マイクロプラスチック問題とは?

 マイクロプラスチックは微小なプラスチックのことを指す。ただ、その大きさに関して公式の定義はなく、多くの場合5mm(ミリメートル)以下のプラスチック粒子を指す。

 よって、ペットボトルやレジ袋などはマイクロプラスチックには含まれない。単位におけるマイクロ(μ)は100万分の1のことなので、1マイクロメートルは、髪の毛の太さのさらに千分の1程度になる。

 実際にマイクロプラスチックは、マイクロよりさらに小さい、nm(ナノメートル)単位(10億分の1m)のサイズも存在している。これらは当然、目視できず、電子顕微鏡などでしか確認できないサイズもある。

 マイクロプラスチックはその発生源の違いから大きく2種類に分けられている。一次マイクロプラスチック(primary microplastics)は、製品や製品原料として使用する目的のため、微小なサイズで製造されたプラスチックを指す。つまり、「元々小さかったプラスチック」。

 二次マイクロプラスチック(secondary microplastics)は、プラスチック製品が自然環境中で劣化し、粉々になることで生じたマイクロプラスチックを指す。つまり「元々大きかったのに摩耗等で小さくなった破片」のこと。

 海洋に流出したプラスチック製のボトルやビニール袋などのプラスチック製品が、波や紫外線に晒され、劣化することで発生する場合が多いと考えられている。

 深海底にすむ生物の体内からもプラスチック、研究 深海生物の体内からの検出は初、専門家は食物連鎖への影響を懸念 2019.03.05

 マイクロプラスチックやマイクロファイバプラスチックゴミは、世界の海のあらゆる場所に入り込んでいる。このほど発表された論文により、人間の世界から最も遠く離れた海溝に生息する深海生物でさえ、驚くほどの量のプラスチックゴミを食べていることが初めて明らかになった。

 この論文は、学術誌「Royal Society Open Science」オンライン版に2019年2月27日付で発表されたもの。それによると、深海でプラゴミを食べているのは端脚類(海底で餌をあさる、小エビに似た小さな甲殻類)だった。

 英国の研究チームは、世界で最も深い6つの海溝で端脚類を捕獲し、研究室に持ち帰った。この生物の体内を調べたところ、80%以上の個体の消化管からプラスチックの繊維や粒子が見つかった。また、深い場所で捕獲された個体ほど、体内から見つかるプラスチック繊維の量が多かった。

 太平洋西部のマリアナ海溝の最深部は水深1万メートルを超えるが、ここで採集された端脚類のすべてにプラスチック繊維が見つかった。以前、海面付近で捕獲した海洋生物について同様の調査が行われたときには、体内からプラスチック粒子が見つかった生物の割合ははるかに低かった。

 今回の論文は、海底堆積物の中にプラスチック片を発見した2014年の研究に続くものだが、海洋に流出したプラスチックゴミは最終的に海溝に堆積するという事実を具体的に裏付けるもので、良い知らせとは言えない。

 深海に沈んだプラスチック粒子は、それ以上どこにも行くことはない。

 英ニューカッスル大学の海洋生物学者で論文の筆頭著者であるアラン・ジェーミソン氏は、「魔法の力で10年、20年、50年と時間を早送りして、プラスチックの製造もやめたら、川にあるプラスチックゴミはどうなるでしょうか? おそらく洗い流されて海に行くでしょう」と言う。

 「海岸線のプラスチックゴミの密度は下がり、目立たなくなるでしょう。外洋では紫外線と波の作用がプラスチックを劣化させるので、海面に浮かぶプラスチックゴミはなくなるでしょう。けれども深海では、プラスチックは散らばることも洗い流されることもなく、ひたすら蓄積されてゆくのです」

  ジェーミソン氏は続ける。「深海でプラスチックが見つかるのは今回だけではありません。太平洋は地球の半分を覆っています。私たちは日本と、日本からずっと離れたペルーとチリの沖でも調査しています。ですから、プラスチックはありとあらゆるところにあると断言できます。これ以上プラスチック探しに時間を浪費する必要はありません。研究者は海底のプラスチックが生物に及ぼす影響の研究に集中するべきです」

 深海でのサンプル採集

 研究チームは、太平洋西部の5つの海溝と南米西海岸沖の1つの海溝で捕獲器をつかってサンプルを採集した。捕獲した生物の体内をプラスチックで汚染することがないように、捕獲器の罠には慎重に包んだ餌をつけた。

 彼らは、捕獲した端脚類の後腸と呼ばれる器官(消化管の後部)を調べた。その際にも、生物がプラスチックを実験器具から摂取して調査結果に影響を及ぼすことがないように、細心の注意を払った。

 生物の体内からは色とりどりのマイクロプラスチックが見つかった。 体内から見つかったマイクロプラスチックの66%は青色の繊維だった。青やピンクのプラスチック片のほか、黒、赤、紫色のプラスチック片もあった。

 調査を行ったすべての海溝にプラスチック繊維があり、捕獲した端脚類の80%以上の体内からプラスチック繊維が見つかった。これらのプラスチック繊維を調べたところ、布地に使われているものと同じであることがわかった。つまり、洗濯機から出たプラスチック繊維が海に流れ出たのだと考えられる。

 2014年の研究で深海の海底にマイクロプラスチックがあるのを発見した英プリマス大学の海洋科学者リチャード・トンプソン氏は、今回の研究で「ジグソーパズルの欠けていたピースが見つかりました」と言う。

 「次に考えるべきことは、これらのプラスチックは有害なのかということです。つまりリスクアセスメントです。海底のプラスチックゴミが増えれば、プラスチックと相互作用する生物も多くなります。深海についての研究は少なく、解明は始まったばかりです」

 食物連鎖との関係

 ジェーミソン氏によると、「海底の海洋生物がプラスチックゴミを食べている」と聞かされた人々の反応は2つに分かれるという。1つは、地球上のどこに行ってもプラスチックの侵略から逃れられないのかという恐怖だ。もう1つの反応には唖然とするしかない。

 「まさかと思われるかもしれませんが、『陸から出たゴミが海の底に集まるなら、いいことじゃないか』と言う人がいるのです。どうしたらそんなふうに考えられるのか、私には理解できません」

 「人間と深海との関係は奇妙です」とジェーミソン氏は言う。「水深1万メートルの世界について語ろうとすると、妄想でも語っているような目で見られます。けれどもそんなことはありません。1万メートルはマンハッタンの全長の半分程度でしかなく、マラソン選手なら20分で駆け抜けられる距離です。地球は色々な意味で小さな世界です。人間が海に捨てたゴミは、どこか遠いところに運ばれると思われるかもしれませんが、実際にはそれほど遠い場所ではないのです」

 ジェーミソン氏は、海について別の視点から考えるようにしなければならないと言う。わたしたちの目の前に広がる海は地球の表面の大部分を覆う連続する水域であり、そこでは無数の動物が相互作用している。

 マイクロプラスチックが仔魚(しぎょ、魚の幼生)に及ぼす影響を研究している米オレゴン州立大学の毒物学者スザンヌ・ブランドン氏は、端脚類はプラスチック粒子を食物連鎖に組み込む「運び屋」になりつつあると指摘する。

 ビニール袋のそばを泳ぐジンベエザメ。ジンベエザメは最大の魚だが、プラスチック片を食べてしまう危険にさらされている。イエメンに面するアデン湾で撮影。

 「体内にプラスチック繊維を取り込んだ端脚類は大きな魚に食べられ、その魚はさらに大きな魚に食べられます」と彼女は言う。「動物プランクトンがマイクロファイバーを体内に取り込んでいるのは、それが植物プランクトンと同じくらいの大きさだからです。こうしてプラスチック繊維が食物連鎖網に組み込まれます。腸の内側がマイクロファイバーに覆われた大型生物も見つかっています。陸に打ち上げられたヒゲクジラを解剖したところ、腸の内側にプラスチック片がびっしり張り付いているのが見つかったケースもあります。こうした研究は、より大きな観点から何が起きているかを教えてくれます」

 海には51兆個ものプラスチック片があり、その90%は顕微鏡がないと見えないほどの小ささだ。科学者たちは以前、こうした海の状態を一種の「スープ」にたとえている。

 2018年12月、ナショナル ジオグラフィックはある研究者から、見えない場所のプラスチック汚染に関する研究の緊急性を指摘された。深海の高圧を実験室で再現するのは困難であり、プラスチックが深海の生物に及ぼす影響はまだわかっておらず、確認もされていない。

参考 National Geographic: https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/030300136/

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