーカーに売り込む予定。

 環境省では、来年度から植物を原料とするバイオプラスチックを使った製品を開発する企業や、紙に切り替えて製品を作る企業を対象にした補助制度を設ける方針を決めていて、ますますこうした動きが表に見える形で出てくるらしい。

 廃プラ減らすためにできることは?

 廃プラスチックを減らすために、何ができるのだろうか?例えば、飲料を倍の価格にし、ボトルを返した人には半分返してもらえる仕組みにするとか、水筒や容器などを持ってほしい量だけ購入する。

 量り買いをする消費者には割引などの特典を、環境配慮型の企業にはお金が集まる仕組みをつくればどうだろうか?

 実際、廃プラスチックを減らす取り組みをしているところがないか探してみると、町ぐるみで取り組んでいるところがあった。

 徳島県にある人口1550人あまりの上勝町。この町では、2020年までに焼却・埋め立てのごみをなくすため、リサイクルできるものを徹底的に分別している。

 その数、なんと45種類! 紙だけでも、新聞紙や紙パック、雑紙など分別は9種類にもなった。 そもそも、上勝町がリサイクルに力をいれるようになったのは、ダイオキシンの排出規制強化などの問題もあり、17年前に町から焼却施設がなくなったため。

 徹底した分別でいまでは81%(平成28年度)と全国2番目に高いリサイクル率で、1人あたりのごみの排出量は、全国平均の約半分に抑えられているという。 そんな上勝町があらたに始めたのがごみそのものを減らす取り組み。

 廃プラを減らすために、この上勝町では去年から個売りや量り売りを始めている。現在、この取り組みを行っているのは飲食店や商店など12店舗。油やしょうゆを始め、米やお茶、なんと刺身やカレーまで買うことができるという。

 こうした取り組みを広く知ってもらおうと、ことしの10月からはポイント制も導入された。容器を持って買い物をするとポイントがたまり、たまったポイントと引き換えに、環境に優しい洗剤や竹製の歯ブラシなど40種類の中から商品がもらえるという仕組みだ。

 ちなみに、ポイントがたまるともらえる商品は、住民がごみを分別していることで、ごみが資源として売れた分をあてているという。始まったばかりで、この取り組みの効果は町ではまだわからないということだが、住民からは「普通に売っている商品は量が多いので、ほしい量だけ買えるのは便利」だとの声もあがっている。

 小さな町での取り組みだが、廃プラスチックを減らすために私たちがどんなことをできるか考える上で参考になるかもしれない。

 レジ袋からみるプラスチック削減

 日本で一人が年間使うレジ袋は300枚と言われる。このレジ袋を削減しようと早い動きを見せたのが京都市。しかし、削減を進めるとそこには壁も見えてきた。

 なぜレジ袋を減らさなければいけないのか?というご意見が多く寄せられた。ヒントを求めて、この10年で14億枚のレジ袋を削減したという富山県を取材した。初めて全県規模で一斉にレジ袋の有料化に踏み切った富山県。

 スーパーに取材に行った時には、買い物客が「買い物にはマイバッグでしょ?」といいながら、2つも3つも持ち歩いているマイバッグや、マイバスケットを見せてくれ、マイバッグが “広く浸透している”という以上に、“自然なもの”“当たり前のもの”になっていることに驚かされた。

 もちろん、最初からレジ袋有料化の取り組みが支持されていたわけではない。むしろ、9割以上の店舗が「有料化するつもりはない」とかたくなだったそうだ。

 そこで、レジ袋有料化を個別に運動していた市民団体同士が行政などと協議会を立ち上げることにした。何度も事業者との話し合いを持ち、できるだけ多くの事業者、行政を巻き込むことで一斉にレジ袋の有料化を実現することができた。

 そして、何よりここまで意識が浸透したのは、地道な啓発活動があった。事業者側から「マイバッグの利用で万引きが増えるのでは」と事業者から不安の声が出れば、「マイバッグはレジを通ってから使いましょう」と店頭で呼びかけたり、「有料化はちょっと…」と二の足を踏むコンビニなどに対しては、レジ袋をもらわないようにと、消費者のマインドを変えることも行った。小型のバックを作り、利用が多い男性に無料で配布した。

 そうした数々の取り組みが社会の中に信頼を生み、“便利さ”を乗り越えて、マイバッグが“当たり前”という意識を醸成したのではないか。そして、そうした意識はレジ袋以外のプラスチック製品の利用を控える姿勢に繋がるのかもしれない。

 プラスチックに替わる素材の開発はまだ先?

 “軽量で防水性があり安価なプラスチックの代替品はなかなかない”“プラスチックを使ってないもので衛生的な包装ができる代替品があるのならば、製造・販売側で是非使ってほしい。実際にそういった素材の開発は進んでいるのか?“という意見、質問も多い。

 取材班は、新素材や代替品の開発現場を調査した。実は大手メーカーのカネカや三菱ケミカルなどでは、すでに「生分解性プラスチック」(土の中で、炭酸ガスと水に分解される)は、開発されている。

 今回、レジ袋などを新しい素材で作ろうとしている都内のプラスチック加工メーカーに、特別に開発中の生分解性プラスチックを見せてもらった。

 この新素材は、生分解性の樹脂を約7割と3割はでんぷんなどの可食物を使っているのだそうだ。さらに、耐久性などを高めるため使われる添加剤にもこだわり、主に食品添加物を使っているとのこと。

 開発者の方は、「壁となるのがコスト、高くても売れないので良いものをいかに安く作ることができるか」と話していた。生分解性樹脂だけでも製品にすることはできるが、そうすると従来のプラスチックと比べて1㎏あたりの単価が約2.5倍にものぼるといい、コストが安いでんぷんの量を増やしながら、いかに強度を保てるかをいま開発中だと話していた。

参考 サイエンスポータル:https://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2019/03/20190307_01.html