海洋プラスチックの原因は?

 世界中の環境に広まったプラスチックが問題になっている。海洋でのプラスチックが問題になっているが、もとをたどれば陸上からプラスチックはやってくる。衣食住など身の回りの生活用品から、漁業、工業、サービス業で使用する用具など...プラスチックはあらゆるものに使用されている。

 農業もたくさんのプラスチックごみを排出する産業だ。毎年、200万から300万トンのプラスチックが農業のために使われていると推定されている。ヨーロッパでは農業から排出されたプラスチックごみの量は、全体のプラスチックごみ(130万トン)の5.2%を占めている(2012年時点)(PlasticEurope 2015)。

 農業から生み出されるプラスチックごみは、全体のプラスチックごみに占める割合は低いものの、ある特定の地域にごみの排出が集中しており、特定の地域で特にマイクロプラスチック汚染を引き起こしている。

 例えば、温室にはビニールシートやフィルムが使われている。マルチングで根っこを覆うビニールのシート。これは温度や湿度のコントロールや、雑草の成長を遅らせるために使われる。その他には、農作物の梱包や作物を入れる容器、家畜飼料を覆うビニールのフィルム、鳥や虫を防ぐためのネット、梱包用のひも、かんがい(水を引くこと)用の塩ビパイプ、化学肥料の袋、農薬の容器など...あらゆるものにプラスチックが使われている。

 我々人や動物が誤食したところで、プラスチックそのものは、本来は無害だ。ただし、海を浮遊するプラスチック片の表面には、海水中に薄く広がる化学汚染物質が濃縮して吸着されていく。加えて、プラスチックには微量ながら有毒な添加剤が含まれている。このような汚染物質がマイクロプラスチックと共に海洋生態系に入っている状態を危惧している。

 プラスチックに替わる素材の開発は?

 これに対して、何か対策はないのだろうか?

 軽量で防水性があり安価なプラスチックの代替品はなかなかない。また、分解しやすいプラスチックも開発されていると聞いいているが、あまり目にしていない。対策はどうなっているのだろうか?

 大手メーカーのカネカや三菱ケミカルなどでは、すでに「生分解性プラスチック」(土の中で、炭酸ガスと水に分解される)は、開発されていた。レジ袋などに生分解性プラスチックが使われようとしている。

 この新素材は、生分解性の樹脂を約7割と3割はでんぷんなどの可食物を使っている。さらに、耐久性などを高めるため使われる添加剤にもこだわり、主に食品添加物を使っているとのこと。

 開発者の方は、「壁となるのがコスト、高くても売れないので良いものをいかに安く作ることができるか」と話していた。生分解性樹脂だけでも製品にすることはできるが、従来のプラスチックと比べて1㎏あたりの単価が約2.5倍にものぼるといい、コストが安いでんぷんの量を増やしながら、いかに強度を保てるかを開発中だと話していた。

 プラスチックから紙へ

 プラスチックから紙に切り替える動きもある。

「王子ホールディングス」では、スナック菓子の袋などにも使える、紙の表面に特殊な薬品を塗り、酸素や湿気を通しにくくした包装紙を開発。「日本製紙は」果物や野菜などを使った飲み物、「スムージー」などを紙の容器に詰めるための専用の機械を開発、キャップ付きの紙の容器とともに来年度から飲料メーカーに売り込む。

 環境省では、来年度から植物を原料とするバイオプラスチックを使った製品を開発する企業や、紙に切り替えて製品を作る企業を対象にした補助制度を設ける方針を決めていて、これから、ますますこうした動きが表に見える形で出てくる。

 プラスチックから石へ、革命的新素材「LIMEX」

 世界各地にほぼ無尽蔵に存在する石灰石を主成分としながら、紙やプラスチックの代わりとなる新素材「LIMEX」が注目を集めている。それは、水や木材の使用量を大幅に削減し、世界の持続可能性のあり方を、根本から変えていく可能性を秘める。

 LIMEX名刺は、すでに1400社以上が採用。食品容器など、プラスチックの代替製品としての用途も期待されている。

 EUは、2021年までにプラスチックの容器や包装に対する課税の導入を検討している。これに先立ち、フランスは2020年までに使い捨てのプラスチック食器などの使用を全面的に禁止することを表明した。また、ケニアでは、2017年8月よりビニール袋の使用を禁じる法律が施行されている。

 プラスチックのような環境負荷が高い素材の製造・使用が、世界的に見直されている中で、今、日本発の革新的な新素材が注目を集めている。2011年設立のベンチャー、TBMが開発したLIMEX(ライメックス)だ。

 TBMのもとには、北米、欧州、中東などから問い合わせが絶えない。LIMEXは、世界各地にほぼ無尽蔵に存在する石灰石が主成分であり、しかも、水や木材をほぼ使用することなく製造ができ、紙やプラスチックの代替製品となる可能性を秘めているからだ。

 プラスチックからタンパク質へ、解決の鍵は「イカ」

 問題解決の鍵はイカが握っているかもしれない。先日こんなニュースが流れた。(CNN)

 年間800万トン以上が海に流れ込み、海洋生物の命を奪って生態系を傷つけているプラスチックごみ。だが問題の解決に向けた鍵は、その海にすむイカが握っているかもしれない...。3月21日の学会誌にそんな研究結果が発表された。

 ペンシルベニア州立大学の研究チームによると、イカの吸盤に含まれるタンパク質を利用すれば、プラスチックの代替となる素材を作り出せる可能性があるという。

 イカは触手などに付いている吸盤を使って獲物をとらえる。この吸盤には「角質環」と呼ばれる歯のようなトゲが付いているが、このトゲの成分のタンパク質は、絹のタンパク質とよく似ており、ここ数年、研究者の注目を集めてきた。

 研究チームはこのタンパク質からつくられた素材に関するこれまでの研究結果を検証し、イカの角質環タンパク質でできた繊維やコーディング素材、3D物体の試作品を制作した。

 こうした天然素材は生物分解が可能で、プラスチックの素晴らしい代替になり得ると研究チームは解説する。

 角質環タンパク質は、研究室で遺伝子組み替え細菌を使って生成できることから、イカを使う必要はない。生成には糖分と水、酸素を使った発酵を利用する。

 角質環タンパク質でできた素材は弾力性や柔軟性があり、強度も高いという。さらには保温性や自己修復性、電気伝導性も備えており、新しい分野への応用も期待できるとしている。

 現時点で合成角質環タンパク質の制作には最低でも1キロ当たり100ドルはかかる。研究チームはこのコストを10分の1にまで引き下げることを目指している。

参考 CNN news: https://www.cnn.co.jp/fringe/35133140.html

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